ゲーマーと虹色の少女たち   作:一般紳士君

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気持ちはいつでも初投稿です。


あと2、3話でようやくアニメ6話に突入できます。本来のプロットではもう6話に入っているはずでした。書きたいことができたらすぐプロットに加えるのは悪い癖だと思います。


第9話

 せつ菜による強制ランニングで失われた体力をある程度回復させた後、せつ菜達3人に練習場所を案内してもらっていた。

 

「まずはここだよ」

 

 最初に連れてきてもらったのは中庭。そこでは桜坂、かすみん、エマ先輩があーあー言っていた。

 

「これは発声練習か?」

「うん、そうだよ」

「桜坂主体でやってるのはなんか理由でもあるのか?」

「しずくちゃんは演劇部だからね」

「ああ、なるほど」

 

 桜坂は演劇で声の出し方を鍛えてるのか。演劇見たことないから発声練習が演劇で重要なのか知らないけど、多分そうなんだろう。知らんけど。

 

「あっ、友紀君達だ」

 

 エマ先輩がこちらに気付いて手を振ってくれたのでこちらも振り返す。

 

「友紀せんぱーいっ!」

 

 かすみんも手を振ってくれたのでそっちにも振り返す。

 

「かすみんはいつも楽しそうだな。練習してる時も楽しそうだったし」

「かすみさんはスクールアイドルが大好きですからね」

「そうか、大好きか。そりゃ素敵なことだな」

 

 大好きなことを好きなだけできる環境にいるというのはどれだけ素晴らしいことだろうか。俺も毎日20時間くらいゲームができる環境にいたいぜ。

 

「友紀先輩もやってみますか?」

「練習の邪魔になるので遠慮しときまーす」

「いいですね!」

「いいですね、じゃねぇ。おい、手掴むのやめろや」

「だってこうでもしないと逃げちゃうじゃないですか」

「逃げるとかじゃなくて、桜坂達の練習の邪魔になるから遠慮しただけだろ。歩夢達からも言ってやってくれよ」

「うーん……しずくちゃんから誘ったんだし、大丈夫じゃないかな」

「うんうん」

 

 俺に味方はいないのか……。誰か1人くらい俺に優しくしてくれる人がいてもいいと思います。

 

「せつ菜ちゃんと友紀君、とっても仲良しさんなんだね」

「いえ、違います」

「違うの?」

「いえ、仲良しです」

「どっちなの?」

 

 仲良くないです。せつ菜に騙されないでエマ先輩。

 

「仲良しですよね、友紀さん?」

「違う」

「ね?」

「断じて違う」

 

 無理やりランニングに連れてく奴を俺は仲良しだとは思わない。あいつ、ずっと俺の手を掴んだままランニングしやがったからな。せつ菜についていくのマジでしんどかったぞ。あと普通に危ないし。

 

「痛っ!」

「仲良しですよね?」

 

 こいつ、パワー全開で手を握ってきやがった。しかも満面の笑みで。滅茶苦茶痛いんですけど。この子力強くない? 最初せつ菜の笑顔は素敵だと思ったけど、同じ笑みでも今はものすごく邪悪に感じる。

 

「ね?」

「ち、違う……」

「もう! なんで仲良しだって認めてくれないんですか! さっきだって一緒に即興劇やったじゃないですか!」

「いや、仲良しだって認めたらなんか負けた気がして……」

「誰と何の勝負をしてるんですか!」

 

 俺も知らねぇ。自分とじゃないかな(適当)

 

「もう! 先輩達が仲良いのは十分わかりましたから!」

「うんうん。せつ菜ちゃんも友紀君もすごく楽しそうだったよ」

「いや、別に俺は楽しくなんてないんですけど」

 

 エマ先輩の優しい視線が辛い。

 

「先輩自身は気付いてなかったと思いますけど、せつ菜先輩と話してる時の友紀先輩、少しだけ口角が上がってましたよ」

「なん……だと……」

 

 そんなことあるはずがない。くっそー、せつ菜の勝ち誇ったような顔が腹立つ。その柔らかそうなほっぺた引っ張るぞ。あと胸を張るな。目のやり場に困るだろ。

 

「口ではどれだけ否定しても、体は正直ですね」

「その言い方やめろ」

 

