アークナイツRTA参考資料「W姉貴のしっとり確率」ついでに「最強の伝説」トロフィーRTAの中途報告   作:W姉貴に負けたい人

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ただ泣きたいので初投稿です


震える走者

 >────ドクターはチェルノボーグにいる。ロドスの戦力のほとんどを投入し、これを奪還する。もはや部の悪い賭け、ただの博打だ。

 

 どうもこんにちは。

 一般投稿者です。

 ちょっと時は進んでドクター救出作戦の組み立てからですね。

 

 >「アーミヤも投入だと?」

「本人が希望した」

「ふん、踏ん反り返って部下どもに死ねと言うのが仕事だろうが。道楽やら子供心やらで出撃されても邪魔だ。弾けケルシー」

 天災が来る前に合わせてのチェルノボーグ突入作戦……正規軍との戦闘は確実、更に言えば最近活動が活発化しているレユニオンも便乗する可能性がある。考え得る最悪の事態が重なる危険────こういう時にモノを言うのは戦闘経験値の差だ。

 強い弱いなど、簡単にひっくり返せる。単純な武力だけで戦局を覆せるのは、その武力が極めた先の先であること……この世ならざる圧倒的な伝説の中の伝説、すなわち最強の字を頂く天頂の星でなければならない。

 ケルシーを見る。まあお互い、鏡写しのように冷たい表情をしていることだ。

「ダメだ。士気高揚も兼ねている」

「……鉱石病を治すためのロドスに必要な人を、これから全戦力を投じて奪還しに行きます。偉い人もみーんな出て行くので顔も知らない人のために死んでくださいってか?」

「身も蓋も無い言い方をすればそうなるが、そういう意図が無いことくらい君もわかっているだろう」

「どうだか」

 ドクター一人の為に全戦力を投入など、バカバカしい。確かに行動予備隊の連中も使えるようにはなったが……練度の高い部隊を相手取っても正面では3分行くか行かないか。しかもケルシーまで出るという。そうなれば予想されるのは撤退戦……それも不利な状況でだ。

「ヤツの命に命運がかかってるなどと。沈む泥舟はお断りだが」

「君がその気になればここから脱走するのも容易いだろうに、何故ここにいる」

「わかっていて聞くのか? バカかオマエ」

 

 ん? あ……やべ。

 人間関係ガン断ちの影響が変なところに出てる……沈む泥舟呼びしてんならなんでいんの? みたいな問答は大幅ロス確定────! 

 

 >「最強を目指して何が悪い? オレはそういう風にしか生きられない。そう決めたから。オレがここにいるのは、最強の足掛かりであると同時にテレジアの死の真相を知りたいからだ。邪魔するなケルシー。生きて欲しい? 生きるってなんだよ。オマエの生きるとオレの生きるは違う。どうせ最後は死ぬのが生物だ。なら自分のやりたいことをやりたいように貫き通してこそ生きるってもんだろ? 多少妥協はするにしてもな」

 

 あっやめて暴走しないでお願いだからケルシー先生に喧嘩売らないで。しっとりケルシーはヤバいからやめてお願い。

 ……えー、最強目指しているのを隠しながらロドスでそれなりには普通にやっているからどうやらケルシー先生に今は置いているのではと勘違いされたようですね。W姉貴を選ばずに、口ではアレコレ言いつつも精々ハッキングくらいしかしなかったからもしかしてと思われたみたいですね。

 残念ながらこいつは……モンスター。俺の中で沸き立つ、(記録出ないことへの)怒り、(乱数最悪だったり本走しようとした時にレア引いてエンジョイになったりすることへの)憎しみ……つまり、俺そのもの(ままならない現実を踏み潰したい存在)だ。

 いや私は単にガバしてるだけですけど。

 

 >「オマエはWじゃない。運命なんかじゃない。オレの生にはなり得ない。オレの死にはなり得ない。その程度のヤツがオレに口を挟むなねじるな揺らがせるな。オレは既に自らを自我を以て道を開く剣とした。最強になると決めたあの日からな」

「G」

 胸倉を掴み上げられて壁に押し当てられた。

「私は君がそうやって破滅に向かうことを望まない。何故そうし続ける。君の周囲にいる人間はそれを望むことは無い。君はもう少し自分の周りに、私以外にも君に生きて欲しいと思う人物がいることを自覚するべきだ」

