名作は様々。
嘘か真かは端にやり
英雄か詐欺師かは置いてゆき
本の評価をしよう
「私だ」
ロックハート教授はそう言ってウィンクする。
女子たちはそれに黄色い歓声を上げ、男子は寮の垣根を超えて全員ジト目顔だ。
キメ顔…ドヤ顔?まあ顔だけはいいからいいが。
しかしあからさまに過ぎて失笑を禁じ得ないぞ。
「そう、ギルデロイ・ロックハートです。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞!もっとも、そんな話をするつもりじゃありません。バンドンの泣き妖怪バンシーを、スマイルで追い払ったわけではありませんからね!」
勲三等マーリン勲章…確か、英国魔法界の知識や娯楽に貢献した人物に贈られる勲章だな。
知識や娯楽に貢献…ねぇ。
やはり自伝ではなく、創作か?
それとも臨場感は無いが妙にリアリティがあるから、やっぱり昔のことを書いたのか?
「さて、今日は最初にミニテストをやろうと思います。ああ、心配はご無用、君たちがどのぐらい私の本を読んでいるかチェックするだけですので」
ほう、テスト?
どれどれ…。
はあ?
1.ギルデロイ・ロックハートの好きな色は?
2.ギルデロイ・ロックハートの密かな大望は?
3.ギルデロイ・ロックハートの業績の中で一番偉大だと思うものは?
配られたテストはこんな内容だった。
………。
文才や商才はあっても教育者にはなれんか。
こんな感じの自己満足の質問が延々と続いている。
「さあさあ皆さん!私の本を読んでいれば、こんなテスト簡単でしょう?あと20分ですよ!」
闇の魔術に対する防衛術に関係のない、教育を冒涜するかのようなテストにうんざりする。
こんなバカげた物、やる価値すら無い。
当然、指一本も触れない。
俺は目の前の紙切れを細切れにしたい気持ちを全力で抑え、放棄した。
30分後、至極どうでもいいテストが終了しロックハートはテストをパラパラとめくる。
「チッチッチ…私の好きな色はライラック色だということを、ほとんど誰も覚えていないようですね。『雪男とゆっくり一年』にそう書いてあるというのに」
どうでもいいわ。
「『狼男との大いなる山歩き』をもう少し読まなければならない子も何人かいるようだ」
ロックハートがクラス全員にそう言って悪戯っぽくウィンクする。
「それに私の誕生日の理想的な贈り物は魔法界と非魔法界のハーモニーですが…」
それは本当っぽいな。
「やれやれ、ほとんどが答えれていない。ですが、ミス・グレンジャーは満点だ!グリフィンドールに10点あげよう!」
ほう、流石ハーマイオニーだな。
ハーマイオニーは名前を呼ばれ、顔がピンクに染まった。
「ハーマイオニーもあんな奴が良いのかな?」
と言うのはハリー。
「まあ、顔は良いからな。比較的優秀な部類の方だと思う文才。自身のルックスを使った商法。作家として、商売人としては百点だと思うがな」
「ふん、あいつの武勇伝が本当かどうか怪しいな」
俺がロックハートの評価をすればロンは気に入らないらしい。
まあまあ。
「本を売るのに自分が英雄になる必要などない。あの手の話は創作とか他人の武勇伝だと言うよりも、自身の武勇伝だと言った方が売れるんだろ」
ペテン師かどうか、本には関係ない気がする。
ただ、あのテストは頂けないがな。
テストの話が終わって話が変わる。
「さてさて?このクラスには生き残った男の子がいるそうですね?」
お、呼ばれているぞハリー。
「人気者…というか有名人は辛いな?」
隣でうへぇーという顔をしているハリーを小突く。
「私の授業を受ければ、私のような人間になれるでしょう!」
ロックハートはそう言い放つ。
「だとさ」
「やめてよショウ」
ハリーがかなり苦い顔をする。
このままハリーの話題かな?
そう思っていた矢先だ。
「そして、日本から私の授業を受けに来た、マホウトコロの留学生もいるらしいですね?」
俺か。
「言われてるよショウ」
ハリーがここぞとばかりに言い返す。
「貴方の授業のみを受けに来た覚えはないのだが」
俺は腕組みしながら答える。
ロックハートは聞こえないのか続けた。
「日本…私も行きました。日本刀を持ち、一見古い様に見えますが、実はそれこそ彼らの力の源。古き良き伝統の魔法界と言った感じで、ご飯も美味しい!そんな日本から来てくれたことに感謝しますよ?私の授業は後悔させませんよ!」
あのテストで作家先生としては一流だが、教授としては及第点にも満たない事が露呈している。
日本へのリスペクトだけ、素直に受けよう。
そんな様子を満足そうに見たロックハートは、教壇の下から風呂敷で覆われた籠を取り出した。
「さあ、皆さん気をつけて!今よりこの教室で、君達はこれまで経験したことがないような恐ろしい目に遭うことでしょう。だがご安心しなさい。私がここにいる限り君達に決して怪我などさせません」
恐ろしい目?
