ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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ニコリと微笑む
貴方の笑顔に
私は救われ、安堵する

悲しげな顔をする
貴女の涙に
僕は弱くなり、強くなる










死神とアズカバンの囚人編
死神、日本にて。三学年に向けて


《親愛なるハリーへ

 

 元気にしているか?

 君が叔母を膨らませたと言う一件は聞いた。

 叔母から余程酷い事を言われたんだろう。

 災難だったな。

 そして君が退学にならずにすんで、一安心した。

 まあ、ならないだろうとも思ったがな。

 

 さて、今年もホグワーツに行く事になった。

 だが昨年度の一件を受け、俺一人じゃない。

 日本の友人と二人で行くよ。

 彼女も非常に楽しみにしているとのことだ。

 君やロン、ハーマイオニーとも仲良くなれるだろうと思うが……まあ、よろしく頼む。

 

 今年はちょっと早めに行く事になりそうだ。

 彼女は初の外国だから、そちらで二泊ぐらいする。

 確か、今は漏れ鍋に居るんだよな?

 君がここ最近で詳しくなった、ダイアゴン横丁を案内してくれると助かる。

 

 それと、そちらだと脱獄犯が逃亡中だと聞いた。

 大丈夫だとは思うが……気を付けろよ?

 狙われやすい過去を持ってるんだからな。

 

 

 それでは良い夏を。

 

 

 君の友人 刀原将平》

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ばっかもーん!!」

 

怒鳴り声と共に、どん!という振動が一番隊隊舎に響く。

出したのは齢一千歳を越える死神、山本元柳斎重國である。

目の前には彼が孫の様に可愛がっている少年が正座している。

 

「良いか。何度も言うが、お主には立場というものがあるのじゃ。心配をかけたくない、大問題となる。そんなお主の気持ちはよう分かる。お主らしいとも思う。じゃが!例え儂等が大丈夫であろうと思うても、気が気でなかった者達は多かったのじゃ。せめて、報告はすべきじゃった」

 

「はい……」

 

「私の孫娘など、卒倒したと聞きましたぞ」

 

そう言うのは山本の側近、一番隊副隊長の雀部長次郎忠息。

 

「うっ……」

 

「後で尋問されると思いますが、諦めなさい」

 

「はい…そうします…」

 

「四楓院隊長なんて、君を救出しに行くと言って、飛び出そうとしたんだよ?」

 

「京楽!要らんことを言うでない!だが喜助も、聞いた瞬間、持っていた物を落としたらしいぞ?」

 

「夜一サン、言わなくていいです」

 

「分かったでしょう。貴方がどれだけ愛され、心配されているかを」

 

「分かりました……れつ姉‥…」

 

「大変よろしい」

 

刀原はすっごく反省した。

 

 

 

「さて。ホグワーツが毎年、何かしらの事件が起こっているのはよう分かった。そんな中、お主を行かせるのは無理じゃ」

 

「重じい…。それは、もうホグワーツには行くなと?」

 

「儂等も一時はそう考えた。じゃが……まあ、行かせる事にはした*1

 

「つまり?」

 

「お主一人で行かせるのは無理じゃと、結論したのじゃ。現在、お主と共に行く者を選定しておるが……まあ、簡単に選べるじゃろ」

 

「そうなんですか?」

 

「うむ。儂には積極的に手を挙げる者が、はっきりと想像出来る」

 

「ああ、そうだねぇ」

 

「ええ、あの子なら適当ですね」

 

山本、京楽、卯ノ花、には簡単に想像出来るらしい。

 

誰だ?

日番谷か?

 

刀原は首をかしげながら考えたが、分からなかった。

 

「はぁ……」

 

そんな刀原を見て、誰かが呆れた様にため息をついた。

 

 

 

 

 

カンッ、キンッ、と金属音が響く。

瀞霊廷にある刀原家の邸宅で、刀原と日番谷が剣を合わせているからだ。

 

「俺もホグワーツに行くかと誘われた」

 

「でも来ねぇって聞いたぞ?」

 

一応勝負の最中だというのに日番谷が刀原に話し掛けてくる。

刀原は珍しいなと思いながら答える。

 

「ああ、俺は行かねぇ。学べる事は多いと思うが、俺は此方が好きだからな。それに…」

 

日番谷がチラリと邸宅の縁側を見る。

そこには呑気にお茶を飲んでいる雛森と雀部の姿があった。

 

「彼奴も行きたいって言うだろ、ただでさえ片方が居なくなるんだから。雛森に危険な真似はさせたくねぇ」

 

「確かにな。だが、彼女はお前が行くって言うまで言わねぇよ。後輩の面倒も見たいだろうし。しかし、それにしても…」

 

刀原は半ばニヤニヤを隠しながら日番谷を見る。

 

「な、なんだ?」

 

「いや、やっぱ雛森が大切なんだなぁと」

 

「お、幼馴染みだからだ!」

 

日番谷は誤魔化すかのように言う。

だが、刀原は追撃する。

 

「早く告った方が良いぞ?雛森は先輩、後輩問わず人気だからな」

 

