さあ
恐怖を笑おう
Riddikulus!
微妙な幕開けとなった新学期の授業にはもう一つ注目の授業があった。
それは選択科目の一つでもある魔法生物飼育学。
新任教授、ハグリッドは小屋の外で既に待っていた。
オーバーを着込み、新任の緊張など無い様子で、むしろ早く始めたくてたまらないといった表情だ。
「さあ、急げ。早く来いや!今日はみんなにいいもんを見せるぞ!すごい授業だぞ!みんな来たか?よーし、ついてこいや!」
ハグリッドの先導の下、生徒達は森の開けた場所へとたどり着く。
そこでハグリッドから教科書を開くように言われるが、誰も開けない。
当然だ。
ほとんどの者達が、隙あらば噛み付いてこようとする教科書の開け方など知らなかったのだ*1。
「おまえさんたち、撫ぜりゃーよかったんだ」
ハグリッドは背広を撫でるようにそう言って、森の奥へと姿を消していく。
"分かるか!"
誰もがそう思った。
「楽しみですね!」
まるで動物園に来たかのようにワクワクした様子で言う雀部。
「そうだな。向こうにはあまり魔法動物が居ないから、何が見れんのか楽しみだ」
日本では魔法動物が少ない為、こうして触れ合えるのは絶好の機会なのだ。
「オォォォォォォォー!」
急に誰かが甲高い声を出した。
何事かと刀原と雀部が周囲を見渡せば、馬と鳥を足して二で割ったような動物が十数頭、こちらに向かって走って来ていた。
「ドウ、ドウ!」
ハグリッドが大きく掛け声をかけた。
そして動物たちを柵に繋ぎ、嬉しそうな声で「ヒッポグリフだ!どうだ、美しかろう?」と笑う。
生徒達は静かに数歩下がった。
しかし美しいと言うハグリッドの言葉は否定できない。
毛並みの色が驚くほどに綺麗で、思わず触ってみたいとさえ思うほどだ。
しかし他の生徒達は、美しさより恐怖が勝っているようだったが。
「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねぇことだが、こいつらは誇り高い。ヒッポグリフを絶対、侮辱してはなんねぇ。そんなことをしてみろ、それがお前さんたちの最後のしわざになるかもしんねぇぞ。必ず、ヒッポグリフの方が先に動くのを待つんだぞ。それが礼儀ってもんだろう?」
ハグリッドがそう説明する。
「絶対にあの子ふわふわです!触りに行きましょう!」
動物大好きな雀部が、特にふわふわなヒッポグリフを指差し、目をランランに輝かせて言う。
「落ち着け。今はハグリッドが説明してるだろ」
刀原は飛び出そうとした雀部を止める。
ハグリッドの説明は続く。
「こいつのそばまで歩いてゆく。そんでもってお辞儀する。そんで、待つんだ。こいつがお辞儀を返したら、触ってもいいっちゅうこった。もしお辞儀を返さなんだら、すばやく離れろ。こいつの鉤爪は痛いからな……。よーし、誰が一番乗りだ?」
ハグリッドがあたりをぐるりと見渡したすが、誰も行きたがらないようだった。
雀部は遠慮したのか手を上げない。
「誰も行かないのであれば、私が……」
雀部が痺れを切らしたその時、ハリーが「僕、やるよ」と名乗り出た。
「よーし、そんじゃ……バックビークとやってみよう」
ハグリッドは嬉しそうに言う
そして鎖を一本解き、灰色のヒッポグリフを群れから引き離すと首輪を外した。
クラスの誰もがハリーに注目しているようだった。
ハリーも緊張したように身構えていた。
完全にお預けを食らった雀部だが「まあ、ここはハリー君に任せますか」と言っていた。
刀原もお手並み拝見とばかりに様子を伺う。
「さあ、落ち着け、ハリー。目をそらすなよ。なるべく瞬きするな……ヒッポグリフは目をしょぼしょぼさせるやつを信用せんからな……」
ハリーを生徒一同が固唾を呑んで見つめる中、ヒッポグリフはまだ動かない。
そして心配したハグリッドがハリーを後ろに下がらせようとしたその時、ヒッポグリフは前足を折り、お辞儀をした。
おおっ、と生徒の間でも歓声が起こる。
でも一番喜んでいるのはハグリッドのようだった。
「やったぞ、ハリー!よーし……触ってもええぞ!嘴を撫でてやれ、ほれ!」
ハグリッドにそう言われ、戸惑いながらバックビークを撫でるハリー。
「よーしと。ほかにやってみたいモンはおるか?」
ハリーが成功したことで勇気付けられたのか、他の生徒も恐る恐るではあるが放牧場へと入っていく。
ハグリッドはヒッポグリフを一頭ずつ離していき、やがてあちこちでお辞儀をする光景が見えた。
雀部は先程から目を付けていた、真っ白いふわふわなヒッポグリフに、既に抱き着いていた。
いつの間に手懐けたんだ?
