ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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例え作られた道だとしても。
例え暗闇の道だとしても。
進まなければ未来は無い。










死神と賢者の石編 終幕

 

校長室。

いつぞやの夜と同様、ダンブルドアと刀原がお茶会をしている。

 

いつぞやの夜と違うのは、刀原が若干霊圧を剥き出しにしていることか。

 

「嘘偽り無く。これはやはり嘘でしたか。ダンブルドア校長、あなたはやはり犯人をご存知でしたね」

 

「…そうじゃの、知っておった。ショウ、君は犯人が分かったようじゃな?」

 

「ええ、まあ。黒幕はヴォルデモート。実行犯はクィレル教授ですか」

 

刀原が答えればダンブルドアは拍手をする。

 

「正解じゃ、どうしてわかったんじゃ?」

 

「確証を得たのはロンと合流した直後ですね。感じていた二つの霊圧の内、どす黒い邪悪な霊圧が離れていき、残ったのはクィレル教授の霊圧でした。…直後消えましたが。クィレル教授はやはり?」

 

「ヴォルデモートに誑かされたと言えば彼の名誉にもなるかのう?ああ、彼は死んでしまったよ」

 

「やはりそうでしたか…」

 

 

 

「それで本題ですが、いつぞやの夜でも言っていましたね。黒幕は分かっているが、実行犯を特定するために放置する。でしたっけ?」

 

「左様、黒幕は君も言っていた通りヴォルデモートじゃ。そして、ああ、儂はたしかに犯人は未だ掴めんと嘘を言ったの」

 

「そして目的も嘘だった…僕は当時考えていた理由、犯人を捕らえ、黒幕たるヴォルデモートを釣り上げると言った」

 

「そうじゃ、それで儂はそれを肯定した。じゃが誓って言うが、儂はクィレルとヴォルデモートが一体になっているのは気が付かなかった」

 

「それは僕もです。森での遭遇後、霊圧の感知を上げましたがクィレル教授の霊圧は一つだけで、クィレル教授に取り憑いてる亡霊は霊圧の感知が出来なかった。今思えば、あれがヴォルデモートだったのか…」

 

やはり強引でも魂葬を試みれば良かったと、刀原は後悔する。

「話を戻します、ダンブルドア校長は、肯定はしましたが明言しませんでしたね。言質を取られたくなかったと?」

 

「まあ、そうじゃの…ショウ、君は…」

 

「単刀直入に伺います。ハリーをどうするつもりですか?」

 

「………」

 

「ロンは確かに負傷しており、早急に治療したいと思ってたのは事実です。だけど僕が行ったら殆ど治ってましたね。確かに犯人が複数の可能性もあった。だけどダンブルドア校長、あなたは犯人を知っていた。今世紀最強の魔法使いも参戦したあの状況において、二人目が突入する事はあり得ない」

 

「儂はグレンジャー嬢を安心させようと…」

 

「僕はハリーへ向かうつもりでした。ハーマイオニーなら説得出来た筈です」

 

「………」

 

「ダンブルドア校長、ハリーを英雄へ仕立て上げるつもりですね?」

 

「……全く、本当に恐ろしい子じゃの…」

 

「大方、ハリーを対ヴォルデモート戦への切り札にでもする。とか、今のうちに経験を積ませようとかですか?」

 

「……そうじゃ、その通りじゃ。明言しようその両方じゃ」

 

「やっぱりですか…」

 

「…ハリーには過酷で悲惨で暗黒の闇と対峙する運命が待ち受けておる。間違いなく。その為には」

 

「経験が必要だと…最初から生き残った男の子たるハリー・ポッターとクィレル教授と対峙させるために放置したと」

 

「いずれヴォルデモートと対峙するハリーにはこの件が非常に役に立つ筈なのじゃ」

 

「今回の件で死んだかも知れないのに?」

 

「いや、大丈夫だと言う確証があった」

 

「確証?……まさか、生き残った方法ですか」

 

「そうじゃ、ハリーが母から受けた愛の守りじゃ。それがあればヴォルデモートは、ハリーに指一本足りとも触れられん」

 

「…今回の様に?」

 

「分かっておったのか…」

 

「まさか、ただそれしかないと思っただけです」

 

「一本取られたの。だが君の言う通り、今夜ハリーを守ったのもその力じゃろう」

 