「な、なんだと!?」

 

「俺がホグワーツに行く迄はそうだったし、今もどうせそうだろ。何で早く告白しねぇの?」

 

実のところ、日番谷は隊長になった時に雛森に告白しようと思っているが、その野望は内密であった。*2

 

そして親友であり、好敵手(ライバル)と思っている刀原にそんな事情は言えなかった。

 

「う、五月蝿い!お前には絶対に言うか!」

 

ガキンッと刀原を引き剥がす。

 

「霜天に坐せ『氷輪丸』!」

 

日番谷の始解は氷輪丸。

氷雪系最強と謳われる斬魄刀だ。

 

「な、こんなとこですんじゃねぇ!」

 

そんな斬魄刀を照れ隠し、誤魔化しで発動した。

しかも刀原家の邸宅で使われては堪ったものではない。

 

「ったく。しょうがねぇな!」

 

邸宅を破壊するなど言語道断。

刀原は親友の暴挙を止めるべく…。*3

 

「万象一切両断せよ『神殲斬刀』!」

 

始解した。

かくして始まった戦いだったが。

 

「私もやりたい!」

 

雀部の参戦によって混沌となった。

そして…。

 

「何をやっているのですかな?」

 

雀部副隊長によって両成敗となった。

 

なお、刀原家の邸宅は雛森によって守られた。

そして斬擊と氷と雷と、派手にやった事は多くの隊長達に知るところになった。

 

 

 

 

 

日番谷と雛森がホグワーツには行かないと言った事で、候補者は雀部となり、決定となった。

刀原は雀部副隊長が猛反発するのではと思っていたが、当の雀部はホグワーツ行きにかなり乗り気であり、雀部副隊長の許可もスムーズに得られた。

刀原はそれに疑問を抱きながらも準備に取り掛かった。

 

マホウトコロの校長が正式的な留学生の派遣に関する手続きを行い、日本魔法省も承認し、ホグワーツからも了承の返事が来た。

 

刀原もダンブルドア宛に手紙を送り、推薦等の根回しを行った。

 

決まった段階で、マクゴナガルからは《今のうちにグリフィンドールをアピールしてください》との手紙が来ていた。

だがそんなことをせずとも、雀部は刀原と同じグリフィンドールに行きたいと言っており、刀原はマクゴナガルに心配は要らなさそうだと返事を書いた。

 

 

師匠達による稽古は刀原と雀部のみならず、日番谷と雛森まで巻き込んで行われた。

四人とも始解は既に修得していたため、その強化やその先、すなわち卍解を見据えた稽古となった。

四人が卍解を修得する日も近いだろう。

 

 

マホウトコロの他の同期もやって来た。

 

刀原と日番谷を成績の筆頭とした同期達は雀部が二人に続き、雛森が追随し、後は阿散井、朽木、吉良という面々が追い掛ける形となっていた。*4

阿散井、朽木、吉良も従来のマホウトコロならばトップを張れる力を持っていたが、相手が悪かったという他無い。

そんな同期との仲は良好であり、今回彼ら三人やって来たのも刀原が日本に来ているということに加え、雀部のホグワーツに行ってしまうことが分かったからだ。

 

「英国に行ってもしっかりな!」

「オメェ達なら心配要らねぇと思うがよ」

「頑張ってきなよ」

 

三者三様の激励の後は総当たり戦を行い、友好と力を高め合った。

 

 

 

英国の情報も入ってくる。

 

まずはハリーについて。

日本魔法省外務部と情報捜査部(警察、諜報)によると、彼は叔母を風船のように膨らませ、空へと飛ばしたらしい。

ハリー曰く、彼の保護者?というダーズリー家はハリーに対してかなり辛辣な対応をしているそうだ。

 

実のところ、刀原はそんな酷い夏を過ごすハリーを日本に拉致ろうかと大真面目に考え、卯ノ花の許可も得るとこまでやった。

だがダンブルドアが何故か止めにかかった為、断念した経緯がある。

 

やっぱあの時、拉致れば良かったか?

刀原はダンブルドアに事情を聞くことを心に決めた。

 

 

話を戻す。

叔母を空の彼方へ物理的に飛ばしたハリーは、遂にダーズリー家から飛び出した。

しかし、問題があった。

行く宛が何処にもなかったのだ。

 

マグルのお金は持ってない。

ハリーが住むプリベット通りは、ロンドンのすぐ南にあるサリー州にあった。

当然、ハリーにはトランクにヘドウィグの籠を始めとした荷物が沢山あり、ロンドンまで行く事は不可能だった。

 

ヘドウィグでウィーズリー家に救援を頼もうにも、かの一家は賞金を使ってエジプトに行っていた。

おまけに英国魔法省が定めている「未成年は親の許可なく魔法を使ってはならない」という法律を破っている。*5

 

正に八方塞がりと言った状況だったらしいが、幸運の女神はハリーを見捨てて居なかった。

英国には『夜の騎士(ナイト)バス』と言う車両が走っており、運良くそれに乗れたのだ。

 

