それ以上でもそれ以下でもない
これこそ真の刀剣と言える物だ。
右へ左へとパイプの中を流され、たどり着いた先は少し湿っているトンネルだった。
そしてそのトンネルは若干の水が溜まっており、見渡す限りずっと続いている。
おそらくこのトンネルは、ホグワーツ城の地下を網羅するのだろう。
おまけに辺りには小動物の骨らしき物がそこら中に散らばっており、その光景を見たロンはガタガタと震えていた。
そして少し歩けば蛇の脱殻の歓迎を受ける。
全長は推定六、七mぐらい。
ハリーとロンはそれを見て、呆然と立ち尽くしてしまう。*1
約千年の月日を過ごす毒蛇の王。
刀原は腰にある刀を触れる。
(けして躊躇しないで下さいね?私はいつでも準備があります)
斬魄刀がそう答えてくれる。
ありがとう。
刀原は少しだけ笑みを浮かべた。
その後は曲がりくねっているが、一本道のトンネルを終始無言で歩いた。
ただただ静かで、音といえば天井から落ちる雫の音と、水たまりを踏む音だった。
先頭を歩く刀原は先程から斬魄刀を左手に持ち、いつでも
そして暫く歩くと、蛇の装飾が施された壁と丸い蓋のような扉が目の前を塞いでいた。
刀原やロンが何かを言う前にハリーは前に出て、マートルのトイレで聞いたシューシューという音を出した。
おそらく蛇語であろうそれを認識したのか、蛇の装飾が動き、扉が開いた。
遂に秘密の部屋が明らかになった。
内部は一本の通路が伸びて、その左右は浅い池のようになっていた。
水は周囲が暗いのもあって黒く怪しげに輝く。
そして池には多くの蛇のオブジェが立ち並び、通路を通る者を威嚇する様な感じだった。
正面には巨大な男性の顔の石像が壁と一体になっていた。
一見するとポセイドンのように見えるそれは、まるで魔王のように構えているかのようだ。
「いよいよだな」
刀原はポツリと言い、更に警戒を強めた。
足音を潜めながらゆっくりと通路を通ると、その石像の下に誰かが倒れている、
綺麗で長い赤毛に黒いローブ。
間違いねぇな。
「ジニー!」
ロンが叫び、ハリーと駆け寄ったがピクリとも反応しない。
「死んじゃ駄目だ!」
ハリーの悲痛な叫びにも反応はない。
額に手を当てれば氷の様にとても冷たく、肌の色も蒼白だった。
完全に死人の様だが、微かに霊圧を感じる。
まだ手遅れではないはずだ。
咄嗟に回道を掛けようとしたが俺達以外の霊圧を感じ取り、中断する。
杖を放ってジニーを揺さぶるロンと懸命に声をかけるハリーを脇目に見渡すと、一人の男子生徒が立っていた。
「その子は目を覚まさない」
声は物静かで、どこまでも冷淡だった。
ハリーもその声に気づいて、そちらの方を見た。
「トム・リドル?どうして目を覚まさないって…」
ハリーの声は絶望を湛えて震えていた。
「これはお前の仕業だな?リドル…だったか?確かお前はハリー曰く単なる五十年前の記憶の筈…。だがそれがこうしている、おまけにその霊圧の大半はジニーの。と言うことは……お前はジニーに自身の魂を埋め込み、乗っ取り、最終的にそれを元に肉体を得た……。だからもうこの子は必要ない、というわけか」
俺がそう言えば、ハリーがリドルと呼んだ男子生徒は拍手をしながら、おもむろに転がっていたロンの杖を手に取った。
「流石と言うべきかな、君はもう真実にたどり着いているようだね…。素晴らしい、僕の学生時代よりも洞察や推理に長けているようだね、ショーヘイ・トーハラ」
「オメェみてぇなクズに言われても嬉しくねぇえよ。本心とも思えん言葉、つらつら並べやがって。褒めてもグーパンの未来は変わんねぇぞ?」
「フッ…賛辞は素直に受けるべきだよ。その洞察力、推理力、実力…。あの
リドルは俺を指で指し示す。
「成る程、やっぱグーパンじゃすまさねぇ。切る事にしよう、その雁首」
「ふふ、その時代遅れの刀…いや、刀の形をした棒切れでかい?」
「へぇ、知ってるんだ」
「勿論。いずれ僕は世界を統べるんだ*2、当然ながら日本の事も調べてるさ。君の刀は斬魄刀と言って、始解という力を持ってる」
「よく調べてんな」
「そして君の始解は刃を出すこと。ただそれだけ…なんの力もない…。君の斬魂刀は恐怖に値しない。ジニーから報告を受けているから筒抜けだ……。横のハリーも青ざめてるから真実みたいだね」
チラリと見れば、ハリー達は追い詰められたといった顔だった。
「………」
(あの野郎、舐めてますね。殺っちゃいましょう)
(待て待て)
「図星と言ったところかな?さて、君とのおしゃべりはお仕舞いだ。僕の狙いは君では無いからね…」
俺が無言なのを図星だと判断し、リドルはハリーの方を向く。
「僕はハリー、君と会いたくてたまらなかった」
こいつ男の子が好きな奴なのか?