小さくて動きまわる霊圧。
まさか…。
もったいぶった物言いで風呂敷に手をかけるロックハート。
それを受け、ファンの子達は盛大に怯え、それ以外の者達は冷めた目で見る。
そんな生徒達を一瞥して、ロックハートは風呂敷を一息に取り去った。
「さあ見たまえ! 捕らえたばかりの、コーンウォール地方のピクシー妖精だ!」
籠の中にいたのは、群青色をした羽のある小さい生物達だった。
それが十数匹。
狭い籠の中を金切り声とともに飛び回っている。
あれらが脅威…と言うか面倒で厄介極まりない存在だと認識している生徒は俺を除くといない。
クラスの中には失笑する生徒もいる。
痛い目見るぞお前ら。
「笑ってる生徒が何名かいますが、それもこれまで。こやつらは性悪な小悪魔ですぞ…」
イマイチ反応が薄い生徒達にロックハートはそう言う。
そしてピクシーが詰まった籠の扉に手を伸ばす。
マジか…。
まさかアレを解き放つ気か?
俺の懸念はまたしても的中する。
「さあ、お手並み拝見!」
「本当にやりやがった!?」
ロックハートはさっと開けてしまった。
そして放たれる群の暴力。
瞬く間に阿鼻叫喚に陥る教室。
インク瓶をひっくり返す者。
教科書を破く者。
悪行の限りを尽くすピクシー。
「さあさあ、どうしましたか皆さん?捕まえてみなさい、たかがピクシーですよ!」
そうカッコつけながらロックハートは杖を抜き、何やらヘンテコな呪文を唱えるが効果はなく、挙句の果てにはピクシーに杖を取られる。
そして杖を取られ、戦力外となったロックハートは敵前逃亡する。
「自分の尻ぐらい自分で拭け!」
両耳を引っ張られ、シャンデリアの一部になろうとしていたネビルを救出しながら吐き捨てる。
「ショウ!例の、日本の魔法は使えないの?」
「うーん。数が多いうえに小さくて捕らえられん」
ハリーが悲鳴に近い声で聞いてくるが、俺の答えは芳しく無い物だった。
うわー。
きゃー。
こっちくんなー。
教室は混沌となった。
えい。
とりゃ。
そい。
刀を抜く訳にもいかないので手刀で相手する。
くそ、周りに人がいなきゃ対処の方法もあるがな。
「く、来るなら、来い。これ以上は先には行かせないぞ!」
半ば震えた声でそう言うのはマルフォイ。
後ろにはスリザリンの女子を含めたスリザリンの面々。
ほう、マルフォイめ、中々根性あるな。
感心感心。
だが他勢に無勢。
ピクシーの大半がマルフォイの方に行く。
よし。
「助太刀するぞマルフォイ」
「と、トーハラ!?」
劣勢だと考え、援護に向かう。
マルフォイはまさか来るとは思わなかったのか唖然とする。
「た、助けなんていらない!」
「お、そうか?んじゃあの中に飛び込んで、玩具にならない自信でも?」
「うっ」
マルフォイは強がるが、俺の質問に詰まる。
「グリフィンドールの方は良いのか?」
と俺に聞くのはスリザリンの誰か。
「大丈夫だろハリーとかハーマイオニーがいるし」
俺がスリザリン方面に来たのはハリー達に作戦を授けたからだ。
「礼は言わないぞ」
マルフォイが照れ臭そうに言う。
このツンデレめ。
「かまわん、俺はスリザリンの面々とも友好的に行きたいだけだ。ほら、来たぞ」
迫るピクシー。
「くっ」
苦い顔をするマルフォイ。
「落下呪文は覚えているか?」
マルフォイに問う。
「問題ない!」
マルフォイはそう答える。
「よし、それじゃあ、ハリー!ハーマイオニー!」
マルフォイの返答に微笑みながら三人に合図する。
彼らには合図があったらやって欲しいことを伝えてある。
「『
ハーマイオニーは停止呪文でピクシーの動きを封殺する。
そして。
「「『
「『墜ちろ!』」
間髪入れずハリーとマルフォイの落下呪文に俺の霊圧が乗せられ、ピクシーが地に伏す。
「よし、一件落着。みんなで回収だな」
かくしてピクシーは御用となった。
一時的とは言え、グリフィンドールとスリザリンが手を結んだこの一件はピクシー戦線と言われた。
ハリーやロンもマルフォイの仲間思いな一面に気がついただろうし、手を結ぶとは行かないまでも、ゴタゴタが無くなれば良いのだが。
