独自解釈、設定が多々あります。
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「親方ー!、来たでーー!。 うちや、龍驤やー!。」
神社の境内に龍驤の声が響き渡る。
普段翔鶴や瑞鶴が掃除をする以外誰もいない静かなここでは、龍驤の声は一際大きく聞こえた。
待つこと数分、
建物の奥から2頭身の大きな妖精が廊下を歩いて龍驤達に近づいてきた。
「おう来たかお前達、久しぶりだな。 武蔵はこの前の主砲の件以来か。」
「ああ、あの時は世話になった。 あれ以降何の不調もなく動作している。」
「当然だ、何せ俺が整備したんだからな!。 お前が無茶しない限り故障する事はねえよ。」
「親方が鎮守府の近くに居てくれて本当にありがたいデスね!。」
「そうやな、明石の整備にも限界がある。 ましてや覚醒した艦娘の艤装なんて親方しか弄れんし。」
「その通り。 しかしお前の胸部装甲はこの俺でもどうにも出来ん。 諦めろ。」
「おどれほんまに一回頭しばいたろか⁉︎。」
「まあまあ落ち着いて龍驤。 それで親方、今彼に会う事は出来そう?。」
自分の1番気にしている事を弄られ今にも親方に噛みつきそうな龍驤を宥めつつ伊勢は本題を切り出した。
親方の元へ彼女達が来た理由はこうして駄弁るためでも自分達の艤装を預けに来たわけでもない。
今この神社にいるハルカの事を教えてもらうため。
「彼があの黒い海から来た、と言った事は聞いた。 見た目も確かに深海棲艦のそれ。 だから彼もその類と言われれば話は分かる。」
「鎮守府の他の子達はそれで納得してくれました。でも、」
「私、武蔵、伊勢、秋月、龍驤、ここにはいないけど加賀や大和も。 私達は15年前のあの事件の当事者デス。 だからどうしても彼の事で引っかかることがありマース。」
親方は深く考え込んだ。
彼と初めて会った時から抱いていた心の底ある一つの疑念を改めて考え直す。
そもそも彼女達がここに来ることも、ここへ来る理由も親方は分かっていた。
それはハルカと言う少年が、
「・・・・・そうだよな。お前達もそう思うよな。」
親方はそう言うと、振り返り神社の奥へと続く道を歩き出した。
「着いて来い。 あの子は本殿でまだ眠ったままだ。」
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「お疲れ様です、龍驤さん。」
「お疲れ様!。」
「お疲れさん。 2人とも元気そうでなによりや。 てかここ暫く鎮守府に顔出してへんやろ?。 空母寮の皆んなが心配しとるで。」
「今は彼の件で忙しいですから。 寮の皆さんには代わりに元気にしていると伝えてもらえませんか?。」
「任せとき。 それに時間があるならいつでも帰ってきたらええわ。 正直本来ここの仕事なんか親方達だけで足りるし別に巫女なんか要らんやろ。」
「まあそう言われたら確かにそうだけど・・・、」
龍驤の言うとおり、
翔鶴と瑞鶴は基本的に神社の掃除や艤装の受け渡しの手伝いをする程度の事しかしておらず巫女らしい事は何もしていない。
艤装を扱ったり演習をする事も無いので本音を言えば、2人は毎日が退屈だった。
「確かに巫女ってのはあくまで神社だからそれっぽい名称で呼んでるだけ、本来はこの場所の防衛と艦娘と妖精との繋がりを維持するためだ。」
「繋がり?。」
「明石1人で艤装を改修するより持ち主と一緒に整備した方が当然より良い結果が得られる、あれと似てるな。それと重要なのが妖精と言う存在と艦娘との関係だ。」
妖精は艦娘が建造、もしくは出現した時に現れる。
彼等の目的は主に艦娘のサポート。
稀に自分達の居る鎮守府の提督を気に入りその者の手助けや要望などを報酬を貰う代わりに聞き入れたりする事もあったりと色々な活動をしている。
「艦娘は深海棲艦が居るから存在し、妖精は艦娘が居るから存在できる。 ここに艦娘が居なくなれば俺達は消え、妖精の総本山のここが終われば全国の妖精も消えて無くなる。 だからここには艦娘が居なきゃならんのだ。」
「そうだったんですか・・・。 艦校でもそんな話は教わってませんが?。」
