「・・・・・‼︎。 ッカハァ! 。」
危なかった、
もう少しで
さっきよりも頭と心臓が猛烈に痛い。
いや、
もっと言えば体の至る所が焼かれたように痛い。
特に装甲で覆われた箇所が酷い。
こんな事は初めての体験だ。
今目の前にいる武蔵と言う艦娘、
この人が現れた瞬間から何かがおかしい。
ああダメだ、
まダ引っパラれル。
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「ちょっとこの人大丈夫なの?。」
「おいハルカ!、気分悪いんやったらそこの日陰で休んどき。」
「水なら持って来てるけど・・・飲めそう?。」
「・・・武蔵、あなた彼に何したの?。」
「いや私は何もしてないぞ。 寧ろ自己紹介をしてこの反応をされた私の方が泣き崩れたいぐらいだ。」
そんな冗談を言い合いつつも、武蔵と陸奥は警戒を怠らない。
陸奥は完全に、武蔵は半覚醒した艦娘。
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覚醒とは、
世界中に存在する艦娘、そして同じ艦名を持った者達の中でただ1人だけ選ばれる艦の魂を宿した艦娘。
覚醒した艦娘はその艦の戦いの記憶と本来の性能を最大限に引き出す事が可能になり、
その戦力はあの女王クラスの深海棲艦と1対1で渡り合えるほどに強力だった。
陸奥の魂は幸いな事に瀬戸内海に未だ残った船体や全国に散らばった欠片を集め何とか完全覚醒を施す事が出来た成功例第一号。
一方武蔵は、大和同様生まれ持って艦の魂を4割程所有していた数少ない特別な存在。
他の艦も含め残りの魂はこの広い海に巣食う深海の女王、その誰かが握っていると日本海軍は睨んでいた。
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「いざと言う時は私達で止めるわよ。 今の彼、かなりギリギリよ。 いつ染まりきってもおかしくないわ。」
「分かっている。 艤装の整備も完璧、十分対応出来るさ。」
荒い息をしながらうずくまるハルカに2人は各々の主砲の矛先を向ける。
艦娘が完全に深海に染まってしまっては助かる手段は無い。
その度に誰かが手を汚し、女王になる前に仲間の命を絶つ。
女王に成ってしまってはそれこそ全てが手遅れになるからだ。
例えそれが艦娘ではないただの少年であったとしても、
(お願い・・・頑張って、自分を見失わないで。)
(お前には聞きたいことがあるんだ。 頼むから耐えてくれ!。)
「私親方さん呼んでくる!。」
「お願い瑞鶴!、それと戻って来る時に艤装を装備して来なさい!。」
「分かってるって!。 ありったけ積んでくる!。」
「龍驤、私達も鎮守府に連絡する?。」
「いやええよ。 鎮守府に連絡すれば大騒ぎになりかねんわ。 奏さん、まだコイツの事を司令部に報告してへんからな。 大事にはしたくないやろ。」
ハルカの件、
これは横須賀鎮守府及び奏提督の身内のみが知る情報。
深海棲艦不戦友好条約にまた1人深海勢力が加わろうとしているとはまだ誰も知らない。
だがいかにハルカが人間に近かったとしても、
現段階では人類や艦娘にとって深海棲艦と大差ない不気味な存在に変わりなかった。
「あんたねえ!。 男ならもっとしっかりしなさいよ!。 本当、私達にどれだけ迷惑掛けるつもりなの⁉︎。」
ハルカの背中を霞が軽く摩る。
それは彼女が具合の悪そうにしているハルカの為に行った行動。
しかし今は誰も彼に触れるべきでは無かった。
突然ハルカの苦しそうな荒い息が止み、
振り上げた左腕から鉄の軋む音がギシギシと音を立てる。
「触るな。死にたいのか?。」
「霞、離れて‼︎。」
直感で霞が危険だと感じた足柄は急いで霞を抱き抱えハルカから遠ざかった。
直後、放たれた戦艦2人の主砲全問一斉射。
その威力は妖精達が建てた海の家を、その後ろの森を数十mも消し飛ばす程。
「大事にはしたくなかったけど仕方ないわね。」
