ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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真の獅子たる証
ここに示そう

恐るな、立て
強き若獅子よ

君は
一人では無い。








死神と秘密の部屋編 決着と終幕

 

 

「万象一切両断せよ『神殲斬刀』」

 

 

 

 

 

 

「フフッ、フハハハハ。何かと思えば、それだけなのかい?拍子抜けも良いところだ!ただ刀が立派になっただけじゃ無いか!」

 

俺の始解を見てリドルは笑い飛ばす。

始解前は小太刀に近い形状だった斬魄刀は刃渡りが少し長い日本刀になっただけだったのだ。

 

何も変わっていない。

ただ形状が良くなっただけ。

普通ならそう思うだろう。

 

端から見れば。

 

「そうだといいな?」

 

流していた血はもう止めた。

息も整っていた。

 

ゆっくりと正眼に構える。

 

「ふん、減らず口を。バジリスク、殺れ!」

 

リドルは叫ぶ。

バジリスクも突進してくる。

横に避ける。

先程と同じ。

 

バジリスクはまた体を捻り、曲がった勢いで尻尾を打ってくる。

 

 

「元流 一ツ目」

 

 

『唐竹割』

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「良いか?剣術の基本となるのは九つの斬撃じゃ。そのうちのひとつである唐竹又は切落とも言うこの切り方は、まあ簡単に言えば縦方向に真っ二つに切るというものなのじゃ。」

 

「知ってます、重じい!」

 

「よろしい、儂が開祖の元流は唐竹を含む剣術の基本九つをより昇華し、一刀の元に切るのを本質としている。今では大型の敵や一対一を想定しておる」

 

「大きな敵……」

 

「左様。対して刀源流は連続技を基本としておるのは知っておろう?」

 

「ひいじいちゃんから習いました!」

 

「じゃろうな。彼奴は対人戦や一対多数戦を想定して刀源流を作った。お主は卯ノ花からも習っておるし、元流も早いじゃろう。では早速、この丸太を切ってみよ」

 

「重じい!僕の浅打は刃が有りません!」

 

「では儂のを貸そう」

 

「え」

 

「始めい!」

 

「え、あ、うりゃあぁぁぁ!?」

 

 

 

ーーーーーー

 

 

ザシュッ!

 

鮮血が飛び散る。

だがその色は俺の血では無かった。

 

鋭く強固であったバジリスクの尻尾はもう無くなった。

 

「ギィギャアァァァァ!?」

 

バジリスクが絶叫を上げる。

幾千の時を超え、未熟とは言え八十番代の鬼道すら防ぐ鎧が全く効果が無かったのだ。

 

「なに!?バジリスクが!一体何をした!」

 

リドルが驚愕を隠そうともせずに聞いてくる。

 

「教えるか、バーカ。…ゲホッ」

 

チッ、思った以上に消耗が激しい。

結果的に鬼道を無駄打ちしたし…。

さっさと決めないとヤバイな。

 

そんなことを思っていればふと隣に気配を感じた。

見てみればそこにはハリーがいた。

右手には何やら煌びやかなロングソードを持っている。

 

「ハリー。その剣どうした?」

 

「さっきダンブルドア先生の不死鳥が組分け帽子を持ってやって来て…。その組分け帽子からこの剣が出たんだ」

 

なんとまあ。

と言うことは、それはかの剣だな。

 

「一緒に戦うよ。何時迄もショウに守られてちゃ駄目だ」

 

「いや、駄目って訳じゃ…」

 

俺は下がってろと言いかける。

だがハリーは俺の方をじっくりと見る。

 

……相応の覚悟はしてきたみてぇだな。

 

「ロンは?」

 

「ロンはジニーを守るために後ろに下がった。今は安全だよ」

 

そこまで指示を出したか。

フフッ。

流石は真のグリフィンドール生だな。

 

「無理して前に出んなよ?」

 

「ッ!うん、分かった!」

 

「作戦会議は終わったかな?」

 

出たな残念なイケメン。

 

「ここが君達の墓場だ」

 

リドルがそうほざく。

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

ハリーが高らかに言い返す。

 

「行くぞ、ハリー」

「うん!」

 

 

 

バジリスクは口を大きく開けながら突っ込んでくる。

ハリーは後ろに下がる。

 

「元流 二ツ目『逆風』」

 

跳躍して真正面から斬りかかる。

ガザシュッと音がし、バジリスクの頭が跳ね上がった。

流石にスパッとはいかないか。

 

「刀源流 三ノ太刀の一『滝流』」

 

間髪入れず斬り落とす。

 

ガシュ!

