| 登場人物 | |
|---|---|
| マチカネフクキタル | チームレグルスのお調子者。中・長距離担当。 ボケ担当になりたいがなかなか突き抜けられないツッコミ担当。 動物には好かれる性質。動物霊にも好かれる性質。 |
| サイレンススズカ | チームレグルスのエース。マイル・中距離担当。 自分のことをツッコミ担当だと思い込んでいる大ボケ担当。 寮がペットOKなら猫を飼ってみたいと思っている。 |
| タイキシャトル | チームレグルスのムードメーカー。短距離・マイル担当。 ツッコミもボケもほどほどにこなせるオールラウンダー。 偶蹄類・奇蹄類全般を支配下に置くことができる。 |
| エアグルーヴ | チームレグルスのリーダー。中距離専門。 押しも押されぬツッコミ担当。この人がいるとみんなボケだす。 動物に嫌われるタイプ。猫に引っ掛かれてやる気を下げるな。 |
| トレーナー | チームレグルスのトレーナー。女性。元エアグルーヴ専属。 チームの保護者枠にして、小ボケ担当。本日出番なし。 実家で五、六匹くらい犬猫を飼っている。 |
そういうわけで、紆余曲折の末にタイキさんの発案で桑園駅近くにある牧場へと足を運んだ私達チーム・レグルス。
国道に面した牧場は、中まで車を使って入っていけるようにコンクリートで道が整備されていました。なんというか、本当に『市街地の中に急に牧場がある』って感じなんですねぇ……。
「なんか牧場ってああいう感じの建物が多いイメージですよね」
歩きながら、私は入ってすぐのところにある建物を指差しました。
そこにあるのは、赤い屋根の建物です。二階建ての広い建物ですね。その横に同じく赤い屋根の、円柱状の……塔? みたいな建物が二棟ほどあります。高さはそこまででもなくて、建物本体よりもちょっと高いくらい。せいぜい、三~四階分くらいでしょうか。
……でも、なんで牧場に塔が必要なんでしょうね。
「あれはサイロというんだ。農産物を貯蔵するための施設だな。この牧場では、確か牧草を主に生産していたはずだ」
「はぇ~っ、……牧草なんて勝手に生えてくるものなんじゃないんですか?」
「ノン! フクキタル、その考えはちょっとダケ違いマスヨ。確かにファームはグラースが生えているのが条件ですケド、カウもピッグも生えているグラスだけを食べているわけじゃありまセン。栄養のあるものを食べて初めて良い家畜になるノデ、上質なグラスを生産するファームももちろんあるのデース!」
「そうなんですか……」
ピンと人差し指を立てて説明するタイキさんは、いつもの赤点常習犯の横顔とは違った理知的な色が垣間見えました。もしも牧場学なんてものがあれば、タイキさんは満点が取れそうですね……。
エアグルーヴさんも、このタイキさんの意外な博識には感心しているようです。
「こうした牧場の中には、私達が普段食べるニンジンを栽培している農家も多いと聞く。確かこちらでも、少数だがニンジンを生産しているらしいぞ。我々がお世話になっているかもしれない方だ。失礼のないように!」
雑談もそこそこに、エアグルーヴさんはその場の雰囲気を引き締めます。
そう言われるとなんとなく背筋が伸びる気がしますね! いや別に! ニンジンにありつけるチャンスがありそうだから気を引き締めたというわけではないですけどね! 決して!
「ニンジン……。とれたてのニンジンはとってもヤミーでしょうネー……」
「た、タイキ、よだれ出てるわよ……」
「…………コイツら、大丈夫なんだろうか……」
さっそく眉間を揉み解すエアグルーヴさんなのでした。くわばらくわばら。
ちなみに、トレーナーさんはレース前の方のメンタル調整とか最後のトレーニングとかのため、一足先にレース場へ行きました。そっちの方は私達がいると騒がしくて帰って邪魔になっちゃうんだそうな。そういえば、私もレース前はトレーナーさんがいつも付き添ってくれてましたねぇ……。
「とはいえ! 私達も地下バ道でレース前最後の激励をする必要がある。パドック入場三〇分前には待機しなくてはいけないから、余裕を持って午後一時には向こうにつくように動くからな」
「了解!」「ラジャー!」「分かったわ」
エアグルーヴさんの注意を受けて、私達は我先にと動き始めます。
いや、だって今が一〇時(駅での喧々諤々とかが響きまして……)ですからね。ご飯の時間とか移動の時間とかを考えると、牧場での自由時間ってだいたい二時間くらいしかないのです! 乳牛体験とかもやってみたいですし、時間は一秒も無駄にできません!
