少女は自分の事を矢矧と名乗った。
あの2門の砲は間違いない、艦娘だ。
俺は艦娘自体直接見た事は何度かあるが、それはニュースで報道される有名な人達だけだ。
艦娘が現れて20年と聞くが、まだ細かな情報は海軍が公開していないのでどれだけの数がいるのかさえ俺達一般市民には分からない。
一先ず彼女の介入のおかげで俺は防戦一方な状況から抜け出す事ができ助けられた。
「貴方はトリガー使いね?。 ここまでコイツらの足止めありがとう。 この先は私に任せてちょうだい。」
「いやぁ、そう言われてもな。 悪いけど君のその格好を見る限り俺としてはとても戦える姿には見えないんだが。」
確かに矢矧は腰からアームの様な物で支えられた2連装砲を1基身に付けていてその威力は先程見た通り強力だ。
しかし武装は見るからにそれのみで、戦闘に参加すると言うのに服装は上下黒のビキニ姿。
なので俺としては彼女に奴等を任せるのは気が引けてしまう。
「大丈夫。 確かに私は非番だったからこれだけの装備しか無いけど、コイツらのを倒すだけなら問題ないわ。」
そう言いながら矢矧は再び砲撃。
敵も応戦するため各自が発砲を開始した。
「分かった!。 俺は奴等の隙を突く、お互い無理せず戦おう!。 もうすぐで俺より強い奴らが駆けつける。 可能なら殲滅、無理ならそれまで時間稼ぎだ!。」
俺もグラスホッパーで攻撃を交わしながら射程ギリギリの所で旋空を浴びせ続ける。
例え効かなくても、少しでも敵の注意を俺に向け矢矧の負担を減らす為に。
「しっかし硬いなお前ら!。 隼人は1発で切り裂いてたのによ!。」
俺が深海棲艦と会敵したのは今回で3度目、内1度目は隼人が、2度目は龍二が奴等を倒している。
(あの2人の攻撃はやけに威力が高いからか?。 いざ自分がやると、こんな硬い装甲を軽々殴り割り斬り伏せる事が本当に信じられないな。)
俺のラービットを両断できる旋空を受けて傷一つ付かない敵の装甲、攻撃を加える毎に俺は複雑な気持ちになるが今は耐えよう。
この間、矢矧が早くも2体を撃破し残りは駆逐艦2隻と重巡リ級のみ。
そしてもう一体駆逐艦が矢矧の砲弾で倒れたその時だった。
なんと重巡リ級が仲間である駆逐艦を食いだしたのだ。
リ級の両手は割れ、そこから大きな口が現れ瞬く間に駆逐艦は食い尽くされてしまった。
俺と矢矧はあまりの事にただそれを見ている事しか出来なかった。
だが直ぐにそれは愚策だと痛感してしまう。
駆逐艦を食べ終えたリ級はゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらと黄色いオーラを放ち始め両目が青い炎の様に輝き始めたのだ。
「何だよこいつ。 さっきより数段ヤバいぞ。」
「flagshipクラスよ、まさか共食いする事でも成り得るのね。 確かにアレはさっきまでのリ級とは訳が違う。 貴方はもう引いた方が良さそうね、この先はトリガー使いには厳しいわ。」
彼女の言う通り、アレは流石に無理だ。
勝てるビジョンが思い浮かばない。
恐らく攻撃を避けるのも難しいだろう。
ここは矢矧の指示に従って引くとしよう。
「悪い、後は頼む。」
俺はそう彼女に告げ戦場を後にした。
より強力な者を呼ぶ為に。
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「ええ、任せて。」
矢矧はflagshipクラスになったリ級を前に、気を再び引き締めた。
通常のこの海域にいるリ級なら今の装備だけでも勝てるまだ弱い分類の敵。
しかしflagshipとなると話が変わる。
このクラスになると流石の矢矧でも一基の砲だけでは分が悪い。
(残弾も残り少ない。 阿賀野姉達が来るまで持つかしら。)
矢矧は深海棲艦の出現を確認してすぐさま近くの横須賀鎮守府に救援要請を出していた。
到着まで後5分程度。
それまで矢矧1人で耐えなければならない。
(まずはどれだけ動けるのか確認ね。)
矢矧はフラついているリ級の頭部目掛けて15.2Cm砲を射撃。
しかしリ級は避けようともせず砲弾はその頭部に直撃した。
(⁉︎、何で避けようとしないの?。 まさか急激に進化したから思う様に体を動かせない?。)
矢矧自身もこれには驚いた、
ある程度避けられる事を想定して撃った主砲。
進化後の身のこなしを見るための攻撃がまさかのクリティカルヒット。
普通ならこの地点で戦いは終わる、
だがこのリ級は普通ではなかった。
黒煙が晴れ、砲弾を受けた頭部装甲は少し損傷した程度でリ級自体にさほどダメージを与えられていなかったのだ。
(効いてない⁉︎、まさかコイツは唯のflagshipじゃなくて改!?。)
矢矧が驚愕しているのも束の間、
リ級は黒煙が晴れた途端矢矧に向かって勢いよく飛び出した。
咄嗟に主砲の速射で応戦するが、リ級はそれをものともせず砲弾を弾き進む。
(やば!。)
一瞬で矢矧の懐まで来たリ級は、
彼女の腹部に手を当て、発砲。
そしてこの日最大級の爆音と砲煙が海岸に轟いた。
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