姐さんとのいざこざはなんとか終わりを迎え、俺はようやく人間とのまともな友好的関係を築く事ができた。
別れ際に艦娘の皆んなから嫌な視線を感じたが初対面であれだけやらかしたのだからしょうがない。
結局俺は親方が居る神社に暫くお世話になる事になった。
後々、奏さんの横須賀鎮守府と言う場所が俺の住処を用意してくれそうで本当にありがたい事だ。
「それで?。 体の具合はどうなんだ?。」
「もう平気だよ。 なんならアイツとまた戦り合えっ」
「だからそれがダメなんだよ‼︎。 お前また無茶苦茶な戦い方して艤装壊すだろが‼︎。」
「いちいちしばくんじゃねえよ!、痛いんだよそれ‼︎。 会ってからずっと叩いてばっかじゃん!。」
本当にこの親方は乱暴だ!。
あんな小さな体なのに、事あるごとに飛び上がり鈍器で俺の頭をしばいてくる。
まだあって数時間しか経っていないというのにこの躊躇の無さ、恐ろしい。
「分かったなら少しは考えて戦え、ほらお前の艤装だ。 一部まだ整備が終わってないから取り付けてはいないが、取り敢えず装甲と主砲の整備は完了だ。」
「おうありがとう。 ・・・凄いな、さっきよりも動きやすいや!。」
艤装を装備してみると、何と重さを殆ど感じないのだ。
流石に勢いよく体を回すと遠心力が働き少々ふらつくが、それでも艤装を展開したままでも今まで以上の動きが可能になった。
「そっちは同じ型を何度か触ってるから整備は簡単だ。 だが問題なのはお前さんの体の方だ。」
「ああ、 そういう事ね。」
親方の考えを察した俺は、艤装を仕舞い体の方の武装を展開した。
武装と言っても、左腕の主砲や魚雷、首元や脇腹や足の装甲。
他に五感が普通の時より鋭くなったり、海の中をそれなりの速さで潜れる様になるぐらいだ。
「こいつは・・・酷いな。 混ざってはいるが完全じゃ無いのがまだ救いか。」
混ざってる?、そう言えば最初に会った時にもそんな事を言っていたな?。
「お前は元は人間だ、それはお前自身が分かってるはず。 だが原因が何なのかまだ断言出来ないが、俺の考えじゃあ黒い海って所に住んでいる時間が長すぎた為に深海棲艦の力が体を侵食したんだ。 艦娘の力は持って生まれたのかそれに同調して現れたんだろう。 或いは外部から・・・。」
「・・・・・妖精さん、もしかして俺って普通じゃないの?」
「「「「ギャクニフツウダトオモッタノカ?」」」」
先程の艦娘達と同じような視線を妖精達に向けられてしまった。
他人の視線で心が痛くなる事など初めての経験だ。
「まあ確かあそこで俺以外の人間なんて居なかったからな。 俺にとってこの姿が普通だったから何も気にしなかったよ。」
俺は黒い海にある幾つかの島を点々として生活してきた。
そこでは皆んなが言う深海棲艦と呼ばれる者達しか居らず、島を出た遠い海の向こうに人や動物、そして艦娘と呼ばれる者達が居るのだと聞かされてはいた。
「お前の力を10で分けた場合、深海の力が4、艦娘の力が4、人間の魂が2、って所になる。 艦娘の力のお陰でお前は堕ちずに済んでるんだ。」
「それって堕ちたらどうなるの?。 なんか強くなったりする⁉︎。」
「いや、理性を失いただ殺戮するだけの怪物に成り下がるだけだ。」
期待していた言葉とは全く違った回答に俺は少なからずガッカリした。
俺も姐さんや3柱達の様な強者になれると思ったが怪物になるのはまっぴらだ。
「まてよ、混ざってるって事はその混ざりを取り払う事も出来るって事だよな?。 そうすれば俺は、」
「ああ、多少の問題は抱えるがちゃんと人間になれるし、これはお勧めしないが艦娘にもなれる。 まあ今更だが男のお前が娘ってのはだいぶ変な話だがな!。」
急展開、思っても見なかった朗報だ!。
どうやら俺も普通の人間になれるらしい。
親方が言うんだ疑うはずもない。
これで長年の夢にまた一歩近づく事ができた!。
「本当⁉︎。 なら早速それをしてくれよ!。 俺は早くまともな人間になりたいんだ‼︎。たのmッ‼︎。」
俺は興奮のあまり勢いよく親方に詰め寄ってしまった。
当然だがその後親方に顔面を蹴り飛ばされ俺はきつく叱られる事になる。
これ以降、俺は人間になる前に常識と礼節をしっかり学ぼうと心に決めた。
しかし何で俺は親方の叩いたり蹴ったりする攻撃がもの凄く痛く感じるんだろう?。
普段の戦闘中に負うダメージは殆ど痛みなんか感じないのに・・・
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「瑞鶴先輩!。 具合が悪いと聞いて飛んできましたよ!。 そんな暗い瑞鶴先輩なんてらしくないですよ!。」
部屋の外から葛城の元気な声が聞こえる。
確かに自分で言うのもなんだけど、同じ空母組と比べれば私は比較的明るい性格。
どんな事があっても前を向いて立ち向かい続けて来た。
それなのにあの女王の前に立った時は恐怖で体が動かなくなってしまった。
あんなのが他にもこの広い海に居ると考えてしまうと、海に出るのでさえ怖くてしょうがないの。
「ごめん葛城。 私まだ出られそうにない。 もう少ししたらまた鎮守府に戻るから、それまで皆のことよろしくね。」
「はっはい!、わかりました!。 それでは葛城はこれにて!。 戻ってきたらまた発艦の特訓しましょう!。」
ドタドタと廊下を駆ける音が遠くなっていく。
葛城が行ってしまった寂しさと、あの時の恐怖の所為で体が震えてしまう。
「・・・・戻れるかな。」
翔鶴姉は、初めは怖がってたけど直ぐに立ち直って既にいつも通りの雰囲気に戻っていた。
「ハルカ君に比べたら」、って言っていたけど私にはよく分からなかった。
あの子とは会って直ぐ言い争っちゃったけど、深海棲艦の割にそんな恐怖は感じなかった。
そう言えばあの子は何処か、あの人に似ている気がする。
前の提督さんに。