ゲーマーと虹色の少女たち   作:一般紳士君

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初投稿なので初投稿です。


第1話

 皆さんはこんな妄想をしたことがないだろうか。

 路地裏で不良達に襲われている女の子を発見し、颯爽と駆けつけて不良達を倒す自分。それがきっかけでその女の子に一目惚れされ、なんやかんやあってその子と結ばれる話。

 男なら誰でも一度は妄想したことがあるだろう。少なくとも俺はしたことがある。

 

 所詮これはただの妄想でしかなくて、こんな状況に出会うことなどまずありえない。アニメや漫画ないだけの出来事だ。そう考えていた時期が俺にもありました……。

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 ある日の学校帰りのこと。

 今日は楽しみにしていたゲームの発売日だ。長寿作品である『オラゴンクエスト』待望の十二作目。SNSでも話題となり、日本だけでなく世界中の人々からも期待されている。

 超がつくほどのゲーマーである俺としては何としても発売当日に購入し、ネタバレが俺の耳に入る前にクリアしたいものだ。

 ルンルン気分でゲームショップに向かう俺だが、道中衝撃的な光景を目にしてしまった。

 

 路地裏で女の子が二人組のがたいのいい男に襲われていた。

 彼女の服は刃物か何かで切り裂かれていて、目からは涙がとめどなく溢れ、その表情は絶望の色に染まっている。

 

 

 助けなければ。

 

 

 普通の人ならそう考えるのだろう。けれど俺は違った。

 

 二人組になんて敵いっこない。

 知らない人だし。

 俺以外の誰かが助けに行くだろう。

 

 俺は逃げる言い訳ばかり考えていた。

 自分でも最低だと思う。

 けれど、勇気が出ないのだから仕方がない。スポーツも何もやってないただのゲーマーが倒せる相手じゃない。

 

 そうやって何度も何度も言い訳しながらその場から立ち去ろうとした。

 

 

 

 

 彼女と目が合ってしまった。

 現れた希望に縋るかのような目だ。

 彼女の口が僅かに動く。

 

 た す け て

 

 

 

 

 俺は迷わず駆け出した。

 

 何が勇気が出ないだ。何が倒せない相手だ。

 俺がビビッてどうする。一番怖い思いをしているのは彼女なのに。

 俺が逃げ出してどうする。一番逃げたいと思っているのは彼女なのに。

 

 真っ向勝負で勝てないのなら不意打ちで倒せばいい。不意打ちの一撃で倒せば戦う必要はない。そして一撃で倒すなら狙うは急所。

 

「せいっ!」

 

 こちらに背を向けている男一人の股間を後ろから蹴り上げる。彼女に夢中になっている男達は当然俺には気付かない。

 

「う゛っ!」

 

 俺の貧弱な蹴りでも股間に当てれば強烈な一撃になる。これで一人片づけた。

 

「なっ! てめぇ!」

 

 一人は今のでダウンさせられた。だが、流石にもう一人の男に気付かれた。

 想定内だ、問題ない。相手が冷静になる前に、相手が反撃してくる前に一撃で倒す。

 

「お前も食らえ!」

 

 もう一人の男にも正面から股間に蹴りをお見舞いする。当然もう一人の男も当然ダウンする。

 

「卑怯とか言うなよ。お前らが悪いんだからな」

 

 男達は片づけた。男達を拘束する前に自分の制服の上着とハンカチを投げ渡す。

 

「遅くなってごめんなさい」

 

 男達のベルトを抜き取って、それで手をしっかりと縛る。

 あっ、警察も呼ばなきゃだな。

 

「……あっ、もしもし警察ですか? 女の子を襲っている男がいたのでこうそくしたんですけど。……はい、場所は○○町の〇〇のコンビニの横の路地裏です。……はい、よろしくお願いします」

 

 警察への連絡も終わって、彼女が渡した上着を着たのを横目で確認してから彼女の方を見る。

 

 綺麗なピンク色の髪に、右側にお団子のようなものがついた髪型。そして、涙でくしゃくしゃになっていても一目で美少女だとわかる顔立ち。

 

「大丈夫でしたか? 怪我とかしてないですか?」

「はい……大丈夫……です」

「そうですか、よかったです。もう少ししたら警察が来てくれると思うので待っててください」

 

 ひとまず彼女が無事でよかった。

 とりあえず警察が来るまで待って、後のことは全部警察に任せよう。

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 ここは虹ヶ咲学園。俺、村上(むらかみ)友紀(ゆうき)はこの学校の情報処理学科の2年生だ。

 お台場にある学校で、その敷地は迷子になりそうなくらい広大だ。俺も入学したての頃はよく迷子になったものだ。

 俺が通う情報処理学科をはじめとして、ライフデザイン学科、国際交流学科など非常に専攻が多い。学びの場としては最高の環境だ。

 また、学校は部活動にも力を入れており、毎年いくつかの学校が全国大会に出場している。同好会も割と自由に作ることができ、その数は100を超えるとか。俺はどこにも所属していないが、流しそうめん同好会なる謎の同好会も存在するらしい。最近はスクールアイドル同好会というところが頑張って活動しているらしい。

