大会2日目。今日は朝9時に野球場で出欠確認をして10時から各決定戦の決勝トーナメントが始まる。出欠確認までまだ時間があったため、決勝トーナメントのオーダーが掲示されている場所まであやめと行った。そこには2枚の大きな貼り紙があり、武術王決定戦と魔術王決定戦それぞれのトーナメント表が書かれていた。
「えーと……余は決勝Aブロックでお前様が決勝Bブロックだな。」
「よっしゃ!シードだ!」
「おお!よかったな!」
参加人数が96人で予選が4人1ブロックの24ブロック。つまり決勝トーナメントでも24人いる。そして決勝A〜Dブロックの山に6人ずつ分けられ、各ブロックにシード枠が2つずつ設けられている。シード枠は予選ブロックで圧倒的な戦績を残した選手がもらえるため、予選の戦績が良かったのかギリギリシード枠に入ることができた。
「じゃあお互いに準決勝まで勝たないといけないな。」
「刀使いだけに、ってか?」
「え?なんて?」
「ごめんなんでもないわ。」
本気の「余、聞いてなかった」なのかわざとなのかは分からないが、渾身の親父ギャグをスルーされてちょっと悲しかった余。
「お、愛川君じゃん!こんやっぴ〜!」
「トワ様じゃないですか。こんやっぴ〜。」
「トワちゃんこんやっぴ〜。」
後ろから聞き慣れた挨拶が聞こえて振り向くと紫の髪をツインテールにした小悪魔、3年生の常闇トワ様がいた。本人の希望で先輩ではなく様で呼んでと言われている。かなたさんやココさん達とよくいるところを見かける。普段は可愛らしい声なのだが、歌うときの声のギャップでとても驚いた印象がある。ぜひ一度聴いてみて欲しい。一人前の悪魔を目指してるとのことだが、悪魔的所業より天使的行動の方をよく見るのは気のせいかな?
「愛川君とあやめ先輩は決勝に進んだんですか?」
「そうだぞ!2人ともシードだ!」
「うへぇぁ、すごいな!」
「トワちゃんは確か魔術王の方に出てたよな?」
「それが聞いてくださいよー!実はトワ、予選でシオン先輩と当たったんですけど、ボコボコにされて予選落ちしちゃったんですよ〜。」
「あーシオンと当たったのか〜。残念だったな。」
トワ様は確か去年の魔術王決定戦の決勝トーナメントには勝ち進んでいるはずだが、そのトワ様を負かすってシオンは一体……。
「愛川せんぱ〜〜い!!!」
「うわっ、ねねね。」
トワ様の愚痴を聞いてると、また後ろから1年生の桃鈴ねねに声をかけられる。元気いっぱいな女の子で金髪のお団子が目印。銀の魂を読んで育ったらしく、小学男子みたいな言動をすることもたまにあるが、笑った時に見える八重歯がまたキュート。
「おーすねねち。」
「おーっす!」
「おいーっす!」
もはやお決まりとなったハイタッチをすると、その後ろから金髪のフェネックが追加のハイタッチをしていく。
「ポルカおったんか。」
「おるよー!」
「ポルカちゃんとねねちゃんだー!」
このフェネックが尾丸ポルカ。ねねちと同じ1年生で、サーカスの座長を目指しているとか。目元にはハートやスペードなどのトランプのマークの………なんだ、アクセ?ペイント?わからんけどそのマークがついている。一度ジャグリングを見せてもらったことがあるが………まぁ伸び代があるということで。
「あれー?トワワ先輩予選落ちしちゃったの〜?」
「うっさい!トワだってやればできんだから!今回はちょっと運がなかっただけぇ!!」
「まぁシオン先輩が相手じゃあねぇ……」
「くぅ〜………まだ悪魔としての修行が足りないか……。」
「およ?愛川先輩とあやめ先輩は決勝進出!しかもシードですかぁ!いやぁすごいですね!」
チラチラとトワ様の方を見ながら俺とあやめの決勝進出を賞賛するねねち。これにはトワ様も……。
