| 登場人物 | |
|---|---|
| マチカネフクキタル | チームレグルスのお調子者。中・長距離担当。 ボケ担当になりたいがなかなか突き抜けられないツッコミ担当。 ラッキーアイテムが料理だったりすると厨房を借りることがある。 |
| サイレンススズカ | チームレグルスのエース。マイル・中距離担当。 自分のことをツッコミ担当だと思い込んでいる大ボケ担当。 料理は作るよりも食べたいが、スぺちゃんには食べさせたい派。 |
| タイキシャトル | チームレグルスのムードメーカー。短距離・マイル担当。 ツッコミもボケもほどほどにこなせるオールラウンダー。 いつもBBQの話をするので、料理系の話題はあんまり振られない。 |
| エアグルーヴ | チームレグルスのリーダー。中距離専門。 押しも押されぬツッコミ担当。この人がいるとみんなボケだす。 頭の中には十数冊のレシピ本が入っているともっぱらの噂。 |
| トレーナー | チームレグルスのトレーナー。女性。元エアグルーヴ専属。 チームの保護者枠にして、小ボケ担当。今回出番なし。 甘いものが大好きだが、この間減量の邪魔だと怒られたので控えている。 |
某月某日。
今日は珍しく食堂で集まった私とスズカさんとタイキさんは顔を寄せ合ってコソコソ作戦会議を行っていました。
議題は──トレーナーさんとエアグルーヴさんのトレーナー契約成立日祝いです。
ウマ娘について知らない人からしたら『そんなことで?』と思われるかもしれませんが、誰もが知っての通り、ウマ娘とヒトは特別な絆で結ばれています。専属トレーナー契約を結んだ日ともなれば、当然ながら当人達にとってはそれはそれは大事な日になるのです。
私やスズカさん、タイキさんにとってはチーム・レグルスの結成日がそれにあたるのですが、エアグルーヴさんは我々よりも一年デビューが早いので、そことは微妙に時期がズレます。
エアグルーヴさんは特に年中行事や記念日を大切にする性格の方ですから、それはそれは今日のことを大切に想っていることでしょう。あの人、なんだかんだでトレーナーさんのこと大好きですからね。
そしてそんなエアグルーヴさんのチームメイトとして! 我々も一緒になってトレーナー契約日を祝ってあげるのは当然の成り行きだと言えるでしょう!
「さて、お祝いということで何かサプライズでプレゼントを用意しようと思うのですが……」
まず、私が議論の口火を切ります。
他二人に任せていると、初手から変な方向に飛んで行っちゃいますからね。
「何がいいかしら……。やっぱり、良い物をあげたいわね。蹄鉄とかどうかしら」
「スズカさん……トレーナーさんは、別に走ったりはしないんですよ……?」
なんですかその『えっ……!?』って顔は! なんで心底意外そうな感じになってるんです!?
ヒトなんですよトレーナーさんは! 確かにエアグルーヴさんのご親戚みたいな感じの雰囲気してますけど! あの人意外と走るのは遅いですからね!
「ウェル~、トレーナーさんが普段も使えるアイテムが良いですヨネ。ステイショナリーとかどうデショウ?」
「ステイショナリィ?」
「(……フクキタル、文房具のことよ……)」
…………英語力で、スズカさんに負けた…………!!*1
くっ、でもヘコたれてなんかいられませんよ!
「文房具も良いですけど、それだとなんかフツーすぎません? もうちょっとこう、トレーナーさんの度肝を抜くような感じのがですね……」
「フゥム……ドギモ?」
「驚かせるってことです」
「オゥ! サプラーイズ!」
タイキさんはポンと手を叩いて、
「それならやっぱりビッグなものが良いデスネ! フォーイグザンプル……冷蔵庫!」
「デカすぎません!?」
「じゃあ…………エアコントカ?」
「ちょっと家電から離れましょう!?」
担当ウマ娘から白物家電をもらっても困るでしょ!!
あと、結局はトレーナーさんの部屋に置けないからチーム・レグルスのものみたいになっちゃいますよねそれ!