「たわけ! まずは牧場の方にご挨拶するのが先決だろうが!」
……まぁ、走り出す前にエアグルーヴさんに首根っこを掴まれてしまったのですが……。
──というわけで、エアグルーヴさんに首根っこを掴まれながら、私達は牧場の方に挨拶をしたのでした。
もともとトレーナーさんの知り合いということで、話はスムーズに済みました。なんとご丁寧に入り口のところで私達を待ち構えてくださり、ほんの数時間遊びに来た私達をとても歓迎してくれました。まぁ、天下のエアグルーヴさんにスズカさんにタイキさんまでいますからね! いやホント、トップウマ娘様様ですよ! ありがたや~ありがたや~。
しかし、トレーナーさんはどうしてこんな北海道の牧場さんとお知り合いなんでしょうねぇ? エアグルーヴさんも首を傾げてましたけど、トレーナーさんって妙なところで顔が広い気がします。この間も、なんだか良く分からない漁師のツテを使ってマグロを仕入れてきてましたし。
で、現在私達が何をしているかというと。
…………そろそろ、現実逃避はやめましょうか。
もぉおおおおおお~~~~~~~~~~!!
もぉおおおおおお~~~~~~~~~~!!
もぉおおおおおお~~~~~~~~~~!!
もぉおおおおおお~~~~~~~~~~!!
「うびゃああああああああああああ!! エアグルーヴさん、助けてくださぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~い!!!!」
私は現在、何頭ものウシさんに囲まれているのでした。
いやですね? 私も別にウシさんに喧嘩売ったりなんて罰当たりなことはしてませんよ? 変なちょっかいかけて痛い目を見るのは私のいつものパターンですからね。トレセン学園でやるならまだオッケーですけど、よそ様のところでやった日にはエアグルーヴさんの大目玉間違いないですから。
だから慎重に、そろ~りと手を振ったんです。ウシさんも、最初はそんな私に楽し気にすり寄ってきてくれたんですよ。
だから私も、笑いながらウシさんに話しかけていたら……なんだか、徐々にウシさんがいっぱい集まりすぎまして。
気づいたら、囲まれて大合唱に…………。どうしてこうなった…………。
「お前な……何をやってるんだ……」
「何もやってましぇ~~~~ん!」
「アハハハハ、お嬢ちゃん、みんなに好かれちまったみたいだねえ」
呆れるエアグルーヴさん、笑う牧場の人、ああ、此処に私の救世主はいないのですか……。不幸です……。
「ハイヨー!!」
そう思った、その時でした。
世界を引き裂くような鋭い掛け声が、一瞬にしてウシさん達を制止しました。
そしてその静寂に割って入るように、スッと小麦色の肌の腕が私の目の前に差し込まれます。反射的にその手を掴むと──ずるり! と私の身体はウシさん達の包囲網から抜け出せました。
「フゥ~! 良かった良かった。フクキタル、大丈夫デスカ?」
前言撤回、救世主は──確かにいました。目の前に。
「た、タイキさぁん……!!」
「オゥ!! フクキタル! ソーリーデス、すぐに助けてあげられナクテ……」
「あ゛り゛が゛と゛う゛ご゛ざ゛い゛ま゛す゛~~~~!!」
私は感極まって、その場でタイキさんに抱き着きました。
流石は最強マイラー!! チーム・レグルスの屋台骨! やっぱりタイキシャトルがナンバーワン!!