「どうして僕に合いたかったの?」
「君と話をしなければと思っていた。だが偽名だったから君を信用させる為、間抜けなハグリッドを捕まえた場面を見せた。だが信じてはくれなかったみたいだね」
そりゃそうだ。
俺もハーマイオニーもそんな怪しい日記とハグリッド、どっちを信用するんだ?と聞いたからな。
「お前がハグリッドを嵌めたんだな……」
ロン、正解だ。
「ああその通りさ、そしてみんなが僕の方を信じた。ダンブルドアだけは違ったが……。だから在学中にもう一度部屋を開けるのは危険だと思い、開けられなかった。そして僕は記憶を日記に封印し、後世に託した。サラザール・スリザリンの崇高な仕事を完遂するためにね」
「…だけどあと数時間もすればマンドレイク薬が完成するし、誰一人として殺すことが出来なかったじゃないか」
そーだ、そーだ!
言ったれハリー!
「ふふ、忘れてしまったのかい?
「僕?」
「ハリーを?」
「そうだ。特にこれと言って特殊な魔力も力も無いただの赤ん坊が、如何にして偉大な魔法使いを破ったんだ?何故、その傷だけで済んだんだ?ヴォルデモート卿を、何故君は破れた?」
こいつまさか。
その可能性は考えていたんだが……。
「ヴォルデモートはお前よりも後の人間だろ?」
「…違うぞロン。時系列的に、ヴォルデモートが暗躍する前の時代にリドルは学生だった。つまりこいつは……ヴォルデモートの学生時代なのさ」
「フハハハ、やっぱり君は頭がよく回るね。その通りさハリー、赤毛のおまけ君も*3。偉大なる魔法使い、ヴォルデモート卿は僕の過去であり、今であり、そして未来だ」
リドルはそう言うと自身の名前を空中に書く。
直後文字を並び替える。
「nanntekotta…」
「今なんて言った?」
「ショウ?」
「英語でお願い」
「なんてこった…」
「状況が飲み込めたみたいだね」
リドルが勝ち誇ったかのように言う。
「やっぱり、偶然の産物じゃ無かったのか……」
「なに?」
「え、どう言う事?」
「ショウ?」
俺は持っていたとあるノートを取り出して見せる。
そこには日本語で『秘密の部屋事件 関連資料』と書いてあった。
「ハリー達には口止めされてたんで言わなかったが、実は最初の事件からダンブルドアと俺とで事件の捜査をしていたんだ」
「深夜のお茶会じゃ無かったの?」
「お茶会をやっていたのは事実だよハリー。さて…お茶会のついでにやっていた捜査の際、参考資料として貰った資料を日本語で模写したのがこれだ」
「確かにそれ、今年よく見てたやつだ」
「なんで日本語?」
「読まれても良いように」
「「成る程」」
「さっき言った通り、これにはダンブルドアから貰った資料の内容が書いてある。当然だが、犯人、被害者、解決させた者の名前も書いてある。すなわち、犯人ルビウス・ハグリッド。被害者マートル・ワレン。そして解決したトム・マールヴォロ・リドル」
「それが一体なんだって言うんだ!」
「リドル、こん中で怪しい奴はお前しか居なかったんだよ。何故なら書類上では優秀な生徒が探偵役だったら、アクロマンチュラを怪物だなんて特定しないからだ。スリザリンの怪物が蜘蛛な筈無いし、マートルの死因が毒でも牙でも無かった*4からね」
「でも、探偵が犯人だなんて考えないんじゃ?」
「それは小説とかだったら適応する法則だろうな。まあ、それは置いておいて。さっきロンに言った様に、ヴォルデモートが悪さし始めた時期と、怪しい探偵のリドル少年がいた時期は一致する。そして両者の名前のアルファベットがほぼ一致した。そこでそれをを弄ったり入れ替えたりしてみたら………トム・リドルの名前がヴォルデモートになった」
「………」
「なんで教えてくれなかったの?」
「考えすぎ、偶然の産物だと思ったん*5だ…。まさか日本にも悪名が轟くかのヴォルデモートの名の由来が、こんな単純で痛々しいものだとは思わなかったんだよ……」
世界一の悪の魔法使いを夢見て、イカした自分の名前(笑)を考える。
どう考えても可哀想で痛い少年である。
きっと学生時代は苦労しただろう。
周りが。
「い、痛々しいだと?僕は汚らわしいマグルの父親姓をこのまま使うなんて、勿論ノーだと突きつけた!そして後の世に世界一偉大な魔法使いとなり、魔法界の全てが口にすることを恐れる名前を自分で付けた!それが痛々しいだと!?」
「いやだって、明らかにキラキラネームじゃん。しかも自分で自分のアナグラムを考えて付けるだなんて……。おまけにちょっとダサいし」
「だ、ダサい!?」
「あと汚らわしいマグルの父親姓とやらを拒否ったのなら自分の名前なんて全部捨てて、全く違う名前で良かったんじゃ?」
「な、なんだと!?」
「とまあこんな感じで、ヴォルデモートの正体が日本で言うところの痛々しくて残念な奴だとは思わなかった訳だ」*6
「ざ、残念だとぉ!?」
やれやれ、師匠達になんて報告すれば良いんだ?
