ガタンガタン、ギギギギ、カーンカーン・・・
ガシャン‼︎
「ヤラカシマシタ」
「モヤセバナントカナルデショ」
「バーナーハイリマース〜」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼︎
「やめて俺の艤装燃やさないで。 てかこの部屋暑すぎでしょ・・・。」
溶接にバーナーを多用する所為でこの工房は現在とんでもなく蒸し暑い。
外部からの攻撃を想定して窓も一切無いので風が吹く事も無い。
「しょうがねえだろ、何せ今は真夏だからな。 ましてやここは工房。 暑いのなんて年中の事だ。」
「う〜ん。 親方も妖精の皆んなも凄いな。 ちゃんと休んでる?。」
「ワレワレニキュウケイナドフヨウ。」
「ワタシタチガモトメルノハ、セイビシガイノアルギソウノミ。」
「ナノデアナタノカラダモミセルノデス。」
「「「「ミセルノデス」」」」
しまった話しかけるんじゃなかった。
話題を振った途端、彼等の目つきが変わりジリジリと皆俺の方へにじり寄って来る。
「いやもういいよ‼︎。 アンタらにはそっちの装備を任せるからこっち来んな‼︎。」
俺は慌てて工房を飛び出した。
一度だけ彼等に俺の体を診てもらったが、その時は装甲を剥がされかけたり左腕を分解(解剖)されそうになったので全力で逃げた。
もうあんな体験は二度とごめんだ。
以降俺は、体以外の整備を彼等に任せようと心に決めた。
ーーーーーーーーーーーーー
「何だ瑞鶴、やっと部屋から出て来たのか?。」
俺は暇だったので神社を散歩していると、
庭に翔鶴に連れられた瑞鶴がいた。
姐さんとの一件から4日が経つ、
あれから瑞鶴がご飯の時以外部屋から出なくなってしまい姉の翔鶴と共に心配していた。
まだ顔色は悪いがあの時より幾分マシになった様子。
「色々心配かけてごめん。 まだ怖くて艤装も持てないけど、気持ちは大分落ち着いた。」
「みたいだな。 まあ姐さんの前で意識が保ててただけでも2人とも凄いよ。 特に翔鶴は直ぐ立ち直れてたのには驚いた。」
「ふふっ、ハルカ君と初めて会った時、あなたの威嚇を体験していたお陰。 あれが無かったなら私も瑞鶴と一緒に塞ぎ込んでた筈よ。」
「へーそうなのかー。」
(あの時俺そんな本気でキレたか?。 少しイラついたのは覚えているがそこまで表に出した記憶はないんだがな?。)
昔から感情が表に出やすいとは言われていたけどそんなになのか?、以後気をつけよう。
「そうだ!。 ハルカ君、今から私達この近くの砂浜に行くのだけど一緒に行かない?。 私達と同じ艦娘の子達がそこに海の家を建てていてその手伝いに行こうと思うの。」
「瑞鶴、海の家とは?。」
「簡単に言えば海で遊ぶ時少し休憩する時のための建物。 他にもそこでご飯や美味しいスイーツを食べたりするの。まああの人達の事だから目的は殆ど後者だと思うけど。」
「よし行こう!。すぐ行こう‼︎。」
「あんたもか!」
ーーーーーーーーーーーー
神社を出て森の中を暫く歩き、俺達は何処かの砂浜に着いた。
そこには、黒い海とは真逆な青く透き通る綺麗な海が広がっていた。
「すごい!、こんなに綺麗な海を観たのは初めてだ!。 あっちにここまで綺麗な場所は無いよ!。」
「そう?、どう見たって普通の海じゃない。」
何を言っているんだこいつは⁉︎、
「こんな感動的な場所が普通だと⁉︎、お前はあの海を知らないからそんな事が言えるんだ!。」
「ええ、知らないし今は考えたくも無いわよ。 これ以上私のトラウマ呼び起こさないで。」
「すいませんでした。」
「ふふっ、ハルカ君に喜んで貰えて嬉しいわ。 ここは横須賀鎮守府の所有地なの。 だからあなたも自由に使って良いわよ。」