「当たり前だ。 そもそもこんな場所が深海棲艦に知られれば真っ先に総攻撃を喰らうのは目に見えている。」
「その通り、だからこの神社がある森は普通の人間や深海棲艦が見つけられないよう俺の力で守ってある。 例外はあるがまず艦娘にしか見つけられないし入れもしないから安心しな。 さあ着いたぞ。」
話しているうちに金剛達は本殿に到着した。
現在の本殿は神様を祀っておらず、この場所に滞在する艦娘や客人の為の宿泊エリアに改装されていた。
本殿にある扉の一つを親方が開けると、そこには畳の床が広がった部屋がありその隅の方で丸まって眠る1人の少年が居た。
その少年は、呼吸は浅くまるで冬眠をしているかの様な心拍で眠り皆が部屋に入って来てもピクリとも動かなかった。
「この間気を失ってここに運ばれてから変わらずこの状態だ。 ハルカの艤装はここに来た時勝手に外れた、今は夕張が見てる。」
「あの日から飲まず食わず?。 いくら体が特殊だったとしても流石にまずいんじゃないデスカ?。」
「ああ、だが飯を置いてもこっちから食べさせようとしても何も受け付けなかった。 翔鶴と瑞鶴があれこれ試したが効果は無し。」
「それは人の飯か? うちら艦娘の飯を出したらどうや?。」
「それもやったけど結果は変わらなかったんですよ。」
「今日も作っては見たんですが起きてくれるかしら。」
「皆んなには悪いがいくら俺でもこればっかりは分からん。こいつの体の仕組みを知ってる奴が現れてくれたら助かるんだがな〜。」
試しに親方がハルカの頬を軽く突いても叩いてもやはり彼は無反応。
「思いっきり叩けば流石に起きるんじゃ無いですか?。」
「あかんて。 これでも病人みたいなもんやぞ?。」
「そうだな。 ここは一つ私が。」
「おいぃ、伊勢やめえ!。 話聞いとったか!?。 刀を戻せ斬るちゃう叩くやあぁぁあ!!」
「stop伊勢!、ってこの力半分本気ネ!。」
(先を越されてしまったな。)
武蔵は静かに振り上げようとしていた拳を何事もなかったかの様に元の位置へ戻した。
この流れに自分も乗れば確実に親方の鉄拳が飛んでくると薄々想像できたから。
「ハハッ、君たち艦娘は本当に仲が良いね。」
その言葉が聞こえた瞬間、
武蔵は声のする方へ勢いよく振り返った。
武蔵の聞いた声は、ここにいる艦娘のものではなかった。
それから何処を見渡しても建物の外にも廊下にも誰もいない。
(気のせいか?・・・しかし今のは間違いなく人の声だった。)
武蔵は自分の心の中で問答をしつつ部屋の中で眠るハルカヘ向き直った。
「!?、貴様は!。」
するとそこには目を疑う光景があった。
「この間からハルカの気配が消えたと思ったらこんな所で寝てたんだ。 私が今日ここに寄り道しなかったら危なかったかもね。」
親方のすぐ隣、
そこには荷物を幾つか抱えた重巡棲姫が立っていたのだ。
武蔵の驚きの声と同時に、他の全員も重巡の存在に気づいた。
「皆さんお疲れ〜。 ごめんね、うちのハルカがお世話になってるみたいで。」
7人の艦娘が一斉に重巡棲姫に艤装を向ける。
皆が事の重大さに気づいている。
この神社に深海棲艦が侵入してしまった。
それもただの深海棲艦ではない、
歴戦の猛者、女王級であるあの重巡棲姫だ。
「何をしに来た‼︎。 ここを潰しにでも来たか‼︎。」
「ハハッ、そんな事するわけ無いじゃん。 私がその気なら全員今頃死んでるし、この場所一帯何も残ってないよ。」
荷物を置いた重巡は手をぶらぶらさせながら伊勢の問いに答えた。
重巡の言う通り、その行動と気迫からは戦う意志など誰も何も感じ取れなかった。
「全員艤装を収めろ。 こいつは確かに戦う気なんてない。 それにここでやり合えば俺達だけじゃなく人類の未来が終わっちまう。」
7人が臨戦体制に入っているのに対して、親方は変わらずいたって普通にハルカの頭の横で座っていた。
「流石親方。 相変わらず話が早くて助かる。」
「うるせえ。 それよりもお前さっきの言葉、もしかしてハルカを治しに来たのか?。」
「そうだよ。 私も一応この子の保護者の1人みたいなものだからね。 何度もこの状態になるのを見てきたの。」