「言葉で救って来れた程度の連中と同じにするな。オレを救うなどと宣うならば全身全霊を懸けてみろ。片手間に相手していればいい連中とはワケが違う。オレを侮るなよケルシー。数千年生きてマトモであり続けられる程度の存在が、たった数ヶ月で同族皆殺しを企てたヤツを指先だけで拾い上げられるとでも?」

「指先だけで君に触れているつもりは……」

 すぐさま振り解き、逆に壁にケルシーを追い詰める。少し驚いたような表情だ。

「指先だろうが! オマエにオレの何がわかる!? あの日見たクイロンの伝説を! それがオレにもたらした熱い憧憬を! 感動としか表現できない心を! 福音にすら似た響きが胸を満たす感覚を! 死にかけの女の瞳に見た生へと渇望を! 何も知らない、知ろうとしなかったこれを指先と言わずに何と言う!?」

 実際、ケルシーは察していただけだ。それがどういうものから生まれたかは知らない。語っていないだけ、とも言えるだろう。一種の逆上だ。しかし、オレの本音を語ってもいいかと思えるような相手ではなかった。何故ならこの女は他の道を示してくれた恩師だから。

 付かず離れずが一番いいのだろう。だが間違えてしまった。ケルシーはテレジアでもWでもない。オレの宿命、オレの運命ではないのだ。

「オレが何故あんなつまらないヤツを演じているかわかるか? 精神感応のアーツを警戒しているかわかるか? どいつもこいつもウザったるいからだ。オレの求道を、たった一つの冴えた答えを! アイツらは自分達の人生ってヤツから簡単に否定する! そこにどれだけの想いが込められているかも理解せずに!」

「破滅に向かう道は生きるということではない。断頭台へと行進しているだけだ。理解しようともやめてくれと言葉にするのは当然だろう」

「一つの事柄に執着すれば、狭量な価値観だと嘲笑われる! 周囲に合わせて柔軟に対応すれば、八方美人と蔑まれる! 厳とした自分を持つだけで、他者の言葉は否定の剣に姿を変える! ならば世渡りを極めれば、自我が希薄だと冷笑される! 有刺鉄線で作られた茨の森が現実だ! オマエたちの言う"生きる"など、要するになあなあってことだろうが!! そんなモノは家畜にでも喰わせろ!」

 オレにはできない。

 できなかったからこうなっている。できていればオレは虐げられたブラッドブルードとして復讐し、そしてカズデルの内戦の何処かでくたばっている羽虫に過ぎなかったろう。

「オレが求めるのは無敵の幻想、生の希求! 全身全霊を懸けて手に入れる最強という名の現実! そしてオレの前に立ち塞がるべき最強の運命! 現実は辛く苦しいし大変だけど、幻想になってはいけないから飽いていろだと? 飢えていろだと? それはオマエらが勝手にやってりゃいい! オレはこう生きてそう死ぬ! 道端の塵芥どもがこのオレの邪魔するな! 愚かな矜持だ無意味な時間だ独りよがりだ恥ずべき行為だ? ふざけるな。賢い貌して言えば相手が素直に頷くとでも? 死ねよオマエら、塵屑だろうが。向いてないだのなんだのと、そんなことはわかってんだよ。オレが望んで病まない称号は全身全霊を懸けても姿すら見えない。なのに最強の道探しに始めた学者業ではあっさりと終着点が見えてくる!」

 あまりにもバカらしくて笑ってしまった。向き不向き、やりたいことできること……何もかもが噛み合っていない。それを見抜いてやめろとほざいてくる連中なんぞごまんといるだろう。

 放っておいてくれ。オレはそう決めた。だからそうしているんだ。くだらん偏見でオレを縛るな。オレは自由だ。

「ケルシー。オレの魂を破壊してでも、その家畜のような生を歩ませたいと示すなら折れてやるさ。もっとも、運命でも宿命でもないオマエにできるとは思えんが」

 彼女から離れながら、オレにとって恩師であるオマエは口うるさくやめろと言い続ける先生として接するのが一番だ、と言外に告げてみる。

 深く接するには、お互いに上手くない。永く生きる賢者と短く死ぬ愚者では水と油、炎と氷の関係だろうて。きっと親のように口うるさく注意するケルシーと、それをやかましいと言いながら恩義故に無下にできない関係こそオレたちに相応しい。