かくしてハリーはバスに乗ってダイアゴン横丁の入り口たる『漏れ鍋』に着いた。

 

漏れ鍋には英国魔法省の大臣、コーネリウス・ファッジが待っていた。

ハリーは退学の恐れを懸念していたが、ファッジは英国魔法界の英雄である彼を退学にするつもりは無く、ハリーは無罪となった。

だが放置も出来ない為、ハリーは漏れ鍋で残りの夏を過ごすことになったとのことだった。

 

 

 

ハリーが即刻、保護されたのには理由があった。

先日ハグリッドがお世話になった英国魔法界の牢獄、アズカバンから脱獄した凶悪犯がいたのだ。

 

刀原はハリーに手紙を書いた直後、この英国魔法省の素早い動きに疑問を持った為、日本魔法省にこの脱獄犯の情報を求めた。

 

そして分かったのは…。

脱獄犯の名はシリウス・ブラック。

かのヴォルデモートが失脚した直後、魔法使い一人とマグル十二人を爆破して殺害した犯人とのことだ。

 

 

シリウス・ブラックとハリーには因縁があった。

ブラックがヴォルデモートの信奉者だったのは言うまでもないのだが……。

 

なんとブラックはハリーの両親の親友だったのだ。

 

 

事件の内容はこうだ。

ブラックはハリーの両親を裏切り、ポッター家の在りかをヴォルデモートに密告した。

しかしヴォルデモートは赤ん坊だったハリーによって無様にも撃退され、ブラックは逃亡した。

 

だがブラックは逃げられず、ハリーの両親の親友の一人だったピーター・ペディグリューよって追い詰められ、問い詰められた。

ペディグリューは果敢にも挑んだが…、哀れにも返り討ちにあい、周囲にいたマグルもろとも爆破されて死亡した。

 

そしてブラックは駆け付けた当局に捕まり、アズカバンで長い余生を過ごすことになったとのことだ。

 

 

だが先日、脱獄不可能と謳われるアズカバンをどうにかして脱獄し、英国魔法界を恐怖に陥れているのだ。

 

ブラックの目的は当然、ハリーだろうとされている。

ハリーを殺害し、ヴォルデモートに捧げる。

実に狂気じみている。

 

あんな残念な奴にそんな価値があるのか?

刀原には理解出来なかった。

 

 

ブラックが逃亡中だと言うことは、留学する予定の刀原や雀部の耳にも当然ながら入った。

つまり、護廷十三隊の耳にも入ったということだ。

 

留学の中止も一応、検討はされた。

だが当の本人達が行く気満々のため*6予定通りに留学が行われる事になった。

まあ、雀部副隊長は凄まじく心配そうだったが。

 

大丈夫、彼女には指一本足りとも触れさせません。

刀原は固く、決意した。

 

 

 

 

凶悪犯が彷徨いている英国に向け、刀原と雀部は間も無く機上の人となる。

見送りには去年以上の人が集まった。

 

そんな出発を控えた刀原に卯ノ花が近づいてくる。

 

「良いですか将平君?もしブラックなる不埒者がやって来た際は…」

 

「やって来た際は?」

 

「死なない程度にやって仕舞いなさい」

 

「…了解です。れつ姉」

 

刀原は神妙な顔で頷いた。

 

 

時を同じくして雀部の共に彼女の祖父である雀部副隊長がやって来る。

 

「良いかな我が孫娘よ。万が一ブラックなる痴れ者がやって来たら…」

 

「やって来たら?」

 

「構わん、殺れ」

 

「……分かった」

 

やる気満々に頷く雀部。

 

「雀部副隊長、ご心配には及びません。彼女が手を汚す前に僕が叩き切りますので」

 

「ほう、では将平君に任せるとしましょう」

 

刀原が代わりにやることを言えば、雀部長次郎は満足げに頷いた。

ブラックがのこのことホグワーツにやって来ないことを、祈るばかりである。

 

 

「楽しみだね!」

 

そう言い、ルンルン気分に見える雀部。

其処に緊張など無かった。

 

「全くだな」

 

刀原も今までとは違い、何処と無く気分が良かった。

 

英国まであと数時間。

着くまでの長いようで短い時間を、二人は話を弾ませながらあっという間に過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

*1
如何にも渋々と言った感じだった

*2
「隊長って格好いいよね!」という雛森の発言を受けての野望である

*3
刀原が焚き付けたのだろう

*4
刀原=日番谷>雀部>>>雛森>>阿散井=朽木=吉良

*5
未成年のため『未成年魔法使いの妥当な魔法使用制限に関する法令』

おまけに『国際魔法連盟機密保持法』にも違反の恐れあり

*6
雀部に至っては「来たら返り討ちにします!」と言い放った




改めて、今年もよろしくお願いいたします。

オリキャラである彼女の詳細はまた今度。
ホグワーツでフルネームを開示します。


感想、考察、意見。
ありがとうございます。
そしてお待ちしてます。


では次回は、
再びの横丁と恐怖
次回もお楽しみに


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