手段は何処かにある。
ほらこんなふうに。
まあ、許されるかは置いておいて。
九月一日
キングズ・クロス駅。
その9と4分の3番線に刀原は居た。
前日にロンドンに来た刀原はその足でダイアゴン横丁に行き、ホグワーツで必要な教科書や羊皮紙、インクなどを購入した。
そして宿屋にもなっている漏れ鍋にて一泊した後、前回のことを踏まえて少しだけ早く駅に到着し、そのままやって来た列車に乗り込む。
しばらくすると、ハーマイオニーやネビルがやって来て再会を喜ぶ。
後はハリーとロンか。
そう刀原が思っていると列車は動き出す。
「ハリーやロンはどうしたのかしら?」
「さあ?大方、フレッド、ジョージとかと一緒じゃないか?ロンの妹さんも今年入学らしいし」
ハーマイオニーが心配し、刀原が考察しているとコンパートメントの扉が開く。
すわハリーとロンかと思うだろうが、去年より霊圧探知の精度を上げた刀原は分かった。
違うと。
そしてそれは正解だった。
「あの…ここ空いてますか?」
開けたのは赤毛の髪をした女の子だった。
端的に言えば、女の子の正体は話題にしていたロンの妹さんだった。
夏休み、ロンと双子によってダーズリー宅から拉致られた*1ハリーは、その後ずっとウィーズリー家にいたと手紙に書いてあったのだ。
当然この妹さんもハリーを知っている訳で…。
「ロン…私の兄やハリーの話題が上がっていたので、知り合いかな?と思ったので…」
妹…ジニーは少しオドオドしながらそう答えた*2。
「なるほどなぁ、まあ、ロンの妹さんなら歓迎しない訳にはいかないよな?二人はどう?」
刀原がそう聞けば、二人も同じ思いだったため即了承し、ちょっとした歓迎会みたいなのが行われた。
ジニーも同性のハーマイオニーとは直ぐに仲良くなり、授業や寮のことなど熱心に聞いていた。
女子トークが展開される中、半ば蚊帳の外となっていた刀原とネビルの話題は、一向に姿を見せないハリーとロンだった。
「二人ともどうしたのかなぁ?」
特にネビルは酷く心配しており、探しに行こうとしていた。
「そうだな、少し…」
刀原も重い腰を上げようとした矢先、車内販売がやって来る。
その時だ。
見知った霊圧が外に二つ。
刀原は三人が車内販売に夢中になっている隙に、車両の廊下に行き廊下側の窓を見る。
すると…。
「!?」
何故か空を飛んでいる車*3が目に飛び込む。
座席を見れば、ハリーとロンが四苦八苦しながら運転しているではないか。
あいつら、なにやってんの!?
刀原は声を出さなかった自分を褒めたいと思った。
そして直ぐに頭を抱えた。
あれがハリーを拉致ったという空飛ぶ車か。
違法改造だろ、という読みは当たったな。
しかし何がどうなったらあんな事になる?
そう言えばジニーが乗り遅れる寸前だったから、二人は知らないと言っていた。
なるほど、降り遅れたのか。
それであの様な手段を思いついたという事か。
しかし、もっといい方法なかったのか?
ライを雀部に預けた俺と違い*4、ハリーにはヘドウィグがいるからふくろう便が出せるはずだろう。
それに戻って来るはずの、子供達を見送った大人たち…それこそロンの両親が居るはずだろう。
やれやれ。
刀原は呆れ果てた。
そんなことを思っていれば、
刀原は三人が待っているコンパートメントに戻る。
三人…特にネビルを安心させる為に。
そして今はもう見えない事を良い事に。
去年は船だったが、二年生となる刀原達三人は一人で動くと言う馬車に乗る。
ハーマイオニー達はなんの疑問も無く馬車に乗り、刀原も馬車に乗るが…。
なんだこいつ?
羽が生えた馬?
