愛する者に祝福を
病の者に薬湯を
犯す者に切っ先を
死ある者に花束を
私は富も、名声もいらない
ただ家族と、恩と、誇りの為に
我が身、我が服を、血と汗と涙と砂で汚す
私は
あなたたちに花束をまだ贈りたくないのだ。
まず俺の過去についてですか?
では家族の話からしましょうか。
曾祖父の名は刀原将衛門平介。
護廷十三隊総隊長山本元柳斎重國を開祖とする流派『元流』に匹敵すると謳われた『刀源流』の開祖。
だからだろう。
曾祖父は護廷十三隊結成時、初代三番隊隊長に就任した。
以来、約1000年間もの間、三番隊隊長として剣を振るい続けたらしい。
だがそんな曾祖父も流石に歳だという事になり、隊長職を後任に任せる事になった*1。
祖父、刀原将之介平三郎は剣の腕はあったが西洋魔法を使い、魔法剣士として大陸探題*2に所属し、そのトップになっていた。
そしてその後、魔法大戦*3の終結を見届け、亡くなっている。
そこで白羽の矢が立ったのが父、刀原将一郎だった。
若き俊英と名高く、親友でもある四楓院・浦原両隊長や現マホウトコロ校長といった実力者と共に、父は隊長に就任した。
そして隊長就任後、父は当時副隊長になったばかりの母、慶花*4と結婚した。
そして俺も誕生して、刀原家当主も受け継ぎ、正に順風満帆だったらしい。
だがそれも長くは続かなかった。
貴族の一人が現マホウトコロ校長が作っていた『ある物』を使い、心を同じくする貴族達とやらと共に反乱を起こしたのだ。
貴族の反乱など公には出来ない。
四十六室*5まで反乱に加担したから尚更だ。
貴族の復権を狙った反乱は呆気なく鎮圧された*6。
だが反乱の首謀者は大陸へ逃亡されてしまった。
反乱の結果は以下の通り。
隊長二名の喪失。
反乱に加担した四十六室は解体、並びに永久解散。
首謀者の家、綱彌代家は取り潰し。
また隊長二名が負傷し数年後引退する事になった。
これが俺が三歳の時の出来事だ。
三番隊隊長の父と同隊の副隊長の母は反乱の首謀者によって、呪いと言い換えてもいい病に侵されてしまう。
五番隊隊長だった現マホウトコロの校長が、隊長を辞して教育者になったのも……自身が若気の至りで作った物が、最大の理解者であり親友の父と母を侵す物になった事に、大きな責任を感じたからだと言う。
「私は君に会う資格など無いのだ」
「私の一生を掛け、二人を取り戻す。これが私の贖罪だよ」
マホウトコロ入学時に、搾り出す様な声でそう言われたのを今でも思い出す*7。
父と母は……剣を振るうどころか、立つことすらままならなくなった。
そうさせている呪いは極めて強力かつ厄介な代物だった。
何せ日本で最高峰の回道の使い手である四番隊隊長卯ノ花烈ですら、解くのは出来なかったほどだ。
卯ノ花隊長はこの呪いが自分の範疇を超えていることを察し、自身に回道を教えた零番隊の麒麟寺天示郎に頼った。
だが呪いは強力で……回道を生み出した麒麟寺隊長ですら、呪いの進行を止める事しか出来なかった。
「ごめんなさい」
「すまねぇ」
歳も地位も経験も遥かに上の二人に頭を下げられ、幼いながら悟ってしまった。
もうあの頃の元気な両親には会えないのだと。
父に剣術を教えてもらうことも。
母の手作り料理を食べることも。
不可能なのだと……。
それでも前を向こうと、死神界全体で改革が始まりようやく通常な状態に戻ろうとしたタイミングで、強大な戦力がまた無くなることになった。
倒れた父に大きなショックがあったのだろうか。
曾祖父は何かを悟ったのか、俺に刀源流のすべてを見せてくれた。
「真似してみよ」
そう言われ見せてもらった刀源流を、曾祖父や多くの隊長達の前で再現した。
「よし、あとはお主が手を加えるのじゃ」
曾祖父はそう言いながら、大きく頷いた。
そして後は頼むと、横に居た山本総隊長と卯ノ花隊長にポツリと言った後。
曾祖父、刀原将衛門平介は眠るように亡くなった。
そんな時に助言をくれた人がいた。
曾祖父の葬儀には大勢の方々が来ていたが、その一人に零番隊の兵主部一兵衛が来ていたのだ。
「あれほどの呪い、今は手立てがない。だが未来となれば話は別じゃ」
「未来…ですか?」
「そうじゃ。正確に言えばおんしの斬魄刀じゃ」
「斬魄刀…」
「斬魄刀の卍解の内容次第では、不可能も可能となりうるだろう」
「!」
