アークナイツRTA参考資料「W姉貴のしっとり確率」ついでに「最強の伝説」トロフィーRTAの中途報告   作:W姉貴に負けたい人

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ケモ耳33歳に可能性を見出したので初投稿です


小話:『Wの日』

GとWの間には、奇妙な約束が数多く取り付けられている。ベッドの使う位置だの距離だの、飯を食う順番だの本のしまい方だのなんだの……一般人が聞けば大抵はその不思議さに首を傾げてしまう。

その内の一つに、『Wの日』というものがある。

 

これはWがGを振り回す日であり、傭兵時代の賭けの結果生まれた日だ。そこには色々と複雑なドラマがあったが、ここでは省略しよう。

かつて二人が傭兵となる前の共同生活の決まりごとを源流とするこれは、いつの間にかGの鬼門になってしまっていた。

 

「……来ちまったか……」

 

昼夜逆転のブラッドブルードにしては珍しく、一般的な人間同様昼に起きて夜に寝ることができる……当然その逆も可能だが……Gであるが、この日ばかりは朝寝て夜起きたかった。しかし、悲しいかな。染み付いた習性は中々に治るものでもなく、朝に自然と目覚めてしまった。

 

(ケルシーのところに逃げ込むか)

 

そして尊敬する老猫の師匠に泣き付きに行くことにした。

 

「君に任せる仕事は無い」

「そうか……」

「というか君は非番だろう」

「今日は仕事したいんだ」

「どうしても仕事が欲しければ、人を訪ねるといい」

「まあ、オレに出来ることなどたかが知れている。だが書類仕事でも十分だ」

 

非番だというのにとにかくなにかとつけて逃げたいようにも見えるGの様子から、ケルシーは少し思案して──その理由を思い付いた。たまにWがGを振り回している日がバベルの頃からあったのだ。それが『Wの日』とは知らないが、彼女とて想像はつく。

 

「あの日か」

「……」

 

無言で視線を逸らすGを見てため息を吐く。

そら、こうなのだ。こいつは世捨て人でも仙人でも何でもない。ただのバカなのだ。Wから逃げ回る理由など、ケルシーにだって察しが付いている。

Wとて女性、自らの魅力を磨いたり着飾ったりしたい日とてある。しかしそこの相方はそういうことに興味が無いどころか、ボケた反応しか返せない。つまりそういうことである。

恋愛とかそういう感情をどっかに捨ててしまったこの男、女を褒めることが真剣に苦手であった。

 

「なあ、ケルシー」

「釣った魚には餌をやることだな」

「ありゃ打ち上げられた魚だ」

「大して変わらん。責任は取れ」

「面倒なことになったな……」

 

心底から面倒だと呟くGを見ながら、内心「Wもこんな男の何がいいんだか」と自分のことは棚に上げてボヤくケルシー。

 

「Wから逃げる」

「最強は逃げないのでは?」

「最強は無敵じゃない」

「変わったな」

「受け入れただけだ」

 

結局、ケルシーには助けてもらえず。

Wの移動ルートを理解しているからこそ先回り、背後取りなどを駆使してすれ違いつつ、アーミヤに仕事を要求してみれば。

 

「非番なんですから、休まないと」

「いや、だがな」

「Wさんが不憫ですよ」

「む、ぅ……あの女のようなことを言う……」

 

テレジアみたいなことを言われては弱り果て、苦笑されるのであった。

 

「……オレとWは確かに運命であろうさな。だがアイツは、何故オレに褒められたがる……」

「たまに思いますけど、Gさんって信じられないくらいに変なところで妙なものをわかってないですよね」

「よく言われる」

 

とても苦手だからやりたくない。だから逃げ回る。もっともアーミヤにはWはそれを含めて楽しんでいるということが手に取るようにわかる。だがそれと同時につれない彼に対してやきもきしているのだろうとも。

 

「なあ」

「ダメですよ。Wさんは昔からあなたに真剣に向かい合ってるんですから、ちゃんと応えてあげてください」

「……女の扱いは苦手だ。オマエも、アイツも、ケルシーも、あの女も……」

 

ぶつくさとブー垂れながら去っていくGを見て、流石のアーミヤとて笑いを堪え切れなかった。

 

そして結局、Wの元へと行くしかなくなる。

 

「やあ、運命(W)

「ええ、運命(G)

 

そういう意味で言いたいんじゃないけどこうでも言わないと逃げられなかったどころか、外堀埋められているような状況を、飲み込めなかった。実につまらない意地である。

 

「今日は諦めが早いわね。どうせケルシーとアーミヤに仕事強請りに行ったら蹴られたんでしょ」

「エンカクは」

「お仕事。残念だったわね」

「マドロック」

「しーらない。というか、あんたマドロック苦手じゃなかったっけ?」

「少し前に話してな。相入れぬところはあるが、別にそれだけだ」

 