 世間ではスクールアイドルが非常に流行っている。うちのように同好会として活動していたり、正式な部として活動していたり、部活動関係なしに活動していたり活動形態はいろいろあるようだが、たいていの学校にはスクールアイドルがいるらしい。

 

 

 

 まぁ、俺には関係ないが。スクールアイドル好きを否定するわけではないが、スクールアイドルを追いかけてる暇があったらゲームをしている方が俺は好きだ。

 家ではもちろんのこと、登下校中はスマホゲームに勤しんでいる。さすがに授業中にやることはないが。教科書を読むだけですべて理解できるような天才じゃないので授業は聞かないとマズイのですよ。

 

 今日の登校はモンスターをストライクするゲームだ。ちょうどこの時間にゲリラクエストが出現しているのだ。前のゲリラクエストは警察の事情聴取でできなかったため、この時間にたくさん周回するぞ。むん!

 

「おはようございまーす!」

 

 今日は校門がにぎやかだ。どうやら生徒会が挨拶運動をしているようだ。ご苦労様です。

 

「待ってください、村上さん」

 

 あ~あ、かわいそうな村上さん。生徒会に名指しで呼び止められるなんて。今日は厄日だね。

 

「村上友紀さん、あなたのことですよ」

 

 なんだ、俺のことかよ。今日は厄日だな。

 

 仕方ないので一度立ち止まって、俺を呼び止めた彼女の方を見る。

 

「おはようございます、村上友紀さん」

 

 三つ編みに眼鏡をかけた彼女は中川菜々。この学校の生徒会長だ。全生徒の名前を憶えているという噂がある。俺は事あるごとに彼女に突っかかられるのだが今日は何の用だろうか。

 

「おはよう、生徒会長。今日はいったい何の用で?」

「何の用? 考えればすぐにわかることだと思いますが?」

 

 すぐにわかることと言われてもなぁ……。

 

「想像もつかない、といった顔ですね。……いいでしょう、教えてあげます。あなたが右手に持っているもの、それは何ですか?」

「スマホ」

「そう、スマホです。あなたは今歩きながらスマホを操作していましたね? それも前を一切見ずに」

「何か問題でも?」

 

「問題大アリです! 歩きスマホはしてはいけませんと言ってるじゃないですか! 何度も何度もな~んども! 私が何回あなたに注意したと思ってるんですか! 先週も廊下で注意したばかりですよね!」

 

 俺に対して怒りをあらわにする生徒会長。そんな大声は出さなくてもいいと思うんだ。びっくりしちゃったじゃん。周りの生徒も何事かとこっち見てるし。

 

 にしても、先週そんなこと注意されたっけなぁ? 先週はあのことの印象が強すぎて他のことは何にも覚えてないんだよな。

 

「先週はいろいろあって忘れちゃった。めんごめんご」

「わ、すれ……た……?」

 

 俺の返事を聞いた生徒会長が呆然と立ちすくむ。でも忘れちゃったものは仕方ないと俺は思うんだ。人間誰だって何かを忘れることはあるだろ。それを乗り越えて人は大人になっていくんだ。偉い人がそんな感じのことを言ってた気がする。

 

「フフフ……わかりました。あなたの言いたいことはよ~~~くわかりました。私の言葉なんかよりゲームの方があなたはよっぽど大事なんですね」

 

 先週はゲームが原因で忘れたわけではないんだけど。生徒会長の言葉よりゲームの方が大事なのは事実だけど。

 

「わかってもらえたようで嬉しいよ。それじゃ、俺は教室行くんで。挨拶運動頑張ってね」

 

 生徒会長の前を通り過ぎようとするが、突然体が後ろに引っ張られる。どうやら生徒会長が俺のシャツの襟を掴んだようだ。

 

「誰が行ってもいいと言ったんですか?」

 

 やっべ、生徒会長激おこだよ。後ろに阿修羅が見えるもん。

 

「私は今まで大きな間違いを犯していました。あなたに数分のお説教を何回積み重ねたところで何の意味もなかったんです。あなたには一度にまとめてお説教をしたほうが効果があるんでしょう。……今日の放課後は空いてますね? 授業終了後すぐに生徒会室に来てください。そこでたっぷりとお説教してあげましょう。1時間でも2時間でも何時間でも。私の言葉があなたに届くまで。忘れた、などと二度と吐けなくなるまで」

「いや、あの、今日はあれがあれであれなんで……」

「何も用事が無い様でよかったです。では、また放課後にお会いしましょう。楽しみに待っていますので。もう行ってもいいですよ」

「はい……」

 

 どうしよう。あれがあれじゃ何も通じなかったよ。用事がないのは事実だけどさ。

 素直に行ったら絶対にボロ雑巾にされるよなぁ。……逃げちゃうか!




続いたり続かなかったりするかもしれない。
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