いつの間にか深海育ちになってました   作:Gonpati

3 / 14
3話、親方

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

俺はちゃんと眠った事があまりない。

 

下手に熟睡すれば命が危ない毎日だったから。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

そんな日々でも、ごく偶に安心して眠れる日があった。

 

その日は決まっていつも同じ夢を見る。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

暗闇の中に立つ2人の少女、どちらとも顔にモヤが掛かって誰かは分からない。

 

彼女達は何も話さない、ただずっと此方の方を見ているだけだ。

 

 

 

「お前達は誰なんだ⁉︎。 何でいつも俺の夢に出てくる⁉︎。」

 

 

今まではどんなに叫んでも、言葉を投げ掛けても何の反応もなかった。

だが今回は違った、

 

 

2人が俺に向かって指を刺したのだ。

 

そして同時に、俺は背後から強烈な殺気を感じた。

 

「!?、誰だ‼︎」

 

振り返った瞬間、突然腹部に激痛。

 

恐る恐る下を向くと、背後に立っていた者の腕が俺の腹を貫いていた。

 

「ッお前!、レ級‼︎」

 

「クヒヒヒヒ!、オマエハナニモノナンダ?。 ニンゲンカ?、ソレトモオレタチトオナジオンネンカ?。」

 

 

俺は夢の中だと言うのに鮮明な激痛を感じ、だんだんと意識が薄れだした。

 

「モウオマエハモドレナイ。 セイゼイクルシメ!。 クヒヒヒヒヒヒヒヒ!!。」

 

意識が途切れるその最後まで、レ級の笑い声が俺の頭の中を響き続けた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「・・・・・今回のは胸糞悪い夢だったな。」

 

体がダルいし頭も痛い。 あんな強烈で最悪な夢を見たのは生まれて初めてだ。

 

「あれっ、そういえばここ何処だ?」

 

起き上がり周りを見渡すと、どうやら俺は森の中の少し開けた場所で暫く寝ていたようだ。

 

そして太陽が差し込む方向、そこには数十段の石で出来た階段があった。

 

 

「んん?、あれここ何処かで見覚えが有るような無いような?」

 

 

この光景を俺は一度見た事がある気がする。

それにこの空間はなんだか不思議だ。

 

普通ならこんな場面、辺りを警戒する筈だが、むしろここは何処か安心するとても良い心地がする場所だ。

 

 

「あーー!!!、やっと起きた‼︎。 全然目を覚さないから今回は、遂に親方さんやっちゃったかと思ったじゃない!。」

 

 

突然石段の上の方から緑髪の少女が現れ、何やら不機嫌そうに俺の所まで近寄って来た。

 

「あんたいきなり現れるなり敵意剥き出しで何なの⁉︎。 お陰で翔鶴姉も気絶しちゃったし、私達に喧嘩でも売りに来たの⁉︎。」

 

「いや先に仕掛けて来たのはそっちだろ!。 訳の分からない森をぐるぐる歩かされてキレたいのは俺の方だよ!。」

 

「はぁ!?、第一何であんたここまでたどり着けたのよ!。 艦娘とか一部の人じゃないと森にすら入らない筈なんだけど⁉︎。」

 

「知らねえよ!!。 妖精って奴らの後を追ったらここに来たんだよ!。 てか初対面の相手にいちいち怒鳴りやがって煩えし!。 お前みたいなガキじゃ話にならんわ!。」

 

 

「!!!!、あぁもうあっっったま来た!!!。 私に喧嘩売った事後悔さしてやる!!。」

 

若干目に涙を浮かべながら、その少女は何処からか弓を出し俺に向かって矢をつがえた。

 

(こいつ普通の人間じゃ無いのか⁉︎。)

 

弓を出した途端、少女の雰囲気がガラリと変わり、まるで《あいつら》や姐さん達に似た様な不思議な感覚を感じた。

俺は慌てて自分の武装を展開しようとした、その時だった。

 

 

「まったてめえ等良い加減にしやがれ!!!。」

 

俺と少女は、頭上から現れた何者かによっていきなり後頭部を思いっきりしばかれたのだ。

 

 

「さっきからこの神聖な場所で騒ぎ散らかしやがって煩えんだよお前等!。」

 

顔を上げるとそこには先程気を失う直後に見た、妖精を少し巨大化させた様な2頭身の化け物が腕を組み仁王立ちしていた。

 

「瑞鶴!、お前はここの巫女になんだろが。 なら来客にはそれ相応の対応をするのが義務だろ。 それなのにいきなり喧嘩腰で向かって行ってどうするアホか!。」

 

 

「だっだって親方さん!、こいつが先に仕掛けて、痛い‼︎。」

「煩え黙って反省しろ!」

 

瑞鶴と言う少女が、親方と呼ぶ妖精に反論しようとした途端、再び彼女は頭を思い切りしばかれた。

 

流石の俺もそれは理不尽過ぎるだろと心の中で突っ込んだ。

今にも泣き出しそうな少女があまりにも可哀想だ。

 

 

「悪いなお前さん、恥ずかしい所を見られちまった。お前さんがここに入れなかったのは俺が止めてた所為なんだ。 何せ得体の知れない雰囲気だったんでな、警戒してたんだよ。」

 