教室から生徒達が居なくなり、俺一人となる。
さて。
「ロックハート教授。お話が」
俺が扉を叩きながら、声をかける。
「…何かな?」
「ピクシー、どうしますか?」
「…入ってくれ」
「失礼します」
部屋に入ると意外と閑散としている。
「失望したかね?」
「ピクシーの件ですか?テストですか?」
ロックハートは授業でのアイドルごっこは何処へやらと言って感じだった。
「ダンブルドアに聞いたよ?君は洞察力が高いとね。君は気づいているのかな?私が…」
「自伝本と称し、他人の武勇伝を書いている事ですか?」
「ッ!正解だ…ああ、正解だとも…」
そう言ってロックハートは黙り込む。
手に杖は無い。
先程ピクシーに奪われ、刀原が預かっている。
「君の目を見たとき、見透かされていると、気がついた。私にはあまり魔法の才能が無くてね」
「ですが文才と商才は有りますね」
「嬉しいよ。先程も言ったが、私は日本にちょっとした憧れがあってね。まあ、私の杖が桜で出来ている縁なのだが」
「成る程、確かに日本では桜の杖を持つ者はちょっと特別視されますね」
「ああ、だから私は英雄になりたい、目立ちたい、そう思っていた。だが…このザマだ」
「…」
「君がポッター君達に話している内容を聞いて冷や汗をかいた。もう誤魔化しは出来ない、私は、」
「教授、言わなくて良いです。大方、忘れさせている。そんなとこでしょう?」
「お見通しか…」
ロックハートは立ち上がりかけるが、俺の答えに正解を告げ、椅子に再び項垂れる。
「一つだけ、聞きたい。どうして分かったのかい?」
「一つ、その本達が何処となく第三者目線になっている。二つ、臨場感が文才で補われている。三つ、貴方が受賞した勲章は三等、つまり」
「英雄としてではなく、文豪として評価されている。か…」
「それと、あの授業での醜態ですかね」
「完璧だ。君は…私をどうする?」
ロックハートに問われ、俺はふむと頷き…。
「どうもしませんよ?」
と答える。
「ど、どうもしない?」
ロックハートは信じられない感じで聞き返す。
「例えば、貴方が日本や我ら死神を愚弄してきたのであれば、切りました。今この場で取り繕ったり、記憶を消しに来ようとしてきたら叩きのめし、引っ立てました。でも…打ちのめされている所を見ると…嫌気が差している…そんなとこですか?」
「君はホームズみたいだね」
「僕は洞察と物事の順序で推理と考察をします。探偵じゃ有りませんし、どちらかと言えばポアロでしょう」
「確かにそうかもね」
「十分に反省していて、何もしてこないのなら管轄外です。留学生なので。あーでも、あんなテスト出したり、授業で寸劇みたいなことやり出したら引っ立てます」
「もう、しないよ。演じるのは懲り懲りだ」
「さてと、大人しくダンブルドア校長に言って捕まるか、頑張って良い先生を演じて本当にハリーに防衛術の基礎を教える。どっちが良いですか?」
「……」
「答えは、今は要りません。貴方の態度でお願いします」
そう言って俺は教室を出た。
さて、次の授業が楽しみだ。
しかしなんで教授のカウンセラーモドキをせにゃならんのだ?
俺はそう思いながらディナーへ向かった。
主人公、探偵になる。
ポアロと言ったのは筆者の趣味です。
オリエント急行殺人事件の映画が好きで…
感想、考察、指摘、ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
それと、初期のように空白を多く入れてみます。
ifルートはそのままです。
どちらが良いかご意見を下さい。
次回は
穢れた血 石になった猫
次回も楽しみに
この話が正規案、ifルートが初期案となります。
映画を改めて見て、ロックハートってなんとなく無理して、演技して(まあ俳優さんが演技しているからと言われれば否定出来ませんが)笑ってる感じに見えた為、この話としました。
皆さんの意見も頂ければ幸いです。
なおifルートの方は毛色が違う主人公が見れます。