「本当⁉︎、それじゃあ早速!。」
俺は素潜りをしようと、服を脱ごうとしたその時だった。
「ここで泳ぐつもり?、お勧めしないわよ。 この辺りの海には弱いけど深海棲艦の子供がうじゃうじゃ居るから。」
「えっ?」
(誰だ⁉︎)
さっきまでこの砂浜には俺達3人以外何の気配も感じなかった。
俺は声のする方へ急いで振り向いた。
「この場所に人?、が来るなんて珍しいわね。」
背丈は俺と同じぐらい、深い茶色の髪が特徴的で綺麗な女性。
艤装は無いが雰囲気で分かる、
この人はかなり強い艦娘、それも戦艦だ。
「陸奥、もう来てたの。 ならもうそろそろ?。」
「ええ、他のみんなも来るわよ。 それよりも翔鶴、この子は?。」
「この子はハルカ君。 この間奏さんが言ってた子よ。 最近親方さんの所で一緒に暮らしているの。」
「そう、この子が。」
俺の名前を知った途端、陸奥と言う艦娘の空気が変わった。
明らかに俺の事を警戒している。
「待ってくれ!。 そんな怪しまなくても俺は別に深海棲艦じゃないからな!。 向こう側で育っただけのただの人間だよ。 てかあんたら艦娘と戦う気なんて毛頭ない。」
自分の事を人間だと言うのは何か変な気分だ。
親方からは色々混ざった存在だと言われたが、
まあ昔からそうだろうなとは薄々思ってはいたけど。
「艦娘・・・ね、人間から見たら私達艦娘も十分化け物。 確かに貴方からは深海の力を強く感じるけど、中身はただの人間みたいね。 変に疑ってごめんなさい。」
警戒が解かれたのか重く感じた空気が軽くなる。
本当に焦った。
もし戦闘になれば、多分艤装を持ってない今の俺に勝ち目は無かったから。
「いや良いんだよ。 俺もこの間初対面の人に色々不味いの見られてるし。」
「本当に迷惑よね。 お陰で私達の仕事も増えるし。」
「あら瑞鶴いたの?、なんでハルカ君の後ろに隠れてるのよ?。」
「あんたが圧をかけるからでしょ!。 味方のでも今は怖いの‼︎。 これだから覚醒者様は困るわね!。」
「ごめんなさい。 まだその辺の繊細な制御が難しいのよ。 駆逐艦の子達にも言われて気をつけてるんだけど・・・。」
覚醒者?、 何の事かは分からないが陸奥さんの気持ちはよく分かる。
俺も初めはその加減が出来なくて色んな奴に喧嘩を売ってると間違われて苦労した。
欧州の姫を怒らせた時は本気で死ぬかと思ったのが懐かしい。
「仕方ないわよ。 覚醒した艦娘なんて今のところあなただけ。 その力の制御なんて誰も分からないわ。」
「せめて暴走しないよう気をつけてよね。 あんたが暴れたら止められる奴なんて大和さん達ぐらいしかいないんだから。」
「それもそうね。 頑張るわ。」
・・・・・さっきまでの楽しい雰囲気が何とも言えないしんみりした空気に様変わり。
もう俺そこら辺で泳いでていいですか?。
この空気俺耐えられないよ?。
いやいっそこのまま神社に帰ろうか、
1人そう悩んでいると聞き慣れた声が背後から掛けられた。
「ソコニイルノハハルカサンジャナイデスカ?。」
「ソコノケソコノケシザイガトオル。」
「アンゼンカクニンヨシ!。」
「オミセヲタテルゾドコタテル?。」
「ムツサン、タテルバショハココデヨイカナ?。」
そこには、神社で俺の体を率先して解体しようとして来た5人組の妖精が大量の建築資材を引き摺りながら現れた。
「ありがとう妖精さん。 そうね取り敢えずその看板が立ってある場所が建設予定地よ。 私達もできる限り頑張るから色々お願いね。」
「「「「「ok」」」」」
「もしかしてあいつ等が手伝ってくれる妖精なのか?。」
「そうよ、流石に私達だけじゃ家一つ建てるのは難しいもの。 だからこうして妖精達におねがいしてるの。 何かあったの?。」