「まだ牧場の方に挨拶しただけだというのに、なんでそんなことになっていたんだ」
「ま、まぁ無事に助けてもらったし結果オーライということで……」
「まったく……いいか、くれぐれも牧場の方に迷惑をかけるんじゃないぞ」
「エアグルーヴさんってば、別にそこまで気にしなくていいんだよ~。有名なウマ娘さんがウチに来てくれたってだけで有難いんだし」
「そうはいきません! トレセン学園の生徒として、お世話になる以上は──」
あ、このモードのエアグルーヴさんは付き合ってると面倒なヤツですね。
タイキさんとアイコンタクトをとると、牧場の人とのお喋りに夢中になっているエアグルーヴさんの傍から離れて、私達は牧場の探検へと赴きます。
……あれ、そういえば。
「色々とゴタゴタしてて気付かなかったですけど、スズカさんの姿がさっきから見当たりませんね?」
「何ぃ!?」
私のふとした呟きで、エアグルーヴさんが反応してしましました。
しまった。ついつい口に出てしまいました。
でも、確かにスズカさんがいないんですよねぇ。確かに牧場の人とお話し始めたときにはいたんですけど……、
「ヘイ! 二人とも! スズカを見つけマシタ! ルックオーヴァーゼア!」
と、あたりをキョロキョロしていた私達に、タイキさんが呼び掛けてくれます。
タイキさんが指差す方向の向こうには──
なんかいい
…………もちろん、スズカさんの現在地点は牧場の、
牧場の人も、ちょっと困ったように苦笑してます。なんというか、めちゃくちゃ速いので、とてもシュールですし。
「……………………」
「さ、タイキさん。私、乳絞り体験っていうのやってみたいんですよ。ちょっとやり方教えてくれませんか?」
「イエーイ! 一緒にミルクを搾りマショー!」
「スぅぅぅぅズぅぅぅぅカぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!」
触らぬ神に祟りなし。
エアグルーヴさんの怒りが収まるまでは、のんびり乳搾りでもして避難してましょー。
それから十数分後。
なんだかんだありまして、我々は無事に全員揃って乳搾り体験に参加することができました。いや~、なんか流れでスズカさんとエアグルーヴさんの併走が始まったので観戦してたんですよね。流石に乳搾り行ってる場合じゃなかったですよ、アレ、普通にガチでしたから。
「いいか。乳牛はデリケートだ。優しく握るんだぞ」
そう言うエアグルーヴさんの前には、五頭のウシさんがいます。いずれも先ほど私を取り囲んでいたウシさん達ですが、今は大人しく所定の位置についていますね。
といっても、流石にずぶの素人である私達が五頭いっぺんに乳搾りをするわけではなく、一人ずつ順番に乳搾りをするのですが……。
厳正なるくじ引きの結果、トップバッターはスズカさんということに。
「……スズカさん、大丈夫ですか?」
……ですが、私はスズカさんが心配でした。
忘れもしません、あれは今年の春ごろにやったチーム・レグルスのファンミーティング。いつも応援してくださっているファンの方々の為に握手会を開催したのですが……スズカさんは握手のときになんと呼び掛ければいいのか分からず……その場でぐるぐると回っていたのです。
スズカさんはどうも困ると左回りにぐるぐるしてしまう癖があるらしく、その時も結局しばらくはスズカさんがファンの皆さんの前でぐるぐる回る会になり、最終的にトレーナーさんの機転でスズカさんが走るのを見る会になったのですが……。(ちなみに、私は漫談をやって爆笑を掻っ攫いました。えへん!)
ともかく、スズカさんは緊張すると思わぬことをしでかすような気がするのです。友人として、そこはサポートしてさしあげなくては! という思いだったのですが……、
「え、ええ……大丈夫よ」
果たして、スズカさんは少し緊張気味ではあるもののしっかりとウシさんの前で膝を突いて、乳搾りの体勢に入っていました。
手つきも、牧場の方に教えてもらった通りの手つきです。これなら大丈夫そうですね。
「ノーゥ……。フクキタル、安心するのはまだ早いようデス」
「っ? タイキさん、いったいどうしたんですか?」
「スズカの手をよーく見てくだサーイ……」
……? スズカさんの……?
よく見てくださいって、普通の手つきではありませんか。ちょっと手首を回したりなんかしちゃって、けっこうやる気のようにも……。
……!?
