ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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雨の中
恐怖の帳がただ落ちる。

響く声
探る間も無く意識無く。

滑る手に
空飛ぶ我は砕け散る。

魅せる舞
群がる者に防ぐ術無し







死神、警戒する。婦人の災難と敗北。

本格的に始まった三学年の授業の中でも『闇の魔術に対する防衛術』の授業はほとんどの生徒から、一番人気の称号を手にした。

中にはルーピンのみすぼらしいローブを指摘する生徒もいたにはいたが…。

 

前任者の馬鹿ども(クィレルとロックハート)より百倍良いのだから、気にすることでは無い」

 

という刀原の意見は多くの生徒も同感であり*1、ルーピンを批判する生徒はほぼ居なくなっていた。

 

だがそれによって残念な授業が比較されたりすることになった。

 

 

『魔法薬学』の授業は特段変わりは無かったが、スネイプの機嫌は麗しく無かった。

ネビルによってまね妖怪がスネイプに変わったうえ、極めて派手で笑える格好(ハゲタカの帽子と緑のドレス)にさせられ大爆笑を呼んだという()()()()()()()()が広まったからだ。

 

スネイプにとっては面白くも可笑しくもない。

無論、ネビルに対するいびりが酷くなったのは言うまでもなかった。

 

 

『占い学』に関して、刀原は完全に見切りを付けた。

見方が個人の匙加減で決まるものに、刀原は意味を見出せなかったのだ。

しかしグリフィンドール生のパーバティ・パチルやラベンダー・ブラウン等はトレローニーを崇拝に近い敬意で崇める熱狂的な信者となった。

 

彼女等は毎度の様に死の宣告に近い予言を受けるハリーに対して、あたかも臨終の床についてる人の様にひそひそ声で話しかけるようになった。

 

 

そして最初は華々しかった『魔法生物飼育学』は、勢いを完全に失い、途轍もなくつまらない授業になってしまった。

どうやらハグリッドは完璧に自信を失ってしまったらしく、生徒たちは毎回レタス食い虫(フロバーワーム)というつまらない生物を世話する羽目になった。

 

魔法生物が大好きな雀部は「もふもふ…………」と言いながら死んだ魚のような目で授業を受けていた。

 

早急に手を打たねば。

 

刀原はそう誓ったが、どんな手を打ってもハグリッドがメンタルリセットすることは無かった。

 

 

 

 

そんな授業達と激闘を繰り広げている中、ホグズミードに行ける一回目の予定が発表された。

十月末、すなわちハロウィンの日だ。

 

【よりによってハロウィンかぁ……】

 

年月を感じられる掲示板にそう書かれているのを見て刀原は苦い顔をする。

 

【ハロウィンに何か嫌な事でもあったの?】

 

雀部が首を傾げながらそう聞いてくる。

 

【ああ……。まあ、聞いて驚け……】

 

刀原は語る。

 

【一年生の時はハロウィンディナーの最中にトロールが侵入したとかで大パニックになってな……。おまけに色々あってトロールと対峙するハメになった】

 

そう、刀原にとって初めてのハロウィンでウキウキだったのにトロールパニックで台無しになったのだ。

 

【確かハーマイオニーを助けに行くためだったっけ?】

 

【まあな。そして…去年は秘密の部屋を巡る一連の事件の幕開けだった】

 

後に 闇の帝王(笑)(ヴォルデモート)の仕業と判明する事件の最初の犠牲者*2が出たのもハロウィンだった。

 

【災難だったね……】

 

雀部は心底同情するような感じで刀原の肩を叩く。

 

【今年はきっと大丈夫よ……多分】

 

そう言って励ます雀部だったが。

 

【やめてくれ、フラグにしか聞こえねぇから】

 

刀原の脳裏は既に諦めモードになっていた。

 

 

そしてハリーも諦めムードになっていた。

ホグズミードに行けないからだ。

 

「ハリーは学校内に居なきゃいけないのよ」

 

ハーマイオニーの意見は確かに正論なのだがそれで納得いくなら面倒は無い。

 

「マクゴナガルに聞いてみろよ、ハリー」

 

ロンはそう言い、ハリーもやってみると返していた。

 

ハーマイオニーは呆れたように何かを言おうとしたが、クルックシャンクスが今晩の戦利品(蜘蛛の死骸)を持ってやって来た為言わずじまいとなった。

そこからクルックシャンクスを巡る一騒動が起きる。

 

なんの恨みがあるのか、はたまた猫がネズミを狙うのは当然の摂理だからなのか。

クルックシャンクスはロンのペットのスキャバーズを狙ったのだ。

 

