ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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私はたまに
未来の霧を晴らす。









死神、友を紹介する。占いを添えて

 

滝のような土砂降りの中、ホグワーツ特急は駅に着いた。

吸魂鬼と遭遇し、かつ雨の中であることも相俟ってか生徒達に何時もの喧騒は無かった。

体の芯から凍りつくような寒さに加え、吸魂鬼は皆の新学期への期待感といった類のものをどうやら削いでしまったようであった。

それは刀原達の馬車も同じだった。

 

特にハリーはかなりどんよりしており、気分が麗しく無い様子だった。

そして刀原の隣にいる雀部は何時もの笑顔は何処へ行ったのか、ガチガチに緊張していた。

 

「大丈夫だ、雀部。何時も通りのままで良いんだよ」

 

刀原が日本語でそう言えば、少しだけ緊張が溶けたらしかった。

 

 

ホグワーツ城の門も抜け、広い玄関ホールへ踏み入ると、城の中も外の天気か生徒の気分を反映でもしたのか寒々しかった。

 

「ポッター!グレンジャー!トーハラ!三人共私のところにおいでなさい!トーハラは隣のご友人も忘れずに!」

 

突如、マクゴナガルの呼び声が響く。

よくよく見れば、玄関ホールの向こう側から三人を呼んでいたのだ。

ロン達に断りを入れ、若干ぼうっとしている生徒たちがなかなか避けてくれなかったが、何とかそこにたどり着く。

 

「まず……ルーピン先生から聞いていますが、ポッターの気分が悪くなったそうですね。大丈夫ですかポッター?」

 

ルーピンはどうやらホグワーツに一報を入れていたらしい。

傍にはマダム・ポンフリーが来ておりチョコレートを食べたならまあ大丈夫だと言っていた。

そんなマダム・ポンフリーの言を聞いて安心したのか、マクゴナガルはハリーに大広間に行っているように言い渡し、解放した。

 

 

「次に…貴女が今年よりホグワーツに留学してくる子ですね?ようこそホグワーツへ。私は副校長でグリフィンドールの寮監のマクゴナガルです」

 

マクゴナガルが次に目を向けたのは雀部だった。

 

「は、はい!雀部です。よろしくお願いします!」

 

マクゴナガルに自己紹介する雀部。

そんな雀部にマクゴナガルは「こちらこそよろしくお願いします」とニッコリ笑って返した。

 

「貴女には新入生の組分けが終わり、ダンブルドア校長先生が合図を出したら大広間に入って来て貰います。そこでホグワーツの生徒に紹介と組分けを行いますので」

 

「はい、分かりました」

 

「トーハラは彼女に付き添ってあげなさい」

 

どうやら刀原の顔には、雀部が心配であると言うことが書かれていたらしい。

マクゴナガルは気を効かせてくれたのだ。

 

「ありがとうございます、マクゴナガル教授」

 

マクゴナガルの意図を読み取った刀原が感謝を伝える。

 

「よろしい。では二人は大広間近くで待機なさい。私はまだグレンジャーに用が有りますので」

 

「はい」

 

「失礼します」

 

こうして刀原と雀部は解放され、大広間前に向かった。

 

 

大広間に来たときには、もう組み分けは終わっていて、ダンブルドアの話が始まろうとしていた。

そしてそれまでざわめきに満ちていたのが、一斉に静かになる。

 

「新学期おめでとう!皆にいくつかお知らせがある。一つはとても深刻な問題じゃから、皆がご馳走でボーッとなる前に片付けてしまう方がよかろうの……ホグワーツ特急での捜査があったから、皆も知っての通り、わが校は、ただいまアズカバンの吸魂鬼、つまりディメンターたちを受け入れておる」

 

今年入った新入生にとっては恐怖の洗礼を受ける羽目になってしまった吸魂鬼によるご用改め。

トラウマにならない事を祈るのみである。

 

「魔法省の御用でここに来ておるのじゃ。ディメンターたちは学校の入り口という入り口を固めておる。はっきり言うておくが、あの者達がここにいる限り誰も許可なしで学校を離れてはならんぞ。ディメンターはいたずらや変装に引っかかるようなシロモノではない――『透明マント』でさえムダじゃ」

 

今年は禁じられた森には行かないようにしよう。

刀原は固く誓った。

 

「言い訳やお願いを聞いてもらおうとしても、ディメンターには生来できない相談じゃ。それじゃから、一人一人に注意しておく。あの者たちが皆に危害を加えるような口実を与えるではないぞ。監督生よ、男子、女子それぞれの新任の主席よ、頼みましたぞ。誰一人としてディメンターといざこざを起こすことのないよう気をつけるのじゃぞ」