ドスン!

 

バジリスクの頭が床に叩きつけられた。

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

そのタイミングでハリーがバジリスクに目掛けて駆け出し、ジャンプする。

その勢いのままバジリスクの脳天を剣で串刺しにした。

 

「ギィギャアァァァァ!!」

 

またも響き渡るバジリスクの絶叫。

 

「うわぁあ!」

 

必死に頭をふるバジリスクによって、ハリーが床に叩きつけられる。

その声と音を聞いたバジリスクがハリーに向かって口を開きながら突進した。

 

させねぇよ。

 

「これにて終い」

 

 

 

「元流 五ツ目 刀源流 一ノ太刀」

 

 

 

 

「『双連袈裟斬り』」

 

 

 

 

ズパンッ!

 

 

バジリスクの頭と胴体の間付近を、真っ二つに斬り裂いた。

 

おそらく即死したのだろう。

バジリスクは悲鳴をあげることなく倒れ、息絶えた。

 

「そんな……バジリスクが……」

 

リドルは呆気にとられる。

だが頬を緩ませていた。

 

おそらく十分もしないうちにジニーは死に、自らは完全な復活を遂げる。

そうすればハリーや俺など簡単に殺すことができる。

 

 

そんなことを思っているのだろう。

 

 

リドルは更に時間を稼ぐため、その顔に驚愕を露にして口を開こうとした。

 

 

だが、そうは問屋が卸させない。

 

「さて、あとはこいつだけか…」

 

俺はリドルの日記を奴に見せる。

 

「な……なんで………」

 

リドルは演技など放り出した驚愕を見せる。

 

「お前は単なる五十年前の記憶、その霊圧の大半はジニーの。そしてお前はジニーに自身の魂を埋め込み、最終的にそれを元に肉体を得た。お前はこの俺の推理を肯定した」

 

「そ、それがなんだって言うんだ!?」

 

どもってるぞ。

 

「ジニーに魂を埋め込む前は何処にあった?答えはこの日記だ。つまり…お前の本体はこの日記だ」

 

「一体、いつ…手に取った……?」

 

「お前さんがハリーに熱いラブコールをしていた時。さりげなく頂戴した」

 

「き、貴様ぁっ!」

 

「んじゃ、もう二度と相見えないよう、一応祈ってるよ」

 

「ま、待て!やめ、」

 

「ハリー!斬っちまえ!」

 

俺はハリーに向かって日記を投げる。

 

「うん!」

 

ハリーは剣を振りかぶる。

 

「させるか!『アクs(来い、n)』」チュドーン!

 

リドルはおそらく引き寄せ呪文を使おうとするが、やはりロンの杖は呪いの道具だった。

自爆する。

 

ザクッ!

 

ハリーが日記に剣を突き刺す。

剣に突き刺された日記帳は黒いインクを吹き出した。

 

「おのれ、こんな杖じゃなければーーーっ!!!」

 

声にもならないつんざくような悲鳴をあげながら内側から光を放ち、自称継承者のリドルは消えていった。

 

 

ピュッ!

 

斬魄刀についた血を払う。

そして始解を解きながら鞘に納める。

 

「……フッ、最期まで残念な奴だったな」

 

俺は思わず鼻で笑いながら吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

「ふう、あ……」

(主様!)

