ゆるホロの日常。   作:窓風

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武術王決定戦
恒例行事


 

 

 

 

5月の半ば、放課後のグラウンドにて俺はサッカー部の手伝いに来ていた。手伝いといっても用具整理程度だけど。

 

「やってるな。」

「お、焔か。」

 

近づいてきた男は紅山(べにやま)(ほむら)。同学年でサッカー部のエースストライカーだ。クールでありながら心は熱い男として大変人気がある。中学では全国大会優勝も経験しているとか。

 

「堅は?」

「あそこだ。」

 

「よしこーい!」と元気な声を上げるゴールキーパーは橙坂(とうさか)(けん)。こっちは見るからに熱血漢。焔と幼馴染で共にサッカーを続けてきた仲だそうだ。焔同様、全国大会優勝を経験している。

 

「まだやるんだ……学校閉まるまでやるつもりか?」

「あいつはそういう奴だからな。」

「とかいいつつお前もまだやるんだろ?」

「バレたか。」

 

何度も来るボールを止めまくる堅を見ながら他愛ない話をすると、焔は堅のところへ行き自主練を再開した。俺は焔がシュートを2,3本打つのを見てから、用具の後片付けをして家に帰ろうと校門に向かった。

 

「あ、愛川君だ!」

「やっほ〜!」

 

そこで金髪2人組に鉢合わせた。ショートカットの方が夜空メル。フブキやまつりと同じ中学で、ヴァンパイアだが日光に弱いというわけではなく、普通に日中も暮らせると聞いた。その容姿と甘い声は密かに男子間で人気がある。確か化学部に入ってたはずだ。

もう1人の宙に浮いたツインテールの方がアキ・ローゼンタール。フブキらと同じ中学出身のハーフエルフ。たまにツインテールを失くしたりするが、基本的にお姉さん気質で面倒見がいい。ダンス部に入っているらしいが、ヒップホップとかではなくベリーダンスを主に踊っているみたいだ。

 

「2人一緒とは珍しい。」

「今部活終わって一緒に帰るとこだったんだ。」

「あれ、化学部って今日あったか?」

「ううん、今日は化学部じゃなくて、ASMR部!」

「待って知らない部出てきた。そんなとこあった?」

「あまり知られてない部なんだよね。男の子には刺激が強いかもしれないし?」

「ASMRってことは立体音響だよな?ちなみに顧問は?」

「ちょこ先生。」

「あー納得。」

 

アキとメルに加えちょこ先生までいるASMR部は男にとってまさに魔境だ。これ以上の詮索はやめておこう。

 

「愛川君は?部活やってたっけ?」

「俺はサッカー部の簡単な手伝い。練習終わったから帰るとこだった。」

「じゃあ途中まで一緒に帰ろうよ!」

「いいね!クラス変わってからあまり話せてなかったし!」

「うぇ、いや、えと。」

 

ASMRとか聞いた直後に学年の人気者2人と一緒に下校とか流石に動揺する。俺だって健全な男子高校生やぞ。

 

「じゃあまつりちゃんになんて言おっかな〜?」

「禁止カードやめてくれ!わかったから!!」

「「イェーイ!」」

 

あいつから噂がどのベクトルで広がるか想像できない。怖すぎる。

 

そんなわけで3人で下校している。フブキに迷惑かけてないかとか、まつりに変なこと言われてないかとか…………。色んな話に花を咲かせた頃、アキからとある話題を振られた。

 

「そういえば、愛川君って今年の大会出るの?」

「あー、一応ね。来月だっけ?」

「うん、来週から体育館が大会の練習場になるから、それで思い出したの。」

 

大会というのは、武術王決定戦と魔術王決定戦の総称で、俺の場合は武術王決定戦の方にあたる。大会はこの学校の行事で、毎年この時期になると市の割と大きい体育館を貸し切って丸2日間行われる。いわば体育祭みたいなものだ。ちなみに魔術王決定戦の方は野球場で行われるようだ。どこにそんな予算がある。聞けば毎年参加人数が多く、試合数も多いため結構盛り上がるようだ。実際、去年はすごかった。特に決勝トーナメントはめっちゃ盛り上がった記憶がある。

 

「去年はベスト8まで行ったんだよね!」

「いや、相手との運もあったよ。全部割とギリギリだった。」

「でも1年生で決勝トーナメントはすごいよ!今年も出るなら応援するからね!」

「あぁ、ありがとな。」

「じゃあメルはこっちだから。」

「私はこっちね。」

「じゃあここまでだな。気をつけてな。」

「「じゃあね〜!」」

 

十字路でアキとメルと別れ、そのまま家へと帰った。今日もまた充実した良い日だったな。

 