「おんしは運がいい。他の子らよりも、浅打を早く持つことが出来ておる」
「…」
「聞いておろうが……卍解は極めて難しい、だからこそ研鑽を積め。良い師を見つけよ。目的を忘れるな」
「はい!」
「この葬儀には儂の他にも、零番隊や護廷十三隊の隊長が多くいる。いろんな事を聞くが良い」
「分かりました、ありがとうございます!」
この助言を受け俺の目標は決まった。
卍解の習得。
西洋、極東魔法の多くの習得。
その為には多くの人に教えを貰うことだ。
まず初めに
「ちゃんボクも零番隊だから師匠とか無理」
と言っていたが……浅打の事、斬魄刀との向き合い方等を聞かせてくれた。
大きな参考になった。
零番隊の方々には、本当に感謝しかない。
そうこうしている間に、俺が師匠を募集していることを聞きつけた人たちが集まってきた。
「平介に、後は頼むと言われたのじゃ。儂が全てを教えるかのう」
「あら、平介さんは私を頼ったのですよ。総隊長が教えれば折角の原石*9が焼き焦げになってしまいます」
「なんじゃと。お主が教えれば
「んじゃ山じいが祖父替わりなら、僕たちが父替わりじゃないか?」
「年齢的に先生が曾祖父替わりで、俺たちが祖父替わりじゃないか?」
「そっか」
「それなら儂が母替わりじゃな。この瞬神が瞬歩と白打、手取足取り教えるとしよう。平治と慶花が倒れとる今、儂らが面倒見ないでどうする。のう喜助?」
「そうっすね。んじゃあ
こうして師匠は決まったのだ。
内容は以下の通り。
山本元柳斎重國総隊長*11に剣術と斬魄刀。
卯ノ花烈四番隊隊長*12に剣術と薬学、回道、鬼道。
京楽春水八番隊隊長*13に剣術と洞察、推理。
浮竹十四郎十三番隊隊長*14に座学と生活に必要な事。
四楓院夜一二番隊隊長*15に瞬歩と白打、隠密。
浦原喜助十二番隊隊長*16に鬼道と技術、西洋全般。
こうして師匠達と修行に明け暮れた訳だが……遂に7歳になり、真央魔法霊術院に当然入学することになった。
筈なのに何故か。
「行かんでよい」
「行かなくていいですよ」
「行かなくていいよ」
「行かなくてもいいぞ」
「行かんでいい」
「行かなくていいっすよ」
と言われた。
一応席だけはあったが。
当時は勢いと目標の為に、師匠に関してまったく気にしなかった。
だが10歳の時に真央魔法霊術院に卒業の為に改めて入り、同期の奴と比較され、実力と立場を自覚するようになった*17。
「あの方達から教えてもらってるんだから、そんな実力も持つよ」
多くの人から、親友の一言が結論だと言われた。
マホウトコロの友人の中で最も親しい奴は三名。
いずれも、真央魔法霊術院に入るより前に知り合った奴らばっかりだ。
白髪で少し背が低いが天才とまで言われる男子。
その白髪の奴の幼馴染の女子。
俺の幼馴染で、総隊長の右腕の孫娘。
4人で一緒にいろんなことをした。
俺の幼馴染以外の二人はマホウトコロの校長を師匠にしているし、俺の幼馴染だって彼女の祖父から剣術とか教わっている。
正直……あの三人と別れることが寂しかったことを、否定はしない。
両親の呪いの正体は今だ掴めない。
鬼道。
斬魄刀の能力。
陰陽道。
すべて違った。
そんな中やってきたのが、ホグワーツに留学する話だった。
西洋魔法はマホウトコロの教授達や、師匠の一人の浦原隊長に教わっているが、強力な呪いを解くには本場英国の西洋魔法を学びたいと思ったのだ。
故に留学生に立候補したのだ*18。
かくして
ということですね。
ーーーーーー
まもなく日が出ようとする時間。
校長室にてココア片手にした刀原は、そうダンブルドアに語り終える。
「なるほどの、日本の魔法界でもそんなことが…」
話を聞き、ダンブルドア校長が項垂れる。
そして思い出話を聞かせてくれる。
「……儂が若い頃、君の師匠達に会ったことがあると言ったの?」
「ええ、仰いました」
「直接会ったのは山本殿、卯ノ花殿。そして君の曾祖父、刀原将衛門平介殿じゃ」
「ああ、やっぱり…」
「山本殿は劫火のような方、卯ノ花殿は剣の山のような方、刀原殿は激流のような方。どなたも凄まじい方達じゃったのを思い出すのう」
「ですよね…」
「刀原殿が亡くなったと聞いた時は葬儀にお伺いしたかったが、例のあの人との戦いで忙しくての*20」
「あの人?ああ、ヴォルデモートとかいう連中ですか」
「そうじゃ、日本にも届いておったか」
