アークナイツRTA参考資料「W姉貴のしっとり確率」ついでに「最強の伝説」トロフィーRTAの中途報告 作:W姉貴に負けたい人
チェンは狂気と相対したことは多々ある。
龍門の近衛局特別督察隊隊長として、そうした真作と贋作の狂気と何度も向き合ってきた。
なるべくしてなった狂気、狂気で飾り立てねばならないほど追い詰められた正気……大なり小なり、なんらかの事情が見えた。
そんな彼らが、まるで真実を隠して生きている己と被って──時折、彼らよりも自分自身が矮小な存在なのではないかと自問する時もあった。
感染者であるのに、父によって隠されて生きている──捨てられていないだけの自分。
思わなくもない、あるがままであれたら……と。
だが、この日目にした狂気はそれらとは異なっていた。龍門のスラムでミーシャの護送中に襲撃をかけてきたレユニオンを指揮する、幹部と思われるサルカズの男女。
その片割れ──黒髪青目のサルカズが纏う狂気は異質だった。へばりつくような湿度、生暖かい温度、吐き気を催すほどに新品同然になるまで丁寧に手入れされた一部の装備品、氷のような視線、そして……強い憧憬と信念。
真贋を問うことそのものが間違いだ。こう決めたので、そうする。それだけしかない。迷わないように努めるチェンを含めた特別督察隊の面々とは異なり、この男は何一つ迷わない。
──迷うという機能を廃したような男。雷雨と共に現れる一陣の黒い風。それが吹いた後には何も残らない破滅の風。謬、と凪ぐ空気のように、あるがままにある究極の正気。
ある意味では答えだったのかもしれない。こうなれたら、という自分の理想が形を変えて現れたようなものだ。迷わずただひたすらに行いたいことを行う──
「……ははは」
ああ、それは確かに格好いいが。
「どうやらお前と私は、相容れぬようだな──」
そんな
もっともこの男から感じるのは常軌を逸した執念と憧憬、そして狂気と愛情。端的に言ってチェン・フェイゼという人間が認められないタイプだ。自分の為にと様々なモノを轢殺し、鏖殺し、抹殺する。それに対して誰が幕を引こうが最期は勝手に何やら満足して死ぬ──
そして何より、相棒であろう女を見るその視線が。
父であるウェイ・イェンウーがフミズキや自分に向ける視線と確かに同じなのに。
正反対の、絶対に殺すという狂気を纏っているから。
それは確かに、ネガの自分だ。龍門の全てを守りたいと願うチェンと、自分以外の全てを滅ぼすと決めたこの男。似ているからこそ理解出来て、理解出来るからこそ認められない。
「滅びよ! ここはお前の住む世界では無い!!」
どうして人を愛することが出来るのに、その愛した人を殺すことを選ぶのか。
守り抜く勇気を理解しているのに、どうしてそれを他人に向けてあげることができないのか。現実と理想のギャップ、素直に生きるということの難しさ。それを貫き通せばこうなるという象徴。そして──父親がそうならないように引いてくれていたであろうレール。
感染者も健常者も関係無い、いるのは人間だけという悟りを得ているのに、どうしてこの男はそれらを滅ぼすことを是としたのか。
知りたくもない、わかりたくもない、理解したくもない。心を捨てたが如く、その心のままにある貴様にだけはなりたくない──!!