そう言って重巡はハルカのすぐ隣で座り込み、彼の首に手を当てた。
「私達の力の源は、怒りや憎悪と言った怨念。 それを体内で作り出したり周りから取り込んだりして生きている。 でもハルカは元々ただの人間だから体内でその怨念の力を作って巡らせる事が出来ないの。」
「・・・!、まじか!。」
親方が驚くのも無理はない。
重巡がハルカの首に触れてから数秒後。
ハルカの脈と呼吸が急速に早くなり体もみるみるうちに人肌の温度まで回復したのだ。
「人だけど人じゃない。 今のハルカはそんな曖昧な存在なの。 住んでた場所の影響もあって怨念の力に頼ってばかりだから使いすぎたりすると今回みたいに寝たきりになっちゃうのよ。」
「・・・・・リンか。 久しぶり。」
「久しぶりハルカ、自分が今どう言う状況か理解できる?。」
「・・・・・また俺寝てたのか。」
「その通り。 私も含めてあんたの友達も皆心配してたのよ?。」
ハルカは何の問題もなく起き上がった。
驚く事に、その体は眠っていた時が嘘のように健康的な心肺機能と肌の色に戻っていた。
しかし一点だけ、
変わったものがあるとすれば。
「・・・体がまた重くなった気がするな。」
「みたいね。 私の力を吸う量が前よりも増えてたから少しその腕が持って行ったのかもね。」
そんな会話をしながら、ハルカは布団から立ち上がり目の前の庭先に生える一本の木の前へと立った。
「ふん!」
無造作に振り抜いたハルカの左腕は容易くその木を端折り、爪が当たった他の木々はまるで何か鋭利な刃物で斬られたかのような傷跡を残した。
「うん、やっぱり前よりも調子が良いや。」
「おい。」
「ん?」
「人の庭で何してくれてんだテメェ‼︎。」
「!?」
親方の声のする方へ振り向いたハルカだったが、
直後、脳天に親方の渾身の拳骨が炸裂してしまった。
「いっっったいんだよそれ!!、なんであんたの拳だけはそんなに痛いんだよ!?。 てか俺一応病み上がりだろうが!!。」
「うるせえ‼︎。起きて早々他人の庭をこんなにしやがってアホかテメェ!!。」
彼の言う通り心配して色々な手を考えて助けようとした人物に、
まるで準備運動のように一瞬で庭をここまで荒らされてしまってはたとえ病み上がりだろうが例外なく怒られて当然。
その場にいた一同も心の中で、
(そりゃそうだ。)っと思わず考えてしまうほどに。
「調子も良さそうだね。 それじゃあ私は帰るよ、他にもやらなきゃいけない仕事があるんで。」
「うん、本当に助かった。お土産もありがとう。」
そうして重巡棲姫は手を振りながら森の中へと消えていった。
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「色々と。迷惑かけちゃった。みたいだね。」
「本当にな、最悪はあのまま目を覚まさず死んじまうのかと思ったぞ。」
「大丈夫。俺ってこう見えて。意外と。しぶといから。」
「まあだろうな、そんな事よりも行儀悪いから物を食べながら喋るな。 後で話せ。」
「おう!。」
先程まで眠ったままだったとは思えない程の食事スピード、そしてその量に周囲の何人かは少し引いていた。
(こいつどんだけ食うきや?。 てかこの量赤城達と張るんやないか?。)
(艦娘用の料理も食べれるのか。すごいな。)
(元気になって良かったデスネ。)
(美味しそうです・・・。)
(腹が減って来たな。)
(武蔵さん、絶対お腹すいたーとか思ってるんだろうな・・・。)
「ごちそうさま!。 翔鶴さんありがとう、もの凄く美味しかったよ。」
「お口にあって良かった。 食べたいものがあればいつでも言って下さいね。」
そう言った翔鶴は食べ終わった大量の食器を大勢の妖精たちと共に運んで行った。
「ところでハルカ。 起きて早々悪いんだがこいつと軽く手合わせしてやってくれ。」
「うん?」
ハルカは親方の指差す方に顔を向けた。
するとそこには、いつの間にか
「私は、横須賀鎮守府第一艦隊所属、大和型戦艦二番艦武蔵だ。 少しだけ食後の運動はどうだろうか?」
「・・・良いよ。 その前にトイレってどこかな?」