雀部の早業に刀原は舌を巻きながら、雀部の元に駆け寄った。
ハリーがバックビークの背中に乗り、遊覧飛行をして帰ってくる。
道中ハリーの歓声が上がっていたところを聞くと、大満足な飛行だったのだろう。
生徒達もハリーの元に駆け寄る。
その時だ。
「危ない!」
マルフォイの悲鳴に近い声が聞こえる。
見るとマルフォイがスリザリン生の誰かを庇い、腕を切っていたのだ。
生徒を庇いながら倒れるマルフォイ。
女子生徒の悲鳴。
ヒッポグリフはかなり激怒しているらしく、マルフォイに追撃の鉤爪を振るう。
ガキン!
誰もがもうダメだと思った瞬間、金属音が響く。
刀原がマルフォイとヒッポグリフの間に割って入ったのだ。
「雷華!マルフォイを下がらせてくれ!」
「任せて!」
刀原の指示に雀部は了承し、マルフォイに駆け寄って「こっちへ!」と庇いながら後ろへ下がらせる。
その間もヒッポグリフは怒りのままに鉤爪や嘴で攻撃するが、刀原は容易く防ぎきる。
そうして防いでる間にヒッポグリフの怒りが収まったのか、それとも全く関係の無い者達を攻撃したことに気がついたのか。
ヒッポグリフは、我に帰ったかのようにピタリと攻撃を辞めた。
「お前さんは何てことをしちょるんだ!!」
今の今まで下手に動くことが出来なかったハグリッドだったが、場が静まったことを把握し巨体を揺らしたやってきた。
「後は任せた」
刀原はハグリッドにそう言い残すと、雀部とマルフォイの元に駆け寄る。
「大丈夫かマルフォイ!?」
「あ、ああ……助かったぞショウ。ササキベ…だったけ?君もありがとう、痛みが収まってきた……」
「ふふっ、どういたしまして」
マルフォイは腕を鉤爪で切られ、出血もしていた。
だが雀部が既に回道で治療しており、出血は止まり傷も塞がりつつあった。
「マルフォイ、大丈夫か?」
ハリーも心配で駆け寄って来た。
「ああ、ポッター。二人のお陰だ……。だが……カッコ良く飛び出したはいいが、このざまじゃな……」
どこか自虐的なマルフォイ。
「そんなことないよマルフォイ。友達を守るために庇うなんて、中々出来ることじゃない」
そんなマルフォイをフォローするハリー。
厚い友情である。
「そうだぞマルフォイ。飛び出しただけでも十分なもんだ」
刀原もフォローする。
「……ポッター」
特にライバルのハリーの言葉は考え深いものらしい。
「この借りは必ず返す」
マルフォイはそう言って、庇った生徒と共にマダム・ポンフリーの元に向かったのだった。
「……じゃ、じゃあ、その……うん。もう授業はこれで終わりだ……解散」
ハグリッドが震える声でそう言い、声と同様に震えている手でヒッポグリフに首輪をし、森へ連れていく。
「すぐクビにすべきよ!」
「スリザリンのあいつが悪いんだ!」
スリザリン生は非難轟々で、全員がハグリッドを罵倒していた。
グリフィンドール生は逆にハグリッドを擁護していた。
だがスリザリン側の旗頭たるマルフォイは居らず、グリフィンドール側の旗頭たるハリーはハグリッドの元に向かった。
そんな状態で何かを出来るはずもなく、ただ無駄な口論が行われるだけだった。
「ハグリッドや問題のヒッポグリフに、何かを出来るのは事の当事者たる俺とマルフォイぐらい」
そのように刀原が言えば、次の授業もあるためか、両陣営は別れていった。