とりあえず…。
ヴォルデモートは昨今話題の『厨二病』でしたって書くか。
「ショウ、さっきから妙にトゲトゲしくないか?」
「きっと自分の推理がこんな単純で残念な結果で惑わされたことに、腹を立ててるんだよ」
こそこそと内緒話しをする二人。
聞こえてるぞ、ハリー、ロン。
「し、失礼なガキ共だ!」
まるで可哀想で残念な子を見るかのような目をしている俺たちに、リドルは叫んだ。
「……いいだろうっ!この僕を残念などと言う日本の少年と、未来で闇の帝王を倒した少年とそのおまけよ!三人まとめてこのヴォルデモート卿がお相手しよう!」
側から見れば痛い所を突かれた腹いせに暴力を振るう子供のようにリドルがそう言った後、シューシュー言う。
「ショウ、ロン!バジリスクが来る!」
ハリーがそう警告する。
「ハリー!ロン!ジニーを連れて後ろへ走れ!ここは俺の出番だ!」
抜刀体勢を取りながらそう叫ぶ。
直後、巨大な霊圧が出現する。
咄嗟に目を瞑る。
「二人とも目ぇ瞑れ!縛道の二十二『瞑光破』!」
瞑光でバジリスクの目を眩ます。
「縛道の二十一『赤煙遁』!」
そして間髪入れず煙幕を出す。
「バジリスク、何をやっている!」
リドルの他力本願な言葉が聞こえる。
彼方も此方も敵が完全に見えない状態だろうが、此方は霊圧で感知する。
見えるよ。
霊圧が集中している部分がね。
「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ 破道の七十三『双蓮蒼火墜』!」
狙い澄ました完全詠唱の鬼道がバジリスクの眼を捉える。
「キシャーッ!!」
バジリスクから甲高い悲鳴のような咆哮が聞こえる。
直後、霊圧が集中していた部分…すなわちバジリスクの眼が完全に潰れた。
やがて煙も晴れれば、そこには眼が潰れてもがき苦しむバジリスクとピーピー喚くリドルがいた。
「バジリスク!くそっ『
「ブフッ!」
リドルは呪文を唱えるが、直後爆発する。
奴が鹵獲した杖はロンの杖。
な、何故だ!と言ってもしょうがない。
それ、最早正常な効果を発揮しない不良品なんだから。
輝くセロハンテープが見えねぇのか?
と言うか、側から見ればコントだぞ。
吹き出すのを頑張って堪えた俺は偉い。
「キシャーッ!!」
主人が情け無い醜態を晒している間にバジリスクが咆哮する。
おそらく自分の眼を潰した者が誰か分かったのだろう。
「ッツ!」
バジリスクの突進を横っ飛びで躱す。
「縛道の六十一『六杖光牢』! 縛道の六十三『鎖条鎖縛』! 縛道の六十二『百歩欄干』!」
やち姉直伝の三連縛道。
バジリスクが鈍くなる。
「
五本の柱で封じられるバジリスク。
だがこれで終わりじゃ無い。
それは向こうも同じ。
「キシャーッ!!」
破りやがった。
まあだと思ったが、自信無くすな…
よし、賭けに出るか。
「破道の八十八『飛竜撃賊震天雷砲』!」
掌から大きな光線を放つ。
問題なくバジリスクに吸い込まれる。
だが。
「シャーッ!!」
「な!?」
効かなかっただと?
やっぱ、まだ詠唱破棄は無謀だったか。
バジリスクの突進を躱す。
しかしバジリスクは胴体をひねり、尻尾の方で攻撃してくる。
「ッ!グぅ!」
ガキン!
ドン!