 

 

 

 

「納得は、出来ません。彼は!」

 

「幼い、と言うんじゃろう。その指摘は最もじゃ。じゃが今後も此度の一件ような事は起こりうる。成長なら早い方がよい。それに幼いと言えば君も十分幼い」

 

「…僕はそうならざる得なかった。目的の為にも僕は自ら飛び込んだ。師匠達はその思いに答えてくれた。今でも感謝してるし、これからも教えを受け続ける。全てを身に付けた覚えはないから…。だけどハリーは!」

 

「ハリーにもその時が来た。そういうことじゃ」

 

「……」

 

「分かるじゃろう」

 

「……分かりますよ、それこそ痛い程に。だからこそ納得出来ないんです」

 

「…ありがとう、君は優しい子じゃ。あのトロールも、最期の最後までその命を断つ事に躊躇しておったの」

 

「…僕はそんな立派な人間じゃありませんよ」

 

「いや、そんな事はない。ハグリッドから聞いておるよ」

 

「知ってたんですか…」

 

「後聞きじゃがの。君が心を痛めながら自分を叱責していたとな」

 

「………」

 

「本来ならこの件は、我々イギリス魔法界が背負う物であって、君が関わる物では」

 

「留学話はお互いに持ち込んだと聞いてますが?」

 

「…そうじゃの、互いの校長がそれぞれ合意した」

 

「僕を巻き込む気マンマンだったのでは?」

 

「…白状しよう。日本側の実力者をあわよくばとは思っておった。ただまあ…」

 

「大物が釣れたと?」

 

「まあ、そうじゃの」

 

「少なからず驚いた、そう言ってましたね」

 

「その言葉は紛れもなく本心じゃ」

 

 

 

 

「納得は出来ません。ですが、ヴォルデモートにはなんやかんやで借りがあります。間接的とは言え、両親の仇の一人であることに代わりないですからね」

 

「彼奴に輝かしい未来は無いの」

 

「例えハリーやあなたがトチ狂って許したとしても、我々が処理します」

 

「そうなったら、頼むの」

 

「ええ」

 

「では改めて、ヴォルデモートに対峙するため力を貸しておくれ」

 

「無論です。ハリーは友人ですから。もう二度と、あんな思いはごめんです」

 

「そうじゃの」

 

「ただし、再びこういう事になったら事前に伝えて下さい。あなたのシナリオを潰しかねませんからね。ああそうだ、一応常に薄く霊圧を纏っている影響で開心術も聞きませんし、機密もバッチリですので」

 

「掛けているの、バレておったか」

 

「機密保持と、相手が敵か見極める為でしょう?承知してます」

 

「すまんの、じゃが実に見事じゃ。障壁に阻まれておる感じじゃ」

 

「ありがとうございます」

 

「君の要望は分かった。これからはきちんと開示させて貰うとしよう。君と敵対するのは何としても避けたい」

 

「僕のバック(師匠達)ですか?」

 

「それもあるがの、この一年でよう分かった。君が成長すれば確実に君の師匠を上回る」

 

「その言葉は嬉しいです」

 

「ふふ、さて、もう夜も遅い。君も流石に疲れとるはずじゃ。おやすみ」

 

「そうですね。おやすみなさい、ダンブルドア校長」

 

かくしてダンブルドアと刀原の間に合意はなされた。

 

 

 

 

「あ、そうだ」

 

刀原は思い出す。

重要な事をだ。

 

ダンブルドアの方向にくるりと振り向き、伝える。

 

「この件は、()()師匠達にもお伝えしますね。万が一の時に連携が取れるように」

 

「え。そ、そ、それは…」

 

ダンブルドアは今夜一の狼狽っぷりを見せる。

 

「では、失礼します」

 

刀原は全く意に返さず、校長室を後にする。

校長室で一人になったダンブルドアの顔は青褪めていた…

 

 

 

 

 

翌日の朝、三人の内で最も軽傷だったハーマイオニーが先に目を覚ます。

その脇には校長室から戻って来た刀原が居た。

 

「ん?ああ、おはようハーマイオニー。体調は大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫みたい」

 

刀原はハーマイオニーの言葉を聞いて「そうか、良かった」とほっとした表情を見せる。

 