 

警告も通じない奴らだ。

問題なのは斬魄刀や鬼道が通じるかどうかだが……おそらくいけるだろうと刀原は思っていた。

 

「楽しい話に移ろうかの。まずは新任の先生から。今学期からうれしいことに新任の先生を二人、お迎えすることになった。リーマス・ルーピン先生。ありがたいことに、空席になっている『闇の魔術に対する防衛術』の担当をお引き受けくださった」

 

パラパラと拍手がちらほら起こる。

去年はロックハート(ペテン師作家)だったので、またあんなヤツじゃないだろうなという警戒心の方が強いのだろうか。

見た目があれなのもあるだろうが。

 

「もう一人の新任の先生だが……『魔法生物飼育学』はケトルバーン先生じゃったが、残念ながら前年度末をもって退職なさることになった。手足が一本でも残っているうちに余生を楽しまれたいとのことでの。そこで後任じゃが嬉しいことに、ほかならぬルビウス・ハグリッドが、現職の森番役に加えて教鞭を取ってくださることになった」

 

ざわざわっとざわめきが巻き起こると同時に、盛大な拍手が起こる。

ハグリッドが今まで大勢の生徒に慕われてきたことの証だろう。

 

だが……一抹の不安を覚えるのは俺だけだろうか。

刀原は気のせいとした。

 

そして。

 

 

「最後に、極東は日本のマホウトコロより留学生を、もう一人ホグワーツへと迎えることになった。留学生は先ほどと同様、組み分け帽子で入る寮を決める事になる。なお、学年は三年生じゃ」

 

ダンブルドアの一言で各寮は騒がしくなる。

 

「では入って頂こう。マホウトコロの留学生、ミス・ササキベじゃ」

 

「行ってこい」

 

「……うん」

 

雀部の名前が呼ばれ、刀原がトンと背中を押す。

腰には斬魄刀を差しており、綺麗な金髪が靡く。

 

「可愛いなあの子」

「本当に日本人なの?」

 

一部邪推な感想も聞こえるが、雀部は堂々と組分け帽子がある椅子の前に立つ。

 

「マホウトコロから参りました、雀部雷華(ささきべらいか)と申します。母が英国の魔法使いなので、所縁のあるホグワーツに来れたこと、嬉しく思います。これからよろしくお願い致します」

 

ニッコリと笑ったあとペコリと頭を下げる雀部は堂々としており、ホグワーツ生は拍手で彼女を迎えた。

 

「ありがとうミス・ササキベ、よろしくお願いしますぞ。さて、では組分けじゃ!」

 

いよいよだな。

刀原もグリフィンドールのテーブルに座り固唾を見守る。

 

「ササキベ・ライカ!」

 

「はい!」

 

凛とした声が響く。

ゆっくりと椅子に座る雀部は絵に成っていた。

 

「…………」

 

「…………」

 

被せられた直後から起こる静寂。

よくよく見れば各寮の生徒、とくに男子が祈ってるではないか。

 

「ふざけた野郎どもだ」

 

刀原は少しだけ不快だった。

 

「……よし、君に幸運あれ。グリフィンドール!!」

 

1、2分の静寂の後、組分け帽子がグリフィンドールであると宣告する。

雀部の寮は彼女が望んでいた結果になったのだった。

 

「…………ふぅ」

 

刀原も安堵の声を漏らす。

 

「ありがとうございました」

 

雀部はペコリと頭を下げ、刀原の隣に座る。

 

「狙い通りになったな?」

 

「これでホグワーツでも一緒ですね!」

 

「とりあえず一安心だ」

 

「全くです」

 

刀原と雀部は互いに笑い合った。

 

 

 

「さて、これで大切な話はみな終わった。さあ、宴じゃ!」

 

ダンブルドアの合図で、一斉に空だった皿にご馳走が現れる。

皆が一斉に自分の皿に、料理を我先にと奪い合う。

特急内で腹ペコを宣言していたロンなど狂戦士(バーサーカー)のようだ。

 

「こう言っては何ですが、漏れ鍋の料理より美味しいです」

 

雀部もローストビーフを食べながらそう言った。

 

宴も幕を閉じ、ダンブルドアの最後の言葉も終わり、生徒達は各寮に向かう。

そして多くは、あっという間に眠りにつく。

それは刀原も例外では無かった。

 

 

 

 

