【短編集】 恵といちゃいちゃ過ごす夏休み   作:きりぼー

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別に地雷を踏むつもりはこれっぽちもなかった。
ただ、気が付いた時は地雷原の中に立っていたんだ。


LASから学ぼう冴えカノヒロイン

38話 LASから学ぼう冴えカノヒロイン

 

 

 

8月27日 金曜日 夏休み37日目。

 

 

 

「ごめん。倫也くん。やっぱり38話もボツにするから」

「ん?」

 

リビングのソファーでコーヒーを飲みながら恵がいった。

 

「38話って・・・かき氷食べるやつだっけ?」倫也が尋ねる。

「うん。話の構成順とか間違っていたかなぁ・・・」

「反省は全部終わった後でな。で、どうする?」

「ん・・・それは・・・考えてなかったんだけど」

「じゃ、映画でも見るか」

「映画?」

「やっと動画配信されたんだよ」

「何が?」

「エヴァンゲリオン」

「ああ、あの有名なやつね?そんなに好きなら映画館までいったら良かったのに」

「あれ、2時間半以上もあるんだよ・・・」

「ちょっと長いね」

「なので、休憩取りながらの動画で我慢」

「うん、まぁ・・・。あんまり熱心なファンじゃないってことだよね」

「・・・そうだな・・・」

 

エヴァ談義なんてまともにやったら火傷するだけだけど・・・

 

※※※

 

「おわったよー。倫也くん」

「ああ、やっと終わったな・・・どうだった?」

「よくわかんなかった」

「ふむ・・・」

「あと、倫也くん落ち着きなさすぎ」

「そう?」

「飲物作りに行ったり、トイレいったり、おかし取りに行ったり・・・」

「長いからしょうがないよね」

「そうかなぁ・・・」

 

倫也が飲物を口に含んでからまたトイレに行った。

 

最新作のエヴァ作品の初見にした結果、得られた感想は「よくわからない」

うん。すごくまっとうだと思う。ちなみにソースは身内。

 

倫也がトイレから戻ってきた。

 

「でだな・・・今日は冴えカノ目線からエヴァを少し語ってみようと思うのだけど・・・」

「うん」

「ちょっとだな・・・自信ない」

「なら、やめておけばいいのに」

「だから、こう冴えカノに隠れてこっそりとだな・・・」

「その、人気ない同人小説だからって、チラ裏みたいに使わないでもらいたいんだけど」

「いやいや、でも恵にも関係あるわけだし」

「綾波キャラともちょっと違うって英梨々が言ってたね」

「そだな。エヴァ以降、無口系ヒロインが大量生産されたからな。恵をその系譜にいれるのは妥当な気もする」

「あそこまでコミュ障のつもりはないのだけど」

「・・・綾波の話は置いといてだな」

「うん?」

 

倫也がグラスのコーヒーを一口飲む。

 

「問題はアスカの方なんだが・・・」

「このキャラって英梨々だよね?」

「そうだな。英梨々の原型というか、金髪ツインテールの系譜になるんだと思う」

「アニメでよくみかけるよね。これもアスカが元祖なの?」

「ちがうんじゃないか・・・」

「ふーん、それで何が問題なの?」

「最後にシンジはマリと結ばれただろ」

「うん」

「同人界隈では、アスカとシンジが結ばれるものがたくさん制作されていたんだけどな。それを LASっていう」

「ラス?」

「または、エルエーエスだな。ラブラブアスカシンジの略らしい」

「へぇ・・・・」

 

恵がちょっとひく。

 

「でだな。問題なのはアスカとシンジが結ばれなかったことじゃないんだ」

「ん・・・ああ、なんか他の人と結ばれていたね?」

「ケンスケだな」

「それが・・・問題なの?」

「そうだな。ケンスケっていうのは中学生時代の同級生でそこまで重要な役割を担っていなかった」

「それは・・・えっと?このエヴァの前の作品のこと?」

「そそ、4部作になっているんだけど、その前の作品にでていた。こいつが突然、アスカとくっついたもんだから・・・」

「えっと・・・?」

 

恵が首をかしげる。

この映画だけを見れば、アスカはケンスケと暮らしていたようだし、そこまで違和感はない。

 

「これを冴えカノで置き換えてみるとさ、劇場版の最後で倫也と恵が新居でみんなと食事をするよな。そこに英梨々と上川が一緒にいるようなもんだ」

「上川?」

「いたろ、俺らの同級生に」

「ああ、いたねぇー。それはまたずいぶんと唐突な展開な気がするね」

「そうなんだよ・・・けれど、よくよく考えてみると英梨々どころの騒ぎじゃないなぁっと思って」

「どういうこと?」

「おそらく、全国に英梨々ファンはいるけれど、英梨々だけ好きなファンはほとんどいない。英梨々グッズなんて数えるほどしかないだろ。冴えカノが好きでグッズ集めている人は大勢いるけれど、英梨々のだけ集めている人はそこまでいないと思うし、冴えカノ以外も好きだったりするはずだ」