 

「ショウ!?」

 

直後、ガクッと身体が膝から崩れ落ちる。

咄嗟に斬魄刀で身体を支える。

 

「大丈夫!?」

 

ハリーが心配そうに聞いて来る。

俺はへにゃりと笑いながら大丈夫だと言う。

 

「ハリー!ショウ!大丈夫か!?」

 

時を同じくして、避難していたロンが駆け寄っており、その傍らには覚束ない足取りだが、顔色は戻っていたジニーもいる。

 

良かった、無事だったか。

 

「ショウ!君、大怪我じゃないか!」

 

「ああ、だけど見た目だけだ。心配は要らないよ」

 

笑って誤魔化しながら、斬魄刀を使ってゆっくりと立つ。

 

(すまん、杖代わりにするよ)

(構いませんとも)

 

「わ、私は、なんてことを……」

 

ジニーはハリーを見て、俺を見て、ロンを見て、そしてもう一度ハリーを見て、心の底から安心したのだろう。

泣きじゃくりながら自らが何をしたのかを告白した。

 

 

行きはよいよい、帰りは怖い。

 

と言う言葉があるように、秘密の部屋から帰るのは大変なことだった。

ジニーは足取りが覚束ないままだったし、俺は負傷している。

おまけにあのパイプをどうやって登るんだ、と言う問題もあった。

 

だがハリーがダンブルドアから聞いていた不死鳥の特徴を思い出したことで、やって来ていたフォークスに掴まって秘密の部屋を出れたのだった。

 

 

 

 

ジニー救出作戦が成功した以上、俺達はとにもかくにも報告の為に校長室に向かった。

 

しかし、俺は校長室に行くための螺旋階段を守っているガーゴイルを前に立ち止まる。

 

うっすらと、そしてひしひしと感じていた霊圧の正体がわかったからだ。

本来なら英国に来ない、来る筈の無い人がいる。

 

 

絶対に、怒られる。

 

 

 

……行くか。

 

「ショウ?」

 

ハリーの心配そうな言葉に俺は覚悟を決め、校長室に足を踏み入れた。

 

 

泥まみれ、血塗れ、砂埃まみれ、インクまみれで校長室に行くと、しばしの沈黙の後に叫び声があがった。

 

「ジニー!」

 

暖炉の前で泣き崩れていたウィーズリー夫人とおぼしき婦人がジニーに駆け寄り、少し遅れてウィーズリー氏とおぼしき男性と二人で娘を抱きしめる。

 

「あなた達がこの子を助けてくれたの!?でも、一体どうやって?」

 

「私たちも、それを知りたいですね」

 

ウィーズリー夫人とマクゴナガル教授が言う。

 

俺達は校長室の机まで歩いていき、ハリーが剣とリドルの日記、ロンが組み分け帽子、俺が戦利品替わりに剥ぎ取ったバジリスクの牙を証拠に置く。

 

そしてかの部屋で起こった出来事を説明し始めた。

 

 

継承者の正体。

ジニーと継承者との関わり。

怪物、バジリスクとその最期。

 

全てを説明し終えると、日記についてジニーとウィーズリー夫妻、そしてダンブルドアとの間で議論が始まった。

 

ジニーは退学になるだろうと考えており、そうなったら全力で弁護しようと校長室に来る前、三人で相談していた。

だがダンブルドアはジニーに対して、責任を追及しなかった。

 

大の大人ですらあの残念な奴に誑かされている以上、まだ年端も行かぬ少女には仕方の無いこととした。

かくして無事に放免となったジニーは、ウィーズリー夫妻と共に医務室に行った。

 

 

そしてこの時点でかなりくたびれていた俺は、ハリーに後を託し、近くの椅子に座った。

 

ふぅーっと息を吐き、眼を閉じる。

流石に疲れた。

 

「バジリスクとやらはそんなに辛い相手でしたか?」

 

ふと声が聞こえる。

幼い頃から母のように優しく、厳しく見守ってくれた人。

護廷十三隊の最高戦力たるこの人は、本来なら瀞霊廷を離れない。

だけどわざわざ来てくれた。

 