 なんでそんなエロ同人とかでよくありそうな言い方するんだよ。俺がせつ菜に襲われてるみたいじゃねぇか。実際に襲われたらあのパワーには勝てなさそう。

 

「ねぇ」

「うぉっ! 歩夢か、びっくりした……」

 

 誰かが俺の肩をトントンと叩いたので、誰だろうと思い振り返ったら歩夢の顔がすぐ近くにあってびっくりした。心臓に悪いのでやめていただきたい。ドキドキで心臓が爆発したらどうするんだ。

 

「他の場所も回らないといけないから」

「それもそうだな。じゃあ3人とも練習頑張って。俺らは次の場所行くから」

「違うよ。その前に友紀君の発声練習でしょ?」

「えっ? 本当にやるんですか?」

「うん。友紀君の発声練習見てみたいな」

 

 歩夢だけは俺の味方だと思ったのに……。いや、最初っから敵だったわ。俺に味方はいなかったわ。

 

「友紀先輩に一度発声練習を体験してもらいたかったんですけど……もしかして迷惑だったでしょうか?」

「え……」

 

 そんな卑怯な言い方する? 涙目になるのやめろよ。やめてくれよ。罪悪感感じちゃうじゃん。

 

「あーもう……わかったよ、やるよ」

「ふふっ、ありがとうございます、友紀先輩」

 

 やっぱり噓泣きじゃないか。その演技力に感服するわ。

 

 

 

「それじゃあ私に続いて発生してくださいね」

「ラジャー」

 

 結局皆に見守られながら発声練習をすることのなってしまった。

 

「口を思いっきり開けて、あー」

「あー」

「うーん……」

「ダメでしたか桜坂先生?」

「先生……? そうですね、お腹から声を出してみてください」

「腹から?」

 

 腹から声を出すってどういうことだ? 声は喉からだろ? あなたの声はどこから? 私は喉から。桜坂は腹から? 桜坂の腹には口があるのか? デス(ピー)サロじゃん。

 

「わかりませんか?」

「全くわからん。桜坂がデス○サロってこと以外何もわからない」

「えっ? です……えっ?」

「どうやったらしずくさんがデス○サロという結論に至るんですか……」

「腹から声を出せるなら腹に口がついてるに決まってるだろ? そんなのデス○サロ以外ないじゃん」

「違います。前提から全て違います。真面目にやってください」

 

 真面目にやってるんだけどなぁ……。

 

「本当にわかりませんか?」

「わかりません」

「わかりました。では、お腹から声を出すやり方から教えますね」

 

 そう言うと桜坂は俺の方に歩いてきて……

 

「失礼します」

 

 俺のへその下辺りを手で押さえてきた。

 

「ん!?」

 

 待って、この子いきなり何してるの? ギリギリあれには触れてないけども、桜坂が足を滑らしたりしたらあれに触れちゃうよ? マジでヤバいよ? 俺の愚息がこんにちはしちゃうよ?

 

「大きく息を吸って」

「すぅー」

「息を吐きながら、あー」

「あー」

「息を吐く時はもっとゆっくり。ではもう一回。大きく息を吸って」

「すぅー」

「息を吐きながら」

「あーーー」

「いい感じです。ここもちゃんと固くなってますし」

「どこが!?」

 

 もしかして愚息がこんにちはしちゃってますか? ごめんなさい訴えないでください。俺は悪くないんです。悪いのは愚息なんです。

 

「丹田です」

「丹田?」

「おへその下、今私が触っているところが丹田です。お腹から声が出ている時はここに力が入っている状態です」

「あぁ、よかった……」

「よかった? 何がですか?」

「こっちの話。桜坂は気にしないで。ほんとに何でもないから」

 

 愚息がこんにちはしてなくて本当によかった。桜坂がうっかり足を滑らしたりしちゃってたら確実にこんにちはしてたな。

 

「ちなみに、腹から声出すと何か良いことがあるのか?」

「大きな声が楽に出せますし、喉を傷めなくなります」

「ほーん」

「それ以外にもいっぱい良いことがありますけど、とにかくこれを身につけると声での表現の幅が広がるんですよ」

「なるほどなぁ。演劇でもスクールアイドルでも大事な技術なんだな」

「その通りです。とっても大切な技術なんです。だから一度でいいから友紀先輩にやってみてほしかったんです」

「そうだったのか……。なんか、ごめんな。最初やるのを嫌がったりして」

「気にしてませんよ。先輩はちゃんとやってくれましたし、私は嬉しいですよ」

 

