星降る奇跡と空舞うヒカリ   作:りつくさり

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いつも誤字報告ありがとうございます。
失意の中にいる航平の前にある少女が登場します。
その女の子は物語に大きく影響を及ぼして―



軌跡

 オレは星見プロでの仕事を終えた後、一人で街をさまよっていた。

 傘をすり抜け横から入る雨でスーツもところどころ濡れ始めた。

 そんな中、ただただ何かを求めるよう歩き回る。

「何がしたいんだろな、オレは……」

 あの事故以来、喪失感がオレを支配しようとしていた。

 半身をもぎとられた気分というのはこのことだろうか。

 ここまでの無気力なのは星見プロに入って初めてのことに思える。

「……麻奈の存在が大きかったんだろうな」

 麻奈のマネージャーになったときから何かがオレの中で変わった。

 初めての仕事で右往左往して、喧嘩もしたし、危機一髪な場面は多々あったな。

 だけど今ではいい思い出だ。どんな苦労も最後には麻奈がすべて吹き飛ばした

 そんな彼女と一緒にいて楽しかったんだと思う。

 まあ、本人の目の前ではこんな恥ずかしいことは言えないだろうけど。

「ここは……」

 気が付けば苦い思いをした星見駅前に足を運んでいた。

 星見市も長瀬麻奈という人気アイドルを火付け役に全国的にも知られるようになった。

 それもあって移住してくる人も多いとか。

 両方ともまだまだ駆け出しのころ、ビラ配りなどの宣伝活動などを地道にできることをした。

 今の人気ぶりとは裏腹に、人に振り向いてもらえることの難しさを実感したのがここだ。

「懐かしいな……」

 今でも昨日のことのように思い出せるのはそれほど印象強いことだったんだと思う。

 オレは帰宅ラッシュで人の波がうごめいているのをただ黙って見ていた。

 そのとき、二人の学生が話している声がふと聞こえてきた。

「麻奈が事故にあってからショックすぎて勉強に身が入んねえよ……」

「お前はいつも身が入ってない気がするが」

「駅前で麻奈が歌っていたあの時から応援してるんだぜ。こんなのあんまりだろ」

「まあ、そうだな……俺としても一日でも早く目覚めてほしいと思ってるよ」

 聞こえてきたのは一言二言程度だったが―

「お前は愛されているな……」

 心の隙間を埋めようと何かを導くようにオレの足が動き出した。

 

 私立星見高等学校。

 向かった先はオレと麻奈が通っていた高校だ。

 創立100年にもなる伝統ある学校で、王道なセーラー服がひときわ他校より目立っているのが記憶にある。

 学生の頃はマネージャーとして活動しながら学業も並行してしなきゃ駄目で激務だった。

 麻奈は出席日数が危なくなるし、オレはオレでぎりぎりな毎日なのを覚えている。

ただ、それでもやりがいがあって充実した学校生活だったことは間違いない。

「まさかアイドルのマネージャーになるなんて思いもしなかったな」 

 この頃のオレはアイドルなんて興味もなかったしどれも同じだと思っていた。逆に当時無名の長瀬麻奈の歌声のほうが心に響いていた節もある。

「思えばあのときから惹かれていたのかもな」

 だからオレはマネージャーになることを快く承諾したのかもしれない。

「寒いな……」

 体の寒さだけじゃない冷え込んだものをごまかすためにオレはまた歩き出した。

 

 高台のステージ。 

 特に思い出に残っているのはここだ。

 麻奈がデビューライブをしたステージで、今でもあの熱は心が覚えている。

 星見プロダクションの全員が一丸となってデビューを最高のものにしようと考えていたはずだ。

「そういえばあんなこともあったなぁ……」

 ライブ前に麻奈はステージに出たくないと言い出して、思い出すだけで苦い笑いがこみあげてくる。

 ただライブは圧巻だった。ここに至るまでに支えてきた人たちの思いを一つにして解き放ったとでもいうべきなのだろうか。あそこにいた人たちは全員心が震えたと思う。

「生涯忘れることはないんだろうな」

 あの衝撃は二度と体験できないだろう。

「最後にあそこに行くか……」

 もう少しだけ過去に溺れたかった。

 

 オレは海岸通りを一歩一歩足に着いて進んでいた。辺りはすでに真っ暗で海沿いの街灯が誰もいない道を照らし続けていた。

 この景色を見て思い出すのが星見まつりだ。

 夏に流星群を見るお祭りで、前回は麻奈がホストを務めて過去最大の来場者を記録したのは記憶に新しい。 

 それに、あの日の流星群はある意味特別だ。

「あれ? 雨やんでいたのか……」

 いつの間にか雨音一つなくなっていた。

「天気予報も当てに―いや、前にもこんなことが……」

 浜辺に移動すると心地よい浜風に吹かれた。オレは乾ききっていない地面に寝そべると空を見上げた。

「あのときもそうだっけな」

 麻奈が主催の星見祭りは直前になって大雨が降り、流星群をみるどことかライブも中止になりかけた。

 そこで三枝さんに断りもいれずにオレと麻奈は無理やりライブを開催させた。もちろん三枝さんには後で怒られけど……。

 そして奇跡が起きた。

 ライブ中に雨が止み、流星群が空を降り渡った。

「あんなことが現実に起きるなんて、本当に漫画の世界みたいだ……」

 思わず口元が緩んだ。

 まあその結果、ファンの間で話題となり、星降る奇跡と呼ばれるようになったんだけど。

 でもあれは決して偶然なんかじゃなく―

「……」

 溢れるほどの思い出がフラッシュバックするように次々と思い出す。

 女々しいことは分かっている。前を向かなきゃダメことは分かっている。三枝さんや遙子さんにも申し訳ないことも分かっている。

 麻奈もいなくなったわけじゃない。

 じゃあこの虚しさは何なんだろうか。

「もうこのまま寝てしまおうかな……」

 家に帰る気力もすでに無い。たとえ帰ったとしてもたいして睡眠は取れないだろう。

 それだったらこの記憶に心地よい場所に一人でいたかった。

 瞼を閉じて眠ろうとしたとき、暖かな風が頬を撫でる。

 目を開けると雲が晴れ、月の光と共に流星が空を駆けていくのが見えた。

「星を見ているんですか?」

「……え?」

 その言葉と共にぴょこっと少女の顔がオレの視界に飛び込む。

 思わず目を点にして固まってしまう。

 時刻はかなり遅い。何より真冬で夜の海岸だ。オレしかいないと思っていた。

 そこにいたのは小柄な女の子だった。

 だけどこの場に似合わずに病衣姿で、明らかに浮いていた。

 でも、それだけじゃない。この目を引くこの存在感。

 この雰囲気どこかで―

「き、君は?」

 少女の満開の笑顔が夜に咲いた。その笑みはなぜかオレの心を落ち着かせた。

「私、川咲さくらっていいます! 星きれいですよね」

 太陽の光が夜空に舞った……。

 

 

 

 

 

 




原作と大きく違い、さくらはここで牧野(くん)と出会います。
……どうなるんでしょうね?

この二次小説とは違い、新たにIDOLYPRIDEの短編小説を描こうと思っています。
題名は「LizNoirに魅入られて」です。
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