アークナイツRTA参考資料「W姉貴のしっとり確率」ついでに「最強の伝説」トロフィーRTAの中途報告   作:W姉貴に負けたい人

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久しぶりに初投稿です

色々と忙しかったのでまた小話です
次回はいつになるかわかりません。すみません


小話:原初の姿

 Gは、医者としては完璧だった。

 どのような患者であろうとも、言うべきことを容赦無く言う。隠すことは決してせず、相手の真実や慟哭に冷徹に向き合う。

 無情な医者と呼ばれることもあったが、安易な同情心に敗北し、自らの心の保身に走るような愚者など医者ではないとして厳しく向き合った。

 

 学者としても非凡な才能を見せていたが、特に優れていたのは理論の応用と発展だった。新しい物を生み出すのは得意ではなかったようだが、それでも並大抵の者を超えていた。

 ──能力や適性は、きちんと育て上げれば非常に素晴らしいものだ。半端かつ独学であった頃からその片鱗は見えていたのだ。

 

 しかし何よりの問題は──精神が「この為に死ぬ」「その命題に挑戦する」「戦って勝ち取る」この三つを至上とする性格であったことだ。強さに対して貪欲である事は悪ではないが、それが突き抜けているならば話は別だ。

 初志貫徹の意志を微塵も崩さず、決して迷わず行動する。生物として狂った選択を、自分で選んで行い続ける。そこに付随するはずの煩悶を全て無視し、生じている歪みが無自覚になるほどに強靭すぎる精神強度。そして──それ以外の道を選択したくない潔癖症。

 

 実物を見た時に感じたものは、今でも憶えている。

 危うさと純粋さが入り混じる異質な雰囲気、現実からズレたような異物感、へばり付くような湿度を纏った狂気──これが伝説の怪物、ジェヴォーダンの獣かと戦慄した。

 

 が、その内側にいたのは何処にでもいる青年だった。

 年相応に軽い青年と、典型的なサルカズ傭兵、そして恐るべき最強の魔物。これらが目紛しく入れ替わる。どれもが本物で、どれもが彼。

 その最たるを理解したのは、彼がサルカズでありながらラテラーノ式の弔いを見せた時だった。

 

 影があったのだ、Wたち以外の影が。

 

 私はその影を──サンクタだと考えた。

 弔い方がラテラーノの中でも高位の者が行うそれに酷似していたからだ。リーベリの可能性もあったが、恐らくはサンクタだろう。

 ……確かにサンクタとサルカズの種族間対立は根深い。歴史の闇に埋もれ理由など誰もわからなくなった対立を今日に至るまで続けている。一般的なサルカズとサンクタを向かい合わせた時、余程の理由でもなければ会話さえしないだろう。

 しかし彼は話したことがあるどころか、行動を共にしていたであろうことが見える。そうなると相手は──恐らく堕天使か、余程の物好きか。

 思えばラテラーノ銃に対してやたらと知識があったのも、それが理由なのだろう。でなければ自分で整備できるだけの土台は無い。ましてや、十全に使うことすらままならないだろう。

 

 ──そこに活路を見出したはいいものの、Wとの関係性を理解するのに時間をかけ過ぎた上に、G本人の感情の向け方と距離感を見誤ったのは失態としか言えない。

 比較的対象は多いが、その中でも彼は特殊すぎた。

 

 エリオットやハイディのように、何らかの強い影響を与えるような振る舞いをした覚えすらない。確かに過ごした時間は長いが、それを言い出せばバベルで彼と接していた者全てが当て嵌まる。

 互いを対象として素を見せたこともあまり無い筈だ。

 

 情けない話だが、私は奴の不安定さを見くびっていたということだろう。まさか、子供よりも惚れっぽいとは。

 思えばある時を境に好意を前面に出してきていた。あれは単に技術を知ることが楽しいのだとばかり考えていたが……素直な方が良いと、素の反応を他人に見せる奴を肯定していたが、あれも原因か……純粋すぎる。

 少し優しくされただけで、人を信頼する幼子か、お前は。子犬か子猫でもあるまいし。ジェヴォーダンの獣の名が泣くぞ。

 