 桜坂がええ子すぎる。死ぬほど可愛い後輩を通り過ぎて、死ぬほど可愛い異性として余裕で見れちゃう。普通に惚れちゃいそう。演技でも桜坂に好きとか言われたら余裕で堕ちるな。で、桜坂に告白して嫌な顔されて、『私はそういう意味で言ったわけじゃなかった』と振られるパターンだ。悲しいなぁ。そんなことされたら心ぶっ壊れて、二度と修復できなさそう。

 

「あと、私のことは桜坂じゃなくてしずくでいいですよ。これからは同好会の仲間なんですから」

「そうか。じゃあ……しずく?」

「はい。何ですか、友紀先輩?」

「いや、呼んでみただけだ」

「ふふっ、そうですか」

「何なんですか、今のやり取り」

「友紀君、しずくちゃんとも仲良いんだね」

「今のは仲が良いとかじゃなくて、付き合いたてのカップルがやる会話ですよ……」

カップル……友紀君と……

 

 しずくとカップルか……もしそうだったら毎日が幸せだろうな。でもある日突然『演技の練習のために付き合っていた』と告げられ、そのまま振られて心がぶっ壊れるんだろうな。そして将来しずくが女優として恋愛ドラマとかに出てるのを見てさらに心が抉れるんだろうな。悲しいなぁ。

 あとさっき歩夢は何をボソッと小声で言ったの? 聞こえなかったからできればもう一回言ってほしいんですけど。あっでも俺の心を抉る内容なら言わなくても大丈夫です。むしろ言わないでくれ。

 

「あっ、私のことも侑でいいよ。私も友紀君って呼ぶから」

「わかった」

「……私のことは呼ばないんだね……」

「呼んだ方がよかった?」

「うん、呼んでほしいな」

「じゃあ、侑」

「なぁに、友紀君?」

「髪に糸くず付いてるよ」

「え、うそぉ!」

 

 

 

 

 

「次はここだね」

「ここは柔軟をやるところか」

 

 天王寺と近江先輩、それから朝香先輩が柔軟をやっていた。朝香先輩は補助的なことをやってたけど。というか、近江先輩体硬すぎない? ほとんど動いてないんだけど。まぁ俺もあんまり人のこと言えないけど。

 

「そうだよ。あと体幹トレーニングとかもここでやるよ」

「へー」

 

 体幹トレーニングかー。やったことないけど、あれしんどそうなイメージがあるんだよな。

 

「あ、友紀さん」

「よっ」

「友紀君だ~」

「どうも」

「エマ達の所にはもう行ったの?」

「ええ。腹から声を出す方法を教えてもらいましたよ。今なら腹話術だってできます」

 

 できないけど。

 

「腹話術できるんですか!?」

「ごめんなさい嘘です。できないです」

「やっぱり嘘なのね」

「そうだろうとは思ってたけどね~」

 

 近江先輩にはバレてたようだ。まぁこの人とはそこそこ付き合い長いからなぁ。

 

「友紀さんも柔軟やってみる?」

「やる」

「わかった。私が補助する」

 

 天王寺に場所を変わってもらい、天王寺に背中を押してもらう。

 

「うぅー」

「友紀君も体硬いんだね」

「待ってグキッってなった今! ストップ! 天王寺ストップ!」

「わかった」

 

 天王寺に手を離してもらって一息つく。体壊れるかと思った。

 

「ふぅ」

「今の璃奈ちゃんと同じくらいだったわね」

「毎日やってたらもっと柔らかくなるんですかね?」

「なるわよ。ちゃんと続けていればね」

「璃奈ちゃんも最初はすっごく硬かったもんね~」

「そうなのか?」

「うん。今よりもできなかった」

「そうか。頑張ってるんだな」

「うん。毎日頑張ってる」

 

 えらいぞ、と頭を撫でてあげたい。絶対に嫌がられるからやらないけど。

 