スキャバーズはロンのカバンから逃走し、クルックシャンクスはそれを追いかける。

 

グリフィンドールの談話室で起きた小動物による生死をかけたチェイスは、約二十人の股をくぐった後、古い整理箪笥の下に潜り込んだスキャバーズの辛勝で幕を閉じた。

だが戦後処理とばかりに起きた飼い主達による口論は引き分けで終わった。

 

 

 

 

「許可証が無ければホグズミードは行けません。残念ですがポッター。これが最終決定です」

 

変身術の授業が終わったタイミングでハリーはマクゴナガルに交渉を試みた。

だがマクゴナガルはそう言ったため、調略は不首尾に終わった。

 

これで良かったのよという顔をするハーマイオニー。

それに怒りながら「ご馳走があるさ」と励ますロン。

「確かにハロウィンのディナーは最高だと聞いてます!」と目を輝かせて言う雀部。

「土産を沢山買ってきてやるから」と励ます刀原。

 

ディーン・トーマス等は許可証にダーズリー氏の偽造サインをすれば良いのでは? と言ったがハリーは先の交渉で「サインは貰えなかった」と言ってしまったため、その手はもう使えない。

『透明マント』を使用すればどうか? とロンが提案したが情勢がそれを許さない。

 

ハーマイオニーが「ダンブルドアが、ディメンターは透明マントもお見通しだとおっしゃっていたじゃない」と踏み潰し、雀部が「ブラックに殺されたいのですか?」とばっさりとトドメを刺した。

 

かくして、ハリーは一人寂しくホグワーツに残ることになった。

 

 

夜、ホグズミードから帰って来た四人は、夕食の前にハリーと合流した。

 

「持てるだけ持って来たんだ」

 

そう言ってロンはハリーの膝に鮮やかな彩りのお菓子を雨の様に降らせた。

 

「ホグズミードのどこに行ったの?」

 

ハリーがそう聞けばとりあえず、全部、としか答えないだろう。

ロンやハーマイオニーと行動を共にした刀原と雀部は、ホグズミードのあらゆる場所に行った。

 

魔法用具店『ダービシュ・アンド・バングス』

悪戯専門店『ゾンコ』

バタービールという飲み物がある『三本の箒』

等々……。

 

ハリーは郵便局がどうだの、ハニーデュークスの新商品がどうだの言う四人を見て聞きながら、いつか行く憧れのホグズミードに思いを馳せていた。

 

ちなみに、ハリーはルーピンの所でお茶会をして、先に 水 魔 (グリンデロー)を見たらしい。

 

 

今年のハロウィンは一段と気合が入っている。

とは刀原の感想だ。

そしてその理由は、ディメンターによって憂鬱で不安な気分に少なからずなっている生徒たちに少しでも良い思い出を、という学校側の嬉しい思惑があるのだろうと考えた*3

 

大広間には何百ものくり抜かれたカボチャが蝋燭で輝いており、何本もの燃えるようなオレンジ色の吹き流しが空を模した天井の下で泳ぐように漂っていた。

 

当然食事も素晴らしい。

 

ホグズミードに行ったロンやハーマイオニーはお菓子ではち切れそうだった*4のにも関わらず、全ての料理を御代わりをしていた。

 

先ほどハリーと茶会をしていた際、スネイプが直々に調合した苦い薬品を飲んだルーピンも実に楽しげだったが、ハリーは時々ルーピンの方を見ていた。

 

宴の最後はゴーストたちによる余興だった。

グリフィンドールの寮付きゴースト『ほとんど首無しニック』は自身が受けたしくじった打ち首の場面を再現し、生徒に大受けした。

 

相変わらず刀原と雀部の周りに、ゴーストは寄り付こうとしてこなかったが。

 

 

大盛り上がりで宴は終わった。

後はふかふかのベットでゆっくりと寝るだけ。

 

全ての生徒がそう思い、刀原達五人も他のグリフィンドール生と同様に寮へ向かった。

 

グリフィンドール寮に入るためには『太った婦人』の肖像画に向かって合言葉を言わなければならない。

その為当然ながら『太った婦人』の肖像画がある廊下まで向かうのだが、その廊下は生徒がすし詰め状態だった。

 

「まさか、誰も合言葉を覚えてない。そんな訳ありませんよね?」

 

雀部が不思議そうに言う。

 

「そんな訳ないと思うが……。確か合言葉は『フォルチュナ・マジョール( た な ぼ た )』だったよな?」

 

刀原が今の合言葉を言う。

 

「何でみんな入らないんだろう?」

 

ロンが怪訝そうに言う。

 

「通してくれ」

 