合わせ鏡の後ろ側に映る己の影の如き存在を宿敵だと本能的に感じたからこそ……絶殺の意志を宿して、赤霄を抜刀した。
過去最高の──ともすれば父の域にも達するかの如き斬撃。
「相容れぬか。確かにな」
「だが迷いを抱えた剣など、
「そんなオマエが……
それを、この男は──
────
……どうも大ガバやらかしていた一般投稿者です……
場面変わりまして近衛局強襲から始まります。
>到着よりも早く着いた。改めてルート取りをしていて正解だった
「プランは」
「爆破、散らし、奪取。移動開始しなさい」
「了解」
重装部隊が正面、強襲部隊が背後。オレとWは上空か。浮ついているのだろうか、普段とは異なる高揚感が身を包んでいる。しかしそんなオレとは異なり、Wはつまらなさそうに告げた
「あの近衛局の隊長さん、疲れる生き方してそうね」
「あの龍の女か。種族なぞ、別に気にしたところではないが」
「そうね。どっかのムカつくクソ女と同じ種族でも、まだあっちの方がマシだわ。でも見なさいよ、あの目。ぐちゃぐちゃに絡まって迷宮に囚われたお姫様みたい。理屈とか常識とか倫理に囚われて、あたしたちみたいに壁に穴を開けてここが出口って叫ぶことを選べないみたい」
……Wの言いたいことは何となくわかる。だが、アイツがこんなことを言うのは珍しいと思った。らしからぬと言えばいいのか、それとも──
「気になるのか?」
「ええ。昔のどっかの誰かさんみたい」
「やめろ」
まあ、オレに似ているというのはわかる。Wを受け入れることも、捨てることもせずにフラフラとしていた時のオレを思わせるのは事実だ。というか、そんなヤツのことをなんで気になっているんだ
「そんなことよりW。奪取はオマエに一任するぞ」
「ふーん? 妬いてるんだ、G」
「……うるさい」
ニヤニヤと顔を覗き込んでくるWからプイとそっぽを向くことで逃げ出し、視線を下に落とす。──そろそろだ
互いに私人として抱く感情が、傭兵としての冷徹な己にすり替わる。さあ、ビジネスを始めようか
「マジックアワーよ」
「ショータイムだ」
仕掛けた爆弾を起爆。重装隊、強襲隊が挟むのに合わせて、オレたちは上空から奇襲する
「──もーっと面白いシナリオにしてあげるから、楽しんでね? 近衛局の皆さん」
「さあ、狩りを始めようか」
近衛局のモブたちですが、練度が高いだけでそんなもんです。こうなった時点でハメ殺せます。気をつけるべきはチェン姉貴だけです。赤霄の範囲、威力、速度、どれか一つでも見誤れば真っ二つにされます。特にチェン姉貴は精神状態によって戦闘能力が大きく異なるので、あっさり倒せる時と厳しい戦いになる時があります。
7章以前ならやれ「感染者狩りは楽しかったか感染者」とか「父親に庇護されて正義の味方ごっこは楽しかったか雛鳥」とか「何をどう言おうがチェルノボーグを焼き払ったレユニオンと何も変わらないんだよオマエは」とか煽りまくれば心へし折れるんですけど、覚悟完了してしまうと
「戯言を」
の一言と共にぶった切られます。(1敗)
>適材適所の問題だから、オレが近衛局の隊長に当たるのは必然だった。しかし目を合わせて理解した。これはまるで──
「……ははは」
女の自嘲が聞こえる。見えるぞ、その迷い。確かにWの言った通りだ。壁に穴を開けてここが出口と言い張ることのできない何かに囚われた姿。しかし彼女を捕らえているモノが、彼女を彼女足らしめているし、それが強さの源になっている。なるほどな
「どうやらお前と私は、相容れぬようだな──」
女はそう呟いた。全くだ、オレもそう思うよ
……あり? チェン姉貴もしかして
>ゆったりと構えていく。あれは確か……抜刀術とか呼ばれる剣技だ。しかしあの動き、誰かに似ている。誰だ……? 何処かで見たぞ、その動き。その呼吸。オレはそれを、つい最近……
「滅びよ! ここはお前の住む世界では無い!!」
女が叫んだ。剣を抜かんとしている。疾く、鋭い。だが──
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?
絶対殺すウーマンのチェン姉貴じゃねぇかァァァ!? テメェェェェェェェ!!!!
ヤバい、このステでガチガチのチェン姉貴の赤霄・抜刀に耐えられ──ない!! どうする!? どう対処すればいい……!? 避けるには速度が足りない! 耐えるにはステが足りない! できることは同じ火力でいなす以外には無い!