数多く生徒達が思ったであろう。
ドラコ・マルフォイは何らかのアクションをとると。
そのアクションは件のヒッポグリフの処刑要求か、ハグリッドの罷免か。
だがマルフォイはどちらも起こさず、ヒッポグリフの一件はうやむやになった。
スリザリンの面々は特に不振に思い、刀原も理由を本人から聞いた。
その理由は至ってシンプル。
「ロクな授業になるよりかはまし」
との事だ。
だがハグリッドはかなりショックを受け*2、魔法生物飼育学はこれ以降つまらないものに当分なるのだった。
今学期の闇の魔術に対する防衛術の教授……リーマス・ルーピンは、どうやら
と言うのが刀原達が授業を受けるまでの評判であった。
そしてその評判は正しい評価である、と言うのが少なくとも判明した。
何故なら、今までの教授陣はピーブスを秀逸な手口*3で追い払うことは出来なかったであろうし、とある生徒に対し要らない警告をする某魔法薬学の教授に完璧な返しは出来ないだろうからだ。
「……しっかりとしたまともな授業を受けられることに、何故か違和感を感じるんだが」
「……そこまでだったんですか?」
軽快な音楽を聞きながら楽しげに授業に励んでいるハリー達を少し離れた場所で見守っていた刀原の呟きに、隣にいた雀部が疑問を投げ掛けた。
「……そうだよ」
刀原は今までの頭の痛い授業を思い浮かべながら、苦い顔で肯定する。
雀部はそれを聞いてひきつった顔をする。
そこまで酷かったのだ。
それに比べたらこの授業は素晴らしいものだろう。
いや、比べる事すら烏滸がましいだろう。
授業の最初、ルーピンは言った。
「教科書はカバンに戻してもらおうかな。今日は実地練習をすることにしよう。杖だけあればいいよ」
それを聞いた生徒達の過半数が不安そうな顔をする。
おそらく先学期のピクシー戦線を思い出したのだろう。
まあ、今迄の闇の魔術に対する防衛術の授業における最初で最後となっている実地練習がまさにあれだったのだから、クラスの皆が実地練習という言葉を
こうしていろんな事が起こりながら*4教室を移動し、生徒達は古い洋服箪笥の前に立った。
その箪笥は急に震えだし、バーンと大きな音を立て何人かが驚いて飛び上がった。
「この中には
ルーピンはそう語る。
刀原はそれを聞いて、咄嗟にネズミを思い出した。
「ここにいるのは、昨日の午後に入り込んだやつだ……。それでは、最初の問題ですが、まね妖怪のボガートとは何でしょう?」
ルーピンがそう聞けば、ハーマイオニーが速攻で手を上げる。
「形態模写妖怪です。わたしたちが一番怖いと思うのはこれだ、と判断すると、それに姿を変えることができます」
「私でもそんなにうまくは説明できなかったろう」
ルーピンはにっこりと笑う。
相変わらずの博識っぷりだ。
「だから中の暗がりに座り込んでいるまね妖怪は、箪笥の戸の外にいる誰かが何を怖がるのかまだ知らないから、まだなんの姿にもなっていない。まね妖怪が一人ぼっちのときにどんな姿をしているのかは誰も知らないけど、私が外に出してやると、たちまちそれぞれが一番怖いと思っているものに姿を変えるはずです。ということは、初めっから私達の方がまね妖怪より大変有利な立場にありますが、ハリー、それは何故だか分かるかな?」