「いや・・・・何でもない、気にしないで。」
「「「?」」」
よりにもよってあの5人かよ!。
今も作業しながら時折俺の方を見て目を光らせてる。
やだな〜、もう俺帰りたくなって来たな〜。
「おーい陸奥ーー!!。作業は進んどるかー!。」
遠くから誰かが陸奥さんを呼ぶ大声が聞こえた。
どうやら妖精の次は他の艦娘が来たようだ。
「何や既にようけ集まっとるやんけ。 これうちらのする事ないんやないか?。」
「いやせっかく道具持って来たんだから何かしましょうよ。」
「足柄の言う通り、私達が使う海の家なのよ⁉︎。 妖精さんに頼りっぱなしはダメじゃない!。」
「いやそう言うてもな霞、もう基礎工事殆ど終わっとるみたいやで?。」
「「は?」」
「ナカナカタノシマセテクレル。」
「アトハコイツガカワイテカタマルマデホウチ。」
「キョウノサギョウシュウリョウシマシタ。」
なんと全員が目を離した隙に妖精達は海の家の基礎工事を早くも終わらせてしまったのだ。
「マタヨンデネ。」
「「早過ぎるわよ‼︎。」」
ーーーーーーーーーーーー
砂浜に到着して2時間も経たず、
海の家の建設作業は、5人組の腕利き妖精達によって一段階目の作業が爆速で終了。
その結果せっかく集まったのに早くも解散する流れになってしまっていた。
「どうやら私達の出番はなかったみたいね。」
「結局ただ話してただけだった。」
「俺なんか何もしてないよ。」
「あの子達、妖精の中でも作業速度と精度が頭一つ抜けてるわよね。 流石は親方直属の精鋭、なのかしら?」
「せやな、あの5人は親方と一緒で昔からおるらしいで。 なんなら司令長官の爺さまよりも前からやとか。」
「あのお爺さんより前とか・・・親方達って本当に何歳なのよ・・・。」
また知らない人の名前だ。
「瑞鶴、司令長官とは?。」
「司令長官は役職名よ、本名は若本龍一郎、私達艦娘が所属する日本海軍の中で1番偉い人。 でも偉いと言っても特に重要な事はやってなくて、艦娘専門の海軍学校の教員をしてるだけの暇人。」
「おいおい、確かに俺の方でも1番偉い奴は何しても許されてたけど、そいつそんな所にいて良い人間なのか?。」
「いいえダメよ。 だから重大な会議がある時は私達が引きずってでも連れてくるの。 あの人はそうでもしないと自分のテリトリーから一切動こうとしないのよ。」
「でもいざという時あの人以外に指揮能力と戦闘能力があって盤面を覆す頼れる人はないのよね。」
「ふ〜ん。」
司令長官か、
いつか会って話をしてみたいな。
それに海軍のトップなら俺の過去の事も何か知っているかもしれない。
早速親方に聞いてみるか。
「面白そうな人だな!。 翔鶴瑞鶴、悪いけど俺先に戻るよ。 親方にその司令長官の事を聞いてみたい。」
俺は2人にそう言って神社のある夕日の差す方振り向いた。
すると、遠くの方から1人の女性がこちらに歩いてくるのが見える。
(あれは誰だ?。)
しかしそう思った直後、
俺はその女性の顔を認識した途端、心臓が締め付けられるような複雑な痛みを感じた。
「武蔵お前なぁ、遅れる言うてもこの時間は遅れすぎやろ。」
「すまない。 艤装の整備が終わったと聞いて親方の所に行っていたんだ。 妖精達と話してたら遅くなってしまった。」
こいつは何者だ?、
武蔵?、
何処かで聞イたことがある、
「それで陸奥よ、この少年は・・・何者だ?。」
「この子は奏さんが言ってたハルカ君よ。 あなたと大和この子に会いたがってたでしょ?。」
「そうだな・・・。 初めまして、私は大和型戦艦2番艦武蔵だ。 よろしく。」
いヤ会っタことガある、
何処カで、
「ハルカ大丈夫?、顔色悪いけど。」
やラナくちゃ、
オれガ、
コイツを、
コロサナキャ、