そう言ってパーシーが生徒の人波をかき分けて行き、肖像画の元に向かう。

 

そして流れる沈黙。

 

「誰かダンブルドア先生を呼んで。急いで」

 

パーシーが突然鋭く叫ぶ。

ざわざわと頭が動き、後列の生徒たちが爪先立ちになる。

 

「何事かの?」

 

一、二分もしないうちにダンブルドアがやって来る。

マクゴナガルも当然ながら一緒にだ。

 

生徒たちが彼らの為に道を開ける。

刀原達五人も把握のために肖像画の近くまで行った。

 

「ああ、なんてこと……」

 

ハーマイオニーがそう言ってハリーの腕をつかむ。

 

つい先ほどまでグリフィンドール寮の番人だった『太った婦人』は肖像画から姿を消し、絵は滅多切りにされていた。

キャンパスの切れ端が床に散らばっており、絵の大部分が切り取られているという無残な姿になっていた。

 

ダンブルドアはそんな無残な肖像画の惨状を見るなり暗い深刻な目で振り返った。

その時ルーピン、スネイプの両名も駆け付けていた。

 

「城中のゴースト達に連絡を。『婦人』を探し出さなければならん」

 

ダンブルドアがこう言う。

 

「その必要はありませんよ、ダンブルドア校長。『婦人』ならあそこに居ます」

 

雀部がそう指をさす。

流石の動体視力だった。

 

教授陣はもちろん生徒たちもその場に雪崩れ込む。

先に瞬歩で先行した刀原達が『婦人』を()()する。

 

「おお『婦人』。大丈夫かの?……一体誰がこんなことを?」

 

周囲の人々を代表してダンブルドアが婦人に聞く。

聞かれた『婦人』は犯人の名を言う。

 

「……あいつです、あいつが居るんです。この城に。シリウス・ブラックが!」

 

そう、犯人はシリウス・ブラックだったのだ。

 

 

おいおい、マジか。

 

yappa、halloweenhanorowaretennna (やっぱ、ハロウィンは呪われてんな)

 

刀原が呟いた言葉(日本語)は、雀部だけが理解した。

そして同時に、吐いた溜息も理解できた。

 

 

 

 

 

ホグワーツに非常事態宣言が発令された。

 

ダンブルドアはグリフィンドール生に大広間にUターンするように言い渡し、十分後にはグリフィンドール以外の各寮の生徒達も大広間に集まった。

 

「一体何事なんだポッター!?」

 

マルフォイがスリザリンの面々を引き連れ、ハリー達のいる場所にやって来る。

 

「マルフォイ、実はシリウス・ブラックがこの城に居るみたいなんだ」

 

「な!んんっ。それは本当かポッター」

 

マルフォイは一瞬驚きの声を上げそうになるが踏みとどまり、小さく聞いてくる。

ハリーはマルフォイの問いに頷きで返す。

蒼白になるマルフォイ。

 

避難訓練などではない(これは演習にあらず)ということを理解したらしい。

 

「グリフィンドールに来ていいの?」

 

ハリーがマルフォイにさりげなく聞く。

何度も言うが、グリフィンドールとスリザリンには積年の因縁があるのだ。

 

「そんなことを言ってる場合じゃないだろうポッター。僕たちは狡猾なスリザリン。こんな如何にも緊急事態な状況なら、グリフィンドールにいる最高戦力(刀原と雀部)を頼るのは当たり前だ。安全を得るためならグリフィンドールのエリアに来ても損では無い」

 

そう言うマルフォイ。

要するにプライドより安全を取ったのだ。

おまけに仲間も引き連れているあたり、その庇護も含めての算段である。

中々に戦略的である。

 

一年生の時点では全く考えられないことである。

 

「……いざという時には頼りにするよマルフォイ」

 

ハリーがそう言う。

 

「ふん、情けないことを言うな。足手纏いになるなよポッター」

 

マルフォイもそう言い返す。

傍から見れば完全に仲良しである。

 

グリフィンドールの面々はあっけに取られたが、平然とハリーと共に雑魚寝体勢に移ったマルフォイを止めることは無かった。*5

 

 

仲良くお泊り会状態になった一部生徒たちを他所に、ダンブルドアの指揮でブラック包囲網を作っていく。

 

「先生たちで、城の中をくまなく捜索せねばならん」

 

ダンブルドアはそう告げ、それを合図に各教授たちが動き出す。

 

「さて、気の毒じゃが…安全の為じゃ。皆、今夜はここで寝泊まりすることになろうの。監督生の諸君は大広間の入り口に立ってもらうかの、指揮は首席の二人に任せるとしよう。何か不審な事があれば直ちにわしに知らせるように」