 ──だからテレジアはやけに甘かったのかもしれない。

 下手をすれば、Wよりも余程幼いのだから。

 

 

 ────

 

 

「弱い」

 

 少年がそう呟き、ぐちゃぐちゃに折り畳まれた肉塊を踏み砕く。

 

 カズデルの僻地にある屋敷。

 

 悪逆非道なブラッドブルードの中でも、一際忌み嫌われる一族が住まうそこは、血と臓物に塗れた、凄惨極まりないタペストリーと化していた。

 臍の緒に絡まって出てきた忌み子を虐げ、自らを強者としていた彼らは、その忌み子に抵抗すら許されずに惨殺された。

 

「これで強者を驕ったか」

 

 最初に殺されたのは長女だった。

 寝込みを襲われ、尖った源石を棒に括り付けただけのモノで、心臓を打ち貫かれた。胸を貫く激痛と共に目覚めた瞬間、二つの眼球を潰されてそのまま頭蓋に風穴を開けられた。

 完璧に都合の良い状態をじっくりと待った少年の奇襲は、自身が這いつくばるのを愉しんでいた強者を、弱者以下の虫ケラへと貶めた。

 

「心臓を貫かれ、目を潰されただけで泣き喚く屑」

 

 二番目は長男が殺された。

 家督争いではないかと父母に疑われた長男は、外に味方を作りに行った。内にいないなら外に作る。なるほどそれは確かに合理的だろう。

 故に少年はそれを把握し、時を同じくして屋敷より脱走。彼がよく通過するルートの地形を知り尽くし、徹底して脚を破壊するトラップを仕掛けた。

 罠に掛かった哀れな獲物は、鋸と見紛う程に刃こぼれした刀剣と先端が鋭利に折れ曲がった鉄棒で、じっくりと時間をかけて、丁寧に足先から頭頂まで、皮膚を剥がされ肉を抉られ臓物を引きずり出された。

 人体を理解する為に少年が行った徹底的な素人解体は、自身が血を流す事を愉しんでいた強者を、腐敗して朽ちるのを待つだけの塵屑へと貶めた。

 

「潰された脚を切り離して逃げればいいのに、何もせず命乞いしかしない阿呆」

 

 三番目に夫人が死んだ。

 長男の情報から敵対勢力となり得る者たちをピックアップした少年は、長男の使者を騙り接触し、襲撃の手引きをした。

 家主が家を空けなければならない他のゴタゴタの種を撒いて、徹底的に千載一遇のチャンスを待った。

 手の内を知り尽くされた上多勢に無勢、それでもなんとか生き延びた夫人に対して与えられたのは、背後からのずっしりと重い斬撃。左腕ごと切り落としたその一撃に唖然とした刹那、少年により脊髄ごと首を引っこ抜かれた。

 完全なる奇襲と人体に致命打を与える一撃という、少年が子供たち二人で学んだ手法をぶつけられた挙句、引き抜かれた首に源石爆弾を付けるという行為は、自身に存在意義と無価値であることを解いていた強者を、動揺を誘う為だけの兵器へと貶めた。

 

「勝利に酔いしれ、自分を狙う者がいる可能性すら考えない塵」

 

 最後は家主──この家で最も強い者だった。

 くだらんゴタゴタを処理して戻ってきてみれば、屋敷は半壊し、自分の収集した物の大半は失われ、家畜として飼っていた他種族どもは反逆し、少なくない傷を負って見たものは、首の無い妻の死体。

 怒りを感じる間も無く投げつけられる、脊髄ごと引き摺り出された首。様々な思い出がチラつくそれが爆散し、血飛沫と化す。

 刹那、少年は接敵し脚をへし折る。そのまま腕を逆に曲げ、激痛で思考を潰す。更にロクに使い方もわからないアーツにより、自身への負荷が甚大になるほどの能力を発揮しながら、自然に、呆気なく、頚骨をくるりと螺子折る。続け様に肉体を強引に畳んだ。 関節を逆にへし折り、あらゆる箇所を破壊しながら曲げて、最後に胸部と腹部をくっつける。それが三、四回程行われた末に決着を迎えた。

 