「ええ……。お気楽貴族の反乱は、ヴォルデモートの影響もあるらしいので」
「それは…迷惑をかけたの」
「少なくとも、そのヴォルデモートには鬼道を叩きこんでやりたいと思ってます」
「あ奴はとんでもない子を敵に回したの、自業自得じゃがな」
「どちらかというと儂がお世話になったのは君の亡き祖父、刀原将之介平三郎殿の方じゃ」
そう言いながら、ダンブルドア校長はココアを飲みながら祖父についても聞かせてくれる。
「祖父ですか?というとグリンデルバルド関連ですか」
「…鋭いの、洞察力と言葉を読み取るのは
「鍛えられましたから」
「ふふっ、確かにの」
「ですが当時、英国と日本は敵国状態だったはず*21では?」
「いや当時はまだじゃった。儂がへーザブローと初めて会ったのは1939年じゃ*22」
「なるほど、確かにそうですね」
「へーザブローは日本にも影響を及ぼそうとしたグリンデルバルドを撃退しての」
「ああ、それで刀原の名は有名なんですか…」
「
「祖父の方ですか」
「うむ、英国ではヴォルデモートの影響で名が消えた。だがフランスやドイツ、アメリカではグリンデルバルドの方が今でも有名じゃ。ここだけの話……先の大戦で連合国側が日本との末期戦を、最後まで躊躇った理由の一つじゃな」
「グリンデルバルドを退けるほどの実力者と、まともに戦う自信が、連合国側の魔法界には無かったと?」
「そうじゃ、グリンデルバルドの事で首が回らなかったこともあるがの。儂もへーザブローと戦って確実に勝てるとは思わんかったから止めに回ったしの」
「それだけですか?」
「あとはやはり、護廷十三隊の存在じゃ。絶対に勝てぬ。お主達の国もろとも灰燼に帰しても良いなら止めぬと儂は断言した*23*24。」
「…やっぱり師匠達すごいんだなぁ」
「ふふっ、ようやく気付いたかの?」
ダンブルドア校長は笑いながら言った。
「さて、君が来た最大の理由、呪いの正体じゃな」
「手がかりだけでも良いんです……。何かご存知ありませんか?」
「聞く限り、闇の魔法であることは間違いないの。ただ正体までは……すまぬ、儂にもわからぬ」
「そう…ですか」
「亡き友人であり恩人、へーザブローの忘れ形見に起きたことじゃ、他人事には出来ぬ。儂もその呪いの正体について、調べてみよう」
「ありがとうございます!」
「その代わりと言ってはなんじゃがの…」
「はい」
「ハリーを助けてやってはくれんかの?」
「ハリーを…ですか?」
「君ならなんとなく察していると思うのじゃが……ハリーは試練と困難が待ち構えていると、儂は思うのじゃ」
「まあ、確かにそうですね。正義感強そうですし」
「彼はまだ未熟じゃ、故に君にも助けてもらいたい」
「ふふ、了解です、分りました」
「ああ、あともう一つ」
「何ですか?」
「儂の茶飲み友達になってほしいのじゃよ、君との会話は楽しいからの」
「僕でいいなら喜んで、ですよ。ダンブルドア教授」
「アルバス、で構わぬよ?」
「それは無理です」
「まあ無理にとは言わないがの」
「…」
「ではショウ、よろしく頼むの。では、おやすみ…と言ってももう朝じゃの」
「あ、本当ですね」
「長々と年寄りにつき合わせて悪かったの、じゃが久しぶりに楽しかったわい」
「貴重なお話、ありがとうございました。では、失礼しますね」
「うむ」
「あ、そうだ。ダンブルドア教授一つ聞きたいことが」
「ん?何かのショウ」
「…賢者の石について、なんですが。ダンブルドア教授の
「!?」
「……犯人を放置する理由、本来無いはずですよね?理由……いや、目的、お聞かせください」
「……まったく、本当に君はとんでもない子じゃの」
「鍛えられましたから」
「…へーザブローよ、此度も儂の負けじゃ。よし、誠心誠意、偽りなく答えよう。他言は駄目じゃぞ」
「承知いたしました」
祖父はグリンデルバルドとも戦ったらしい。
腐敗して、権力にしがみつき、保身に走っていた。
師匠曰く、あのクズども
ヴォルデモートの失脚は1981年
第二次世界大戦が終戦した年でもある
日本が米英に宣戦布告した真珠湾攻撃は1941年
つまり1939年時点では緊張はあれど直接戦争にはなってない
感想、考察、ありがとうございます
本当はフラメル発見まで行きたかったんですが…
ちょっと長くなるので次回にします。
では次回は今度こそ
フラメル発見
次回もお楽しみに