争いを好まず、過激化するレユニオンから抜けたサルカズ傭兵──マドロックとその一味。リターニアでの地獄から抜け出してロドスに保護された同胞。

サルカズ傭兵だからと言って全員が全員、戦いを生業とすることを是とするわけではない。マドロックはその象徴のような人物だった。巫術にも優れ、まさに正当なるサルカズと言うべき存在。ボジョカスティと対を成すかの如きだったとGは思っている。

 

普通にその辺りに興味があったから久方ぶりに声をかけてみたが、案外話せた。やはりというかなんというか、Gの異質さにはさしものマドロックも顔をしかめたものの、それさえ除けば互いに驚くほどスムーズな会話ができた。ウマは合うが、根本は合わない。なんとも不思議な関係である。

 

「ふぅん。また強敵認定?」

「そこまで堕ちてはいない。嫌がる相手に牙を向けたところでそれは決闘、挑戦ではない。ただの殺し合いだ」

「あっそ」

「絶対信じてないだろオマエ」

 

ニヤニヤとするWにげんなりしつつ、彼女の横に座る。

 

「そういえばあんたのヘッドホン借りてたんだけど、炎国風のラブソングなんて聞くのね」

「音楽の趣味は雑食でな」

「ピアノ曲やらオーケストラが多かったからそっちが趣味だと思ってたわ」

「ロックも聞くぞ」

「それは知ってる」

 

いくつか知らない曲があったのはWの所為かと思いながら、まあ別にいいかと適当に流すG。

 

「あとあの曲何? あの……なんていうか、気持ち悪い曲」

「好きだから入れてるだけだが」

「ちょっと考え直したら?」

「オレの自由だろう」

 

実際音楽の趣味は平凡かつ雑食なGからすれば、Wのこだわりがよくわからないところもある。

 

「それで、今日はどんな風に振り回すんだ。このオレを」

「とは言っても最近はネタ切れよね」

「そりゃ明確に定める前含めて何十年もやってんだ。ネタも無くなるだろ」

 

出会ってから何年などと数える方が無粋な程に長い二人。戯れ合いふざけ合い殴り合い、喰らい合ったのか。数える方が馬鹿らしい。そういうわけで、ネタ切れ感否めない『Wの日』をどうしたものか。二人は揃って頭を悩まし始めた。

 

「……何もすることがないな」

「もうやめる?」

「やめるか。そもそもオマエの接し方が変わった以上、関係性がはっきりする前のことをダラダラと続けても意味が無い」

「そうね。こんな日を作らなくてもあんたを振り回すくらいいつでもできるんだし」

 

G的には物凄く気になることを言いつつ、あっさりとちっぽけな約束の日は消滅した。というか、毎日が約束の日と化した。

そしてWは笑顔で一言。

 

「じゃ、あたしを楽しませなさい。相棒」

「無茶言いやがって。オマエのオモチャでも眺めてりゃいいだろうが、相棒」

「今のドクターは……まあ、そうね。まだ観察期よ。楽しむ楽しまないの話まで行ってない」

「じゃあアーミヤ」

「あの人の遺志を継ぐ人で楽しむなんて無礼でしょ」

「そうだ、オマエは元々常識的で真面目な女だったな」

「まるであんたは非常識でも真面目な男みたいに語るのね」

「事実だ」

「でもあたしの前では、あんたは今でもあの日見た遠い月の光のまま」

「ならば彼女は?」

「あの人は暗い荒野を照らす太陽よ」

 

珍しいものを聞いたとGは驚きながら、今聞いたことは自分の中にしまっておこうと一瞬で決めて、何も言わずに話題を変えることにした。Wの本音を誰にも渡したくなかったから。

 

「──さて……どうしたものか」

「もう何もしなくていいんじゃない」

「オマエの日だぞ」

「あら、気を遣ってくれるの?」

「腹を決めて来たんだ。肩透かしだと気が済まん」

 

変なところで生真面目な相棒の返答を聞いてWは。

 

「そ」

 

小さく呟いてから、彼女は立ち上がった。

 

「じゃあ買い物行きましょ」

「……」

 

鬼門を笑顔で告げられては、無言にならざるを得ない。

 

「返事は?」

「ああ……」

 

さてどんな無茶振りなのか、戦々恐々としながらロドスを後にする。

そうして連れて行かれた場所と言えば。

 

「川とはな」

「釣りするわよ」

「釣り、か」

 

現在ロドスが停泊中の地域から少し離れたところに、大きめの川がある。そこだった、連れて行かれた場所は。

しかし、実は釣りなどほとんどしたことがない二人。カズデルで長く過ごしている中で、食料の調達は色々としたことはあるが、釣りをしたことはなかった。水辺が無いとできないし手間かかるしで、やると言ったら素潜りだった。

 

「できないわけじゃないでしょ」

「オマエがこんな渋いことをするとはな」

 

釣り竿を受け取りながら、意外だと伝えてみれば返ってきたのは膨れっ面。

 

「ラブソング聴くような男に言われたくないわ」

 

心外だと言わんばかりの皮肉。

そう言われては弱ってしまいクツクツと自嘲も兼ねた笑いが出てくる。さっさと準備を終えて近くの岩場に腰掛けて、釣り竿を垂らす。

 

