「フハハハハハ! 愚か者共よ! 死ねっ!!! そこのお前も愚か者だ! 俺から見て愚か者なのはみんな死ね!!!!」
「まってください。愚か者なのは貴方の方では?」
「うるさい死ね!」
何者かが街で暴れている。人々は悲鳴をあげて逃げ回り、助けを求めている。
「逃げてないで立ち向かえよな。数は正義なのに実行しないで逃げ惑うとは」と荒くれ者。
「媚を売ることもせずに戦力差も測らずに言葉の暴力だけぶつけて死ぬなんて、これだからステータスの低い人間は駄目なんですよ」と全肯定奴隷少女ちゃん。
人類は愚か……。
「そんなことを言っている場合か! 助けに行くぞ!」
フードの人が助けに入った!
「ん……? はっ!? 貴様、あの時の!」
「お前は……俺を転生させた神!?」
街を襲っていた存在は神様だった!
「貴様の、貴様のせいで俺は神の地位を剥奪され地獄に落とされた! 全ては、貴様のせいだあああああ!!!!!!!」
「いや……手違いで俺を殺した不祥事を転生で誤魔化そうとしたからじゃないか?」
「……うるせえ死ね!」
レスバに弱く、激昂した神様とフードの人が構え、向かい合う。
全肯定奴隷少女ちゃんは二人を眺めてオロオロしている。
「これは……! 全肯定奴隷少女ちゃんがどっちに付くか迷っているだと!? それほどまでに奴等の実力は拮抗しているのかっ」
両者共にステータスを看破された上で、実力が判断出来ないようだ。
「シネエエエエエエ!!!!!!!」
「うおおおおおおお!!!!!!!」
激闘を制したのはフードの人だった。
「俺は……どうしてあんなに会社に尽くしていたのに、たった一度手違いで人間を殺しただけで地獄に落とされたんだ……お前のせいにしなきゃやってられ無かったんだよ」
「フッ俺は関わる者全てを不幸にする存在よ。俺を殺したのがお前の運の尽きさ。とはいえ、今時企業の為に身を尽くすなんてのは間違いだぜ。お前の人生はお前だけのものだ。企業も親も政治も、お前の生き方に口を挟むことはあるが、責任を取ってくれる事はない。間違えたのは、認識だよ」
「フードの人……」
「相手も人間で、今を必死に生きてるんだよ。だから誰かに依存して生きようとするのはやめておけ。一度の失敗で捨てられてしまうように、何処かでやり直しが出来るような安全圏で上手く賢く生きる道を探すんだ。企業一本仕事一筋。大変素晴らしい生き方だって言うだろうが、そいつらは基本口だけでそう言うんだ。ITに知識持ってパソコン一つあれば副業で十数万程度稼げる時代。適当に手を抜いて自分の好きな事に時間と金を使っていく。そういうのが今の生き方なんだよ」
「肉片面で焼いてる世界にパソコンなんてあるわけねえだろ」
フードの人の説教が神様の耳朶を穿つ。
鋭い反論にガクリと項垂れたフードの人は、ゆっくりと立ち上がり、ふらふらと何処かへ歩いていく。
「あいつ、何時もどっか間違えてるんだよなぁ。時代、空気、絶妙にズレてやがる」
「……だからだろうな。アイツだけずっとスーツを着たまま、就活に勤しんでいたよ。それが目に入ってしまい、うっかり引き殺した」
フードの人に駆け寄り、連れ添うように歩くのは、一人の揺るぎない価値観を持つ寄生系ヒロインの姿だった。
これにて完結です!
言い訳とかは活動報告にて記載します。