【短編集】 恵といちゃいちゃ過ごす夏休み   作:きりぼー

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日曜の朝だからこそ、こんな話題を投稿してみる。


「おはよ」って聞こえない声でつぶやくような距離で恵がしたいこと

第12話 「おはよう」

 

8月1日 日曜日 夏休み11日目。

 

空が白み始めて、カーテンの隙間から微かな光が倫也の部屋を少し明るくする。時刻はまだ6時にもなっていない。

 

 今、ベッドの上では恵が寝息を立てて静かに眠っている。倫也は天井を見つめて耳をすませ、その寝息を聴きながら、ぼんやりとした頭で考える。

 

サークルメンバーは倫也の部屋に泊まったことがある。

従姉妹の美智留は住んでいたこともあり、よく泊まっていった。

詩羽も作業で徹夜して、そのままベッドに倒れ込むように眠った。

英梨々は明け方までゲームして、そのまま眠ってしまったのを倫也はベッドに抱きかかえて運び、寝かせたこともある。

出海だけはいつも帰ったが。(律儀に伊織が迎えにくる)

 

別に間違いが起きることはない、徹夜をしているのは倫也も同じで、床に敷いた布団で眠るか、デスクに座ったまま眠る。

 

詩羽と英梨々がサークルを離れてからは2人がこの部屋にくることはなくなった。今は2人とも新しい仕事で忙しい。

 

新サークルになってから、週末に何かと理由をつけて恵が泊まるようになった。月に1回ぐらいだったのが、隔週になり、毎週末になった。

夕食を一緒に食べ、その後の時間をアニメ鑑賞やゲームや、あるいはゲーム作りをして過ごし、11時過ぎた頃に2人は終電を意識しだす。

そこから2人は時間を強く意識しながら、意識しないように過ごしてなんとかやり過ごし、終電が間に合わない時間になると、ほっとしたように恵はシャワーを浴びにいった。

 

それが少しずつ恒例化し、倫也は恵に貸し出す部屋着を準備するようになった。

夏なので白の上下を用意した。サイズは倫也のもので女の子用ではない。でも倫也は着ていないし、恵が泊まる時のためだけに用意したものだ。もっと恵に似合うフェミニンなものを用意したいとも思うがうまい口実がみつからない。

きっとピンク色のネグリジェなら恵にはよく似合うだろうと思う。一緒に寝間着を買いに行ったらいいのだろうか?

そんな理由ででかけられるわけもなく・・・今にいたる。

 

 

 

ある日。夜に目覚めた時に何気なく寝ている恵をみたら、彼女は体をくの字に曲げて眠っていた。

そのやや大きい胸の谷間がシャツの合間から見えた。

そのふくらみのトップのところがポツンと形を変えていることに気が付いた時、倫也はあせった。

恵は眠る時にはノーブラ派だったのだ。

それを裏付けるように、綺麗に折りたたまれたブラジャーがベッドの端っこに置いてあった。

もちろん、倫也は気が付かないふりをし、恵の体を凝視するような無粋なことはせず、すぐに自分の布団に戻った。そして再び寝付けないまま朝を迎えた。

 

 

 

6時前のこの時間に、特にトイレにいきたいわけでもないのに目が覚めるのは、そんな淡い期待があるからに違いない。潜在意識って恐ろしい。

 

倫也は音を立てないように静かに立ち上がった。

恵の方をみないように気を使い、扉を静かにあけて階段を降りてトイレをすます。

キッチンでコップに半分ほどの水を飲み、それから階段を上って部屋へ戻る。

この時に、「なにげなく」視界に恵の寝ている姿を捉える。あくまでも、しょうがなく恵の寝ている姿が目にはいるという理由が大事だ。

 

恵は仰向けに寝ていた。

 

ブランケットは腰から下のあたりにかかっているが、スネのあたりから下は素足のまま外にでている。胸は重力に従って、大きなふくらみはなかったが白い服の皺に、小さな山があるような気がするのは先入観だろうか。

髪が乱れている。

寝ている恵にはセクシーさはなく、寝相も悪いので、まだまだ少女のようなあどけない印象を与えた。

 

 倫也はすぐに目をそらせる。ちょっとにやける。たぶん白い上下のパジャマが少年のようなイメージになり、性的な印象をだいぶ緩和している。そうでなければ、やはりもっと見つめてしまうに違いない。

 

恵の信頼に答えるためにも、倫也は再び布団に横たわり、腕を頭の後ろに組んで考え事にふける。

 