「ええ、鬼道が全くと言っていい程に効果がなく、無駄打ちしました」

 

「そのようですね、霊圧がかなり疲弊してます。それに、バジリスクの即死の眼をシャットアウトしていましたね?」

 

「後で気が付きました」

 

「まあ、分かりにくいでしょうね、これは……。ポッター少年がバジリスクの脳天を貫き、貴方が首付近を斬り飛ばしたそうですね?」

 

「ハリーは大活躍でした。剣の筋も良さそうです」

 

「ほう、それは期待できそうですね」

 

会話の最中も、話し相手は回道をかけてくれる。

その心地よさが、忘れていた睡魔を呼ぶ。

 

「しかし……全く、無茶をしましたね……。肋骨が数本、折れてます。頭も強打。足にもヒビが入ってます。分かりますね?」

 

「自分で…少しずつ、回道を……」

 

「ええ、足は治りつつありますし、血は止まってます。これも鍛練の成果ですね」

 

「ですが…、未熟でした……」

 

「ふふっ、まだまだ精進なさい。ですが……良く頑張りましたね」

 

頭を優しく撫でられる。

この人から誉められるのは本当に嬉しい。

 

椅子に座った時から閉じた瞼はついぞ開かず。

俺はゆっくりと眠りについた。

 

やっぱり、来てくれてありがとう。

 

やち姉。

 

 

 

 

 

すぅーっと言う刀原の寝息が聞こえ、卯ノ花は立ち上がる。

 

「あの…ショウは、大丈夫ですか?」

 

ある程度の説明を終えたハリーがおもむろに聞く。

 

「肋骨が数本骨折し、足の骨にはヒビ、その他に頭部も含めて打撲が数ヶ所。けどもう大丈夫ですよ」

 

卯ノ花が先程から診断していた結果を言う。

 

「ショウ、僕たちを守って……」

 

「謝る必要は有りませんよ?ポッター君」

 

ハリーが俯くが、卯ノ花は止めさせる。

 

「え?」

 

「あの子は自分の意志でそうしたのです。負傷も当然、覚悟して。ならば、あの子には謝罪ではなく感謝をなさい。彼はさも当然だと言うでしょうけども」

 

卯ノ花はそう言う。

 

ハリーは少し考えていたが「分かりました」と返事をする。

それを受け、卯ノ花はニコリと笑ったのだった。

 

 

「ああ、ご挨拶が遅れましたね。私、日本の護廷十三隊の四番隊隊長を務めている、卯ノ花烈と申します」

 

「あ、えっと、ハリー・ポッターです」

 

「ロン・ウィーズリーです」

 

「ふふっ。貴方たちの事は、彼から良く聞いていますよ?弟みたいでほっとけないと言ってました」

 

「「あ、あははは」」

 

卯ノ花の言葉を受けハリー達は照れくさそうに笑う。

 

 

「ご足労をお掛けして、申し訳ない」

 

ダンブルドアが卯ノ花に頭を下げながら謝る。

ハリーはダンブルドアが頭を下げたことに驚き、卯ノ花がかなりの地位と実力を持っているのだと感じた。

 

「いえいえ、うちの将平がお世話になっているので、ご挨拶のついでです」

 

卯ノ花はそう言う。

 

「あの…ショウとは、どんな関係なんですか?」

 

「あの子の母親替わりであり、師匠です」

 

ハリーはそれを聞き、あのショウを生み出したのはこの人なのかと思った。*1

 

 

さて、ではそろそろ良いかの?