理論上匹敵する火力を出すには──
>「相容れぬか。確かにな」
その通りだとオレも答える。オレとオマエは相容れない。守る者と殺す者は、生きる世界が違うのだから
「だが迷いを抱えた剣など、
しかし迷いを抱えたまま振るわれる剣では、相反する光と影を断ち切ることなどできない。エンカクもこの言には頷くだろう。迷えば敗れると
まあ、色々言ったが
「そんなオマエが……
迷えるオマエ程度では、オレの死になり得ない。そして何より、W以外に殺されるオレなどオレではない
「──青雷の剣、見せてやろう」
稲妻を迸らせる。剣を雷が包み込んでいく。軽く飛び上がり……一条の光となったそれを振るう
>青雷を纏った剣が、赤光を纏う剣と激突する。光刃と光刃がぶつかり、そして光が弾け、凄まじい衝撃がスラムを揺るがし、オレたちはたった一撃合わせただけで、互いに決して浅くはない損傷を受け──オレはそれに耐えるし、アーツで治す。鉱石病が進行するかもしれないが、知らん。耐えると決めれば進行も抑えられる。そういうものだろう。W以外では死なない
「くっ……!」
膝をついた女を見据える。その迷いと向き合えば、オレも納得して殺されてやれるだろうな。まあ死んでやる気は毛頭無いが
「迷える汝が赤光、迷いなき我が青雷には勝てぬ」
「確保完了。口説くのはやめてあたしの相手をしなさい」
「了解。──滝を登り切れよ、錦鯉」
溶け落ちた剣を捨て、信号弾を撃ち、周辺の建物を爆破しつつ撤退していく。部下たちはそれぞれ別ポイントから離脱し、合流することになっている為、今ミーシャを抱えているWと共に離脱しているのはオレを含めてもそれほど数がいるわけでもない
っっっっぶねぇぇぇぇぇぇぇ……!!!!
飛んだ! HP9割消し飛んだ!! 雷返し一発の為にHP9割消し飛んだぞオイ!! ふざけんなあの尻の弱い龍女! ウチのGくんが自壊ダメだけで死にそうになったじゃねぇか……!!! ぶち犯すぞテメエ……!!
クソわよ! お排泄物ですわ! 変なところで変な覚醒しやがって……
こほん、失礼。
──とりあえず雷返しで窮地は脱しましたが、はっきり言えばこの後接近戦できるだけの余裕はありません。スカルシュレッダー回収は遠距離戦かつ無理の無いアーツ使用にしなければ回復速度より負荷が勝って即自滅します。なので……予備の剣を装備しても戦闘では使いません。スカルシュレッダーのグレポンと長銃で制圧戦を仕掛けます。W姉貴の爆弾と合わせての銃撃戦です。
クソ、チェンを甘く見ていた……こいつも覚醒組だったかッ。ええい、こんな時に主人公力発揮するなよ面倒な! これだから覚醒できるだけの苦痛を心に持っている奴らはチャートでハメ殺すのが最適解になりがちなんだ……! この前のエンジョイプレイでドクターが覚醒した時とかマジでドクター神拳でボコってきたんだぞ……
私「死ねよやー!!」(JNSN)
ド「ロドス製薬を舐めんじゃねぇ!」
私「あんたホントに……研究者かよ……」
あのドクターマジで謎だわ。
まあそんなことは置いといて。
>連れ帰って装備の補給を行う。何やら小僧とミーシャが喋っているが全て雑音だ。……接近戦は無理がありそうだな。流石にこれは、メフィスト辺りの回復アーツが必要になる。ファウストからの連絡は無い……が、焦る必要もないだろう。あのメフィストのことだ。策は用意してある筈だ。クラウンスレイヤーもこっちへ向かっていると聞く
「どう?」
「接近戦は厳しいな」
「まあ撤退戦だし、撃ち合いの方がいい気もするけどね」
Wとの会話をしつつ、身体を確かめるがやはり短時間での回復は期待できそうもない。無茶は効くだろうがそれだけだ。それでは何の意味も無い。チラリと欠片だけの期待を寄せて視線を変える。小僧がミーシャに戦う術を教えている
「何がしたいのかしらね、スカルシュレッダーは」
Wの呆れ半分な声が聞こえる。当然だ、やれロドスは悪。チェルノボーグは悪。自分たちは正義。レユニオンは希望。聞こえるのはこんな言葉だけ
「なんかしたいんだろ」
守ると言いながら殺戮の術を教えている小僧に侮蔑を抱きながら吐き捨てる。Wがクスクスと笑っているあたり、さぞ酷い顔をしているのだろう
「ふふふ、そんな顔をしないで。ほら」
スルリとオレの視界いっぱいにWが映る。真正面から見つめてきているだけだが
「なんだよ」
「笑ってみて」
「こう?」
「ダメね」
「悪いね」
Wはそんなやり取りが面白かったのか、穏やかな笑顔を見せた。腹の探り合いは疲れるのだろう。こういうことを任せているのだ、これくらいでアイツの気持ちが落ち着くのであれば、安いものだ
会話が聞こえる。やはり追撃戦を仕掛けてきたか。どうやら小僧が殿を務めるそうだ。……は?