 しかし近すぎる今、それができないならば恩師以外の何かになるしかない。

「……やってみせよう。私とて、伊達に長く生きていない。侮るなよ、G」

 ケルシーが告げる。否、宣戦布告する。

 運命を破壊し、最強を取り上げてみせると。目の前の患者を全身全霊を懸けて救ってみせると。

 その表情は普段と変わらないがオレにはわかる。バベルのケルシーが帰ってきた。ああ、そうだ。このケルシーだ。テレジアの横にいた、ドクターの横にいたケルシーが帰ってきた。ギラギラしたケルシーだ。オレの好きなケルシーだ。

 今の腑抜けたケルシーなんかじゃない。あの戦乱で、オレの中身を察しておきながら意図的に無視していたケルシーだ。

 オレの、オレだけの先生だ。

「いいね、ケルシー。オレは乱暴なアンタの方が好きだ。やってみろ、オレを運命から離せるものならばな」

 久しぶりに視線を向ける。喰い殺したい存在を見る目。オレの敵────そうか、アンタはオレの敵なのか。敵、そう、敵。

 敵だ。

 オレを最強の幻想から引き剥がすモノ、オレを運命から遠ざけるモノ、それは敵と言うに他ならない。

 オレの、敵。敵か……ふふふっ、あっはははは……最後に殺し合う運命ではない。受け入れた上で殺し合える宿命ではない。しかし全てが相反するも理解し合える敵。

 アンタは恩師で敵だ。Wは半身で運命だ。モスティマは友達で最後だ。テレジアは最強で宿命だった。

 ならばオレはそれらを喰らい尽くして、飲み干して、テラの大地を斬り捨てて、最強を勝ち取る。

 ……そういや脱線してたな。

「んで……まあドクター救出作戦はオレも出るか」

「君たちは作戦目標さえ達成してくれれば、自由にやって構わない」

「形振りは構えないか。余裕は無いものな。わかった。単独か?」

「いや、Scoutの隊と合流してもらう」

 

 い゛

 

 >「救出隊のサポートか……」

「不満が?」

「適任か?」

「君の過去の戦果から考えれば、これほどまでに適したこともあるまい」

「なるほど。ということは露払いがオレたち、Scoutたちが直接的に、か。オペレーションパターンはD……だな」

「いや。君たちにはレユニオンを相手取ってもらう。恐らくは彼らも動き出す」

「レユニオン? 所詮は有象無象だろう。ウルサスを相手するんじゃないのか」

「サルカズの傭兵団を雇ったとも聞く上に、相当な実力者も多い。正面からでは無理がある」

「……サルカズの、傭兵……────まさか、アイツが……? いるのか? そこに?」

「わからない」

「……そう、か。で、優先して対処するべき敵は」

 

 ……ここで出てくる名前によってエンカウントするレユニオン幹部が決まります。なおメフィストくんはランダムなのでお祈りしてください。メ ガ ト ン メ フ ィ ス ト

 ちなみに超クズ運なのはらりるれろおじいちゃんと出くわすことです。勝てません(絶望)。勝とうと思ったら相討ち前提です。それでも無謀ですけど。

 勝ち筋的にはスカルシュレッダーとクラウンスレイヤーがハメ殺しも通用する弱い部類で、タルラとフロストノヴァはまあなんとかならんこともないけど基本無理ゲー。メフィストくんとファウストくんコンビは撤退ラインが早すぎてそも戦いになり辛い。パトリオットおじいちゃんは強過ぎて無理。W姉貴はハメ殺してくる。

 レユニオンクソゲー! お前全員都市爆弾で殺してやるからなァ!? 