ダンブルドアはそう前置きして言う。

 

「君たちは百ぐらいの校則を木っ端微塵に粉砕したわけじゃが……状況が状況なのでな。当然ながら処罰はない。そして三人に百五十点と、ホグワーツ特別功労賞を授与しよう」

 

ダンブルドアは続けて、バジリスクの被害者たちがマンドレイクのジュースで回復したことを告げる。

 

「ハーマイオニーたちは大丈夫なんだ!」

 

「回復不能の障害もなかった」

 

「良かった!」

 

 

 

 

 

その後、熟睡中の刀原を卯ノ花が医務室に運び、ハリー達も少なからず傷を負っていたため医務室に行き、一人になった校長室にて。

ダンブルドアは物思いに耽っていた。

 

ハリーが持っていた剣と日記についてだ。

 

ハリーが土壇場で組分け帽子から抜いたこの剣の名は『グリフィンドールの剣』と言う名で、真のグリフィンドール生にしか抜けない物だった。

そしてこの日記。

ダンブルドアの脳裏にある邪悪な魔法具の名が過ぎる。

 

そしてハリーは剣で日記を破壊したらしい。

ダンブルドアは考える。

おそらく……この剣はその邪悪な魔法具を破壊出来る、数少ない物になるだろうと。

 

 

そしてハリーの事も考える。

 

ダンブルドアとて、秘密の部屋事件が起きることは予想外だった。

だが、ハリーの成長にこの事件は使えると考え、本気では動かなかった。

 

そうして立てた計画では、ハリーが一人で秘密の部屋の怪物…バジリスクが最有力候補だったそれを打倒するはずだった。

 

ダンブルドア自らが不死鳥と共に送った組み分け帽子からグリフィンドールの剣を引き抜いて。

 

そして恐怖に打ち勝つ勇気を育んでもらおうと考えたのだ。

 

確かにハリーはグリフィンドールの剣を引き抜き、彼が真のグリフィンドール生であると言う自信を身につけてくれた。

バジリスクにも果敢に挑み、倒すために奮闘した。

これは大きな経験になっただろう。

 

だが当初考えていた程の結果は出なかった。

 

時にはハリー達の頼れる友として、兄貴分としてハリーを守る者…刀原が参戦したからだ。

終始ハリー達を気遣い、支え、守り、もしハリーがバジリスクの前に立たなかったら、バジリスクは確実に刀原一人によって始末されていただろう。*2

 

当然、リドルも。

 

それに、刀原はリドルの正体にも当たりを付けていた。

 

負傷していたが、おそらく能力を使うのを躊躇したからだろうと卯ノ花は言っていた。

下手に使えば部屋を崩壊させかねないと思ったのだろうと。

 

ダンブルドアは未だに刀原の斬魄刀の能力が分からなかった。

ハリー曰く、普段より立派な剣になって、切れてなかったバジリスクを切れるようになったとの事。

 

しかし、刀原家の血を引く彼の斬魄刀がそんな物の筈がない。

曽祖父、刀原平介の能力は激流を司ると謳われていた。

祖父、ヘーザブローは無い。

父、刀原将一郎平治の能力は見た事が無いが、様々な属性を使う物だったと聞く。

 

おそらく彼もかなり強力な能力の筈だ。

 

 

そして先程の卯ノ花とのやり取り。

卯ノ花は完全に母親のように接していた。

 

もし万が一、刀原を敵に回せば……。

考えたくも無い。

 

ダンブルドアは項垂れる。

 

今年の出来事で分かった。

やはりハリーの未来には壮絶で困難な運命が待っている。

自身の心を焼き尽くしかねない辛い運命が。

だからこそ、今度こそ、自分は彼を導かねばならない。

 

だが、迂闊に刀原を計画に組み込もうとしても、彼は自身の実力と洞察でひっくり返せるだろう。

現にロックハートの一件を覆された。

 

魔法界の秩序と未来のためにと言っても、彼は日本の魔法界に属する存在だ。

容赦無くその提案を蹴るだろう。

 

 

「難しいの……」

 

ポツリと言った言葉は、夜の暗闇に消えていった。

 

 

 

 

 

刀原は起床しハリー達の傷も癒え、宴会が行われる前に揉め事があった。

 

ルシウス・マルフォイが乗り込んで来たのだ。

 

刀原達はさも当然の様に受け入れていた訳だが、本来なら居ない筈のダンブルドアに問いただす為だ。

 