「それじゃあもう1回やるわよ」

「え」

「璃奈ちゃん」

「うん」

 

 天王寺の返事と同時にまた背中を押される。

 

「待って! 体壊れる! マジで壊れるから!」

「大丈夫、加減はするから」

「ちゃんと加減してくれよ!?」

「任せて」

 

 加減するとは言うものの、天王寺はさらに背中を押した。

 

「えいっ」

「ぬわーーっっ!!」

「「「「ぬわ?」」」」

「友紀さんが燃やされた」

「なんで悲鳴がそれなんですか……」

 

 

 

 

 

「酷い目に遭った……」

 

 柔軟の後、腕立て伏せや体幹トレーニングとかでも朝香先輩にいじめられた。あの先輩怖い。でもその後『思ってたよりも根性あるのね』と朝香先輩が褒めてくれた。嬉しい。怖い先輩とか言ってごめんなさい。

 

「友紀さんはずっと『ぬわーーっっ!!』って叫んでただけじゃないですか。何回燃やされれば気が済むんですか。そもそも友紀さんは燃やされてませんけど」

「だって痛かったんだもん」

「私からは余裕そうに見えましたけど……」

「なんだ? パ○スにまだ余裕があったとで言うつもりか?」

「パ○スさんの話はしてません! 友紀さんの話をしてるんです!」

「なんだぁ……。それならそうと最初っから言えよ」

「普通に考えてそうに決まってるじゃないですか……。誰がパ○スさんについて話すんですか……」

「パ○スを愚弄するのか?」

「してません! このタイミングで話さないという意味です!」

「それならそうと最初っから言えよ」

「もう! ツッコミが追いつきません!!」

 

 よし! せつ菜に勝った!

 まぁ、実際せつ菜の言う通り全く余裕なかったけどね。普通にしんどかったです。明日は全身筋肉痛確定だなこりゃ。

 

「はぁ……疲れました……」

「大丈夫か? ちょっと休む?」

「誰のせいだと思ってるんですかぁ……!」

「あはは……」

 

 さっき説教された仕返しが成功してすごくいい気分だ。

 

「その話は一旦終わりにして、最後はここだよ」

「ここは……何?」

 

 扉に何も書かれてないし、普通にわからん。

 

「ここはレコーディング室だよ」

「レコーディング室……」

 

 高校に普通レコーディング室なんてあるか?

 

「しかもカラオケもあるよ」

「カラオケまであるのかよ」

 

 カラオケのある学校なんて普通ないぞ。マジでこの学校どうなってるんだ。設備充実しすぎだろ。生徒としては助かるけども。

 

「お待たせー」

 

 俺がこの学校の異常さについて考えていると、侑達が先にレコーディング室に入っていくのが見えたので、慌てて俺も中に入る。中では宮下が歌を歌っていた。曲名はわからないけど、どこかで聞いたことがある歌だ。というかマジでカラオケあるんだな……。

 

「あ、ゆうゆ!」

「ごめん、邪魔しちゃったかな?」

「ううん、ちょうど終わったとこだから大丈夫だよ。それよりも来るの遅かったね。何かあった?」

「ちょっとね。友紀君に練習を全部体験してもらってたら遅くなちゃった」

「そうなんだ」

 

 待たせてごめんね。

 

「どうだった? 練習楽しかった?」

「うーん、半々かな」

「半々かぁ」

「発声練習なんかは楽しかったな」

 

 しずくのおさわりタイム(意味深)もあったし。

 

「でもランニングとか柔軟とかはあんまり楽しくなかったな。ランニングは体力使い切ったし、柔軟は痛いし、体幹トレーニングはしんどいし」

「そっか。でもそれは最初だけだよ。ランニングは体力がついてくると風が気持ちよくなるし、柔軟はできるようになってくると楽しくなってくるし、体幹トレーニングも続けられるようになると楽しくなるよ!」

「そういうもんなのか?」

「そうだよ! だってアタシがそうだもん!」

 

 本当にそうなのかなぁ。まぁ人によって感じ方も違うし、宮下は多分何事も楽しめるタイプなんだろう。

 