咄嗟に斬魄刀で防いだが止められずに壁に叩きつけられる。
「いいぞバジリスク!そのまま殺せ!」
「シャーッ!!」
バジリスク、再度突進。
くそっ、練度不足の断空じゃ無理だ。
「両断せよ『斬刀』!」
突進を躱し、動体を縦に斬りかかる。
ガリガリガリ!
硬ってぇなこいつ!?
「くそったれ!刀源流三ノ太刀の二『滝昇』!」
縦に三回切り上げてバジリスクを仰け反らす。
だが。
ブン!
ガキッ!
ドン!
クッソ…
硬てぇし早えぇし。
おまけに尻尾が厄介すぎる。
「シャーッ!!」
くそっ、またか!
だったら!
「刀源流二ノ太刀『渦潮』」
横に躱しつつ回転しながら横薙ぎに切り続ける。
相変わらず切れた感触はなく、鎧を叩いているみたいだ。
だがバジリスクも横移動してくる。
ドン!
「ガハッ」
またも壁に打ち付けられる。
「フフッ、分かったかい。所詮切れるだけの刀なんて使うからこうなる」
先程から何かする度に自爆するリドルがそう言う。
煩ぇぞ。
ちょっと焦げてる癖に。
だがまあ、確かにそうだな。
切れるだけの刀か。
ーーーーーーー
「刀剣ってのは結局のところ、切る道具なのよ。ちゃんボクや零番隊、護廷十三隊の隊長達も、持ってる斬魄刀は強力だが、刀匠からすれば刀とは言えねぇわけよ」
そう語ったのは全ての斬魄刀を作った人。
零番隊の二枚屋王悦。
「そうでしょうか?」
俺は首を傾げた。
「だって、マグルの刀は炎とか雷とか出さないっしょ?」
「確かに…」
言われてみればそうだ。
「初代含め、歴代剣八も純粋な刀を使う剣士じゃねぇ。だからちゃんボクはこれを作った」
二枚屋隊長はそう言うと後ろに有るのを指差す。
「鞘伏…」
「だけどこいつは欠陥品だ。特殊な液体で管理しなきゃならねぇ刀なんて無いからな」
鞘伏は簡単に言えばめっちゃよく切れる刀だ。
だが切れすぎるのだ。
「やり過ぎたって事ですか?」
「そうなのよ。その点、ちゃんボクも間違えてた」
二枚屋隊長は自身も所詮は死神だったと言う。
そんな事は無いと思いますよ?
「そこでそれだ。浅打の状態で刃が無く、始解で刃を出す。しかもその始解は擬似の奴らしいときた」
二枚屋隊長は俺の隣に有る斬魄刀を指差す。
「斬刀…」
「ちゃんショウが言った真の始解の内容が本当なら……」
二枚屋隊長は今までに無い真面目な顔をする。
「それこそ真の刀剣だ。卍解が楽しみだよ」
ーーーーーーー
(遅いんですよ貴方は)
(ごめんね)
「刀剣とは所詮切る道具。そんな刀で何が悪い?」
「なに?」
「刀神からお墨付きを貰ったこの刀剣は、確かに切る事しか出来ない。でも切り過ぎない。収める鞘も有る。そしてこの刀剣より刀剣と言える斬魄刀は無い」
スーッと息を吸う。
髪色が白くなるのがわかる。
「さて、お前さんのその傲慢と誤解。切って捨てよう」
俺は腰から鞘を抜き、身体の前で刀を収める。
(行くよ)
(ええ、我が名を呼んで下さい!)
「万象一切両断せよ」
「『神殲斬刀』」
はい、まあ、そんな訳で。
主人公の斬魄刀の、始解の御披露目です。
ネーミングセンスくそダセェとか言わないで。
頑張って捻った結果です。
久保先生がヤバイだけだから。
本当、オサレ度欲しいです。
能力は…まあ、分かりますかね?
縛道の二十二『瞑光破』はオリジナルです。
効果はスタングレネードです。
ハリポタにもBLEACHにもスタングレネードの効果を出す奴見つかんなかったんですよね。
あったら教えて下さい。
感想、考察、意見。
ありがとうございます。
そしてお待ちしてます。
次回は、
秘密の部屋 決着
次回もお楽しみに
おまけ
自称継承者のリドルが勝負を仕掛けてきた!
リドルはバジリスクを繰り出した!
「行け!バジリスク!」
バジリスク どくじゃポケモン
・どくどくのキバ
・アイアンテール
・ヘビにらみ
・とっしん
「まるでポケモントレーナーじゃねぇか!」
「リドルはポケモントレーナーだったのか」
「誰がポケモントレーナーだ!」
ポケモンって1996年なんですよね。
当時は1992年だから、主人公はポケモンを知りません。
バジリスク戦を書いていてふと思ったので書きました。
勿論、小説には一切関係有りません。