二人は無反応。
二人には見えてないのか…。
刀原は馬車を轢いている生物が気になった。
流石の刀原も魔法生物にはそんなに詳しく無い。
その為知らなかった。
この馬の様な生物の名がセストラルである事。
死を目撃し、それを受け入れた者しか見えない事。
曽祖父の死を見ている為見えるのだと言う事。
知るのは、案外先である。
グリフィンドールに入ったジニー達新入生の組み分けが終わっても、ハリーとロンは来ない。
「ショウ、二人について知っているでしょ?」
ハーマイオニーは、刀原が事の真相を知っていると踏んだのか質問してくる。
刀原は黙秘する必要もないと踏み、白状する。
「…… 車が空飛んでてな」
「はい?」
ハーマイオニーは聞き返す。
「いや驚いたぞ、英国は空飛ぶ車を発明したのか」
刀原は正に驚いた感じで話す。
「そんなニュース、聞いた事ないけど?」
ハーマイオニーは冷静に返す。
「まさかその車に知り合いが乗ってるなんてな…」
「え、まさか…」
そこでハーマイオニーは事の真相に気がつく。
「そいつらの名前、ハリーとロンって名前なんだが……ハーマイオニー、聞いたことは?」
刀原が大真面目に聞いた後、ハーマイオニーは天井を見上げ「なんてこと…」とポツリと言い…。
「知ってる名前だわ」
と刀原の方を向いて、大真面目に言った。
「友人だよな」
「そうね、私達の友人だわ」
「他人の空似かなぁ…」
「あなたが間違えるなんて思えないけど?」
「嬉しい信頼だね、今後とも答える努力をしよう」
ここまで応酬した所で、沈黙が流れる。
「……退学になると思う?」
ハーマイオニーがポツリと聞く。
「……確証は無いが大丈夫だと思う」
刀原がポツリと答える。
その後日本語で「tabunn…(多分…)」と答える。
「ちょっと!?」
ハーマイオニーは日本語が分からない為、刀原の最後の一言が気になった。
結果的に言えば。
二人は無罪では無いが放免となった。
刀原の読みは見事に的中していたことになる。
ハリー曰く。
ゲートに何故か入れなかったハリー達はロンの父であるアーサー氏の車をパクり、ホグワーツへ向かうことにした。
道中様々な目に遭いながらなんとかホグワーツに到着したが、車が不具合を起こしてあえなく墜落。
そして墜落した先は暴れ柳と言う貴重な木。
その木と車、ついでにロンの杖を破損しながら校門に着いたら、出迎えたのは般若となっていたマクゴナガルとスネイプ。
木の破損と、空飛ぶ車を日刊預言者新聞と言う英国魔法界の新聞の記者とマグル達に見られたのも原因だろう。
ハリーに対しては陰険さが増すスネイプが退学を請求したが、ダンブルドアの取り成しもあってなんとか退学は免れたらしい。*5
そして翌朝、車の持ち主の妻でありロンの母親であるモリーからお叱りの吠えメールが来たのだった。
マクゴナガル、スネイプ、モリーの三名によりこってり、ねっちょり絞られた二人に刀原も一喝する事はなく、事情聴取に留まった。
「でも入れなかったのは事実なんだ。僕たち大変だったんだから…」
「だからと言っても、もっとマシな手があった筈だ。ふくろう便を出すなり、戻ってくるロンの両親に送って貰うなりな」
事故って死んだら元も子もねぇ、と言えばようやく理解したのかうんうんと頷く。
「さて、プラットホームに入れなかったと言うことはだ。どう考えても誰かが邪魔したって事だ。なんか心当たりはないのか?ハリーたちに学校に来てほしくないって人に」
「うーん、僕には無いな…ハリーは?」
ロンが首を横に振り、ハリーを見た。
ハリーも首を振っている。
「うーん、マルフォイとかは僕らがいなくなったら、すごく喜びそうだけど」
刀原がなんかあるだろう、と聞けば、ロンが意見を言う。
だが、ハーマイオニーが反対論を言う。
「でも現実的じゃないわよ。私は結構前に駅に到着したけれど、その時にはマルフォイが乗っていたし…大体、二年生がどうやって特定の人だけが入れないようにする魔法を使うの?私は出来ないわよ」
「二人には悪いがハーマイオニーに同感だな。俺もそんな高度な魔法は出来ない、鬼道も無理だな。可能性があるなら陰陽道だろうが、日本ですら使用者が少ない陰陽道をマルフォイが使えるとは思えん」
ハーマイオニーの意見に刀原も賛同する。
去年の学年末試験の最高得点者二人が不可能と言っている為、かなりの信憑性があった。
「じゃあ誰が?あ、そういえば…ドビーのこと手紙に書いたよね?」
ハリーはふと言う。
「ドビー?ああ、手紙が来るのを妨害していたって言う奴だったっけ?」
刀原がそう聞く。
「そう、ドビーは僕をホグワーツに行かせないように…。……行かせないように?」
「其奴だ!」
「それよ!」
ドビーのことを思い出したハリーに、刀原とハーマイオニーが力強く言った。