「そこはもっとこう、プレゼントらしくほんのり値の張る、豪華っぽい雰囲気の物にするんですよ! ネックレスとか! あ、エアグルーヴさんとお揃いのネックレスとかよくないですか!?」
「でも、エアグルーヴはともかく、トレーナーさんってそういう飾り、あんまり使わないんじゃないかしら? いつもスーツ姿だし」
「だからこそ狙い目なんですよっ! トレーナーさんだってお年頃の大人の女性ですよ! ネックレスの一つもつけてないってことは、持ってないってことです! 邪魔になることもなし、最適なプレゼントだと思いませんか?」
「そうかも……」
「フクキタル! ナイスアイデア!」
ぱちーん! と、私とタイキさんはノリノリでハイタッチします。
というわけで、私達からのトレーナーさんとエアグルーヴさんへの贈り物はネックレスということに決まり、
「……お前達、何を話し込んでいるのかと思えば……」
「ハッ! エアグルーヴさん!」
後ろからの声に振り返ると、そこにはエアグルーヴさんがいました。
し……しまった! 聞かれた!
「余計なことはしなくていい。というか、無駄なことにお金を使うんじゃない。レースの賞金はお前達の為になることに使えといつも言っているだろう」
「でもエアグルーヴ……」
「でもじゃない! いいか、プレゼントなんていらないんだ。お前達のその気持ちだけで十分。あやつもきっとそう言うだろう」
そう言って、エアグルーヴさんは足早に去って行ってしまいました。
多分、私たちが何かやろうとしてるってことを察知して釘を刺しに来たんでしょうねぇ……。まぁ、エアグルーヴさんはああいっていますが……。
「じゃ、お金を使わないプレゼントにしないといけませんねぇ」
素直に聞く我々じゃないんですけどねぇ!!
だって、ど~~せエアグルーヴさんだって自分はめちゃくちゃ気合入れてお祝いするつもりなんですよ。なんてったって記念日大好き、トレーナーさん大好きのエアグルーヴさんですもの。たぶん、一番今日と言う日を楽しみにしているのはあの人までありますからね。いやこれホント。
なら、我々もチームメイトとしてそこに花を添えないなんて罰当たりな選択肢はないのです! むぅ!!
「ハイハイ! 私に良いアイデアがありマス! ずばり、クッキングにしましょう!」
「クッキン……即ち、料理ですね?」
タイキさんは私の相槌に、にっこり笑顔のまま腕を組んでこっくりと頷きます。
「学園のキッチンを借りれば材料費もタダですシ、お料理は絶対にオイシく食べてもらえるのでプレゼントとしてもグッド! どうでショウ?」
「ええ、私も良いと思うわ。フクキタルはどう?」
「そうですね……。きっと形に残るものはエアグルーヴさんが用意してるでしょうし、我々は形に残らないもの、というのは非常によろしいのではないでしょうか。私も賛成です!」
そう言って、我々は互いに顔を見合わせて頷き合いました。
こうして、エアグルーヴさんとトレーナーさんの契約成立一周年記念はお料理をプレゼントすることに決まったのでした。
「さて、そうと決まれば厨房の利用申請ですけど、これは前に私がやったことあるのでお任せください!」
「頼りになるわ。じゃあ……あとは、トレーナーさんの好きな食べ物を調べる、とかかしら?」
「そうですネー……」
スズカさんとタイキさんに、私も頷いて返します。
トレーナー契約成立記念っていうのは基本的にウマ娘とトレーナー二人のための記念日なんですけど、どっちかというとウマ娘がトレーナーに対して祝うことが多いんですよね。
なにせ、トレーナーさんはレース以外のウマ娘のもろもろの雑務をやってくれてるのです。いつもめちゃくちゃ忙しいので、トレーナー契約成立記念日の準備なんてやってる暇ないんですよ。そんなわけで、多くのトレーナー契約成立記念日は、ウマ娘の方がトレーナーさんにプレゼントを渡したりするのが通例になっているんです。
……ま、ウチのトレーナーさんはなんだかんだでなんか用意してそうな気もしますけどねぇ。いつもおまんじゅう食べながらしれっといろいろ用意してるような人ですし……、
「……あ。おまんじゅう! トレーナーさん、いつもおやつにおまんじゅう食べてますよね。おまんじゅうとかどうでしょう。大吉まんじゅう!」
「確かに……」
「デモ、前にトレーナーさんがたづなさんにデザートをオススメされたとき、『甘いものは遠慮しておきます』って断っていたのを聞いたことがありマスヨ! 意外と甘いモノ、苦手なのデハ?」
「確かに……」
これぞ!! という提案だったのですが、あっさりとタイキさんによって反証がぶつけられてしまいました。
……ええ!? っていうか、そうなんですか? 私初耳だったんですけど……。それではいつもおまんじゅうをおやつにしていたのはいったい……? 苦行…………?