「おうこらちょっとツラ貸せクソガキぃ!!」
「やぁだよ〜!」
あぁ、やはり。我慢の限界か、トワ様はねねちを捕まえようと追いかけ、それから逃げるように球場のスタンド席に逃げていくねねち。仲が悪いわけでは無さそうだがなぁ……。
「お、もうこんな時間か。出欠確認始まるから余達も戻ろうか。」
「そうだな。行くぞおまるん。」
「へいへーい。」
腕時計を見ると時刻は8時50分。担任によってはもう出欠確認を始める時間のため、残った3人でスタンド席へと歩いていった。
「おまるんそっちはグラウンドに出る方や。」
「アレェ?!」
◇◇◇
決勝トーナメントでは試合場の広さが30m×30m、高さの上限が10mと変わり予選より広く使うことができる。それに伴って決勝トーナメントは2ブロックずつで行われる。各ブロックの勝者による準決勝、そして天辺を決める決勝は午後から行われる予定だ。
メインアリーナで決勝Bブロックの選手の確認をスタッフさんがしていると、同じブロックである竜から声をかけられた。
「杏君、もう1人のシードのホワイトって人、何モンなんですかね。」
ふと横を見ると、隣の決勝Aブロックのあやめがこちらに気づき笑顔でヒラヒラと手を振る。おっほ、かわ余。そういうとこやぞ。
……………ではなくて。決勝Bブロックの選手の中に、全身を覆う白いマントに、同色のフードを深く被る選手がいる。背丈は俺と同じか少しデカイくらいでフードは一部盛り上がっている。おそらく獣人か魔人なのではないかと思う。予選では3試合とも1分足らずで勝ったというとんでもない選手だ。点呼の時に手を挙げたからこの人がホワイトなのだろうが………。
「まだ空間も展開されてないのに、すごいやる気ですね。オーラみたいなものを感じます。」
「それもそうだが、まずは目先の試合な?勝てば俺とまた闘えんだから。」
「そーー……ですね!剣道じゃないのが残念ですけど。」
「剣道の腕はもう落ちたよ。頑張れよ。」
「はいっ!!」
竜は決勝Bブロックの1回戦目で、勝てばシードの俺と闘うことになる。できたら闘りたくないが久しぶりに後輩と闘いたいと自分もいて、少し複雑な感情を抱えながら後輩を送り出す。
さて、俺のとこまで来れるかな?
………………って思ってたら来ました。フラグって怖いね。
「来ちゃったかー。」
「来ちゃいました。」
空間内で竜と握手をする。竜の
対して俺は
観客席の方を見ると、あやめの応援も兼ねてなのかAブロックとBブロックのほぼ中間部分を陣取る応援団を発見。昨日の4人に加えてノエルさん、フレアさん、ぺこーらの3人が加わり賑やかになっていた。あそこで誠は生きていけるのか果たして…………。
「まー、来ちゃったからにはやるしかないしな。じゃ。」
「はい。」
時間が惜しいため、試合場のほぼ中央で剣と刀の剣先を交わし蹲踞。すぐに立ち上がり、両者下段の構えのまま5歩後退。中段の構えに戻すと、ふと笑みが溢れた。
「息ピッタリですね。流石杏君。」
「作法は身体に染み付いてるからな。忘れるはずないさ。」
互いに笑い、数年前の光景が脳裏に甦る。少年団の試合稽古で幾度となく剣を交えた剣友とも言える竜と、こうしてまた剣を交えることができるのはやはり嬉しい。できれば闘りたくないとか思っていたが、結局俺はこいつとまた試合がしたかったようだ。
「さぁ始めようか。」
「さぁ始めましょう。」
試合開始を知らせるブザーが鳴ると、決勝Bブロックからはものすごい気合いの入った2つの声とともに、凄まじい衝突音が聞こえたという。
ええ、察してる方はその通りです。竜はあの勇者に似せました。
オリキャラの名前考えるのちょっと楽しいの。