バージョンアップされた恵
R指定をつけないまま、後半はいちゃいちゃ いちゃいちゃして話を作っていくわけだけど、今日は休憩するってさ。
8月15日 日曜日 夏休み25日目。
倫也がヘトヘトになって家に着いた時、日付は変わっていた。
家には電気がついていた。倫也がリビングにはいる。
「よっ!トモ」と、美智留がソファーに座って手をあげて出迎えた。
「美智留?どうした?」
「お説教タイムでしょー、トモ」
「いや、怒られるようなことは・・・」心当たりがありすぎて困る。
美智留は先に戻ってきてシャワーを浴び、今はいつものシャツと短パンの寝間着姿だ。
「加藤ちゃんは?」
「帰ったけど」
「なんだー。泊まるのかと思って見張りにきたのに・・・」
「親かっ!」
「だって、最近のトモ自制心とか政治家の公約と同じぐらい信用ないじゃん」
「社会派な例えだな・・・とりあえず、シャワー浴びてきていいか・・・?」
美智留はTV画面の方に顔を向きなおして、手を上でふっている。
※※※
倫也がシャワーを浴びて、さっぱりとする。冷蔵庫から麦茶を出してグラスに注いで、リビングに座った。
「で、美智留がわざわざいるということは、何かあったんだな?」
「うん。もうあたしも眠たいし、核心だけ伝えておくよ」
「おう」
「・・・出海ちゃん泣いてたよ?」
「えっ?」
美智留が立ち上がる。「あたしはおばちゃんのベッドで寝るから。じゃ、おやすみ」
「・・・おやすみ」と倫也がかろうじて返事する。
倫也も飲み終わったグラスを軽く洗って、それから自分の部屋へと戻っていった。
部屋のエアコンを軽くつけて、ベッドへ倒れ込む。
しばらく考え事をしていたが、頭が回らずにやがて眠りへと落ちていった。
※※※
翌朝、倫也は9時頃に目が覚めて起きた。リビングにはもう美智留がいてソファーでTVを見ている。朝食の準備はしていない。
倫也は洗面所で顔を洗い、歯を磨いた。キッチンにいき、器にコーンフレークを入れミルクを注いた。スプーンをもって、テーブルの椅子に座る。
「なぁ、美智留・・・もう少し詳しく話をしてくれないか?」
「別にトモだけが悪いわけでもないし、どうしようもないことなんだろうけど」
「うん」
「今の新サークルメンバーを言ってみて」
「俺、美智留。恵、あと出海ちゃんと伊織だな」
「そこからicy-tailの関係者をひくと?」
「関係者というと、ボーカルのお前と、マネージャーをやっている伊織か」
「そう。あたしと波島兄ちゃん。で、倫也と加藤ちゃんが早々とカップルになると、誰が残る?」
「・・・出海ちゃん」
「それが昨日、起こったことだよ。トモ」
「・・・でも、出海ちゃんは美智留たちと合流したんだろ?」
「あたしと波島兄ちゃんの2人と合流した」
「他のメンバーは?」
「icy-tailのメンバーが、この同人の中で描かれているのをあたしは知らないのだけど?」
「ちょっとまって!?それもう設定が・・・」
「サブストーリーは冗長だって、波島兄ちゃんも言っていたけど・・・ちょっとサブヒロインをないがしろにしすぎじゃない?」
「まてまて、おまえ、伊織と2人でいたのか?」
「・・・」
美智留の目が泳ぐ。
「あたしのことはいいんだよ。トモ。問題はトモがこちらと合流せずに、加藤ちゃんと2人になることを選んだことでしょ?」
「・・・ふむ」
「それも一緒にいた出海ちゃんを置いてけぼりにして」
「置いてけぼりなんて・・・したな」
「サイテー」
美智留が倫也を見下した目でみている。自分のことは追及されたくない。
「なんか、話はぐらかされてない?」
「さぁ」
「で、出海ちゃんはどうしたの?」
「泣きながら帰った」
「おい・・・追わなかったの?」
「すごい人混みだったし・・・波島兄ちゃんが無駄だって」
「・・・くっ」
倫也はコーンフレークを食べ終わる。キッチンで器をあらって籠にふせて置く。
それから、ソファーに座ってケータイを取り出した。
「伊織に確認する」
「別にいいけど、問題は解決しないんじゃないの?」
倫也が伊織に電話をする。
『やぁ、倫也君。どうしたんだい?朝から』
「ちょっと確認したいんだが・・・昨日、何があった?」
『その質問は漠然としすぎているな。深夜アニメの放送内容でも・・・』
「ふざけるなっ」
『おや?倫也君。怒れるような立場なのかい?』
「伊織・・・お前・・・美智留と付き合ってるのか?」
『まさか、冗談はよしてくれよ、サークル内恋愛ほど面倒なものはないよ?』
「出海ちゃんは?」
『いるよ?』
「・・・謝りたいことがあるんだが」
『無駄さ。君が加藤さんを選ぶ以上は出海にはチャンスがない。なに心配はないさ、仕事はちゃんとやらせる』
「・・・そんなことを心配しているんじゃない!」
『どうしようもないだろう?ハーレム型主人公が1人を選べば、あとのサブヒロインは泣く。それは鉄則さ』
「そんな話じゃなくってだな・・・」
『まっ、僕には物語の構成はよくわからないから、霞センセイにでもきいてみたら?』
「とにかく、出海ちゃんと話がしたいのだけど」
『直接電話したらいいじゃないか?』
「・・・そうだな」
倫也は電話を切った。続いて、出海に電話をかけたがもちろんでてもらえない。LINEに話がしたいことをメッセージで送信した。
「トモ。出海ちゃんがゲーム制作から降りるなら、あたしも降りるよ?」
「美智留・・・おまえまで」
「だから、こんな加藤ちゃんとイチャイチャするだけの物語なんて、無理なんだと思うよー」
「・・・ダメかな」
「時期が悪いんじゃないの?劇場版で告白して付き合ったあとから、卒業ぐらいまでなら矛盾もないだろうけど・・・」
「だぁー」
倫也が頭をかきむしる。相変わらず難しい。英梨々不在のあとは出海ちゃんだと?