あの時足柄が間に合っていなければ、
霞は確実にハルカの振り切った拳によって殺されてしまう所だった。
「おいおいこれやり過ぎやろ!。 そんなにヤバい奴やったんか?。」
「ヤバいなんてもんじゃ無いわよ!。そこらの深海棲艦とは比べ物にならないわ!。」
暫くして砲撃で起こった土煙が収まり、立ち尽くすハルカが姿を現した。
しかしどうやらその中身はハルカとは違う何者かだった。
「・・・・・覚醒した艦娘の気配がしたから起きてみれば。 お前は戦艦陸奥か、そして隣に居るのは戦艦武蔵だな。 あの時の小娘が大きくなったな。」
ハルカの物とは違う声色。
先程まで、まるで何かが爆発しそうな雰囲気を出していたハルカが一変、
不気味な程静かなオーラを放っていた。
「そこの足柄もなかなかやるな。 無理をしてでも艤装未装備の状態で最大出力を酷使するとは。」
「全然嬉しくないからやめて、これぐらい平気よ。 てかあなた誰。」
吐血をしながら強がりを言う足柄。
その者の言う通り、
艤装未装備の状態で内臓機関を最大使用すれば、いかに艦娘と言えどその身は持たない。
今回、足柄はほんの一瞬だけの最大出力だったために致命傷にならずに済んだ。
しかし体の内部のダメージは深刻。
ドッグで治療しなければまともに歩くことすら出来ない程に。
「オレは王だよ。 名前は無いから適当に呼んでくれて構わん。別にお前達と争うつもりは無い。」
「お前など知らんし聞いた事も無い。 ハルカには聞きたいことが山程あったがな。 しかし何故今霞を殺そうとした?。 その子が何をした?。」
「別に理由なんて無い。 ただ気に食わなかっただけさ。 俺に触れる奴は死ぬ覚悟ができた者かただの阿呆と認識してるからな。 次から気をつけると良い。」
「なるほど、ならお前も覚えておくと良い。 私は仲間を傷つける奴には容赦はしない。 例えそれが知り合いの体を乗っ取ったクソ野郎でもな。」
「悪いけど怪我が嫌なら大人しく捕まってくれる?。 今の私達、上手く加減出来ないわよ。」
武蔵、陸奥、
既に2人の主砲は再装填済み。
再度一斉射の準備が完了していた。
(陸奥、次は龍驤の艦載機で注意を引き隙が出来た所に主砲を叩き込むぞ。)
(分かったわ。 合図は任せるわね。)
(心得た。 龍驤。)
(聞こえとる、任せとき。)
3人に緊張が走る。
何故なら先程の一斉射の時、
奴は向かってくる17発の砲弾をどんな手を使ったのかは不明だが1発も食らう事なく凌いだのだ。
通常なら回避不可能な状況で、
奴は無傷の状態で土煙から姿を現した。
「なかなか面白い事を言うな。 いいだろう、少しだけ遊んでやる!。 ・・・っと言いたいがもうそろそろ時間だ。 手足の主導権が段々と取り返され始めてしまった。 また眠る前にこれだけでも渡しておこう。」
その者はそう言って懐から小さな欠片を取り出し武蔵に向かって放り投げた。
「受け取れ。 それはコイツの大切な物の一つだ、だがこれは
「おいこれは⁉︎。 待て、どう言うことだ⁉︎。 いや、そもそもハルカは何者なんだ⁉︎。」
「コイツか?、コイツはただの人間だよ。 幼いまま家族に捨てられた可哀想な子供。 もうコイツは戻れない。 今更後悔しても手遅れだ・・・。」
その者が言い終えた途端、
ハルカの体は崩れ落ちるようにその場に倒れ込んでしまった。
「おい待て‼︎、戻れないとは何だ‼︎、答えろ‼︎、おい‼︎。」
すぐさま武蔵がハルカに駆け寄り必死に訴えかけたが、
その者が再び現れる事は無く、
ハルカも暫く目を覚ます事は無かった。
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「この感覚は・・・懐かしい・・・・・、 ようやく目が覚めたのですね。 つまり今度の器は彼に?。 面白い、時が来ればまたお仕えしたい。 何千年経とうと我々の忠誠が揺らぐ事はありません。 今度こそ愚かな人間どもに裁きを下しましょう。」