 粘土を捏ねるように行われたそれが作り上げたのは、奇怪な肉団子(オブジェ)

 肉と骨が見えて血が流れる無残な姿は、無垢な子供が折り曲げては直して丸めるを繰り返した針金細工だ。一家で得た技術を総動員して生み出された、血と汗と努力の結晶──自らの全てを否定した強者は、文字通りの汚物へと貶められ、辱められた。

 

「そして親しい者の首が四散しただけで固まる馬鹿。こんなものから生まれたとは。我ながら反吐が出る」

 

 そんな傑作を踏み砕いた少年は、そこがキッチンであることに気がついた。

 色々と耐えた所為なのか、喉が乾いて仕方ない。適当に地面に転がっていた袋を適当な容器に入れ、蛇口から水を注ぐ。

 それが紅茶であるとわかったのは、茶葉の香りが漂ってきた時だ。しかし水だろうがお湯だろうが代わりない。

 少年はそれを一気に飲み干し、容器を投げ捨てて邪悪な笑みを浮かべた。

 

「そうか、これが勝利の美酒。悪くない……これほどまでに美味いのならば、オレが最強となるのに相応しい困難な強敵を殺して飲む紅茶は、さぞ美味いのだろうな」

 

 ボロボロの身体で堂々と、十分な休息も取らぬまま、少年は暗闇の荒野へと歩を進める。

 虐待されて衰弱している少年は、長男を殺すのが本来の限界だった。

 だが何故か耐えられたし、何故か限界を越えられた。ならば何も問題無い。どうせ勝手に治るし、どうせ直面すればできるのだから──そう考えるが故に彼は最強への道に屍の山と血の海を築いていく。

 

 それこそが、全ての始まりだった。

 

 闘争に身を投じた少年は次々に合理的な戦術を以て強者との死闘に臨んだ。武器が失われれば奪い、練り上げた戦術や戦略が覆されれば死力を尽くして戦い、そして最後は『覚醒』という究極の理不尽で敵手を殺し尽くす。

 源石術という概念も知らなかった彼は、ただ黒い石が近くにあると限界を超越しやすいという理解があり、それが自らのアーツであると知る頃には、右胸から右上腕部にかけて源石が出現する時期であった。

 ──しかし、殺し尽くした後の休息は、基本的に読書と紅茶であった。そこに本があるなら奪い取って読み尽くし、紅茶があるならゆっくりと飲む。

 

 奪い、貪り、殺し尽くす。学習と実践、応用を繰り返し、より能力を高めていく。思案に思案を重ねて動いてもなお不可能であれば限界を越える。常識を逸脱した思考回路のまま、目の前に立ち塞がる敵と認識した全てを駆逐する。

 ただひたすらに、徹底的に自らをより鋭く頑丈な剣へと打ち直して行く作業。無論、鋭き刃となれば自ずと磨り減り頑丈さは失われる。しかし剣自らが再生し続ければ良いのだという思想が、常に薄く鋭い状態を維持しながら頑丈さを決して失わせない。

 そして感情の揺れ動きや命の勘定から解き放たれ、その身に残る唯一無尽の執念を以てあらゆる条理を踏み拉く魔物へと変貌していく。

 

 ──負けの無い人生ではなかった。

 ありとあらゆる手を尽くしてもより強い者には負け、ありとあらゆる手を尽くしてもより頭のキレる者には裏をかかれ……しかし、最後には必ず彼は全てを屍に変えて立っていた。

 

 空想の存在と断じることこそが、その者を現実の存在とし、そしてもたらされる現実こそが、その者を空想の存在とする。

 矛盾を呑み込んだ存在が、現実にも空想にも居場所の無い迷子の怪物が、勝手気ままに行き来しては命を喰らう。

 それ故に名も無き少年は、単身でありながら忌み嫌われたのである。

 

 誰とも群れぬ血染めの孤狼でありながら、獣の秩序さえも捨て去った魔物。戦闘という行為そのものを好むという生物として異質な性質を有し、あらゆるものから外れた存在。

 

「類似しながらも決して相容れぬ者」というループスに伝わる伝説、博識のフェリーンはそれに因んだ名で呼び、自然と浸透していったその名こそ──『ジェヴォーダンの獣』。

 