何がしたいんだ? 守る? それで? ははは、何の冗談だ。つまらないにも程がある。行動が一貫していない。信念も無い、復讐心も何も感じられない。あるのは怒りだけ。狂気の奴隷になっているだけだ
しかもWがドクターを殺せばいい、などと小僧に言っているが──無理だとわかっているだろうに
小僧の部隊が奇襲ポイントへ向かっていくのを見ながら、Wに声をかける
「無理だな」
「野良犬にはいい死に場所でしょ」
「ふん」
小僧は十中八九死ぬ。まあ、メフィストとファウストとは異なり、あれはレユニオンに忠実な駒だ。いずれ敵になる。だから始末する。当然だ
……まあアレックスくんそんなものですからねェ。
ドクターに用がある筈のW姉貴にしては妙だなーって思って考えてみれば、そこらで死んでくれると助かりますよ。それも疑問を抱かれないレベルで。
言ってしまえばミーシャに対する付け合わせのミックスベジタブルですからね、彼。
>合流ポイントへ移動していると、ミーシャが何やら悩んでいる様子だ。周りのヤツらとの会話を聞くに、小僧が気になる様子だ。小僧には失望させられたが、コイツはどうなのだろうか。その疑問を抱いたオレは……
────
弟がそんなものなら姉もたかが知れている
>姉は違うかもしれない
────
後者です
実際はどうか知りませんけど
>「あの小僧、助けてやろうか」
「……え?」
「どんな手でも使って、連れて帰ってきてやろうか。小娘」
気付けば声をかけていた。やはり、目が違う。これは期待できるかもしれない。だから声をかけた。Wは何も言わないようだ
「G……? どうしたんだ、お前」
「黙っていろ。オレは小娘と話している」
「本当に、スカルシュレッダーを助けてくれるんですか?」
「ああ。必ず生きて連れ戻す。だが、オレはタダ働きは嫌いでね。対価を支払ってもらうことになるが、どうする?」
ミーシャは悩むことなく、頭を下げた
「お願い……! 弟を、アレックスを……スカルシュレッダーを! 助けてください! なんでも、しますから……っ」
ん? 今なんでもするって言ったよね?
>──面白い
「天に吐いた唾は飲めんぞ、
「はい……家族を、もう見捨てたくないから……」
「W。少し借りてくぞ」
「あんたが行くならあたしも行かないとね。遅れて着くけど」
踵を返して戦場へと向かう。さて、あの小僧を助けたくもないが、ミーシャの頼みだ。仕方あるまい。助けてやろうじゃないか……どんな手を使ってでも、な──
というわけで、スカルシュレッダーくんの自爆特攻に乱入します。まあ今回も視点を変えた方がいいでしょうね。ちなみに速度がこっちのほうが早いので、レユニオンモブ兵は遅れての登場となります。
そんなわけで、視点変更〜
────
「──え?」
アーミヤの間抜けな声が漏れた。鮮血が舞う。腕が舞う。
スカルシュレッダーの自爆特攻。
それを阻止したのは……
「、ジ……ィ……ーッ、!?」
「落第だ、小僧」
レユニオンの幹部の一人、サルカズの傭兵Wと背中を合わせる男──G。
手にしたマチェーテの如き形状の刀身を持つ長剣で、自爆を阻止していたのだ。スカルシュレッダーの左腕ごと斬り捨てることで。
「グッ、くぅぉぉぉぉ……ッ!」
声を殺して腕を抑えるスカルシュレッダーに、左腕を見せつけるように持ち上げて、また捨ててからGは心底から馬鹿な子供でも見るようにして近付いていく。
「裏切り、か……!」
「ミーシャに泣き付かれたからだが? 別にオマエがここで無駄死しようともオレは構わないんだがな。ああ、あと、オレとしてはドクターに死なれては困る。アイツは聞きたいことが山ほどあるそうだからな」
「……ミーシャが……?」
「しかし色々聞いてたが、なんだオマエ。ロドスは悪でレユニオンは正義で、立ち上がらなかった者たちはそれだけで罪だと? ははは、傑作だな。左の目を閉じたまま世界を見ていてはこうもねじれるか」