ホグワーツ初日、朝食に大広間へと降りてきた刀原達は、早速新しい時間割を受け取ることになる。

中でも目を奪うのはハーマイオニーの時間割。

 

「ハーマイオニーの時間割がメチャクチャだ……一体どうやって一日にこんなに授業を受けるつもりなんだ?こんな二つも三つも、いっぺんに出席するのかい?」

 

ロンの言うことは間違っていない。

現に9時から『占い学』と『マグル学』と『数占い学』が重複している。

 

「まさか。でもちゃんと先生と一緒に決めたから問題はないわよ………それに、私の時間割がちょっと詰まってたところで、あなたには関係ないでしょ?」

 

「どこがちょっとなんですかね……?」

 

ロンがため息をついて、寮のテーブルに戻りつつ言う。  

ハーマイオニーはその皮肉を受け流した。

 

「ハーマイオニーはどうやって受けるのでしょうか?やはり、あれでしょうか?」

 

雀部がそう言い、刀原も「おそらくな」と答えた。

刀原と雀部はおそらくこれだろうと言う魔法具を知っている。

即ち逆転時計(タイムターナー)だ。

 

使用に細心の注意を要するそのアイテムを大っぴらに公表するわけにはいかない。

昨夜刀原、雀部、ハリー、ハーマイオニーを呼び止めたマクゴナガルがハーマイオニーを最後の一人にしたのもそれが理由だと刀原は推察していた。

 

情報漏洩を防止するにあたって「Need To Knowの原則」と言うものがある。

これは『必要とする人にのみ情報を開示または閲覧を許可し、不要な人に開示または閲覧の禁止とするべき』という考え方だ。

 

今回の場合は、使用者ハーマイオニーと責任者と許可を出したマクゴナガル、ダンブルドアぐらいだろう。

 

刀原と雀部は暖かく見守る事にした。

 

 

 

さて、いよいよ授業が始まる。

まず行われるのは『占い学』だ。

 

刀原達がやって来た教室はかなり異質で奇妙だった。

屋根裏部屋と昔風の紅茶専門店を合わせたようなところ、とはハリーの感想だったが、刀原も同意見だった。

 

深紅の仄かで暗い灯りが部屋を満たしており、窓のカーテンは閉めきられ、ランプは暗赤色のスカーフで覆われている。

おまけに気分が悪くなる程の濃厚な香りが暖炉にある大きな鍋から漂っている。

 

そして壁の棚には埃を被った羽や蝋燭の燃えさし、何組ものボロいトランプ、膨大な数の水晶玉、紅茶のカップなどが詰め込まれていた。

 

「雰囲気はありますね……」

 

雀部は刀原にコソッと呟いた。

 

「先生はどこだい?」

 

ロンがそう言うと「ようこそ」と暗がりの中から突然声がした。

霧の彼方から聞こえるかのようなか細い声だった。

 

「この現世で、とうとう皆様にお目にかかれて嬉しゅうございますわ」

 

ひょろりと痩せ、大きな眼鏡を掛けた女性がそう言った。

 

「さあ、お掛けなさい。あたくしの子供たちよ」

 

女性の言葉で生徒達は教室に並べられている丸テーブルの周りにある丸椅子などに座る。

 

「改めて…『占い学』にようこそ。あたくしがトレローニー教授です。多分、あたくしの姿を今まで見たことがないでしょうね……。学校の俗世の騒がしさの中にしばしば降りてしまいますと、あたくしの『心眼』が曇ってしまいますのでね……」

 

なんか…インチキ臭いな……。

刀原はそう思った。

 

「皆様がお選びになったのは『占い学』…。魔法の学問の中でも一番難しいものですわ……」

 

そう言ったトレローニーは長々と語る。

本があまり役に立たないこと『眼力』が無いと駄目だということ等々だ。

 

そして幾つかの予言らしきものも行った。

ネビルの祖母に対して思わせ振りなこと言ってみたり、数ヵ月後に悲しい別れをするなど言ってみたり……。

 

刀原は、占い学と言うのはかなり抽象的で、理論的な考え方をする生徒とは相性が悪いと考えた。

 

紅茶の茶葉で占いをする際など、ハリーのカップをトレローニー先生が持ち上げて「隼……まあ、あなたは恐ろしい敵をお持ちね」などと言ったのだが……。

 

「でも、誰でもそんなこと知ってるわ」

 

ハーマイオニーが聞こえよがしに囁いたのだ。

よっぽど、占い学に書物は不必要だと言われたことが癪だったのか、それとも簡単に分かりそうなことを言ったからなのか。

 