「なぁ・・・美智留。おまえだけは・・・応援してくれよ」
「ふぅ・・・焼肉の恩もあるしなー」
「頼む」
「わかったよー。今日は帰るから、加藤ちゃんとは節度をもって接しなよ?」
「ああ。わかった」
「ボディータッチ禁止、ましてやキスなんてしちゃダメだから」
「・・・ああ、うん・・・そう・・・だな」
倫也が思いっきり汗をかきながら目を泳がせる。
「・・・トモ?」
「ナンデスカ、ミチルサン?」
「もしかして、手遅れ?」
「・・・」
美智留が立ち上がって、「あっーーー!!」と叫んだ。「トモ、もう加藤ちゃんに手をつけたの?まだ夏休み2週間もあるのに?」
「・・・不可抗力だったんだ・・・」
「何が・・・」
「みんなには黙っていてくれ・・・」
「ちゃんと劇場版の31日につなげなよ?」
「ああ、わかってる・・・」
美智留は頭をかきながら、この出来の悪い主人公を見下ろした。もう弟みたいなもんで、恋愛感情はない。幸せならそれでいいが・・・
心配だが自分にはどうにもできない。
あとは倫也と加藤ちゃんに任せようと思って、家へと帰っていった。
※※※
ピンポーン
12時を少し過ぎた頃、呼び鈴が鳴った。それが時間的にも恵だとわかる。
部屋の窓から覗くと、恵が上を向いて恥ずかしそうに手の平を軽くふっている。
倫也は駆け下りて玄関を開ける。
別に鍵はかかっていなかったが、恵は倫也がいるときは勝手には入って来ない。迎えにきてもらうのが好きだ。
顔を少し赤らめて、恵が微笑む。最近では笑顔の方が多い気がする。
モスグーリンのシャツに白いスカーフを首元に巻いていて、白のタイトスカートをはいている。左手でカゴのハンドバックをもっている。
前髪を右手でいじっている。ちょっと短い。髪は後ろで結わいていてポニーテールにしていた。
「おはよ・・・倫也くん」
静かな澄んだ声。
「おはよう。恵」
恵は家にあがる。いつもより少し緊張をしているようだ。
洗面所に行き手を洗い、すぐに白いエプロンを身に着ける。
「お昼ごはん作っちゃうね」
「あ、うん・・・何作るの?」
「冷麺にしようと思うけど、いいかな?」
「うん。何か手伝おうか?」
「じゃあ・・・卵茹でてくれる?」
倫也もキッチンにはいって手伝う。恵がキッチンで料理をするのは久しぶりだ。一週間家に来ていなかった。
「あとでスーパーいかないとね」
「そうだな」
だから、冷蔵庫もほぼ空である。
最後の一本の胡瓜を取り出して、恵はそれを千切りにしていく。
倫也と目が合うと、ぽっと顔を赤くする。
いつも通りに振る舞おうとしているようだが、どこかぎこちない。
※※※
盛り付けた冷麺をテーブルに運び、向かい合わせに座った。
冷麺の上には半分にカットしたゆで卵が2つと、胡瓜の千切りがのっているだけのシンプルなものだ。
「いただきます」と倫也がいう。
「どうぞ。いただきます」と恵が言った。
恵は箸で冷麺をちょんちょんと触っている。口に運べそうなものが胡瓜ぐらいしかない。しかたないのでそれを少しだけつまむ。
「はい。あーん」
「・・・パクッ」
倫也の口に胡瓜をいれる。少し慣れてきたとはいえ、やはり倫也の顔も赤くなる。
この儀式は大事だ。
「ねぇ倫也くん」
「どうした?恵」
「今日は、まったり過ごしたいんだけど」
「そうだな」
「なんか、余計なフラグがたっているみたいだけど」
「・・・ふむ」
「美智留さんががんばって文字数稼いでくれたし・・・」
「ははっ」
「イチャイチャする新しいアイデアもないし」
「ほら、玄関に迎えにいくイベントやったし」
「初めてだっけ?」
「・・・たぶん」
「なら、それでいいかな」
「うん」
恵が冷麺を口に含む。倫也も食べる。麺に歯ごたえがある。ソバみたいに飲み込むものなのか、噛んで食べるのかよくわからない。
「ゴクンッ・・・でね、シナリオ終わらせてくれる?」
「今?」
「・・・うん」
「まだ、はじまったばかりだけど・・・恵がそう望むなら」
「えへへ」と、恵が顔を崩して笑っている。
「うん」
と、呟いた。
今日はふたりでまったりと過ごしたいんだと。
(了)