「日が暮れるまでいるのか」

「飽きたら帰るわ」

「さっさと飽きることを願おう」

 

しかし考えて欲しい。

黒と赤の衣服に身を包んだ美少女と並んで、黒と灰の衣服に身を包んだ長身痩躯の男が釣り竿を川に垂らしている姿を。

どう考えても珍百景だ。

 

それからしばらくして、日も暮れる──までもなく。

 

「ねぇ、もう帰らない?」

 

なんとも言えない表情のまま、困った声色でWはボヤくが……

 

「帰らない」

 

一方のGは普段の無表情のまま、しかしムキになったような声色で答えた。

 

約一時間、二人は釣りをしたが──Wのバケツには結構な数の魚がいて、Gのバケツには水しかなかった。この男、成果0である。

結果は目に見えているし、これでは飽きる飽きない以前の話だとして、Wは宥めるように言う。

 

「ムキになっても釣れないものは釣れないわよ。というか、釣れなきゃいけないなんて釣りのルールにあるわけないじゃない」

「一匹も釣れないのがムカつくだけだ」

「そんなこと言って……」

 

本音はどうせ、自分の前なのだから対等であろうとしているだけなのだろうがと目星をつけながらも、流石にあのザマでは無理だろうとWは考える。如何なる理由か、Wの釣り竿にやたらと食い付いてくる魚が多く、Gの釣り竿の近くに魚は寄るものの、すぐにWの方へと向かって行ってしまっているのだ。

 

(……無意識的に殺気出てんじゃないかしら、このアホ)

 

動物は死に機敏という。

死という影をもたらす者たるGが避けられることに何の不思議も無い。不思議があるのは当人だけで、Wからすればまあ当然といったところである。

 

「ねぇ、帰らない? 今日はツイてないだけよ」

「帰らない」

「帰ろ?」

「やだ!」

(めんどくさっ! 何よ普段は可愛くないクセに!)

 

可愛いのは責められている時か、責めている時くらいなのに、今日は変なところで可愛げが出ている。ムキになって力み過ぎて、釣れる魚がいるかどうかはわからないけど釣れるものも釣れなくなっている。

 

「そろそろご飯とかどう?」

「食わぬ。寝れぬ。休めぬ。釣らねば死する。無理矢理でも釣る」

「……ねぇ、あたし帰りたいんだけど」

「帰ればいい」

「あんたと帰りたい」

「ならば釣れるまで待て」

 

いやもうなんだよこれと。

Wはゲンナリしながら、さてこの大馬鹿野郎をどうやって釣りから離そうかと思案する。しかしこうなってしまったGはテコでも動かない。

仕方ないと、Wはため息を吐いてから──最終手段を切り出した。

 

「あのさ、G」

「なんだ、W」

「──センス無いんじゃない?」

「……なるほど。釣りでは魚が取れぬというわけか。まあオマエが言うんだ、確かにそうかもしれないな」

 

センスが無いと告げてみる。これが一番効く。

というのも、できないことをできないままできるまでやることを否として、できないことをできるようにした上でできるようにやることを是とするGに、切り上げるタイミングを与えることはムキになった頭をクールダウンさせるに等しい。

ので、元に戻りやすいというわけだ。もっともWとしてはこういう手はあまり取りたくない。そこまでGをコントロールしたいわけではないのだ。だからこのように、テコでも動かなくなった場合にのみこうしている。

 

クールダウンしたGは、無駄なことをしていたと釣りを切り上げて、荷物を整理し始める。バケツをぶら下げて帰る中で、Gはずっと抱いていた疑問をWにぶつけた。

 

「……何故、オレと釣りをしたんだ?」

「え?」

 

Wは彼女らしからぬ純粋な笑顔で。

 

「兄貴みたいなあんたと遊ぶのに、理由がいる?」

 

そんな答えに呆気に取られてから、一本取られたなと笑ってみれば、Wは不思議そうに首を傾げるのだった。




Gくん
釣れない男。音楽の趣味は平凡。
W姉貴から逃げ回るという無駄なことに時間を費やし、ムキになって魚を釣ろうとするなど無駄なことにやたらと時間を費やした。
W姉貴の返答に、彼女の行動一つ一つに理由を求めていた自分のバカさ加減を知って自嘲した。

W姉貴
釣れる女。音楽の趣味はイカしている。
無駄なことに時間を費やしているGくんを見てご満悦。釣りに誘った理由は特に無く、なんとなく彼とそうしたいからというだけ。
普段は可愛くない言い方をするが、今回は可愛い言い方が少しだけ見えた。が、迫真のスルーで軽く流された。

『Wの日』
傭兵時代、かつての感覚でGくんにちょっかいをかけていたW姉貴だが、その頻度を下げてくれと頼まれたことが原因で押してダメなら引いてみろという結論に至ったW姉貴が、賭けに勝ったことで要求した『Gくん1日奴隷権』の日。
GくんはW姉貴が忘れていても、何故かこの日を決して忘れなかったという。
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