ま、待ってください! 手首を……
「た、タイキさん……!」
私は、今までの余裕など全て吹き飛ばしてスズカさんの手つきに注視します。
そう、スズカさんは手首を回している……。その、回し方は!? あれは……!
「フクキタル……気付いたようデスネ……。イエス! スズカの手首は……今、左回りなのデス!!」
「だから何だというのだ」
エアグルーヴさんによる速攻のツッコミ。
いやぁー、打てば響くというのは素晴らしいですねぇ。
「チィッチッチィ。エアグルーヴさん、さっきから手首を回す時間が長すぎると思いませんか? あれは……片膝を突いてしまったことでスズカさんの左回り欲求が抑えきれなくなり、手首の運動に集中してしまっているんです」
「そ、そんな馬鹿なことが……」
「あのまま行けば……きっと回転は全身に伝播し、ウシさんのお乳も左搾りに……」
「それはただ左手で搾っているだけだろう」
とりあえずツッコミを入れるエアグルーヴさんですが、スズカさんのトンデモ列伝はエアグルーヴさんもよく知っています。本心からは否定できていないみたいですね……。
「あ、あの……エアグルーヴ。ちょっと私の前に乳搾りをやってくれないかしら……? なんというかこう、お手本があった方が、安心してやれると思うの」
あ、どうやら今回はフリーズする前にスズカさんのヘルプが出たようです。
私は密かに用意していた気つけ用のハリセンを懐に戻します。
「……ハァ。仕方がないな……。分かった、私がまずやるからそこで見ていろ。後フクキタルはそのハリセンの件で後で話がある」
「ウェ!?」
完全に流されてたと思ってたのに!?!?
「全く油断も隙も無いヤツだ……。さて、まずはやり方だが、先ほど牧場の方に教えていただいたとおりにやればいい。こうやって……ウシの乳を優しく握って、ゆっくりと……」
そう言って、エアグルーヴさんはなめらかな手つきでウシのお乳を握ります。
……が。
「搾り……あれ?」
ちょろり。
おおかたの予想に反して、エアグルーヴさんの握ったお乳はほんのひと雫のミルクを出すだけでした。
「む……? おかしいな、もう一回だ。ウシの乳を優しく握って、ゆっくりと搾り……」
ぽたり。
今度はさっきよりもお乳の出が弱いです。
「な……!? バカな、やり方はこれで合っているはずだ! そんなわけが……」
「うぷぷ、エアグルーヴさんてば、意外と不器用だったりするんですか?」
普段はしっかり者のエアグルーヴさんの意外な失敗に、私は含み笑いをしながら背中に立ちます。
いやぁ~! まさかこんな簡単そうなことでエアグルーヴさんが躓くとは! 正直予想外でしたが、こういうところはしっかりとイジらせてもらいますよぉ!
「く……! フクキタル、貴様覚えておけよ……!」
「アッハッハ! まぁまぁ、見ててくださいよエアグルーヴさん。私が完璧な乳搾りってヤツを見せてあげましょう!」
さあご照覧あれ。今日の私は────乳吉です!
…………。
「フクキタル────っ!?」(スズカさん)
……数秒後。
私はなぜか、隅っこの方の牧草の中に頭から突っ込んで犬神家状態になっていました。
「よいしょ……っと。フクキタル、大丈夫?」
「メンタルは大丈夫じゃないですぅ……」
「大丈夫そうで、安心したわ……」
「ちょっと安心するの早すぎません?」
あのうー……そのうー……。まだ私は犬神家の精神的ダメージから復帰できていないんですけどー……。
でも、スズカさんはそのままウシさんの方に興味を移してしまいます。ま、まぁ次はタイキさんですからね。タイキさんなら、さぞ見事に乳搾りをこなしてくれることでしょう!
……よし! これでフラグ建ったでしょう! こうなればタイキさんも道連れですよ!!