剣を納めることなく、飄々とした態度でやや詩的な表現をするGの異質な雰囲気は一瞬でこの場を支配した。一体何を、と口にすることすらできない。自爆を阻止する? 何のために? それに片手を切り飛ばして? 理解が追い付かない。それどころか同じ陣営の幹部に向けるとは思えないほどの軽蔑した視線は異常そのものだ。
彼は教授するように語りかける。
「いいか小僧。何故感染者は悪とされると思う?」
「それは、っ……! 感染者だからだろう!? いるだけで疫病を撒き散らすからだろう!? そうやってあいつらは俺たちを否定した!」
「そうだな。ではその判断の根拠となるものは?」
「──は?」
「知らんか。なら教えてやる。救う価値が無いからだ」
あっけらかんと、このレユニオンの構成員は自分たちを否定した。感染者を救う価値などない、とレユニオンを全否定するようなセリフと共に自分諸共否定した。
「不治の病。死体から経由して感染が広がる……そんなもの、受け入れるより排除した方が楽だろう」
「そんな、理由……で」
「ああ。そんな理由だ。感染者は危険だから不当に扱われる。これがこの世の真理で、そしてレユニオンが目の敵にされる理由だ」
Gはスカルシュレッダーに対して3本の指を立てて告げる。──回答権は3回で、一問一答だと。
「問題。何故ロドスはオマエと同じ立場でありながら、オマエたちを迫害した側とそれなりに上手くやっていけている?」
「知るかそんなもの……」
「回答放棄は死に直結するぞ」
長剣が残っていたもう片方の腕を斬りつける。くぐもった声を出すスカルシュレッダーに対して、なんでも無いようにGは血を振るい落とし、もう一度指を、今度は2本立てた。
「正解は危険性を理解し、神秘のヴェールを自分から剥がしているからだ。人はなによりもわからないモノを恐れる。正しく鉱石病を知り、研究すればいずれ不当な扱いは無くなるだろうさな」
「……いっ、いつか、では遅いんだ! 今すぐに、でも──!」
「東では滝を登り切った魚は竜になるという。物事は常に暗闇の荒野に光を灯す作業。歩くような速さで進めず、駆け抜けていくのであればそれはただの幻想に過ぎない。無い物強請りも悪くはないがな、せめて現実的にしろよ」
なぁ? とまるで同意を求めるように視線を投げかける。もっともそれに答えられる者はいない。値踏みをするような視線と、この救いようのないバカを笑ってくれと言わんばかりの同調を望む視線。そんなものを見て誰が答えたがるものか。
そしてGは、レユニオンの最初の暴挙にも触れていく。
「問題。チェルノボーグでの殺戮は有益だったか、無益だったか」
「有益、だ……!」
「残念、無益だ。タルラにとっては有益だったが、オマエたちのような下々には無益だよ。自分たちから迫害を更に受ける道を歩むとは、余程苦痛を愛しているようだな」
「……!!」
「ちょっと考えればわかることだろ? 都市を滅ぼしたのは感染者の群れだ。なら感染者を人は恐れる。その果てに待つものは? 単純、感染者へのより強い迫害だよ。そもそも前提からしておかしいのさレユニオンは」
言われてみればそうである。何故チェルノボーグを? という疑問だ。ロドスも近衛局も辿り着いてた疑問を、参加側だというのにこの男は持っていた。それは極めて俯瞰的な物言いであり、寸分の興味も無いことの証明。心底から感染者も何も関係無い、一種の悟りを開いているも同然だ。
更にGは、スカルシュレッダーの持つ致命的な歪みを切開していく。
「問題。ミーシャを守るとはどういうことだろうな」
「……それ、は……」
スカルシュレッダーは、それだけははっきりと。
「彼女の側にいて、襲ってくる敵がいるなら……それを、倒すこと」
「正解だ」
正解を告げた。
その正解を鍵に、ジェヴォーダンの獣は狂気に支配された子供に冷たい現実を突き付けていく。
「それで今、オマエは何をしている? ミーシャを守るとは程遠いことをしているじゃないか。自分たちの敵を滅ぼすことを優先して、Wからの入れ知恵を変に使って捨て身の特攻……どうして部下に爆弾を持たせて特攻させなかった? どうしてドクターを殺すのは自分だと決めた? ──なっちゃいない、なっちゃいないぞ小僧」