(来週から、か。)

 

あの熱い闘いができる日が近づいていると思うと、ワクワクが込み上げてきた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

翌日。いつも通りの朝を迎え、普通に授業を受け、昼はいつものテラスで誠、フブキ、まつりと食べていた。くっつきながらサンドイッチを分けっこしている夏色吹雪を見ながらゆっくりしていると、そこに見慣れたツンツン頭が俺のところへ寄ってきた。あ、夏色吹雪はそのままで大丈夫よ。ごゆっくり。

 

「杏君こんにちはです!」

「お、竜か。どした?」

「ちょっと大会について聞きたいことがあったので。」

「おー、いいぞ。座りな。」

「はい!失礼します!」

「いらっしゃ〜い!」

 

この元気ハツラツな男子は黄野(きの)(りゅう)。俺の中学の後輩で、剣道部の元後輩でもある。剣道の才は俺よりもあり、個人戦では全国大会まで出場したこともある強い奴だ。

 

「大会に出るつもりか。杏からお前のことは聞いてたが、剣道とはまたわけが違うぞ?」

「誠ってば出たことないクセにデカイ顔してるー。」

「うっせ。」

「ま、お前のことだから武術王の方で出るつもりなんだろ?」

「そうなんです。ただルールとかが色々よくわからなくて。」

「おっけ。したらできるだけわかりやすく説明するな?」

 

武術王決定戦は、その名の通りあらゆる武術の頂点を決める闘い。有志で募集をしていて毎年参加人数が80人以上を超え、多い時は100人を超えるとか。

 

「ホントに大会みたいですね。」

 

武術と言うだけあって使える武器は様々。剣や刀、槍はもちろん、弓、杖、盾、鞭、ナイフ、斧などから好きな武器を1種類2つまで持つことができて、試合ごとに変えることもできる。つまり、騎士みたいに剣と盾両方を持つことはできない。あと、銃と魔法の使用は禁止されている。

 

「なるほど。」

「はいはい、手裏剣とかってどうなの?」

「いい質問だフブキ。」

 

暗器は、手裏剣なら7つまで、苦無なら5つまでと、それぞれに上限数が設けられている。もちろん、使えるのは1種類のみだ。あとは剣とかの装備に加えて、参加者全員が殴る蹴るの格闘もできる。人によっては格闘オンリーもいるが、基本的には使える武器+格闘の2種類の戦闘方法がある。

 

「状況に応じて戦闘スタイルを変えられるのか。ふむふむ………ん?そもそもどういう風に試合するんですか?」

 

試合は特殊固有空間といういわゆる仮想空間で、一般人でも魔法や技を発動できる空間内にて行われる。痛覚遮断機能(ペインアブソーバ)も搭載されているから、斬られても変な異物感がある程度で痛くはない。そして試合は予選ブロックが5分、決勝トーナメントが10分。互いにHPが設定されていて、時間内に相手のHPを削り切るか、時間切れの時によりHPが多く残ってる方が勝ち。

 

「立体格闘ゲームを生身でやる感じですね。」

「そうそう。フィールドのおかげで剣に炎を纏わせたりとかもできるぞ。」

「でもなんで魔法はダメなのにそーいうのはオッケーなの?」

 

まつりから鋭い質問がきた。確かに一見すると魔法を使ってるようにも見える。俺も最初見た時は驚いた。

 

「昔は魔法と同じ括りになってたけど十数年前からただ斬る殴るじゃつまらない、みたいな話になったってどこかで聞いた。」

「なにそれバーサーカー?変態なの?」

「まつり、最後の方もっかい言ってくれ。」

「変態。」

「もっと。」

「バーサーカー?」

「もっと。」

「なにそれ。」

「なんで少しずつ遡ってくのまつりちゃん……。」

 

ノリのいいまつりとフブキに苦笑いされてる馬鹿は放っておいて。

 

「それに、魔法(じゅもん)(とくぎ)は別モンだろ?」

「そっすね!」

 

大会が近づきつつあることを改めて実感すると、とある人へのリベンジに心の奥に火がついたのを感じた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

生徒会室の一角。資料の山と睨めっこをする魔人の男。左腕には『生徒会』の文字が刺繍された腕章。制服をきっちり着こなすこの男こそ、この学校の生徒会長。真っ白で美しい髪をかきあげ虚空を見つめながら、ふぅとため息をつく。

 

「………………もう少しか。」

 

 




ちょっとバトル描写も増えそうですねぇ。

UA2000、お気に入り50件ありがとうございます!!!
やっぱ見てもらえるのは嬉しいですねぇ!!
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