「毎日続ければ友紀も楽しくなってくるよ」

「毎日か……」

「大丈夫ですよ。ランニングは毎日私が付き合ってあげますから」

「えっ? 俺も毎日走るの?」

「もちろんです。友紀さんにはもっと体力が必要だと思いますから」

「俺同好会の手伝いで来てるはずなんだけど……」

「ええ。ですがお手伝いにも体力は必要だと思いますよ?」

「それはそうだけど……」

「私が一緒に走ってあげますから」

「それが嫌なんだよなぁ」

「な、なんでなんですか!?」

「だってせつ菜と一緒に走ると倍疲れるし」

「そんなの気のせいです! 誰と走っても変わりません!」

「てめぇさっきのランニング思い出せや。ずっと俺の手を掴んだまま走りやがって。そのままお前の速度で走るから死ぬほど疲れるんだよ」

「それは、その……テンションが上がってしまって……」

 

 テンションが上がったからって俺を引きずり回さないでください。

 

「それじゃあ私が一緒に走ってあげるね」

「歩夢か。歩夢なら安心できそうだ」

 

 歩夢ならテンションが上がっても俺を引きずり回したりしないだろ。今日のランニングではせつ菜の暴走を止めてくれなかったけど……まぁ大丈夫だろ。

 

「むぅ……」

「何むくれてるんだよ」

「歩夢さんとは一緒に走るんですね。私とは走ってくれないのに……」

 

 せつ菜が頬をぷっくらと膨らませて怒ってますアピールをしていた。可愛いと思ってしまったのが何故か悔しかったので、指先で膨らんだ頬を押し潰す。口から空気が漏れ出た。おもしろーい。

 

「私で遊ばないでください……」

「機嫌直せよ」

「一緒に走ってくれるなら直してあげます」

「はぁ……わかったよ。走ってやるよ」

「ほんとですかっ!?」

「ただし、俺の手を掴んだまま走らないこと。これが条件。命に関わるからな」

「わかりました!!」

 

 この子もう機嫌直してるよ。鼻歌まで歌ってるし、完全に上機嫌だ。この子チョロすぎない? 本当に同い年か?

 

「あははっ! 2人とも仲良すぎ!」

「はい! とっても仲良しです!」

「だから……はぁ、もう仲良しでもいいよ」

 

 毎回否定するのめんどくさくなってきたし、否定したらしたでせつ菜に手握り潰されるし。

 

「……はぁ」

「ん?」

 

 今視界の端の方で歩夢がため息をつくのがチラッと見えた。

 

「どうかしたか? ため息なんかついて」

「えっ!? な、何でもないよ! 何でもないから……」

「ならいいんだけど……」

 

 悲しそうな表情が気になるけど、本人が何でもないっていうならそうなんだろう。

 

「そ、それよりも! 友紀君に私達の歌聞いてほしいな」

「俺も歩夢の歌聞いてみたい」

「うん。何かリクエストとかあるかな?」

 

 リクエストか……。アニソンとかしか知らないからリクエストできる曲がないんだよな。……そうだ。

 

()()とかリクエストしてもえ()()()?」

「「……えっ?」」

 

 うーん……。23点くらいかな。

 

「あはははっ!」

 

 なんか侑が大爆笑してるんですけど。そんな面白いダジャレだったか? 歩夢とせつ菜なんてドン引きしてるのに……。

 

「いいね! 今のダジャレサイコー!」

「えぇ……」

 

 宮下もいいねじゃないんだよ。何も最高ではないんだよなぁ。

 

「その、愛さんはダジャレが大好きでして……」

「なるほどね……」

 

 ダジャレ好きってこの世に実在したんだな。初めて見たわ。

 

「いひひひっ! あーもうダメ! お腹痛い……!」

「で、侑はいつまで笑ってるんだよ」

「侑ちゃん、幼稚園の頃からずっと笑いのレベルが赤ちゃんだから……」

「えぇ……」

 

 赤ちゃんはダジャレでは笑わないと思うんですけど。

 

 

 

 やっと侑の笑いが収まった。侑が落ち着くまで5分かかりました(校長先生風)

 

「その、私演歌は歌えないんだけど……」

「あれが言いたかっただけだから、歩夢の得意な曲でいいよ」

「じゃあ……これにしようかな」

 

 歩夢が選んだ曲が流れる。知らないイントロだ。

 