ミーシャを守るのは誰でもいいわけがないだろうと。家族を守るなら何故自分が捨て身の特攻をしたんだと。Gの表情は愉悦に歪み、口元は邪悪な狼の如く裂ける。
「木っ端の子犬どもが狼の群れを統率できるとでも? できるのは狼だけだ。狼であるオマエが死ねば、スカルシュレッダーに着いてきた連中は一瞬で崩れ落ちる。結局オマエは、ミーシャの為だ感染者の為だ死んだ同胞の為だ叫びながら、自分の中の怒りを吐き出す先が欲しかっただけだ。溶け落ちそうな怒りはすぐに冷ますべき、という。ならばオマエは何の為に戦っていたのか──教えてやろう」
「やめ、ろ……やめ──」
「適当な言い訳で自分を取り繕いながら自分の怒りの為だけに戦っていた。そうだ、オマエはオマエ以外に大切なモノなんてないんだよ。だから言っただろう、捨てる手間も省けてよかったじゃないかってなァ?」
がしゃん、と音を立ててスカルシュレッダーが崩れ落ちる。出血での気絶もそうであろうが、それだけではない。Gの指摘で心が折れたということもある。そんなスカルシュレッダーを担ぎ上げつつ、Gは侮蔑の表情で吐き捨てた。
「所詮子供か。つまらんな」
「あなたは立場すら掴めなかった人たちに、何を求めているんですか……?」
一歩踏み出したアーミヤが、やっとの思いで尋ねる。
「何も求めていないとも。ただ少なくとも守ると戦うという違いくらいは知っているかと思ってただけだ。それがこんなバカだったとはな。ああ、チェルノボーグのどさくさで殺しておけばよかった──!」
レユニオンという組織そのものへの不快感。スカルシュレッダーへの殺意。全てがぐちゃぐちゃに絡まってへばりつくような湿度を纏った言葉。この男は、何を見て何を考えている……? 理解できるはずなのに理解できない。人の形をした別の何かのように。
そしてアーミヤに視線を向けて、アーミヤへ言葉を投げかける。
「見たかアーミヤ。コイツらは思考を止めている。オマエたちを一方的に悪として、自分たちは正義だと。正義と悪を決めるのは歴史、それを自分で定めるのは傲慢だ。オレたちに許されたのは、オレたちがその時正しいと信じた行動を行うことだけ。絶対正義も、絶対悪もありはしない。こんな傲慢なヤツらに救う価値などありはしない」
その言葉は、諭しだ。
真剣にロドスという組織を諭す、今までの狂獣のような雰囲気とは全く違う賢者の如き発言。何故レユニオンを救う価値が無いのかを論理的に説明しながら、そんなものの為に労力を使うなと真剣に説いている。
「──レユニオンは滅びる。何処かの誰かに使い潰されてな。オレたちサルカズの傭兵は自由だ。誰を選ぼうが金を払うなら仕事をする。……だがウルサスの為にタダ働きなどお断りだ。頭を働かせろ。政治に関心を持て。レユニオンの裏を見つけてみろ。何故チェルノボーグを潰されたウルサスが沈黙しているのか、これはただのテロではない。巨大な陰謀だ。龍門としても調べておくことを推奨するがね」
「そんな戯言を──!」
「信じろとは言わん。だが徒労に終わればそれでよかろう? ロドスはケルシーあたりに伝えておけ」
気を遣っている。思わず吠えてしまったチェンですら、呆気にとられる程の気遣いだ。真剣にこの男はレユニオンの裏にある陰謀を警戒し、ロドスと龍門へ警戒を促している。何がしたい? 何を考えている? 何もわからないからこそ不気味に映り、かと言って戯言と流すには真が入っているその様子。
全てがズレているのに一本の線のように芯が通っている。混沌の擬人化の如く複雑怪奇のようでその実単純にも見える。
「ミーシャさんを、どうするつもりですか」
「別に。コイツの姉貴らしいが詳しくは知らん。ミーシャが修羅になろうが何になろうが、それはアイツの選択。彩られたタペストリーの色が美しいかどうかは、自分が決めることだ」