「推論だよね?」

「うん。ただ商業規模からもそうだろうと思われる」

「それで?」

「けど・・・アスカは違うんだ・・・」

「どう違うの?」

「まず、アスカグッズの数が把握できないぐらいでている。以前TVでアスカグッズ集めている人の部屋が紹介されたが、部屋の中がグッズでぎっしりだった。ちょっとした年収がふっとぶぐらいは種類があるし、限定品まで集めようと思ったらサラリーマンでは厳しいと思う」

「すごい熱烈なファンがいるということ?綾波ファンも大勢いるでしょう?」

「もちろん。綾波グッズもたくさんでているし、アスカと同様に熱烈なファンがいるとは思う。しかし、綾波は作品の設定上、母親のクローンなんで2人が結ばれないことは理解できるし、渚(白・碇司令)と結ばれることも、それなりに納得できるんだ。もちろん納得できない人も大勢いるだろうけど、アスカほどひどくはないと思う」

「へぇ・・・」

 

恵がお茶を飲む。倫也もお茶を飲んだ。

 

「以前話をしたと思うけれど、ハーレム型アニメでのヒロインには、救済キャラを置いてはいけないと話したよな」

「うん。でも、わたしには従姉妹の医学生がいたよね」

「わざとタブーを破ったんだろうけど、他のサブヒロインにはいなかったろ?」

「うん」

「もちろん、エヴァンゲリオンはハーレムアニメじゃないし、ラブコメでもないだろうから、そういう縛りや気遣いはないんだと思うけど・・・なぜ、アスカがケンスケと結ぶ結末を受け入れ難いだろうことはわかる」

「そうかな?作品が終わって、新しい平和な世界で暮らしていくんだよね?それぞれに幸せな結末を用意したってだけじゃないの?」

「そういう解釈ももちろんありだ。とはいえ、納得いかない人も多そうだなと思ってさ」

「まぁ、そうかもしれないね」

 

倫也が一呼吸を置く。

 

「さっきは英梨々で例えたけれど、商業規模で言ったらアスカ1人で冴えカノ全体よりも大きいんだよな。25年続いているし、ファン層も広い」

「うん?」

「LASを信じていたファンを冴えカノの恵ファンに置き換えると、冴えカノ劇場版を見に行って、倫也が出海ちゃんと結ばれたあげくに、恵が上川とくっついている・・・そんな話を見せられたぐらいショックなんじゃないだろうか?」

「それはもう、話が破綻しているよね・・・・」

「ケンアスENDもけっこうな破綻だと思うけど」

「ケンアス?」

「ケンスケとアスカ」

「ああ・・・うん」

 

恵ぐらい一見さんだと正直どうでもいいと思ってしまう。

しかし、ファンの間ではいまだに議論されている。

 

「そういうわけで、LAS界隈の反応を軽く調べてきたのだけど・・・」

「物好きだなぁ・・・」

「阿鼻叫喚だった。アスカ下げする人もいるし、煽る人もいるし、ガチで凹んでいる人もいるし・・・混沌としていたよ」

「ふーん」

「ただな・・・ここからがエヴァンゲリオンなわけだが」

「ん?」

「あの新劇のアスカは式波って名前で、旧劇は惣流っていうんだけどさ、この2人は別人ってことでも、もめていた」

「ん?」

「所説あるんだけど、新劇の式波がケンスケと結ばれただけで、惣流は違うという解釈がある。でも、海辺のプラグスーツが・・・」

「ああ、倫也くん。もういいよ。何言っているかわからないし・・・調べたい人は自分で調べればさ」

「・・・そうだな」

「それにさ、エヴァンゲリオンってTV版とそれに続く劇場版で一度は完結してるんだよね?」

「一応な。旧劇って呼ばれている方な」

「うん。だったらさ、その人気にあやかって作った新劇場版は公式による二次創作といってもいいんじゃないかな」

「ああ、そんな風に解釈している人もいるし、作中でも示唆されているよね。いくつものパターンがあったことを」

「うん。だからさ、やっぱりオリジナルは1つであって、その続編とかIFとかは、関係ないんじゃないかな?」

 

恵は考え込む。エヴァンゲリオンのオチはどうでもいいが、冴えカノは別だ。

 

「・・・だからね・・・わたしはこないだのフェスの英梨々ルートは認めないから」

 

「なるほど。主観に置いてそれは正しいと思う。でもさ、自分が納得するかどうか、認めるかどうかでいったら、オリジナルそのものにもいえるんじゃないか?」

「どういうこと?」

「ラブコメはそれぞれのキャラにファンがいるから、主人公が誰かを選ぶと他の誰かを好きな人は納得できないわけで・・・」

 

恵は瞳のハイライトを消し、どす黒い眼差しで倫也をまっすぐ見つめ、

 

 

 

「・・・で?」っと低い声で言った。

 

 

 

倫也は目をそらして、何も言い返さなかった。

 

 

 

(了)

 

 

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