「いやいや、こっちこそすいません。 確かに一方的にこの森に入って来たのは俺の方だし。 所で貴方は何者なんです?、見た目は妖精って奴等に似てますけどあまりにもサイズが・・・」

 

 

「おうそうだった!、自己紹介がまだだったな。 俺はこの神社に住んでる者だ。 皆んなからは親方って呼ばれてる。 お前さんの言う通り俺は妖精でその親玉みたいなもんさ。 そんでこいつが瑞鶴って言って、最近ここの巫女見習いになった新米だ。」

 

 

「なっなるほど、俺はハルカって呼ばれてます。 よろしく。」

 

「おう!、よろしくな!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

お互いの自己紹介が終わり、俺はこの神社の本殿がある場所まで2人に案内された。

 

途中港町で見た妖精達と同じ奴等が、俺に向かって武器を構えているのが見えたがそこまで敵意が感じられなかったのであまり気にしない事にした。

 

 

「悪いな、俺が大丈夫だって言ったんだが一部の部下達がハルカの事をまだ警戒しててな。 気にせずスルーしてくれ。」

 

「全然問題無いですよ。」

 

(とは言いつつ、さっきからする別の鋭い視線が気になる。 こいつは妖精じゃ無いな・・・)

 

俺の背後から感じる突き刺さる様な視線。 どうやらこの建物には別の何者かが居るみたいだ。

 

 

「さあ着いたぞ、ここが本殿だ。」

 

親方が扉を勢いよく開けるとそこには、本殿とは名ばかりの大砲や機銃と言った武器だらけ。 

この場所はまるで兵器の生産整備工場だ。

 

 

「ここでは艦娘が使う艤装や新しい兵装、鎮守府で手に負えない武器の修理を行なってる。 だからここは妖精だらけなんだよ。 人間じゃ艦娘や妖精が扱う兵器は扱えない。 しかし艦娘や一般的な妖精にも扱える限界がある。  だから俺達がここでそれを一手に引き受けてるだ。」

 

 

凄過ぎる。

何せ凄まじい数の妖精が無駄のない動きで膨大な作業をこなしていたからだ。

俺の住んでた場所にもここまでしっかりした施設は一切無かった。

 

しかし突然パッと現れた俺がこんな明らかに大事な事を目撃して良いのだろうか?

 

 

「凄いですね!。 でもこれ、俺みたいな部外者が見ちゃっても良いの?。」

 

「ああ問題ねえよ。 それにお前さんにはちょっと聞きたい事、調べたい事が沢山あるしな。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

再び俺は親方達に別の部屋に案内された。

 

「率直に聞くが、お前さんは何者で一体何処から来たんだ?。 形りは深海棲艦だが中身はそうじゃねえ。 人や艦娘の気配がしっかりと有る。」

 

これは困った質問だ。

何処から来たのかは答えられるが、あまり自分の事を俺自身が全く理解していないから説明のしようがない。

 

 

「黒い海って場所から来た。 そこの色んな島を点々としながら今まで生きて来たよ。 自分が何者なのかは俺も分からない。 それを知るため、また人とは何なのか理解する為にここに来たから。」

 

 

そう言うと、親方は難しい顔をした。

暫く小声で、染まったや元からとブツブツ考え事を始めた様なので俺はそれが終わるまで待つ事にした。

 

 

 

 

 

「うーーん、取り敢えずハルカは俺達をどう認識してる?。 それによって俺達は、お前さんに色々と力になりたいと思ってるんだ。」

 

 

「認識か、敵だとは思ってないよ。 優しく接してくれる奴は良い奴だって考えだからね。 逆に敵対的な奴が居たらとことん戦るよ。」

 

 

そりゃそうだ、俺だってわざわざ良い奴に仕掛ける様なバカじゃない。

そんな思考は《あいつら》ぐらいしかしないだろう。

 

 

「そうか!、安心した!。 なら俺達はお前さんに全力で力になろう。 早速作業に取り掛かるとするか!。  ハルカよ、お前さんが持ってる装備を全部出してくれるか?。 最初に見た時から俺はそれが気になって仕方なかったんだよ。」

 

 

「ああ任せた!。 いや俺も最近艤装の調子が悪くて困ってたんだよな〜。 あっでも取り外せない物も有るけど大丈夫か?」

 

 

「平気だ!。俺達はそこ等の妖精とは違うからな。 どんな装備でも何でもこいだ!。  おいお前等出番だぞ‼︎。」

 

親方がそう言うと、この部屋の至る所から一般的な大きさの妖精がわらわらと俺の周りに集まって来た。

 

 

「コイツガレイノショウネンデスカ。」

「ホウホウコイツハタシカニオモシロソウナギソウダ。」

「シカシコノギソウドコカデミオボエガ。」

「ハヤクバラソウソウシヨウ。」

 

「おっおう、任せたぞ君達。」

 

若干物騒な言葉が聞こえたが聞かなかった事にしよう。

俺はいつも身に付けている艤装とは、また違った艤装と一部の装備を妖精達に預ける事にした。

 

 

「よし、それじゃあ俺は少しばかりお前さんの体を診よう。 自分でも分からない何者なのか分かるかもしれん。」

 

 

 

こうして親方&妖精達による俺への全力メンテナンスが始まった。

だが俺が妖精に渡した一部の装備によってこの後大問題が発生するとは誰も想像していなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。