 

ダンブルドアはそこまで言ったあと、考え込み。

 

「……トーハラ君とササキベ嬢は居るかの?」

 

と聞いてきた。

 

捜索隊か、防衛戦力か。

どちらか分からないが、生徒の中でも最高戦力に位置する二人を使わない手は無いのだろう。

 

招集を受け、スッと立ち上がる刀原と雀部。

 

「そ、そんな……」

「頼みの綱が……」

 

すると小さく聞こえる声が多数上がる。

頼れる盾がどっかへ行く気分なのだろう。

 

ダンブルドアにも聞こえたのかふふっと笑う。

 

「君たちにはわし等と共にブラック捜索の手伝いをお願いしよう、と思っておったのじゃが……。君たちを大広間から出すと一部の生徒たちからブーイングが来そうじゃの。……よし、監督生は大広間の入り口の内側を、トーハラ君とササキべ嬢には入り口の外側を守ってもらうとしよう。よろしいかの?」

 

「了解しました」

「お任せください」

 

刀原と雀部はそう頷く。

 

周りに居た生徒たちも安堵の表情だ。

 

 

「では皆、よろしく頼む」

 

「「「はい」」」

 

ダンブルドアの号令で各員は役割を果たすため行動を開始した。

 

 

 

 

【ブラックは見つかるでしょうか?】

 

【無理だな、おそらく寮に入れなかった時点で撤退しているはずだ】

 

【やっぱり、そうですよね。いつまでもグズグズいるはずありませんよね】

 

【ああ、その程度も分からん奴じゃない。分かってないならこの城に侵入する前に御用になってるはずだからな】

 

【それは、英国魔法省の警務部が無能じゃなければの話。では?】

 

【そんな可能性信じたくないがな】

 

 

刀原と雀部が油断しているかのように平然と話す、という釣りをしているが全くかかる様子がない。

時刻は既に日付を跨いでおり、雀部などは「ふあぁ~」とあくびをする始末だ。

 

大広間にやって来る者と言えば、びくびくしながら刀原と雀部の傍を通るゴーストと、一時間ごとに何事も無いかどうか確かめに来る教授達だった。

 

もう日付は11月になっているため、深夜の大広間の外は案外冷える。

そんな冷える場所で門番代わりになっている刀原と雀部を案じてか、それとも申し訳なさからか。

 

おそらくその両方だろう。

やって来る教授は必ず差し入れとして温かい飲み物を持ってきてくれた。

 

ーーーーーーー

 

 

「お疲れ様です、マクゴナガル教授。見つかりましたか?」

 

「いいえ、おそらく見つけられないでしょう。それでも明日の朝までは捜索を続けます……。お二人にも、迷惑をかけます。紅茶を持ってきたので、お飲みなさい」

 

「「ありがとうございます」」

 

 

ーーーーーーー

 

 

「お疲れ様です、フリットウィック教授」

 

「おお、お二人とも、お疲れ様です。生徒だというのに、こんな役目を押し付けて申し訳ありませんね」

 

「いえいえ、そんなことはありません」

 

「ありがとうございます。差し入れを持ってきたのでこれで温まってください」

 

「「いただきます」」

 

 

ーーーーーーー

 

 

ある意味衝撃的だったのは、やはりルーピンとスネイプだった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

大広間の外で見張っていた二人に向かって来た、フードを被った者が一人。

 

【ついに来やがったな】

 

【ええ、顔は見えませんが。教授なら堂々と来るはずですからね】

 

【行けるか?】

 

【勿論】

 

【さすが。んじゃ、アレで行くぞ】

 

二人はそして瞬歩で一気に接近する。

瞬歩の特性上、フードの者からすれば大広間の入り口前で陣取っていた二人が、突如消えたように映っただろう。

それこそ油断を誘う二人の罠。

 

「ブラック」

 

「覚悟」

 

正面から刀原。

背後から雀部。

 

息の合った二人の同時抜刀攻撃。

それは吸い込まれるようにフードの者に向かう。

 

「私だ、ルーピンだ!」

 

そしてフードの者……もといルーピンのカミングアウトと降参で止まった。

 

 

「ルーピン教授か……。紛らわしいことしないでくださいよ」

 

「あともう少しで犠牲者が出るところでしたよ……」

 

「いや、すまないね。つい出来心で」

 

ルーピン曰く、まだ年も若い刀原と雀部の実力を確かめるのと、二人が油断しているのではと思い、脅かそうとしたらしい。

そして消えたことで逃げたと思ったらしい。

 

ところがそれは大きな誤りであった。

 