ハリーが突然当てられ、びくっと肩を震わせた。
そして「えーと……」と少し考えて、思い切って発言する。
「僕たち、人数がたくさんいるので、どんな姿に変身すればいいかわからない?」
「その通り。……まね妖怪退治をするときは、誰かと一緒にいるのが一番いいむこうが混乱するからね。クビのない死体に変身すべきか、それとも人肉を喰らうナメクジになるべきか? 私はまね妖怪がまさにその過ちを犯したのを一度見たことがある……。一度に二人を脅そうとしてね、半身ナメクジに変身したんだ。どうみても恐ろしいとは言えなかった……」
ルーピンの言う半身ナメクジを迂闊にも想像した刀原は、ふふっ、と笑う。
とんだ珍獣の爆誕だ。
その刀原の隣にいる雀部もクスッと笑う。
「まね妖怪を退散させる呪文は簡単だだが、恐怖に勝つ精神力が必要だ。何故ならこいつを本当にやっつけるのは……笑いなんだ。君達はまね妖怪に、君たちが滑稽だと思える姿にさせる必要がある。初めは杖なしで練習しよう。私に続いて言ってみよう『
「「『
全員が一斉に唱えれば、ルーピンは満足気にに頷く。
「よし、とっても上手だ。まあ、ここまでは簡単なんだけどね。呪文だけでは十分じゃないんだよ。さて、そこでネビル、君の登場だ」
ネビルはガタガタ震えながら進み出た。
「よーし、ネビル。君が世界一怖いものはなんだい?」
ネビルが口を開き、何かを呟く。
だが、声が小さすぎて聞き取ることが出来なかった。
「ん?すまないネビル、聞こえなかった」
「……スネイプ先生」
ネビルの解答に、ほとんど全員が思わず吹き出してしまう。
まあ、あれだけ目の敵にされればな……。
刀原は同情を禁じえなかった。
しかしルーピンは笑わずに、至って真面目な顔をしていた。
「スネイプ先生か、確かにそうだね……。よし、ネビル、君はおばあさんと暮らしているね?」
「え……はい。でも、僕、まね妖怪がばあちゃんに変身するのも嫌です」
「いや、そういう意味じゃないんだよ。おばあさんはいつも、どんな服を着ていらっしゃるのかな?」
「えっと……いっつもおんなじ帽子。たかーくて、てっぺんにハゲタカの剥製がついてるの。それに、ながーいドレス……たいてい、緑色……それと、ときどき狐の毛皮の襟巻きしてる」
「ハンドバッグは?」
「おっきな赤いやつ」
成る程、実に派手な方のようだ。
「よし、それじゃあネビル。今からボガートが洋箪笥からウワーッと出てくる。そして、君を見る。そうすると、ボガートはスネイプ先生の姿に変身するんだ。そしたら、君は杖を上げて叫ぶんだ。『リディクラス、ばかばかしい』とね。そして、君のおばあさんの服装をイメージする。全て上手くいくと、ボガート・スネイプ先生はてっぺんにハゲタカのついた帽子をかぶって、緑のドレスを着て、赤いハンドバッグを持った姿になってしまう」
教室中が爆笑の渦に包まれる。
何それ、凄まじく面白い人じゃん。
刀原も堪えきれず吹き出してしまった。
「ネビルが首尾よくやっつけたら、そのあとまね妖怪は君たちに向かってくることだろう。さてみんな、ちょっと考えてくれるかい。何が一番怖いかって。そして、その姿をどうやったらおかしな姿に変えられるか、想像してみてくれ……」
刀原も言われて想像する。
親しい人の死体とか?