本気で知らんしどうでもいい──いや、そんな程度自分で決められると言わんばかりの態度。なんだろうか、信頼や信用にも近い。不気味なそれ。正しく理解しようと思うこと自体が間違いなような、暖簾を押すような感覚。
「さて、帰してくれるかな。1秒たりともこの生ゴミを触っていたくないんだ」
「──ふざけるな。お前たちはここで終わる」
「残念ですが、私たちはレユニオンを認めるわけにはいきません」
戯けたようなGに対して、彼を除いた全員が構える。包囲されているにも関わらず、余裕すら漂わせているが……
「手の内は聞いているぞ。生体電気の大幅な増加による雷撃。自傷もただではすまない筈だ」
チェンを庇うようにリスカムとホシグマがジワリジワリと距離を詰めていく。エクシアとアーミヤが遠方から抑える。テキサスとフランカがいつでも切り込める位置を陣取る。ドクターを守るようにブレイズとサリアが位置取る。
ふむ、と呟いたGは。
「降参だ」
片手を上げて、そう言った。
一瞬、呆気に取られる。
「もう一度言う。降参だ」
「……なんだと?」
「──そしてオレが降参すると龍門の民間居住区に仕掛けた源石爆弾が炸裂するようになっててな」
「嘘だな」
「メフィストはそうすると言っていた」
「……それは、本当ですか」
アーミヤはメフィストの狂気を知るが故に尋ねて──
「デタラメだよ。本当は──」
刹那、スカルシュレッダーの斬り落とされていた左腕に握られた爆弾が爆発する。凄まじい爆炎がその場を包み、更に採掘場の各所が連鎖的に爆発する。白燐爆弾も煙幕爆弾も電波妨害爆弾も含めた多様な爆弾が炸裂し、一瞬だけ混乱する。その隙を逃さずと無数のレユニオン構成員が雪崩れ込んでくる。
「67秒早かったな……」
爆炎の中でGはそう呟くと、わざわざやってきてくれた捨て駒たちを囮に、離脱を開始した。
────
>「早かったなW」
場の混乱に乗じて離脱する中で、思ったよりも早く来てくれた相棒に声をかける
「ミーシャがどうしても急げってうるさかったのよ」
「オレが心配じゃなかったのか。薄情な」
「あなた、どーせ真面目にやる気なかったでしょ? ロドスに捕まえさせて無理矢理延命で約束を守ったとか言うつもりだったくせに」
「バレたか」
小僧の求心力はそれなり以上だ。死ねば英雄になってくれるかとも思ってたから、テキトーに殺しても良かったのだが
はい、ということでハッタリと欺瞞降伏を使いました。スカルシュレッダーくんへの授業は時間稼ぎの一つです。いやぁ、サリア姉貴とブレイズ姉貴がいるんじゃ無理です。どうしようもありません。逃げるが勝ちです。異常な事を言いまくれば呑まれてくれるのは助かりますよホントに。
あと時限爆弾的にスカルシュレッダーくんの左腕が爆発したのはアレがアーツに反応する爆弾だったので、ちょっとこっちのアーツを使うことで擬似的な時限爆弾にしました。予想より早く爆発したけど。
>追ってくる連中はWと部下たちに任せながら、オレは合流ポイントへ急ぐ。ふと思い付いたのだ──ミーシャはスカルシュレッダーになってくれるか、と。オレが喰らい殺すに相応しい存在になってくれるなら、めっけものだ。ロドスに行こうがどうでもいいが、それだけはやっておきたい
というわけで帰ったらミーシャ姉貴をスカルシュレッダーにするため有る事無い事吹き込みます。
今回はここまで。
ご視聴、ありがとうございました。
チェン姉貴
迷わなかったらなぁとか考えてたら迷わない奴が来て、その異常っぷりに殺さねばした
だが迷いを抱えていたため、GくんのHP9割を吹き飛ばす程度に終わった
スカルシュレッダーくん
Gくんに片手斬り飛ばされて本音を突き付けられた付け合わせのミックスベジタブル
流石にかわいそうに思えてきた
ミーシャ姉貴
ん? 今なんでもするって言ったよね?
ならこの、スカルシュレッダーマスクを付けてぇ……
Gくん
雷返しでHP9割消し飛んだため滅茶苦茶やせ我慢と空元気
なのでまともに戦闘しないし欺瞞投降までした
W姉貴
疲れたのでGくん成分補給