メインヒロインルートの物語はメインヒロインと結ばれてからの物語ではない。

あくまでも彼女が主人公を好きになっていく物語になるはずだ。それがどんなものなのか、どうすればメインヒロインが・・・恵が自分を好きになってくれるだろう?いや、それはおかしいか・・・自分の気持ちは・・・

 

ロジカルに考えず、恵と過ごしたいことを妄想する。もう少しデートを重ねた方がいい。でも、恵はサークル仲間だから一緒にいてくれている。距離を縮めることに失敗したらゲーム作りも頓挫するし、恵もこなくなるかもしれない・・・

 

・・・倫也は何度も考えたことをうじうじとまた考えているうちに、再び眠りに落ちた。

 

 

※※※

 

 

 7時を過ぎた頃、外の小鳥の鳴き声で恵は目を覚ました。

倫也よりも先に起きなければならないという意識がそうさせたのか、あるいはいつもの習慣なのかわからない。

横になったまま耳をすませる。倫也の寝息は聴こえてこない。空調の音だけが静かにうなっていた。

 

体を横にすると胸の先端にシャツがこすれた。下で眠っている倫也の方をのぞき込む。倫也の寝相がいつ見てもいい。まっすぐ体を伸ばして寝ている。童顔なせいかとても子供っぽい。恵は満足するまでじっと倫也の顔を眺めていた。

倫也が寝ていれば、どんなに見ていても気づかれることはない。

 

(おはよ)

 

音は出さず口だけ動かす。そして恵は微笑む。至福の時。

 

上半身を起こし、まずはブラジャーをつける。

これだけは倫也にみつかるわけにはいかない。

胸を手で寄せて形を整える。

手櫛で髪の乱れも直す。

口に手を当てて息を吐くとまだニンニクの匂いが残っていて、ちょっとショックを受ける。あんまりバカなことはしないほうがいいと反省した。

これでは何かの間違いでキスをするようなことになったときに、絶対に拒否しないといけなくなる。

どんな間違いがあるのかは全く想像できないが、もしかしたら、倫也くんが襲ってくるかもしれない。

その時はその時で考えるが・・・と想像したとこで、自分で笑ってしまう。

 

恵はまた体を仰向けにする。ベッドから起きてしまうと、そのまま日常がはじまってしまう。このベッド上で微睡む時間が今ではとても好きだった。

 

『性』を抱える年齢になり、それなりの覚悟や期待のようなものがある。

相手は倫也なのでそこは問題ない。

男の子の家に泊まっておいて、間違いが起きたといっても予測がまったくできないわけでもない。もちろん、そんなことにはならないだろう。100%の信頼を、あるいは失望をもっている。

 

倫也の寝顔をみていると触れたいと思う。

無邪気な寝顔を指でつつきたいような衝動もある。

あるいは横に添い寝をして抱きしめたい、抱きしめてもらいたいとも思う。

でもその先はうまく想像はできない。何をするかはわかっていても、自分がそうなるとは思えない。

 

(男の子は・・・倫也くんはそんなことを想像しているのかな?)

 

恵は自分で勝手に想像して、顔を赤らめた。

 

(・・・あれ、もしかしてぜんぜんそんな風に思われていない?なんでこんなに何事もないまま幾夜もすごしているのだろう・・・自分に魅力がぜんぜんない・・・とか。そんなことはないはずだ。倫也くんは自分といる時によく顔を赤らめている。好意を持っていることは伝わる。あとはけじめだけだ。そのためのメインヒロインルートのはずだよね?)

 

あっ、なんか考えていたらだんだん腹が立ってきた。

 

今日は倫也と朝起きた時の話だ。あざとい恵は、「おはよう」と倫也の耳元でささやくことを期待されている。優しく迎える素敵な朝・・・

 

でも、なんだか下で寝ている鈍感主人公に腹立たしい恵は、嫉妬深いと表現される設定に甘えて、今したいことをすることに決めた。

 

※※※

 

 恵はベッドから起き上がり座った。そして下にいる倫也を足で踏んだ。

 

「ぐぇ!」

 

という、見事な踏まれた時の反応を倫也がみせる。

 

「ふふふっ」

 

と恵は笑ってしまう。

倫也はわけがわからないよ!?という風な寝ぼけた顔をしている。

 

「おはよう。倫也くん」

「って、足はどかして!?」

 

恵はベッドに座ったまま、足で倫也の腹のあたりをぐりぐりと踏んでいる。

 

 

 

・・・だって、英梨々がしたことは自分だってしてみたいじゃない

 

 

 

(了)

 

 

 

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