ちなみに何故ダンブルドアが居るのかと言うと、一向に止まない子供達の犠牲、そしてついに部屋に連れ去られた者まで出たため、彼を追放した理事会が彼に泣きついたのだという。

実になんともお粗末だがこれには裏がある。

なんとルシウス氏が理事会を脅したらしい。

 

それを暴露されたため何も出来ずに、苦々しい顔をしながら立ち去ろうとしたルシウス氏だったが、ハリーが追いかけ計略を仕掛けた。

 

日記の裏に自らのソックスを仕込み、ルシウス氏が日記を投げ捨て、一緒にいたドビーがそれを拾ったことで、ドビーを解放したのだ。

 

「き、貴様ぁ!」

 

「させねぇよ?」

「遅いですよ?」

 

思わず杖を上げる氏だったが、ここにいるのは刀原と卯ノ花。

 

そんなことさせる筈もない。

 

「ぐほはぁ!」

 

氏は全身をバラバラにされる擬似体験をし、直後に刀原の白打で吹っ飛ばされた。

刀原が負傷していたため大幅に威力は下がっているが、きっちり水月に叩き込まれた蹴りは氏をほぼノックアウトした。

 

「鍛え方がなってませんね」

「やt、れつ姉。それ言ったら駄目です」

 

結局何も出来ず、ルシウス氏は逃げ帰ることになった。

 

 

 

かくして障害を文字通り吹っ飛ばした三人は宴会へと向かった。

 

その宴会は一番の破天荒ぶりだった。

殆どの生徒はパジャマで、挙句それを誰も気に留めていなかった。

先生達も上機嫌で、仏頂面がデフォルトのスネイプすらも何処となく一安心といったように見えた。

 

ジニーは元気を取り戻し、友人と語らい合っていた。

 

そしてこの数ヶ月、医務室のベッドに横たわり痛々しい姿を見せていたハーマイオニーも元に戻り、ジャスティンもやって来て疑ってすまなかったとハリーに何度も謝った。

 

ハーマイオニーはグリフィンドールのテーブルでハリーとロンに抱きついた後、刀原にも同様に抱きついた。

卯ノ花はそれを見て、ふむ、と頷いた後「あの子には内緒にしましょう」とポツリと言った。

 

刀原はハーマイオニーを気遣いながらも、卯ノ花が何を言っているのか分からなかった。

 

卯ノ花は折角英国に来たのだからと、残り短い今年度が終わるまで滞在することにしたらしい。

刀原はおすすめの料理やホグワーツの友人を卯ノ花に紹介したり、逆にホグワーツの面々に卯ノ花を紹介した。

 

そして事件解決のささやかなお祝いとして、ダンブルドアが試験をキャンセルした事が発表された。

ハーマイオニーとレイブンクローの面々は呆然と立ち尽くしたが他の生徒からは歓声が上がった。

 

パーティーの途中からは、アズカバンから帰還したハグリッドが現れた。

ハグリッドの肩叩きによって、ハリーとロンがプディングに頭から突っ込むのを眺めていると彼が刀原の前に来た。

 

「ありがとうな、ショウ!こんなに元気なのもお前さんのおかげだ!」

 

どうやら守護霊のライはしっかりと任務を果たしたらしい。

刀原は「それは良かった」とニッコリ笑って返した。

 

寮対抗優勝杯は、当然の結果なのだがグリフィンドールが制した。

ハリーとロンが胴上げされる中、病み上がりの刀原は迫り来るグリフィンドール生を頑張って防いだ。

 

卯ノ花はそんな刀原を見て、終始笑顔だった。

 

 

 

あっという間に夏が来る。

荷物をまとめ、ホグワーツともまたお別れだ。

 

刀原は卯ノ花と共に国外用の魔法鉄道の乗って直接日本に帰る為、ハリー達とはここでお別れとなる。

 

ホグズミードの駅のホームでハリー達と別れを惜しみ、ホグワーツ特急はロンドンへ向け、発車していった。

 

「では、そろそろ私たちも出立しましょうか」

 

「ええ、行きましょう」

 