 

 >「暗殺部隊だ。救出隊とサポート隊の二段構成とはいえ、素早く抜けて来る凄腕の対処をしながらというのは非常に厳しい」

 

 クラスレ姉貴か。まあ霧出すだけで本人以外は雑魚。覚醒してないクラスレ姉貴程度、フル装備Gくんの敵ではありません。

 持っていける装備も改造長剣、リボルバーライフル、ナイフ、仕込み銃、アーツ制御ユニット、使い捨ての指輪型アーツ発動ユニットの試作品……身体性能強化型アーツ『R』、超高速移動型アーツ『W』、医療アーツ『K』の3つ。これに狂奔ブーストに魂ブースト、妄執覚醒に加えて初見殺し戦法を付けていくわけです。トロフィー進行度は余裕で取れるでしょう。ついでにメフィストくんも判定取っておきたいところ。

 ま、所謂強キャラを正面から倒せるのはこれだけ積んでも4割あればいい方ですが。相性ゲーすぎんよ……

 

 >「仮にそうならなかった場合」

「いつも通りだ。君たちが露払いを行なってくれ」

「了解」

 

 さてここから先は退屈な時間が長いので、

 

みーなーさーまーのーたーめーにー

 

 60倍速でレユニオン蜂起まで飛ばします。

 

 まあ学会の近況でも報告しておきますか。

 アビサルハンターチャート学会も頭がおかしくなり始めたらしくてですね、魔法少女になってみようチャートとか作り始めてるんですよ。この人頭おかしい……

 龍門チャート学会は「開けろ! 龍門近衛局だ!」を言うだけの爆速 RTAを研究し始めるし、なんなんでしょうねこいつら。暇人なんでしょうか。

 更に人の心がない奴らはパトリオットをフロストノヴァが庇って死ぬ RTAとかやり始めるし。最強称号チャート私しかしなくなるし。スズランのお兄ちゃんになる RTAとかもあるし。なんだろう……お前も走者にならないか? なると言え! 何故ならない? 言ってみろ。私を置いていくなぁぁぁあぁぁぁ────!! 

 いやまあどうでもいいんですけど。

 

 さて加速を止めて現在の状況をば。

 チェルノボーグへ侵入し、Scout兄貴たちとは違う方面を警戒中……でした。

 レユニオンの武装蜂起が始まってしまい、今はあっちこっちの混乱の所為で一旦身を隠しているところです。

 流石のGくんと言えどもウルサス軍と真っ向正面からやり合って平気というわけでもありませんからね。さて、そろそろScout兄貴たちがW姉貴と接触する頃合いですが。

 

 >「G、ちょっと離れる」

「Scout、どうした。何があった」

「悪りぃな。独断で古い知り合いの手を借りた」

「おい」

「……ドクターたちを頼んだぜ」

「おい!」

「あと……元気そうだったぞ、あいつ」

「────Scout? おいScoutテメェ!」

 通信が切れた。古い知り合い? 元気そう? いやまさかそんな、あり得ない。こんなところにいるべきではないだろう。Wにしろヘドリーにしろイネスにしろ……!! アイツら全員、何やってんだ!? 

「クソッ、全員に告ぐ! 救出部隊に合流しろ! 壁は一人でも多い方がいい! アーミヤへ指揮権を移せ!」

「あんたは!?」

「オレは……」

 ────

 Scoutたちを追う

 >レユニオンを殺す

 ────

 

 まあScout兄貴を追っかけるとロスいのでここは下ですかね。ヘドリー兄貴とイネス姉貴とお喋りしたかったら後者ですけど。

 

 >「当初の予定通りレユニオンの暗殺部隊を叩く! 正面から来る連中はどうにでもできるが、闇に潜む連中は面倒だからな!」

「単独で!? 無茶だ!」

「Scoutたちが抜けた穴は誰かが埋めねばならん!」

 部下たちを無視して駆け出す。

 ────さらばだ、Scout。我が友よ、いずれ地獄で会おう。

 

 さて、とりあえず移動開始してクラウンスレイヤー姉貴の出現ポイントを全部周ります。マラソンです。無駄な戦闘は避けていくので問題ありません。勝手に潰しあってくれます。

 一箇所目……いない。

 二箇所目……いない。

 三箇所目……いるぅ! 

 

 しかも先手が取れますねぇ! 