 何者にも属さぬ最強の存在として。

 蒼き瞳のブラッドブルードは、真の怪物となった。

 

 

 そして、時は現在。

 

「……さて、どうしたものか」

 

 ケルシーは、なるようにしかならないこの状況において悩みの種へと思考を向ける。

 今は龍門との共同作戦の方が重要だ。できる限りの種は蒔いたが、所詮それだけ。

 そもそも不確定要素が多すぎる上に、貴重な手駒を5つも手放しているのだ。さしものケルシーとて、目覚めてからそこまで時間の経っていないドクターと、経験の薄いアーミヤの補助をせずに自らが動くなどという暴挙には出られない。

 しかもGによる資材横領と独断による武装開発、首脳会談の盗聴など身内の問題も非常に多い。更に言えば今は不問にしているものの、立場ある人間の行い故に処罰はしなければならない。

 

 ──そこにのしかかる問題は、Gがサルカズであるということだ。

 通常、部門管理者の暴挙ともなれば退任させるのが筋である。しかし彼はサルカズで、感染者で、ブラッドブルードだ。さて、あの戦争で行き場を無くしたサルカズの行く末はたった一つ、ヴィクトリアである。

 あの国は今や、摂政王を中心としたサルカズが牛耳る国だ。

 

 ……Wが単身でいること。

 かつて行動を共にしていたヘドリーの傭兵団の方針。

 そして、ジェヴォーダンの獣は故あらば軍門に降ることを是とし、その頭を垂れる魔王はたった一人であること。

 

 ロドスへの挑戦権を得たかの怪物が取る行動とは? 彼は魔王に従い、ロドスの前に立ち塞がる。

 しかも死ねない理由を得て、死ぬ為に生を疾走する究極の怪物となった状態で。

 

 そうなればWが殺すしか道が無い。

 ケルシー自身、殺し切れる自信が無い。せいぜいできて無力化──つまり勝てないのだ。海の中の怪物さえも、真なる魔物と化したGの敵ではないだろう。いや、魔王さえも飲み込み吸収したとなったら、星そのものを砕けるかもしれない。

 

 唯一の弱点とも呼べるのは、人への愛着や殺されても良いという理解者や友達への情だけである。

 そして『敵』であるケルシーにできるのは、否定だ。否定とは会話や議論で起こり得るものであり、戦闘という殺しの場では決して起こらない。

 

 ──野に放たれてはいけない。

 ──しかし組織としては野に放つべきである。

 ──そしてそれは、この男が……Gという存在が伝説のジェヴォーダンの獣と知らない者こそが望むのだ。

 

「……だが」

 

 真に恐るべきは、自らロドスを去ることを選ぶ可能性。あれは筋を通す主義だ。

 なんらかの要因で自らの歪みと向き合わない限り、あの男は怪物へと回帰する。現実と空想の狭間に存在する、最強無敵の吸血鬼へ。

 真のサルカズ……万人が想像する残虐非道な悪鬼羅刹。そんなものを前にした時、被害無く切り抜けられる存在があるだろうか? 

 

「──私はどういう人間だったか」

 

 ならばどうするのだ? 

 どうしたらいいのだ? 

 

「……だが、もし」

 

 可能性に賭けるとしたら。

 

「あの男の意識に、なんらかの変化の兆しがあれば」

 

 全てに、意味があったとしたら。

 

「その意を試す、番人として立ち塞がるのだろうな」

 

 最強を求めながらも、ロドスの運命の前に立つ審判者として、その責務を全うするのだろう。




Gくん
案外内面は幼い人。そしてW姉貴に出会うまではとっくに最強になってた人
最強状態ならケルシー先生お墨付きの化け物ではあるのだが、弱点はチョロすぎること

ケルシー先生
頭痛の種がたくさんある人。実は『ジェヴォーダンの獣』の名付け親。
変に放り出すと10章で敵になりそうなバカの始末に困っている。そしてバカが勝手に出ていきそうで困っている。
でも奇跡が起きればワンチャンって考えてる。

そしてパト爺によって起きている。
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