「でも、そうなると矛盾が発生しますよね? 『同僚の方やたづなさんにいつもおまんじゅうをもらっているのでしょうがなく食べている』か……あるいは『その時たまたま甘いものを食べ過ぎて体重が気になったので遠慮した』か……名探偵フクキタルの推理はこのどちらかです! あ、マチカネシンジツキタルです! いや今言い直す必要なかったですね……」
「確かに……」
「……あの、今の『確かに』はどっちにかかってるんですか? 回答によっては私ヘコみますけど???」
ぼんやり相槌ばかりなスズカさんは一旦さておくこととしましょう! どうせスズカさんのことなので『そうだ、みんなでトレーナーさんにレースをプレゼントすればお金もかからないしトレーナーさんも喜ぶから万事解決なんじゃないかしら?』とか思ってそうですし。言わせてはいけません。話がこじれますので。
「ン~……ここで考えていてもラチ・ダズント・オープンデスネ。これはインタビューしないとなのデハ?」
「聞き込み調査、というわけですね……。いいでしょう! 名探偵フクキタル率いるレグルス探偵団の面目躍如ですよ! さあバシバシ調査対象を提案しちゃってください!」
「トレーナーさんに聞けばいいんじゃないかしら?」
「スズカさんはサプライズという言葉の意味を辞書で引いて出直してきてください」
『どうしてなの……』となんか愕然としているスズカさんはさておきまして、私とタイキさんは議論を前に進めます。議論の先頭に立たれても話は前に進まないんですねぇ。
「そうデス! たづなさんならそのへん詳しいんじゃありまセンカ? たまーに一緒にお茶してマスシ」
「確かに、件の断られた人もたづなさんでしたねぇ……。では早速たづなさんに確認してみましょう!」
ということで、厨房の利用申請をしつつ、理事長室の近くにいたたづなさんを捕まえて話を聞くことに。
「……というわけなんデス! たづなさん、トレーナーさんのフェイバリット・フードを知らないデスカ?」
タイキさんが軽く事情を説明してから、たづなさんに肝心の質問を投げかけました。
これでたづなさんが答えを知っていれば簡単に今回の事件は解決となるのですが……。しかし、というかやはりというか、たづなさんは困ったように頬に手を当て、ちょっとだけ首を傾げます。
「うーん……。私もよくは知らないんですよねぇ」
「でも、たづなさんはよくトレーナーさんにおまんじゅうをあげてませんか? アレって、トレーナーさんの好みを知っててあげているのでは?」
私は、素直な質問をぶつけてみます。
私の推理が正しければ、たづなさんは明らかにトレーナーさんにおまんじゅうを優先的に渡していました……! それは、たづなさんがトレーナーさんの好みを把握していなければ考えられない選択!
つまりたづなさん! 犯人はアナタなのです……!
「ああ、それはもらいものですよ。理事長は職業柄、いろんな方からおやつをもらうんですけど……全部渡していると太ってしまいますから、余った分はトレーナーさんに分配してるんです。もちろん、受け取ってくれる人は……ですけど」
「な…………なんですって……?」
つ、つまり……トレーナーさんがおまんじゅうを受け取っていたのは、トレーナーさん自身の好みは関係なかった!?