 日頃の行いがいいからでしょうか!? まあなんにせよ死ねよやぁぁぁぁってことで先手取って進行度上げて帰り────

 

 >「ガルシンがやられた?」

「Wが今、部隊を再編しているそうだ」

 ……だ、ぶ……りゅー……? 

 

 

 >聞こえた。聞き間違えるはずなどない。

 運命の名を。そうかScout、古い知り合いの協力とはつまりそういう────読めたぞ、わかったぞ。

 

まって

 

 >そしてオマエは命を賭して……か。わかった。運命が本気になったとすれば、オレも本気で応えねば。ではまず────レユニオンで、勘を戻すか。

 

やめて

 

 >懐かしい、この感じ。

 たった一人で不利のまま、強敵に挑む。

 やってみせよう。

 

おねがい

 

 >「さあ、処刑の時だ」

 歯車が回り出す。

 オレが、帰ってきた。

 

なんだよもおおおおおおおおおおおおお、またかよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!! 

 

 ……視点変えます。もうダメだ。チェルノボーグで殺戮ショーだ……

 

 ────

 

 ズドン、と何かが降ってきた。

 長剣が、見慣れたメンバーに頭上から突き立てられている。

 亡骸を踏み付けて一瞥するその男はあまりにも異質だった。ポニーテールにまとめられた長い黒髪と冷た過ぎる青い瞳。黒いスーツに武装を抱えたそのサルカズには、異常さだけがそこにある。

 

「なん、だ……お前は────!?」

 

 辛うじて出てきた声は震えていたとクラウンスレイヤーが自覚するのは、その無機質な瞳が此方を見つめた時だった。ギョロリと周りの人員を眺めてから、無機質に、しかしへばりつく湿度に、生暖かい温度が混じる声を発した。

 

「Wは何処だ?」

 

 唖然とする。

 Wは何処だ? 何故? 何故この男は万感の思いを込めてその名を口にしている? 

 困惑だけが広がり、そして支配された場でクラウンスレイヤーだけが思考を回していた。

 

「貴様、ロドスだな」

 

 ウルサス軍でもない、レユニオンでもない。ならばロドスだと判断し、素早く戦闘態勢を取る。包囲している上に見たところ……そこまでは強くなさそうだ。

 クラウンスレイヤーは冷静に観察する。

 

 が。

 

「Wは何処だ?」

 

 もう一度繰り返される一言。

 ぐちゃぐちゃになった感情がまた響き出す。

 

「じゃあ、会いに行こうか。手土産に同僚の首でもぶら下げてな」

 

 誰も何も見ていない。

 見えているのは夢の先だけ。

 指輪がパリンと音を立てて、青い輝きを発する。

 

「っ、さん──── 「遅い」……っ!?」

 

 一瞬。

 一瞬で血飛沫が肉片と共に赤い霧を作り出す。何が起きた……!? 敵を視界に収めつつ、状況を理解しようとして唖然とする。

 部隊の半数が、死んだ。たった一回の攻撃で。

 Gがやったことは単純、高速化の使い捨てアーツユニットを使用して、信号伝達速度を上げて、ただ素早く切り刻んだだけである。無論、高速化のアーツは反動がひどい上、本来ならば彼のアーツではない。他人のアーツを宿した源石を人工生体パーツに組み込み、それを指輪サイズにダウンサイジングした上で強化した生体電気による反応で発動する仕組みだ。

 全て反動の方が大きい。しかしそれを捻じ伏せてこその、ジェヴォーダンの獣である。

 

 指示も追いつかないほどの急な事態の変貌。

 とにかくこの敵を倒さなければならない、そして部下を逃さねばならない。クラウンスレイヤーはアーツを使用して濃霧を作り出す。

 

「お前たちは先に行け! 殿は私がやる!」

「だ、だが!」

「私でしか倒せない!」

 

 実力差はあるかもしれないが────危険だ。並の存在では勝てない。自分がやらねばとクラウンスレイヤーは有無を言わせず部下を下げる。

 濃霧の中でロクに視界が効かないとしても、Gは変わらず佇み、聞こえてきた言葉に無表情のまま、悍ましく答えていく。

 

「運命でもないオマエが? イキがるなよ小娘」

「運命……? 訳の分からないことを! 偽善者どもが!」

 

 完璧なタイミングでの奇襲。

 濃霧で見失わせたところに、フェイントに重ねた首狙いの一閃。クラウンスレイヤーにしてみれば、必勝のパターンだ。

 あれはアーツによって行われた行動。ならば認識を難しくして、反応さえさせなければいい……! 

