野球漫画から選ぶ超日本代表   作:NEW WINDのN

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結成!超日本代表

「さあ、間もなく東京オリンピックの野球日本代表サムライジャパンのメンバーが発表されます」

「楽しみですね」

 興奮気味のアナウンサーとやや冷静な解説者の声が聴こえてくる。

 

「違うな。……日本代表じゃない。彼らは特別な存在だ。超日本代表だよ」

 私は手元にある代表選手のリストに目をやる。そこに書かれているのは、野球漫画の選手達……。そう私が本来いた世界であれば実在しない選手ばかりである。

 だが、ここは"野球漫画の登場人物が実在する世界"というある意味異世界だ。もっともそれを知るのは、おそらく私しかいないのだが。

 日本の誇る野球漫画の選手達を集めた超日本代表。私はこれから監督とともにそのメンバーを発表する。はっきり言って金メダルは楽にとれるだろうと私は思っている。他の国にも野球漫画の選手はいるのかもしれないが、野球大国そして漫画大国である日本の野球漫画の選手層の厚さは群を抜いているのだから。

 

「では、岩田鉄五郎監督、風間新強化委員。よろしくお願いいたします」

 司会の声が聞こえ、我々の出番がきた。

「にょほほっ、いくとするか」

「はい。よろしくお願いいたします」

 超日本代表をまとめる監督は、現在75歳にして投手兼任監督の岩田鉄五郎監督【野球狂の詩他】にお願いしている。

 

 意外とプロの監督を選ぶのは難しい。高校野球漫画の監督の方が存在感がある気がするくらいだ。

 高校野球漫画の主な監督として思いつくのが、監督が主人公の鳩ヶ谷 圭輔【ラストイニング】、黒木竜次【クロカン】、川藤幸一【ROOKIES】。さらには女性監督の菅原鈴緒【最強! 都立あおい坂高校野球部】百枝まりあ【おおきく振りかぶって】。

 あとは存在感のある監督として徳川家康【ドカベン】、ロジャー井慈田【おれはキャプテン】などの名が浮かぶ。

 プロだと印象的なのは熱血漢の三原監督【ペナントレース やまだたいちの奇蹟】、高校でもプロでも監督となる土井垣将【ドカベン】と犬飼小次郎【ドカベン】、スカウトからシーズン途中に配置がえされる小暮監督【名門! 第三野球部 飛翔編】。

 さすがにプロのそれも日本代表チームを高校野球の監督に任せることは無理がある。スター揃いの代表だからこそ、経験値が高くキャラの立つ岩田監督が相応しいと判断した次第だ。

 性格のいい山田太郎のような選手ばかりならよいが、岩鬼のような個性の塊をコントロールできる監督はそうはいないだろう。

 

 

 

 

「ふーむ。選手としても狙っていたんだがなぁ……」

 監督をオファーした際にこぼした言葉。これは多分本気だったと思う。だが、流石にそれは……面白そうだけどナシだよな。確かに一ファンとしては見てみたいが、これは練習試合やオープン戦ではないのだから。歴史に残る快挙にはなるかもしれないが。

 

「それではワシが率いるオリンピック日本代表……いや、超日本代表を発表しようかの。そう、今回の日本代表はただの日本代表にあらず。日本代表を超えた存在……すなわち超日本代表じゃよ。それだけのメンバーになったと思うぞ」

 超日本代表という言葉が今世界へと発信された。岩田監督の表情からは自信が溢れている。

「まあ、この超日本代表にも残念な点はあるのだが……」

「ざ、残念な点ですか?」

 超日本代表と言う言葉、岩田監督の自信に呑まれていた司会者だが、ここは出番とばかりに食いつく。

「うーむ。ワシが投げる場面が残念ながらないな。それだけじゃよ」

 岩田監督の発言に笑い声があがる。

「な、なるほどそれは残念ですね」

「ま、今から発表するメンバーを聞けばわかる。まさに超日本代表だからな。さあ、風間君頼むよ」

 岩田監督はドッカと椅子に座り込む。

 

「代表選考委員の風間です。よろしくお願い致します。それでは超日本代表のメンバーを発表いたします。まず、捕手……と」

「まった、待った風間君。先にワシに一人だけ発表させてくれ」

 私は無言で頷き同意を示す。

 

「すまんのう。では、予定を変更してワシから一人だけ先に発表させて貰おう。一人目は超日本代表を代表するスーパースターじゃ」

 今、この放送を見ているプロ野球ファン、記者立ち上がり、そして選手達がきっと、誰の名前を呼ばれるかを考えているだろう。

 

「いの一番に呼ぶのは……東京スーパースターズ所属……」

 岩田監督は言葉を切り、間をとった。

 

 東京スーパースターズは、【ドカベン】のスーパースターズ編から登場する架空のプロ野球チームだ。もちろん、この世界では実在している。海外FA権を得たドカベンこと山田太郎達山田世代を引き止めるために誕生したチームの一つである。山田太郎達明訓高校出身メンバーが核になっており、選手兼任監督として、先程名前を出した明訓高校出身の土井垣将が率いている。

 

 

 ◇◇◇

 

「ふーむ。一人目はスーパースターズからか」

「まあ、妥当ですよね。まず間違いなく山田世代から選ばれるでしょうよ。やっぱり山田太郎さんかな?」

 東京ミラクルキャプテンズの食堂にはチームのキャブテンである谷口タカオ【キャプテン、プレイボール】、二塁手の丸井【キャプテン、プレイボール】、投手兼任内野手のイガラシ【キャプテン、プレイボール】ら主力選手達が集まり中継を見守っている。誰が選ばれるかというのはやはり興味があるのだろう。

 

「下手すると全員山田世代かもしれないよなー。俺達とは出来が違うし」

 丸井は下を向く。

「ははっ……まあ、名前をあげたら軽く埋まるよな。山田さん、岩鬼さん、殿馬さん、微笑さん、犬飼武蔵さん、不知火さんに里中さん。さらには坂田さんに、義経さん。影丸さんや中さん、犬神さんに雲竜さん。それと賀間さんだろ? 木下さんもいるし、正確には山田世代じゃないが、土井垣さんに犬飼小次郎さんや土門さん。犬飼さんの弟で知三郎とか。中西球道さん【球道くん】や真田一球さん【一球さん】もいるよな」

 捕手の倉橋【プレイボール】が指折り数える。ポジションの特性上、名前とデータは頭に入っているのだろう。今彼が上げた名前は紛れもなく日本代表クラスの力を持つ選手ばかりだ。

 

「いや、そんなはずはないさ。他の世代からも選ばれるだろう。才能の持ち主は山田世代だけじゃないからな。うちのチームからも選ばれると俺は思っている」

「そっか。じゃあ俺も選ばれたら頑張ろっと」

 おにぎり頭の小柄な男……丸井はそう力強く明言したのだが……。

「いや、セカンは殿馬さん【ドカベン】がいるから……」

「Kジローさん【おはようKジロー】とか。あとは若手だと小湊兄弟【ダイヤのA】」

「あ……う……どうせ僕が一番下手っぴですよ……」

 丸井はガックリと肩を落とし、再び頭を垂れた。

 

 

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