とにかくハーマイオニーはお気に召さなかったらしい。

 

 

そしてハリーも散々な目に遭った。

 

「グリム、あなた、死神犬ですよ! 墓場に取り憑く巨大な亡霊犬です! かわいそうな子。これは不吉な予兆――大凶の前兆――死の予告です!」

 

などとトレローニーが言い放ったのだ*1

しかしハーマイオニーは冷静に立ち上がって、ハリーのカップを傾ける。

 

そして

「グリムには見えないと思うわ」

と言い放った。

 

 

流石にそれはトレローニー先生にも無視できなかったのだろう。

 

「こんなことを言ってごめんあそばせ。あなたにはほとんどオーラが感じられませんのよ。未来の響きへの感受性というものがほとんどございませんわ」

 

イラッとした表情でハーマイオニーに言い返した。

 

間違いなくバチバチのにらみ合いだったと言える。

 

ハリーが「僕が死ぬか死なないか、さっさと決めたらいいだろう!」と大声を出さなかったら面倒な事になっていただろう。

 

なお、占い学は刀原とも相性が悪かった。

 

具体的な証拠も無いのに死の予言をするのは如何なものか。*2

刀原も後にハリーのカップを見たが、グリムには見えなかったのだ。

無論、人によってはグリムに見えたかも知れない。

が、それは人それぞれの意見や捉え方の問題だ。

 

 

おまけに。

 

占い学の授業が終わったあと、クラス中がハリーがいつばったり死ぬか分からないとばかりに注目し、次の授業である『変身術』の授業に集中できないでいた。

マクゴナガルが動物もどき(アニメーガス)の変身をやってもだ。

 

「全く、今日は皆さんどうしたんですか? 別に構いませんが、私の変身がクラスの拍手を浴びなかったのは初めてです」

 

マクゴナガルが疑問に思い質問する。

そこでハーマイオニーが最初の授業が占い学であったことを言えば「ああ、そう言うことですか」と言って顔をしかめたのだ。

 

そして

()()()いったい誰が死ぬことになったのですか?」

と言ったのだ。

 

そしてハリーが自分であると答えた。

 

「今年は?……まさか、毎年恒例なんですか?」

 

刀原はマクゴナガルの言葉を受けて疑問を投げる。

マクゴナガルはキラリと光る目でハリー、刀原を見た。

そして答えた。

 

「その通りですよトーハラ。ポッター、教えておきましょう。シビル・トレローニーは本校に着任してからというもの、一年に一人の生徒の死を予言してきました。ですが、未だに誰一人として死んではいません」

 

マクゴナガルは、先の予言が新しいクラスを迎えるときのお気に入りの流儀だと言ったのだ。

 

「ポッター。私の見るところ、貴方は健康そのものです。ですから本日の宿題を免除したりしませんのでそのつもりで。もっとも、()()貴方が死んだのなら、提出しなくても結構です」

 

マクゴナガルのジョークに、刀原もハーマイオニーも吹き出した。

 

「……辞めてぇな」

 

刀原は占い学に対し、ボソッと呟いた。

 

「……一年は我慢しましょう」

 

雀部もげんなりした様子でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
簡単に言えば死の予言だ

*2
ただし、ハリーが呪われているのは否定しない。

ターバン野郎、蛇、アラゴグ、ブラック等が良い例だろう





予定では動物まで行きたかったのですが……
次回にさせて頂きます。



感想、考察、ご意見、評価。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


では次回は
鉤爪と真似妖怪
次回もお楽しみに





オリジナルキャラ『雀部雷華』

性別 女

立場 不明

 
所属 日本 マホウトコロ

   英国 ホグワーツ魔法魔術学校

 

血筋 魔法族で言うなら純血
   日本とイギリスのハーフ

 

容姿 金髪、翠眼

   

性格 真面目 頑張り屋 

 

好きな食べ物 強いて言うなら甘いもの

 

嫌いな食べ物 強いて言うなら苦いもの

 

趣味 のんびりすること

 

特技 美味しい紅茶を淹れる



雷華と言う名前はパッと思い付いた名前ですが、BLEACHのアニメオリジナルに『雷火』と言う斬魄刀があるんですよね……。
悩んだすえ、採用と致しました。

関係はありませんので、気にしないで貰えると嬉しいです。


なお、キャラのモデルは『Fate/Grand Order』に出てくるキャラ『アルトリア・キャスター』としております。

ただ、あくまでも容姿のモデルなので、伏線やキャストリアとしての行動はありません。
キャストリアのファンはどうかお許しを……。



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