そ、そんな……名探偵マチカネック=フークキタルの推理が……。*2
その後はたづなさんにお礼を言って(あとおまんじゅうを分けていただき)、すべての手がかりを失った我々は途方に暮れながら元のカフェテリアへと戻ってきました。
もはや手がかりはゼロ……。こうなれば……!
「神に聞くしか道はありません!! さあ皆さん! このいつでもどこでもこっくりさんシートを使ってこっくりさんで神意を問うのです!!」
「準備いいわね」
「イエイ! ミス・コックリ!!」
「あら、皆さんお揃いで~」
と。
こっくりさんの準備を整えていると、覚えのある声が。
振り返ってみると、そこには栗毛の髪をショートカットにした、キューティクルの艶やかさが印象的なウマ娘。そう、我々レグルスのチームメイトです。
その横には、同じくレグルスのチームメイト。こちらは黒鹿毛のストレートヘア。おっとりふわふわな隣の方とは違い、物静かながらキリリとした雰囲気が印象的ですねぇ。
ちなみに、お二人とも私たちより年下の中等部らしいですよ。
「ああ、お二人ともちょうどいいところに! 今、我々三人でこっくりさんをやろうとしていたんですよ」
「…………こっくりさん? 何を調べようと……?」
「ん~、トレーナーさんへのプレゼントは何がいいか、とか~?」
口元に人差し指を当てて言いますが……ううむ! なかなか惜しい! というかかなり鋭いトコきてますね! これはもうほとんど正解でいいでしょう。
「鋭いですね! 我々、トレーナーさんにお料理のプレゼントをしようということになったのですが、トレーナーさんの好物が分からなくて……」
「それで、ミス・コックリの力をレンタルしようとしてたというわけデス!」
「あ。トレーナーさんの好物なら、洋菓子が好きって前に言ってましたよ~」
えっ?
…………えっ!? そうなんですか!?
っていうか答えがそんなっさりと……え!? あっさりすぎませんか!?
「ああ……言ってたね……。確かに、ケーキとかクッキーの洋菓子全般が好きって言ってました……」
そ、そんな……い、いや、でも!
「でも、トレーナーさんは前にたづなさんにおまんじゅうを渡されたとき、『甘いものは遠慮しておく』と言っていたはずでは!? それではこの矛盾は解消されませんよ! 異議あり!!」
「それは、その~。……エアグルーヴさんに、身近で甘いものを食べている輩がいたら減量の邪魔になる、って怒られて……」
「ア~~~~…………」
エアグルーヴさんはそういうのめっちゃ気にしますし、トレーナーさんもそういうのめっちゃ気にしますもんねぇ……。
あ、謎がすべて解けてしまった……。これじゃホームズじゃなくてワトソンの方になっちゃいます……。わ、私はワトソン君だった……? 医師免許とらなきゃ……。
「私、ちょっと五條天神社に行ってきていいですか? 医学部受験しないとなので……」*3
「フクキタル? 急にどうしたの……? 医学部は勉強しないと受からないのよ……?」
知ってますよそんなことーっ!!
ともかく! トレーナーさんが洋菓子好きなことは分かりました。ワトソンになる夢は一旦脇に置くとして、ここはまず洋菓子を作らねばなりません。
「あ、そうだ。お二人とも一緒にお料理しますか? 今からならまだ器具も用意できると思いますけど」
「あ~、ええっと~」
「実は、私たちも私たちでプレゼントの準備をしていて……。なので、今回は遠慮しておきますね……」
「オゥ、ザッツ・サウンズ・グレイト! お互い頑張りマショウネー」
そんな感じで、お二人とは一旦お別れ。
後に残った我々は、その足で厨房へと向かいました。
「さて、洋菓子ということですが……今回はホットケーキで行こうと思うんですよ」
その道すがら。
私は話の流れで、そんな提案をしていました。
「? ホットケーキなの? 普通にケーキじゃなくて?」
「そりゃもう! ケーキなんて作った日には、我々のことです、きっと度重なるトラブルに次ぐトラブルでとても食べられる出来栄えにはならないでしょうから! その点ホットケーキまでならまだギリギリセーフっ!!!!」
「オゥ……」
笑顔でネガティヴな考察を並べてみると、なぜかタイキさんは気の毒そうな表情で声を漏らしました。
いやいや、でも実際、洋菓子ってめっちゃ作るの大変なんですよ。昔お母さんが作ってるのを横から見て、『私じゃ無理だなー』って思いましたもん。
その点、ホットケーキはお姉ちゃんと一緒にプレートで作ったりして今もちゃんと作り方は覚えていますし! 確かにちょっとプレゼントというにはチャチかもしれませんけど、失敗するよりはずっと良いです!
