「続いて左投手を発表いたします。まずは東京ミラクルキャプテンズ所属、桑本聡【名門!第三野球部】背番号30」
桑本聡。ミラクルキャプテンズの前身千葉マリンズ時代からの左腕エース。160キロを超えるストレートに190センチ以上の高身長から見下ろされるように投げ下ろされる縦変化の通称"三階カーブ"を武器に、一年目から最多勝をとっている。球が速いだけでなく、制球力も合わせ持つ。特にプロ二年目からは、一年でプロを去ることになった盟友檜あすなろの魂を受け継いだように、制球力を上げ抜群のコントロールをみせる。現在30歳でまだまだバリバリ。毎年進化し続けている。
「……桑本さんか。当然だよな」
「まあ、先に蝦名が呼ばれることは流石にないか」
カズマサとデレックは蝦名を見る。蝦名は桑本と同タイプのストレート&カーブの左腕であり、将来はともかく、現在は桑本には及ばない。もちろん蝦名も素晴らしい投手なのだが……。
「わ〜ってるよ。現時点では桑本さんに勝てないのは」
蝦名を取ったスカウトも、蝦名をずっと育ててきたデレックの父ロジャーも、同タイプの桑本の存在を入団時の利点とした。つまり身近で学べというわけだ。
「口が悪い記者からはリトル桑本ってよばれてるもんなぁ……」
「うぐ。気にしてるのに。まあ、昔小型蛯名って呼ばれてた奴の気持ちがわかるようになったけどさぁ。……俺はリトル桑本ではなく、蝦名富一という一人のピッチャーだからな」
ちなみに余談ではあるが、小型蝦名と呼ばれていたのは拝という選手で、今の蝦名と同じニュアンスの言葉を残している。
発表は続く。
「ザ・マガジンオールスターズ 沢村栄純【ダイヤのA】背番号20」
高卒四年目のヤングサウスポー。西東京の強豪青道高校出身。先に選手された結城哲也の二年後輩にあたる。一年目からベンチ入りするも、基本は控え投手。徐々に頭角を現し、二年途中からエース格に。
ボールの出処がわかりにくい変則フォームから繰り出す、ムービングボールを武器とする次世代エース候補の一人。
現在はツーシーム、ワンシーム、ゼロシームなど多彩なムービングボールに、打者の手前で消えるカットボールなどを操る。
「桑本は当然先発。沢村は、"必殺"の中継ぎになる」
短いコメントに想いが込められている。桑本への信頼。そして沢村の変則フォームからの投球は、初見ではまずタイミングが合わないことから、絶対に抑えたい場面での起用となる。
「東京ミラクルキャプテンズ所属、蝦名富一。背番47」
桑本に続きミラクルキャプテンズの左腕ナンバー2の名が呼ばれた。
「呼ばれた!」
「蝦名、おめでとう」
「やるなぁ……」
ミラクルキャプテンズからは四人目となる代表入りである。
「な、呼ばれただろ?冷静にみて蝦名が選ばれないわけはないんだ。今や高校時代よりも球は速いし。制球力も雲泥の差だからな」
「だな。やっぱ嬉しいぜ」
一番感激しているのは本人ではなく、中学から同じチームのデレックだった。
「蝦名には投手としてだけでなく、二刀流の活躍を期待している。外野起用もありえるから、そのつもりでいて欲しい」
ミラクルキャプテンズでは外野兼任。出場試合は限られるが、昨シーズンは三割12本塁打という記録を残している。
「野手が右ばかりだからな。左の代打蝦名を考えてるのかもしれない」
「……蝦名が代打に出るような選手っていなそうですけどね」
「たしかに。俺んとこくらいか……」
谷口は苦笑いするが、蝦名は困惑した顔だった。
「キャプテンに代打蝦名はないでしょう。キャプテンだって他が凄くて目立ってないですけど、毎年二割八分から三割打って、ホームランも入団以来20本以上なんですよ。それにめちゃくちゃ勝負強いじゃないですか。俺たちはキャプテンに繋げはなんとかなると思ってるんですからね」
丸井に谷口擁護させたらずっと喋り続けかねない。
「東京ミラクルキャプテンズ所属、凡田夏之介【グラゼニ】背番号72」
いいタイミングで、左のサイドスロー中継ぎメインの凡田夏之介が呼ばれる。背番号はナツノスケからとって72(ナツ)なんだろう。
「おお。凡田さんか。スペシャリストを選んできたな」
「コーチみたいな番号ですよね」
たしかに……と笑いが起きる。さすがに四人も選ばれるとリラックスムードになるものだ。
「凡田が呼ばれたってことは、残る三人のうち二人はたぶんリリーバーだな」
「ですね」
谷口とイガラシは二人は予想できていた。というより、大抵の野球ファンならこの二人の名をあげると思う。
「サンデースピリッツ所属、茂野吾郎【MAJOR】背番号56」
今シーズンは家庭の事情とやらでたまたま日本で投げているが、去年まではバリバリアメリカメジャーリーグでクローザーとして活躍してた茂野吾郎の名前が呼ばれた。160キロオーバーのジャイロボールに、ジャイロフォーク。球種は少ないが、どちらも素晴らしい球だ。
「ザ・マガジンオールスターズ所属、水原勇気【野球狂の詩】背番号0」
左のアンダースロー投手……というより初の女子プロ野球選手として有名だ。ドリームボールという決め球を持つ。
「凡田、茂野、勇気の三人は当然リリーフじゃな。クローザーは茂野吾郎。試合内容によって右の里中に任せることも考えておる。ま、誰を出しても抑えてくれるじゃろう」
ここまで発表された投手は11人。先発は、不知火、桑本、眉村、国見、蝦名。中継は沢村、凡田に水原。セットアッパーに里中、クローザーに茂野。渡久地東亜は、どこでも投げられる切り札的な存在だろう。右の中継ぎがいないが、二刀流の谷口、やまだたいちの起用が考えられる。