 

「舐めるな」

 

 ギンッ、と鉈の一閃が長剣で弾かれる。当然、これはアーツによって強化して対応した。

 

(こいつ、何故見えている!?)

 

 完璧に見えている反応に驚いてしまい、一瞬だけ空白が生まれる。

 刹那、彼女の顔面が掴まれ、そのまま近くの建物に投げ付けられる。轟音と共にガラガラと崩れ落ち、その音に気が付いたレユニオン兵の一部がフォローするべく戻ってくる。

 

「クラウンスレイヤーをやらせるなっ!」

「吼えるな」

 

 散弾銃が咆哮する。皮膚と肉が舞う。長剣が振り下ろされる。骨と肉が斬り裂かれる。二人を同時に相手取るのが限界であるため、アーツやクロスボウでダメージを受けてしまうが当然のように無視する。

 レユニオン兵が倒れていくのと比例するように被弾が増えていく。しかしその勢いは衰えることなく、むしろ更に更に疾く鋭くなっていく。

 

「こいつ、メフィストの兵隊と同じか!?」

「崩れて堕ちろ」

 

 長剣を投げつける。一人が死ぬ。死んだ奴を踏み台に飛び、散弾銃を発射。もう一人が死ぬ。空中で飛びかかりながら術師に足を首に引っ掛けて、捻じ切る。そのまま空中で捩じ切った首を蹴り飛ばして剣士にぶつける。着地と同時に突き刺さった長剣を引き抜き、目に付いた重装兵に斬りかかる。正面からでは防がれ────暴走させた生体電気で感電死させる。

 ギョロリと視線が生き残りを舐め回す。狂奔のままに殺戮が始まる。

 クラウンスレイヤーが瓦礫の中から脱出した時には、フォローに入った人員全てが徹底的に殺され尽くした後であった。

 

「……貴様、なんだ。何者だ」

 

 刺さったボルトや剣を引き抜きながら、傷だらけの身体で次なる獲物へと視線を向けるGに対して、彼女はその訳の分からない怪物へと問う。

 こんな怪物をロドスは飼い慣らしているとでも言うのかと、心底に恐怖を隠しながら。

 

「いいや、なんであろうとも────ここで葬る!」

 

 確実に仕留めるしかない。手負いの今だけが……チャンスだ。

 全力で打ち破る────強い決意がクラウンスレイヤーを、リュドミラを一つ上の段階に引き上げる。限界以上の速度で身体が動く。

 鉈を心臓目掛けて投擲し、同時に()()()()()()()()()()()()

 Gが目を見開く。

 投げられた鉈を避けようとすればクラウンスレイヤーに首を取られ、飛び掛ってくるクラウンスレイヤーを防げば鉈に心臓を貫かれる────絶殺の二段構え。

 

(鉈と小娘はほぼ同時……実質回避不可能というわけか)

 

 なるほどよく出来た技だと感心する。

 しかしその観察眼は歴戦のモノ。瞬時に技を解体し、理解するのは難しくない。

 

(────惜しいな)

 

 Gの目はクラウンスレイヤーの弱点をはっきりと見抜いている。それは彼女の戦闘経験値が少なく、またその能力が発展途上であること。磨く前の原石……いや、少し磨いた原石と言ったところか。

 そして何より、自分程度に一度飲まれるくらいには未熟で、必殺のパターンを破られて動揺するくらいには若いこと。

 若さ故の熱さ。それ故の無鉄砲さ。そしてそれ故の強さ。しかしそれらは同時に弱さとなる。

 弱いが故にあらゆる手段で敵を殲滅した獣から見れば、いつの日か潰した敵と同じ。奴らよりも才覚は上。そして自分よりも強くなるだろうが……

 

「オレは、オマエみたいに熱いヤツは嫌いじゃない」

「……!?」

「だが運命になり得ない以上」

 

 迫り来る二択の死を、彼はシンプルな方法で迎撃する。散弾銃を後ろに構え……

 