「良いデスカ? カウのおっぱいはアイテムじゃありまセン。仔牛が飲むためのモノ。だから、搾るというよりは、厳密に言うと『手で飲む』イメージなんデス」
「……なるほど。言われてみれば道理だな。手で仔牛の口──唇や舌の動きを再現するというわけか」
「つまり、こうデスネ」
びゅびゅーっ!! と、タイキさんがなんとなしに言いながら搾ると今までの出の悪さが嘘のようにウシのお乳がいっぱい出ていきます。こ、これが本職の力……。っていうかタイキさん、牛追いに続いて乳搾りまでできるとなるといよいよ牧場系万能ですね。
「……あ、できましたね~」
「ってこっちはしれっとできてますしっ!?」
く……! 札幌乳搾りステークス、チーム・レグルスは二勝三敗ですか……! 無念!
そんなこんなで牧場を満喫していた私達。
途中でタイキさんが牧場でBBQやろうとか言い出してチームの空気が凍り付く(此処牧場なんですよぉ! その食べる牛肉が生きてた頃の姿とたった今戯れてたんですよぉ!)一幕もあったりしましたが、なんとか無事に昼食も終わり──、
「む、そろそろ時間だな。お前達、忘れ物はないか?」
エアグルーヴさんが身支度を整えながら確認します。
「そんな、小学生じゃないんですから大丈夫ですよぉ」
「……じゃあこの明らかに邪魔な開運グッズは何だ?」
「ア゛っ!」
あわれ忘れ物を認識していなかった私のおでこをつつきながら、
「こういうことがあるからきちんと確認しろと言っているのだ! お前はいつも思わぬところでやらかすから特に気を付けないとクドクドクドクドクドクド」
「あ゛ーい゛ー……すみませーんー…………」
うう……脳が揺れて、だんだんと意識がもうろうと……うぐぐぐ…………。
あっ、エアグルーヴさんの背後に、シラオキ様が……。シラオキ様、意外と私みたいな顔してるんですね……。なんでそんな晴れやかなスマイルで天使の輪をエキスパンダーみたいに両腕で引き延ばしてるんですか……? まさかそこに無敵のパワーの秘訣が……? でもなんでレースに腕力がいるんです……?
「ヘイ! エアグルーヴ! そのへんに……フクキタルがなんか……トリップしてマス……」
「しまった! フクキタル、すまない! 大丈夫か!?」
「へ……? 何がでしょう……? 私は今、シラオキ様とアストラル界で対話していたんですが……? ああ、アカシックレコードは明石海峡の底にあったのですね……ムー大陸……」
「せめてオカルトのジャンルを統一してくれ!!」
……はっ!? 私は今何を!?
何か、ウマ娘の根幹に関わる大事な情報を知ったような気がするのですが……。
「あの……みんな」
「なんだ!? 今フクキタルの後遺症確認をだな……」
「それよりも! 今の臨死体験の内容を思い出さないと! このままじゃ臨死損です!」
「臨死していたのか!? ええいちょっとそこへ横になれ! 詳しく様子を見る!」
「私、カウと遊んでていいデスカー?」
「…………あの!」
エアグルーヴさんに促されて牧草の枕に頭を乗っけていると、スズカさんが珍しく声を張り上げました。なんでしょうね? スズカさんがあんなにそわそわしているなんて、本当に稀ですよ。
全員の注目を集めたスズカさんはスッとスマホをこっちに向けます。そこには、運行情報を映したと思しき画面が。
んん……? どれどれ……。
…………あ。
「……降雪の影響で、車両点検だって。今、運休中みたい」
…………。
つまり、交通機関は潰れている、と。
そして徒歩では、この時間からでは当然予定には間に合わな…………あ、あばば。あばばばばばば!!!!
多分顔が青くなっている私や実際に青くなっているエアグルーヴさんに対して、スズカさんは白々しいくらいの溜息を吐きながら、
「これはもう……走るしかないわね……」
…………ひぃぃぃぃ!
「走るしか、ないわね…………!!!!」
……………………。
チーム・レグルスのスピードが二〇上がった!
チーム・レグルスの体力が三〇下がった!
翌日の地元の新聞の一面に雪の中を爆走するチーム・レグルスが載った!
エアグルーヴのやる気が下がった!
…………あ、レースの方はちゃんと間に合って、全力で応援しました。
一着おめでとうございました。やりましたね、ぶい!