乗員は二人だけ。

お土産を持って日本に向け発車する。

 

 

ゆっくりとした列車の旅はあっという間に終わり、刀原は日本に帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰って来た刀原には、まず真っ先に行くところが出来ていた。

秘密の部屋を巡る一件は護廷十三隊やマホウトコロだけではなく、日本魔法省にも話は行ったのだ。

 

その為、東京にある日本魔法省の魔法大臣に説明しなきゃ行けなかったのだ。

 

 

「だいぶ大変やったみたいやね?一先ずお疲れさん」

 

そう言うのは元護廷十三隊の隊長だと言うこの男。

白蛇みたいだが魔法大臣である。

そして実力も極めて高い。

 

「ええ、大変でした」

 

「そらぁそうやろ。何と言ってもバジリスクやろ?そないなけったいな相手して、よう死なへんかったねぇ?」

 

「ちょっと、そんな言い方無いでしょ?」

 

秘書で幼馴染みだと言う端麗な女性が、大臣を嗜める。

 

「大丈夫やで乱菊。こん人達には僕のおちょくりなんて効かへんよ」

 

「あははは…」

「そんな鍛え方してませんからね」

 

大臣はカラカラと笑い、刀原と卯ノ花も答える。

 

「さて……。とりあえず君が無事で何よりや。遠い異国の地で死なれたらあの人達に申し訳が立たんしな。校長もだいぶ心配しとったから、後で顔見せたらええと思うで?」

 

「そうよ。良かったわ、無事で」

 

「ご心配をおかけしました」

 

「うん。まあ君は若い。若いうちにチャレンジしとくのはええ事や。せやけど限度ってもんがある。君は立場もあるんやから、あんまり無茶すんのはアカンで?じゃないと僕、君の英国行きにサイン出来んようになってまうやないの」

 

「き、気をつけます……」

 

「まあ、気持ちの片隅に置いといてや」

 

「はい」

 

「ええ返事や。僕も乱菊もそうやけど、君には大勢の人が期待してるんや。頑張ってな」

 

「ありがとうございます」

 

刀原の言葉に大臣は頷く。

 

「話は変わるけど……僕、そろそろ護廷に戻りたいんやけど……卯ノ花さん、駄目やろか?」

 

「貴方には魔法省の大臣をしなくてはいけません。その席にいれる人物が少ない以上、頑張って下さいね?」

 

「ええー。僕もう嫌や。飽きたんや。なんだったら平子さんとかに任せてええやん」

 

「平子さんには別のお役目が有るのです。我慢して下さい」

 

「チェッ」

 

「良いじゃない。私はこのままで良いわよ?」

 

「まあ、乱菊がそう言うなら……しゃーないな」

 

ちょろいな。

ちょろいですね。

ちょろいわね。

 

白蛇大臣と恐れられてる切れ者も、好きな女性には弱いらしい。

 

「さてと、それではお暇致しますか?」

 

「そうですね。それでは市丸さん、松本さん。失礼しますね」

 

「また遊びに来てな?」

 

「ギンも私も楽しみにしてるわ」

 

白蛇大臣こと市丸ギン魔法大臣。

正直言って勿体ない人選だと思う。

 

 

こうして、刀原は日本の夏を迎えた。

 

 

山じいから激怒されるまで、後二時間。

 

 

 

 

 

*1
合っているが不正解でもある。

刀原がこうなったのは『この人も含め、実力者達がよってたかって学ばせた結果、スポンジの如くそれを吸収したから』である。

 

つまり、言い換えるなら『この人達』である。

*2
正解である。

 

刀原は最初から最後まで、ハリー達に手を出させるつもりは無かった。

 

その為、ハリーが刀原の横に来なければ……刀原がバジリスクを単独撃破していたであろう。






もうすぐ年も暮れますね。

今年はご愛読ありがとうございました。
来年からはアズカバンの囚人編となります。
何卒宜しくお願いします。


では次回は
アズカバンの囚人編開始となります。
次回も楽しみに

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