「ここで死ね」

 

 炸裂、飛翔。

 散弾銃を地面に向けて発射。そこで得た僅かな推力を、赤く輝くアーツ指輪────身体強化と自前の身体強化による二重強化で、1秒後の爆発に変えて見せた。

 鉈とクラウンスレイヤーの間を、Gが通り抜け────そして、着地と同時に刀身に雷がまとわりつく。

 

「……っ!」

 

 刹那、鉈を蹴り落とし地面に突き刺す。急な方向転換故に自由落下が始まり、彼女は鉈の上に着地する。跳躍、予備の鉈を引き抜きながら間合いの内に踏み込む。

 先ほどまで自分がいた場所を雷刃が両断する。振り切った後は隙が生じる、そこを突く。絡め手ではダメだ。正面からでしか突破できない。

 

 右に振り切った長剣。

 左手には何もない。

 組み付いてしまえば……! 

 

(勝っ────)

 

 途端、左肩に激痛が走った。

 体勢が崩れて地面に落下する。

 

「甘い」

 

 仕込み銃……Gの左の袖口に仕込まれた、単発装填式の銃。殺傷力は一般的なラテラーノ銃よりも低く、当てる箇所もきちんと選ばないとまともなダメージにはなり得ない旧式。

 それが左肩に直撃した。

 

(さっきの斬撃は、ブラフ……!)

 

 勝ちを確信したところで確実に仕留める攻撃を繰り出す。ジェヴォーダンの獣とは、このようにしてブラッドブルードを殲滅していたのだ。

 素質や能力だけで言えばクラウンスレイヤーがGを倒すことは容易い。だが、それだけで勝てるならばとうの昔にこの男は死んでいる。それと同時に、クラウンスレイヤーもまた、片手を潰されて裏を掻かれた程度で死ぬような甘い女ではない。

 振り下ろされる長剣を倒れたまま、横に転がって避ける。起き上がりつつ蹴りを放ち、それが防がれる。

 立ち上がりの睨み合いは一瞬。仕掛けるのはG。最後の散弾が火を吹く。当然、卓越した身体能力の前には簡単に避けられる。

 踏み込みと斬撃。長剣と鉈という、質量の差があり過ぎるものをクラウンスレイヤーは裁き切る。

 

 積み重ねた技量に、狂える魂と妄執が重なってなお本物には見切られる。

 実際、クラウンスレイヤーは先ほどまでの攻防で動きと傾向を見切っている。見切ってはいるが……その先に進めない。

 

(……強い)

 

 見切ったところで対応できなければ意味が無い。動きが見切れても次に出てくる手が想像できない。わかっていても、対処ができない。

 とにかく次の手を打たせないようにと密着しての接近戦を繰り広げているが、結果的にそれはお互いに膠着状態に陥ってしまっている。

 よってその閉塞を破るとなれば。

 剣戟の隙を狙い、一撃を捩じ込むしか────

 

 何度目かもわからぬ得物の激突。

 刹那、青い稲妻が迸る。

 

 それはクラウンスレイヤーが取ってしまった唯一の悪手であった。剣と鉈を鍔迫り合うことは、単に敵の動作を封じるという他にも隙あらば自らの一撃を捩じ込めるということでもある。

 攻防は一体。攻めとは守り、守りとは攻め。Gの危険性を理解しその行動を接近戦に固定させたのは見事と言う他ない。しかし鍔迫り合いを中心に戦略を組み立てた────それが間違いであった。

 長剣さえ破壊すれば残っているのはリボルバーライフルとハンドガン、そしてナイフ。何をするにしても彼女の方が早い。武器破壊による先行、および生じた隙で確実に殺す。

 素晴らしいまでの堅実な一手、そして的確な判断。

 

 だが問題は、眼前の敵は剣を媒介に生体電気による自分の被害を無視しての感電死を狙うバケモノであるということ。

 本来やるべきは、速度と身体能力を活かした一撃離脱と地形戦だった。

 

「ぐ、っ……!?」

 

 痺れる身体。

 後頭部に叩き込まれる柄の一撃から、胴を穿つ膝蹴り。

 崩れ落ちるクラウンスレイヤーに、逆手に持ち替えた長剣が心臓に狙いを定める。

 