マダム・ポンフリーもやって来て診断をした後、朝食を持ってくる。

 

「とりあえず食べながら聞いてくれ。ロンは全身打撲だったが、まあ見ての通りもう問題ないらしい。あとは起きるだけだろうな」

 

ハーマイオニーのベッドの横にはロンがいびきをかきながらぐっすり眠っていた。

 

「ハリーは相当疲れていたから暫く目を覚まさないだろう。霊圧、いや魔力か。魔力も体力も、あと精神力もかなり疲弊していたからな。ああ、身体的な怪我は治ってる」

 

「ショウは?」

 

「全く問題ない、まあ若干霊圧を使ったぐらいか。気にすることは無いよ」

 

「良かった…ダンブルドア先生は何か言ってた?」

 

ハーマイオニーがそう聞くと刀原は首を振る。

 

「いや、何も言ってこない。ちなみに寝ていた時にマクゴナガル先生が来たが、多分ダンブルドア校長が事情を言っていたんだろうな。マクゴナガル先生も何も言ってこなかった。まあ相当心配していたから、その時皆の怪我の内容も伝えてある」

 

「そう、なんだか申し訳ない感じね」

 

「まあ、あんなことやったらそうなるわな」

 

「確かにそうね」

 

「ふふっ、ああそうだ、ロンとハーマイオニーの事情聴取は俺がやっておいた。だがハリーの身に起きたことはハリーしか知らないから、彼には後で事情を聞くとのことだ」

 

「ありがとう、ショウ」

 

「礼には及ばないよ」

 

体調が戻ったとはいえ、一夜明けて現実が追いついてきたハーマイオニーはその後二度寝*1を堪能することにした。

その日の午前にはロンが起き、ハーマイオニーと同様に説明する。

 

説明中にマダム・ポンフリーがやってきて診察が行われ、ハーマイオニー共々翌日の退院が決定となった。

 

 

この一件についてダンブルドアは「秘密じゃよ~」と言っていたが、効果は全くなかった。

 

噂は風よりも早く学校中を回って、仰々しい尾ひれをこれでもかとくっつけていた。

 

件の当事者の一人と言ってもいないのに、何故か知られていた刀原には昼飯に大広間に来た際、新聞記者と見紛うばかりの生徒が押し寄せた。

 

迫る生徒達に当然のことながら真実を公表することなど出来ず、刀原は沈黙を守った*2

 

そして当事者が沈黙を守った事で尾ひれは悪化の一途を辿ったのだった。

 

 

 

 

数日後にはハリーが目覚めた。

ハリーが起きたという知らせを受け医務室に駆け付けた刀原に、ハリーは開口一番に謝った。

 

「ごめんショウ、君が言っていた通りスネイプじゃなくて…」

 

「クィレル教授だったか?」

 

刀原がそう言えばハリーは一瞬驚くが、うんと頷く。

 

 

ーーーーーーー

 

「ダンブルドアだけでは飽き足らず、あの日本の少年までも私の邪魔をする!」

 

「ショウが?」

 

「そうだ、ハロウィンのトロール!森でお前を襲った時!あともうちょっとだったのに!」

 

「あれもあなたが…」

 

「その通りだ。今思えば漏れ鍋で我が君が常に私と共にいることを、奴は見破っていたのかもしれない」

 

「俺様を亡霊扱いなど…」

 

「常に奴は私を警戒していた。今、この時まで、私はポッター、お前に手を出せなかった。見ろこれを!」

 

「その傷は…」

 

「森でお前を襲おうとした時、奴の攻撃によって受けた傷だ。右腕の骨折は何とかなったが、防ぐので精一杯だったあの魔法(鬼道)で受けた傷は治りが遅い」

 

「……」

 

「だが奴は私の読み通りトロールで掛かり切りの様だ*3。頼りの日本の少年も、ダンブルドアも、助けは来ないぞポッター!さあ、早く石を寄越せ!」

 

「やるもんか!」

 

 

ーーーーーーー

 

「ショウはずっとクィレルを警戒していたんだね…それなのに僕たちスネイプが犯人だと言い張ってた…」

 

ハリーは目に見えて落ち込む。

 

「まあ、スネイプ教授がすごく怪しく見えるのは事実だししょうがないさ。気にすんなハリー」

 

刀原がそう励ませば「ありがとう」とハリーが少し元気になった。

 

