ゲーマーと虹色の少女たち   作:一般紳士君

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感想がもらえて嬉しかったので初投稿です。


第2話

 今日はいい天気だ。気持ち良すぎてうっかり寝ちゃいそうになるな。中庭の芝生に寝転がりながらそんなことを考える。

 

 昼休み。食堂で昼飯を食べた後は普段は教室に戻ってゲームに勤しむのだが、今日はぽかぽか陽気に誘われて中庭まで来てしまった。たまにはこうやって過ごすのも悪くないかもしれない。

 

 そういえば、そろそろあの情報が発表される時間か。大事なことを思い出した俺はスマホで『草原行動』の公式ページを開ける。草原行動は最近俺がプレイしているFPSなのだが、そのゲームで近々行われる大型アップデートの情報が今日の昼に発表なのだ。今日はこれを楽しみにしながら学校に来たのだ。

 アプデ情報のお知らせを見つけた俺は期待で胸を膨らませながらそのページを開ける。

 

 

 

 新キャラ追加に新マップ追加、それに加えて車両に乗ってマップを移動できるようになるのか。なるほどなるほど。大型アプデというだけあってなかなかボリューミーな内容だ。これはアプデの日がますますが楽しみになるな。

 ついでにバグの修正も行われるらしい。このゲーム、リリース当初から地面に向けて銃を撃つとアバターが宙に浮くというバグがあったのだが、とうとうそのバグが修正されるらしい。絵面が面白くて俺は好きだったのだが……そうか、お前消えるのか……。

 

「にゃーん」

「ん? 猫?」

 

 ずっとスマホの画面に集中していて気付かなかったが、いつの間にか足元に白い猫がいた。起き上がって俺にすり寄る猫の背中を優しくなでる。

 野良猫がうっかり迷い込んだのか。それともここに住み着いているのか。

 

「にゃーん」

 

 お腹が空いているのか? あいにく、今は何も持っていないんだ。我慢してくれ。

 

「見つけた、はんぺん」

 

 後ろから声がしたのでそちらに振り返ると女の子がいた。

 ピンク色の髪に頭頂部に目立つアホ毛。この前の女の子に負けず劣らずの美少女だ。身長がかなり小さくてなんだか小動物感があるな。リボンの色的に1年生か。右手にはキャットフード、左手には餌入れを持っている。

 彼女はこちらに向かって歩いてくる。猫も俺から離れて彼女に駆け寄る。

 

「はんぺんってこの猫の名前か?」

「そう。あなたは誰?」

「村上友紀。情報処理学科の2年。お前は?」

「天王寺璃奈。情報処理学科の1年」

「そうか。天王寺ははんぺんの飼い主なのか?」

「飼い主みたいなもの」

 

 天王寺ははんぺんに餌をやりながら答える。飼い主みたいなものってなんやねん。

 あれ? そもそもこの学校って動物飼うのダメじゃなかったっけ?

 

「なぁ、勝手にはんぺんを飼ってて怒られないのか?」

「大丈夫。はんぺんはペットじゃなくて生徒会お散歩役員だから」

「お散歩役員……?」

 

 なんじゃそりゃ。初めてそんな役職聞いたぞ。

 

「はんぺんは虹ヶ咲学園の一員。『飼うのは禁止だけど学校の一員として迎え入れることは校則違反ではない』って生徒会長が」

「へぇ……あの堅物生徒会長が、ねぇ……。」

「堅物……。友紀さんは生徒会長嫌いなの?」

「あんまり好きではないな。すぐ怒ってくるし、今朝も怒られたばっかだし」

「それって友紀さんが悪いんじゃないの?」

「失礼な。俺はただスマホでゲームをしながら登校してただけだ」

「それは友紀さんが悪い」

 

 天王寺に俺が悪いと断言されてしまった。もしかして間違ってるのは世界じゃなくて俺……?

 

「友紀さんはよくゲームするの?」

「四六時中してるよ」

「草原行動も?」

「してるけど、なんで俺がそれをしてるってわかったんだ?」

「そのスマホ、草原行動のページが開いてあったから」

 

 芝生に置いておいたスマホ、そういえば開きっぱだったな。

 

「よくこのページが草原行動のだってわかったな。タイトルもゲーム画像もどこにもないのに」

「私も見たから。草原行動のアップデート情報」

「天王寺もやるのか?」

「うん。私もゲーム好きだから」

「そうか。俺と同じだな。天王寺はもうオラゴンクエストやったか?」

「やった。おもしろかった」

「だよな! 特に―――」

 

 

 

『キーンコーン』

 

「おっと、もうこんな時間か」

 

 予鈴が鳴るまで天王寺と話し込んでしまった。はんぺんもいつの間にかどこかに行ってしまった。

 

「楽しかったよ。誰かとこんなにゲームの話で盛り上がったのは初めてだ」

「私も楽しかった」

「そりゃよかった」

 

 天王寺は楽しそうというが表情は楽しそうに見えない。多分天王寺は感情を顔に出すのが苦手なのだろう。

 

「それじゃあな。お互い授業に遅れないようにな」

「あの!」

「うん? なんだ?」

「また……ううん、やっぱりなんでもない」

 

 なんでもない、か。そんな風には見えないが。言おうとしてたことはなんとなくわかる。俺も同じこと考えてたし。けど、多分天王寺はそれを言う勇気が出ないのだろう。

 

「そうか。……そうだ、またこうやって天王寺と話したいんだけど」

「っ! 私も、また話したい」

「よかった。じゃあ明日の昼休みにまたここで会おうか」

「うん。絶対に来る。約束」

「ああ、約束だ。それじゃあ、また明日な」

「うん。また明日」

 

 今度こそ天王寺と別れる。

 多分さっきのでよかったのだろう。天王寺の声も嬉しそうだったし。相変わらず顔には出ていなかったが。

 

 中学に天王寺と似たやつがいた。感情を出すのが苦手で、言いたいことがあるのにそれを言う勇気が出ない。中学のときの俺はそいつに何もしてやれなかった。関わることを避けていた。結局そいつは中学の3年間ずっと一人だった。

 俺はそのことを今でも後悔している。だから俺は天王寺の力になってあげたい。俺にできることならなんだってしてやる。さすがに天王寺にそれを直接言うのは恥ずかしすぎて言えないけどな。

 

 明日は何の話をしようか。天王寺はどんな話をしてくれるのだろうか。明日が楽しみで仕方がない。

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