 

 

「ふぅ……。友紀君、どうだったかな?」

「よかったと思うよ」

「もっと具体的に言ってあげないとダメだよ」

「そうですよ。感想が『よかったと思う』だけなのはあまりにも酷いと思います」

「うーん……」

 

 具体的にって言われても、俺の貧相なボキャブラリーじゃあな……。できる限りのことはやるけども。

 

「そうだな……歌声が透き通っていて、可愛らしい声だった。あと歌ってる時の表情が可愛かった」

「えへへ、ありがとう」

 

 歩夢が喜んでくれたようでよかった。

 

「やればできるじゃん」

「任せとけ」

「じゃあ次はアタシが歌おうかな。曲はこれ!」

 

 次は宮下が歌うみたいだけど、またしても知らない曲だ。俺が世間離れしてるのか?

 

 

 

「どうだった?」

「元気が溢れててよかったと思うよ。歌ってる時の宮下がすごく楽しそうで、こっちも楽しめた」

「そっか、それはよかった! あと、アタシのことは愛でいいよ!」

「了解、じゃあ愛で」

「うん!」

「最後は私が歌いますね。曲はどうしましょう……」

 

 最後はせつ菜みたいだ。何を歌ってくれるのだろうか。

 

「友紀さんも知っていそうなこの曲にしましょう!」

「お、この曲は」

「やっぱり知ってますか。さすが友紀さん」

 

 なんかのアニメのエンディングだった気がするけど、アニメのタイトルも曲名も何も思い出せねぇ……。

 

 

 

「ふぅ」

 

 最後まで聞いたけどやっぱり何も思い出せなかった。何だっけな……。もうここまで出かかってるのに……。

 

「どうでしたか?」

「……ああ。力強い歌声でかっこよかったと思うよ」

「そうですか、ありがとうございます」

 

 思い出すことに必死になってたから適当な感想しか出せなかったけど、今ので満足してくれたんだ……。

 

 

 

 

 

 皆の歌を聞いたり歌わされたりしながら過ごして、そろそろ部活終了時間が近づいてきた。

 

「今日の練習はどうだった? 楽しかった?」

「思ってたよりは楽しかったな」

「そっか、それはよかった。明日も頑張ろうね」

 

 明日、か。明日も走らされるんだよなぁ。絶対筋肉痛なのに。生き残れるのかなぁ……。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。辛そうだったら止めてあげるから」

「辛そうじゃなくても止めてほしいんですけど」

「それは無理かなぁ」

 

 そんなぁ……。

 

「そもそも俺手伝いで呼ばれてるはずなんだけど」

「それはそうなんだけど、正直に言うと今はあんまり手伝ってほしいことないんだよね」

「ないの?」

「うん。ライブを開くってなったらお手伝いが必要になるけど、今はそんな予定ないし」

「ふーん」

「だから、今のうちにしっかりと鍛えておいてね」

「え」

「力仕事とかもやってほしいから」

「頑張ります……」

「うん、頑張ってね」

 

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

 

 初めての練習から数日が経った。

 あれから毎日せつ菜と歩夢に走らされ、柔軟とかでもいじめられて、1年生ズの愛嬌に癒される日々が続いた。なんで1年生ズはあんなに可愛いんだろうな。かすみんなんて愛嬌の塊だし。まぁ、柔軟で俺をいじめてくるのも1年生ズなんだけど。あの子達躊躇なしに背中押してくるからな。

 今日は同好会に入って初めての週末だが、当然今日もいじめられた。練習時間が放課後より長いのでいつもよりも長く。今から一大イベントがあるというのに……。

 

「ここが友紀君の家かー。大きいね。ここで1人暮らししてるんでしょ?」

「そうだよ」

 

 今日は侑が俺んちにゲームをしに来る日だ。自宅に異性の友達を呼ぶのは初めてだ。死ぬほど緊張する……。侑だから別に変なことは起きないだろうけど。

 

「どんなゲームがあるのか楽しみです!」

「友紀君1人暮らししてるの? 寂しくなったりしない?」

 

 何故かせつ菜と歩夢も増えました。なんで??




気が付いたらせつ菜ちゃんにツッコミ役をやらせている自分がいる……。
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