「ドビーって屋敷しもべ妖精なのでしょう?屋敷しもべ妖精たちの魔法は私が調べたところ、私達の魔法とは少し違うものを使うらしいのよ」
「ああ、ホグワーツ特急の出入り口が、その辺の魔法で妨害が出来るとは正直思えん。だが屋敷しもべの魔法ならば…彼らはホグワーツの姿くらましを無効化する魔法すら破れるって噂だ。だとすれば、あの入り口を塞げたとしてもおかしくはない」
刀原とハーマイオニーが力説すると、ハリーとロンは納得するかの様な素振りをする。
「ハリー、ドビーのご主人は誰か聞いた?」
ハーマイオニーがドビーのご主人を聞く。
「確か、マルフォイだって…でもドビーは警告しに来たって言ってたよ?」
「警告?」
ハーマイオニーが聞き返す。
「うん、今年のホグワーツはかなり危険だって」
「警告?でも結局はマルフォイの仕業って事?」
ロンの質問に刀原とハーマイオニーが答える。
「いや屋敷しもべ妖精は割と正直な筈だ。おそらくハリーに警告した内容は真実で、本気だと思う。今年のホグワーツに危険が迫ってるってやつな。少なくともドビーの認識下では、だが」
「だから本気でハリーを止めようとした。身を案じてね…きっと彼の善意の独断だと思うけど」
「だとしたらおせっかいにも程があるよ…」
刀原とハーマイオニーの答えに、ハリーがそう言ってため息をつく。
よほどダーズリー家の生活は嫌だったらしい。
その後は今後も邪魔してくるかもしれないドビーの対抗策や、ドビーが言った警告の内容を話し合ったが、残念ながら妙案は出なかった。
その要因の一つが…今年の新入生、カメラ小僧のコリン・クリービーがやって来たからである。
コリンは実に厄介だった。
ハリーに迫って写真へのサインを求めるのだ。
しかもそれをネタにしてスリザリンが笑う。
ハリーには最悪のパパラッチと言えたのだった。
はた迷惑な善意の塊のドビー。
パパラッチコリン。
ハリーには最悪の二学年の幕開けだった。
だがそんなことを気にする暇も無く、二学年の授業が幕を開ける。
去年よりも難しくなった教科に各生徒は声無き悲鳴を上げる。
当然ながらハリー達の疑問も、新たに詰め込まれる知識に埋もれていった。
変身術では去年学んだ事の応用が多かった。
去年の内容が長期休暇中に頭から飛んでいた者は初手から躓き、マクゴナガルより厳しい言葉を貰う。
魔法薬学もより繊細で緻密な作業が求められる様になる。
そしてスネイプによりスリザリン以外の生徒達は嫌味と難癖とともに点数を下げられる。
他にも薬草学や呪文学などの授業も、当然ながら去年より難易度が高い。
しかし、そんな中でも特に異色の授業があった。
毎年教授が変わると言うジンクスを持つ、闇の魔術に対する防衛術の授業だ。
新しく教授となったギルデロイ・ロックハートは、教科書に自身の自伝でもある著書を選んだ。
泣き妖怪バンシーとのナウな休日。
トロールとのとろい旅。
狼男との大いなる山歩き。
などなど…。
かなりの金額をするその本を、刀原は買った直後から読んだ。
その感想としては…。
なんか妙な本といった感じだった。
何故か。
刀原は日本にいた時も、英国にいる間も大量の本を読んでいる。
「本は読んでおくに越したことはないっす。知識が無くっちゃ話になんないっすからね」
師匠たる浦原からこう言われているし、両親を救う鍵がどこに転がっているか分からないからだ。
刀原が読んだ本には自伝や伝記も含まれている。
そのため刀原は思ったのだ。
ロックハートの本は第三者目線で書いている感じで、創作か昔の記事や出来事を参考にしているのではないかと。
ただ、読み物としては面白い。
自伝として読むのは間違いだな。
そんなことを思っている刀原を尻目に、ハーマイオニーは授業前どころか汽車のコンパートメントにいる時から、ロックハートが如何に偉大で素晴らしいかを熱弁していた。
意外だがハーマイオニーにもミーハーなところがあるもんなんだな、と刀原は思いながら授業に赴いた。
しかし刀原の推理は的中することになる…。
善意の道が必ずしもその人に良いとは限らない。
やり方を考えてみてはどうか。
見たからと言って12歳が運転出来るのだろうか?
足、届かないんじゃ…
コ○ンかな?
なんて書きながら思ったり。
感想、考察、ご意見ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
次回は
ロックハート
次回も楽しみに
実は、ロックハートの扱いについて毛色が違う物を用意しました。
次回は二つ
一つは正規ルート
ロックハートの正体見たり。
もう一つはifルート
激怒
となります。
簡単に言えば、
正規ルートはロックハートの闇について
ifルートはロックハートがパッパラパーだったら。
と言う事です。
どうぞよろしくお願いします。