 

ハリーが目覚めた翌日は学年末パーティーだった。

刀原は特に気にしなかった寮杯の行方は、スリザリンの優勝で幕を閉じたかと思われた。

 

だが風よりも早く回っていた噂によって、覆るのではないか?という空気が流れていた。

そしてその空気は、現実となる。

 

「よしよしスリザリン。よくやった。じゃがしかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて…」

 

ダンブルドアがそう告げると、部屋全体がシーンと静まりかえる。

 

「かけ込みの点数をいくつか与えようと思う。まず最初は、ロナルド・ウィーズリー君」

 

ロンの顔が一気に赤くなる。

 

「この何年間かホグワーツで見ることが出来なかったような最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに四十点を与える」

 

おおーというグリフィンドールの歓声が上がる。

ロンは自身の兄弟達に揉みくちゃにされる。

 

「次にハーマイオニー・グレンジャー嬢。炎に囲まれながら冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに四十点を与える」

 

ハーマイオニーは腕に顔を埋めている。

 

「次にショーヘイ・トーハラ君…巨大なトロールに対し全く臆することなく戦い、無傷で完封勝利し、友人を守ったことを称え、グリフィンドールに四十点を与える」

 

さらにグリフィンドールに歓声が上がる。

流石の刀原も今度は逃げられず揉みくちゃにされる。

 

「四番目は、ハリー・ポッター君。その完璧な精神力と、並はずれた勇気を称え、グリフィンドールに四十点を与える」

 

四位だったグリフィンドールが百六十点の差を追い上げ、スリザリンと並ぶ。

 

そして…。

 

「敵に立ち向かった四人は本当に素晴らしい。じゃが、友に立ち向かうのは時としてそれ以上に勇気のいることじゃ。よってこれを称え……ネビル・ロングボトム君に十点を与える!」

 

グリフィンドールは稀にみるであろう逆転優勝を飾ったのだった。

 

 

期末試験の結果も帰ってきた。

刀原はハーマイオニーと揃って学年トップを飾った。

 

マルフォイの名前が少し下にあるのは意外だったが。

ハリーとロン、ネビルも問題なかった。

 

何気に気になっていたマルフォイの愉快な仲間たち(お供たち)もギリギリだったが大丈夫だったようだ。

それをハリーたちが悔しがっているのを刀原はハーマイオニーとジト目で見ていた。

 

 

夏休みが間もなく始まる。

あっという間に洋服タンスは空になり、旅行カバンは服でいっぱいとなる。

 

帰りの電車での道のりは、行きよりも人数が多かったことあってずっと早かった。

 

ハリーは勿論、ロン、ハーマイオニー、刀原も中々の有名人になっていたらしく、多くの生徒が来たり覗いていった。

 

そうしている内にキングス・クロス駅に列車は到着した。

 

大きな荷物を抱え、生徒たちが順に列車から出て、家族の元へと戻っていく。

とはいえハリーにはこれからが悪夢みたいなものかもしれない。

 

聞けばハリーの育ての親は彼に冷たく当たっているとのこと。

日本に招待したいが駄目だろうと刀原は判断する。

 

「ハリーの家の住所、教えてくれ。おそらくだがフクロウ便が使えなくなるかもしれないからな」

 

「あ、ありがとう。でも気をつけて、僕の家、その……」

 

「ああ、ダーズリー家だろう?心配すんな。なんとかする」

 

刀原たちはゲートを出て、元の世界へと戻っていく。

最後に振り返ってみれば、列車の赤い車体に差し込む輝かんばかりの夏の日差しが輝いていた。

 

ホグワーツでは使えなかったカメラにそれを捉える。

来年からは持ってこないと刀原は決めたので、これが最後の写真となるだろう。

 

ハリー達と別れ、刀原はロンドン・ヒースロー空港へと向かう。

 

そして英国土産をたっぷりと買い込み、刀原は日本への帰路についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
背徳的と言っていたが気にすんなと返した

*2
当然ご飯どころではなく、曲光を掛け逃亡した

*3
刀原はこの時、ダンブルドアの相手で掛かり切りだった。




これにて賢者の石編終了です。

感想、考察ありがとうございます。
そしてお待ちしております。

次回から
秘密の部屋編開始となります。
次回も楽しみに






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