「一つ」

 

 しかし、その時である。

 Gが突然そのまま剣を薙ぐ。パキン、と歪な金属音が響くと同時に彼は大きく飛び退く。さっきまでGのいた場所を無数の攻撃アーツが襲い掛かり、その爆炎を突き抜けてサルカズ剣術士が接敵する。

 

「……ああ、そうか」

「恨むなら暴れ過ぎた自分を恨むんだなG」

「ほざけ。W以外にオレを殺せるものか」

 

 視界の片隅に治療アーツ使いの傭兵たちと共に移動していくクラウンスレイヤーを捉える。

 

(手土産が確保できなかったな)

 

 だがあれだけの手傷だ。片手は元に戻るだろうが、戦力の低下したロドスでもあしらうのはそう難しくないレベルまで落ち込むだろう。その次は本調子に戻っているだろうが。

 

「あの日オレに殺されかけてた雑魚どもが、揃いも揃ってまあ壮観だな。今度こそなどと思っているであろう辺り、遣る瀬無さを感じずにはいられないよ」

 

 ズラリと構えるサルカズ傭兵たちに知らない顔は誰一人としていない。

 Wの采配なのだろう。自分の手の内を知り尽くしたメンバーで固めて確実に仕留める。

 

(わかったよ、────)

 

 ふっ、と笑ってから半身の期待に添うべく殺意を氾濫させていく。それはあの日、『G』が生まれた日の再現のように。

 それがわからない傭兵たちではないからこそ、あの日仕留め損ねた魔物を今度こそ殺してみせると息巻く。

 

「あの時と同じだと思うなよ畜生風情が! テメェはここで殺してやるよ!」

 

 治療アーツを宿した指輪はまだ切らない。

 何故ならそんなことをすれば鋭く尖った渇望が鈍るから。

 リボルバーライフルを収め、大剣だけを握る。

 運悪く感電の影響で使い物にならなくなったアーツ制御ユニットを外し、自分のギアをニュートラルからいきなりハイに突っ込む。

 なあに、()()()()()()()だ。

 この程度の不利、覆してみせてこその最強だろう。

 

「さて、やろうか」

 

 ────ロドスがドクターを救出し、天災で大被害を受けたチェルノボーグから首の皮一枚で脱出してから約5時間後。

 

 音信不通となり生存は絶望視され、死んだものとして扱われていたGは。

 

 全身に大小様々な傷を提げて、全ての武装を使い果たしてもリボルバーライフルだけは持ち続け、そして何食わぬ顔でロドス・アイランド船に合流した。

 

(W……見つけらんなかったなぁ……)

 

 その内に深い失望を宿して。




Gくん
善意で自分を否定されるのがわかってるからそういうのが嫌な人。
ケルシー先生が敵となったことを喜んだ。Wは何処だ?(鳴き声)
人工生体パーツに源石入れて生体電気で動かしたりとか倫理観は結構捨ててる製品を作ったりしてる。
天災降り注ぐチェルノボーグで散々暴れ回り、単身で生還したバカ。とは言っても撤退するレユニオンの隙間を抜けて、邪魔なヤツらは蹴散らしてというルートを通ってる。

ケルシー先生
バッドコミニュケーションからパーフェクトコミニュケーションを叩き出した人。
こちらでは言葉じゃダメだと悟ったのでアプローチが変わる。なお本来なら口うるさいカーチャンポジなので言葉で十分救えたり。

クラウンスレイヤー姉貴
スイッチの入ったGくんに強襲されてメタられた可哀想な人。
正面からなら上位互換みたいな性能をしているが、残念ながらイカれ野郎が相手だったので選んだ攻撃を悉く潰された。
体重は軽い。

使い捨ての指輪型アーツ発動ユニットの試作品
他人のアーツを少し込めた源石を人工生体パーツに組み込み、それを生体電気による反応で強制起動させる特殊兵装。
イメージとしてはスノーデビルが使ってたアーツ入り源石を小型化、能力を薄めたもの。
今回Gくんが使ったのは身体性能強化型アーツ『R』、超高速移動型アーツ『W』、医療アーツ『K』の三種類。
お前爪みてぇだな?
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