いや、あの人達やあいつらがそう簡単に死ぬとは思えん。
そうさせない為に頑張ってる訳だし。
やはりあれかな?
刀原が想像した時、ボガートはネビルの前に現れた。
スネイプ教授には悪いが、面白すぎる。
ネビルの前に現れたボガートはすぐさまスネイプに変わり、そこから更にドレスを着て帽子を被りハンドバッグを持ったスネイプに変わった。
その姿は珍妙な人を絵に書いた感じで、クラスの腹筋を幾つか破壊した*5。
その後、丁度良いタイミングでルーピンが音楽をかけ始め、クラスは自らの恐怖を笑い物に変え始めた。
刀原と雀部は、そんな生徒対ボガートのやり取りを一歩引いたところで高みの見物と洒落込むことにした。
スネイプから始まり、ミイラ、バンシー、ヘビ、目玉、手首、蜘蛛……。
それらをそれぞれ面白い物に変えていく生徒達。
そしてその光景を笑う刀原と雀部。
「守護霊を出せる君達では、真似妖怪では役不足だったかな?」
生徒とボガートを笑いながらルーピンが近づいてくる。
「いや、そうではありませんが……。ルーピン教授。僕も雀部も、おいそれと自身の弱点や恐怖の具現化を周囲に晒す趣味はないのです……」
刀原の言葉に「成る程…」と頷きながら言うルーピン。
「私は逆に行ってみたいけど?自分の恐怖を知るのも良い経験じゃない?」
雀部は逆に興味津々らしい。
「あ、そうなの?んじゃ、どうぞ」
そう言うと雀部は列に並びに行った。
「この歳の子ども達は、まだ恐怖というものをよくわかってない。だからこそ、ボガートはいい教材になる。と、踏んだんだがね……。流石はバジリスクを倒した子だ。その歳で恐怖を理解しているのか」
ルーピンは感心したかのように言う。
「……少なくとも失う恐怖は知ってます」
刀原はそう返す。
両親に残された時間はもう少ない。
刀原はボガードが目の前に来たら両親の遺体が現れるのではと考えていた。
「失う恐怖か……。私は、味わったよ……」
ルーピンは何やら考え深そうに言った。
生徒達の列は段々と短くなっていき、ハリーの出番がやって来ようとしていた。
順番が回ってきたハリーはワクワクした様子でボガートが化けるその時を心待ちにしていた。
そしてボガードは黒いローブと痩せこけた骨のような手をしたもの……
顔面蒼白になるハリー。
呪文どころでは無さそうだ。
「任せて!」
刀原とルーピンは若干の距離があるため庇うことが出来ず、雀部が割って入る。
するとボガードはまたも変身し始める。
出てきたのは。
「
雀部長次郎忠息だった。
しかもかなり激怒している。
刀原は知らなかったが、どうやら雀部は昔、雀部長次郎をかなり激怒させたらしい。
「
その言葉を聞いてたじたじになる雀部。
「
「
今度は刀原が割って入る。
日本語で言う辺り、刀原も想定外だったのだろう。
そして刀原が割って入ったことで、ボガードがまた変身する。
パチン!