そんなこんなを話しているうちに、無事厨房に到着。
厨房の方には事前に話を通してあったのですが、なんとすでに材料一式が用意されておりました。いや、ホットケーキを作るなんて話はしていないので他にもいろいろな材料が並んでいるんですが、これは厨房の人から私たちへの『好きなもん作れよ』というエールですね! ありがたやありがたや……!
「じゃあ私がグリル担当をやりマスネ! グリルならお任せくだサーイ!」
厨房に来るなり、タイキさんはそう言ってコンロの前に陣取りました。実際のところ、これは助かりますねえ。私は今日の運勢あんまりよくないので、何かの拍子でボヤ騒ぎを起こしちゃいそうですし。
「そういえばスズカさん、お料理したことってあります?」
ふと、神妙な面持ちで材料を手に取っているスズカさんがけっこう様になっていたので、私はなんの気なしに問いかけてみました。
そういえばスズカさんのお料理経験って今まで聞いたことなかったんですけど、彼女ここまですごく平然としてるんですよねぇ。私なんて、お料理なんてしたらどこかで失敗しないかとヒヤヒヤで神に祈るしかないんですけど。
しかし、スズカさんはむしろ適度にリラックスしたレース前のような肩の力の入り具合できょとんとしながら、
「? ないけど」
「なんでそんな平然としながら不安材料を投下できるんですか!?」
いややっぱないんですか!! 心のどこかでそんな気はしていましたけども!!
対するスズカさんはびっくりされたのがちょこっと心外だったのか、少しだけムッとした表情を作りまして、
「そう言うフクキタルはどうなの? さっきからなんだか不安そうにしてるけど」
「むふふ……まぁ、確かに不安ではありますけど! 当然、お料理経験はありますとも! これでもトレセン学園に入学する前はお母さんのお手伝いとかよくやってたんですよ? 意外と家庭的なウマ娘なのです、私! ムッフン!!」
しかも今回はコンロ担当をタイキさんにお任せして、我々はホットケーキのタネ準備と焼きあがったホットケーキの盛り付けに徹するのみ。
これはもう、運の介在する余地のない盤石体制!
人事を尽くして天命を待つ姿勢に、シラオキ様も感涙間違いなし!! です!!
────修羅の棲む場、という意味であれば、そこは正しく修羅場であった。
そこは、ただ立つだけでも力が必要となる領域だった。
力なき者は膝を突き、倒れ伏す。
意思なき者は道先を失い、その場で惑う。
赤い液体の代わりに、真っ白な血潮がまき散らされるそこは────正しく、修羅場であった。
「……嘘でしょ……」
凄惨な地獄絵図を前に、サイレンススズカは虚ろな目で立ち竦み。
「ル…………」
厨房に膝を突いたタイキシャトルは、『誰か』のことを抱えていた。
そのウマ娘は、顔面をまるで白粉でも塗ったみたいに白く染め上げ、そして力なく倒れ伏していた。
その表情はまるで眠っているかのように安らかで、次の瞬間にも喋りだしそうな穏やかさだった。
彼女の名は、
「フクキタァァァァ──────ルっっっ!!!!」
マチカネフクキタル。
自信満々だった彼女が、なぜ顔面小麦粉まみれのオモシロ末路を迎えてしまったのか。
その経緯を語るには────
「…………お前達、何をやっているんだ…………」
あと二〇〇〇字くらい足りないので、次回に続くっ!!!!