出てきたのは怪しげな笑みを浮かばせる卯ノ花烈だった。
「
刀原は幼いころ、初めて本気になった卯ノ花を見てマジ泣きしたのを思い出す。
卯ノ花は既に鯉口を切っており、今にも切りかからんとしていた。
刀原と雀部以外の生徒は既に脱兎のごとく教室の後ろへと避難しており、女子に至っては半泣きの者もいた。
【ら、雷華……】
【しょ、しょう君……】
たじたじになる刀原と雀部。
本来は杖を構えるところのはずだが、二人は斬魄刀を抜こうとしている辺り、既にこの卯ノ花の正体がボガードであることを忘れている*6。
【あの人が来たら、俺が何とかしてブロックする。雷華はその隙に一発いれてくれ】
【分かった。でも、私も防がれるかも】
【おそらくな。だが、そうなったらそうなったらで俺が打ち込むだけだ】
【来なかったら?】
【30秒後に俺が切りかかるんで、援護宜しく】
【了解!】
なお、すべて日本語でのやり取りである。
「両断せよ『斬刀』」
髪は白くなり、抜刀体勢に入る刀原。
同様に抜刀体勢の雀部。
始解こそしていないが、ほぼ本気モードの二人。
そして二人が何を言っているのか分からないが、とりあえず固唾を飲んで見守るハリー達*7。
緊張の中、動いたのはルーピンだった。
「こっちだ!」
ルーピンはそう叫び、ボガートの前に飛び出した。
「ル、ルーピン教授!危険です!」
「離れて下さい!」
刀原と雀部は急にと飛び出してきたルーピンに離れるよう警告する*9。
だが、相手は所詮ボガート。
パチン!という音と共に卯ノ花は姿を消し、銀白色の玉がルーピンの前に浮かんでいた。
「『
面倒くさそうにルーピンが呪文を唱えれば、ボガートは風船に変わり、そのまま洋服箪笥へ逃げ込んだ。
「「あっ………」」
そして刀原と雀部はこの場が瀞霊廷ではなくホグワーツであり、対峙していたものが卯ノ花では無くボガートであることにようやく気が付いた。
「ふう、ここまでだね。みんな良くやった、ボガートと対峙した生徒全員にそれぞれ五点をあげよう。今日の授業はこれでおしまい」
ルーピンがそう言った。
確かに激怒した雀部長次郎と卯ノ花を見れば、授業の続行は不可能だったようなのでルーピンの判断は正しかったように見える。
生徒達は先ほどまでびびっていたこともすっかり忘れ、自分が対峙したボガートの感想であっという間に元の興奮状態に戻った。
「バンシーと対決するの見たか?」
「帽子をかぶったスネイプ!」
「今までの『闇の魔術に対する防衛術』じゃ、一番良い授業だったよな?」
ロンはそう興奮した様子でそう言う。
「本当にいい先生だわ。だけど、私もボガートと対決したかったわ」
ハーマイオニーがそう言う。
確かにハーマイオニーは対峙し損ねていたようだった。
「君は何に変わったかなぁ?成績とか?」
ロンはそうからかうように言う。
ハリーはそんな生徒の中でも心が弾んでいない様に見えた。
やはり彼にとって吸魂鬼はかなり苦手らしかった。
そして刀原と雀部もまた心は弾んでいなかった。
【まさかボガートをれつ姉だと思い込むなんて……】
【すっごく恥ずかしいです……】
トボトボと歩く二人だが、見るものは見ていた。
【ルーピン教授の苦手なもの……あれは、満月でしょうか?】
【雷華もそう見えたか?俺もだ。まあ、苦手なものは人それぞれだからな】
そう言う二人にハリー達三人が来てこう言った。
「「「お願いだから、英語でしゃべって」」」
「「あ。ごめんごめん」」
ハリポタの世界はイギリスでの出来事なので、主人公達が使う言語も当然英語です。
しかし、主人公に日本語でしゃべれる幼馴染みが一緒にいるようになったので、日本語で内緒話する際は【】で表示します。
ハリー達が聞いている内容は、今まで通り日本語変換してないローマ字で表現させて頂きます。
映画でも小説でもボガートは基本的に変身しての精神攻撃だけで、それ以外の実害は無いように見受けられます。
筆者の記憶が正しければボガートはしゃべってませんし、物理的な攻撃もしていません。
おそらく人の目の前に現れると同時に『開心術』をかけて、その情報を元に最適な変身し、敵を追い払うという自衛行動だと筆者は考察しています。
よって卯ノ花・ボガートは攻撃をしてきません。
まあ、攻撃させても良かったんですが。
感想、考察、ご意見、評価。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
では次回は
太った婦人の災難、敗北
次回もお楽しみに