二人は油断などしておらず、逆に手ぐすね引いて待っていたのだ。

結果、油断していたのはルーピンであり、返り討ちにあったという訳だ。

 

「いやはや末恐ろしかったよ。ハリー達が頼りにするのも分かるというものだ。君たちならブラックも仕留められるだろうね」

 

そう言ってルーピンは、二人にココアの差し入れをしたのだった。

 

 

 

【霊圧感知すれば良かったですね】

 

【あ、忘れてたわ。あぶねぇあぶねぇ】

 

【まあ、私も油断作戦がまんまと決まって嬉しかったので、完全に失念してましたが】

 

 

あわや犠牲者が出るところだった。

 

 

ーーーーーーー

 

 

「二人ともご苦労な事ですな」

 

「あ、スネイプ教授。お疲れ様です」

 

「ブラックは見つかりましたか?」

 

「逆に二人は見つかると思っているのですかな?」

 

「いや、全く」

 

「もう逃げてると思いますが?」

 

「でしょうな……」

 

チラリと二人を見るスネイプ

 

「何か?」

 

刀原がそう聞けば、スネイプは答える。

 

「なに、諸君らはただの生徒で監督生でも首席でもないというのに、わざわざこのようなことをしなくても…と思ったのだよ」

 

てっきりまた嫌味かと思っていた二人は驚く。

 

「私たちが高く評価されその上での判断だと思っています。それに生徒の皆を守るためならどうという事ではありません」

 

「逆に協力を申し出ようかと思っていたので。余計なお世話かと思いますが」

 

二人がそう言えば、スネイプはフンッと息を吐く。

 

「あまり調子に乗らないことですな。しかしまあ、差し入れ位は与えても良いかと思うがね」

 

そう言ってスネイプは二人に紅茶を差し入れた。

 

 

【スネイプ教授って、やっぱり不器用な方(ツンデレ)?】

 

【おそらくな】

 

 

ーーーーーーー

 

 

丑三つ時も過ぎ、もう朝になる三時頃。

大広間の入り口にこっそりとやって来る者が居た。

 

誰あろう。

ダンブルドアである。

 

先ほどルーピンを返り討ちにしかけた二人は抜かりない。

こっそりと寄ってきたダンブルドアに対し「「お疲れ様です。ダンブルドア校長」」と言った。

 

「おお、バレてしまったの。二人とも流石じゃなぁ」

 

「伊達にホグワーツ三年目ではありませんよ」

 

「先ほどブラックの振りをして来たルーピン教授を仕留めそうになったので、霊圧感知は怠りません」

 

ダンブルドアの賛辞に平然と答える二人。

 

「そんなことが出来るホグワーツ生は、君たちだけじゃよ」

 

ダンブルドアはそう答えた。

 

「ところでダンブルドア校長。ブラックの手掛かりは依然ありませんか?」

 

「うむ、そうじゃの。ブラックがいつまでものこのこと残っているとは思っておらなんだ。ショウも同じじゃろ?」

 

「まあ、そうですね。少なくとも僕たちはその意見で一致していますよ」

 

やはりブラックは逃亡に成功したらしい。

ダンブルドアの意見に刀原達もそう思っていたと言えば「流石じゃの」とダンブルドアは誉めたたえた。

 

「吸魂鬼の介入が無かったのは、やはりダンブルドア校長が?」

 

「ああ、止めたとも」

 

「英断ですね」

 

「そうじゃろう」

 

ブラックから大広間を守るのではなく、ディメンターから守ることになったかもしれない。

その可能性がある以上、ダンブルドアの考えは正しかったと言える。

 

「さて、二人ともご苦労じゃった。ブラックがのこのこと戻って来ることは、とりあえず今日は無いはずじゃ。大広間でゆっくりと寝るとよかろう……」

 

ダンブルドアはそう言い、二人はダンブルドアが大広間から出ていくまではここにいると言った。

 

「では、用事をさっさと済ませてしまうかの。それと、改めて協力に感謝しよう。それと二人に十点ずつ与えるとしようかの」

 

 

ダンブルドアは微笑みながらそう言って、暫くしたら大広間から出て行った。

 

 

 

 

 

それから数日間。

学校はシリウス・ブラックの話題で持ち切りだった。

如何なる方法でホグワーツに入り込んだのか。

話に尾ひれがついてどんどん大きくなり、非現実的な手段まで言われるようになった。

 

ハリーにはマクゴナガルから警告があったらしい。

既に始まっているクィディッチシーズンの練習を行うかどうかだった。

しかしハリーにそれは愚問であり、最終的にはマクゴナガルも教授の護衛付きで許可した。

 

 

今シーズン最初の試合は、グリフィンドール対スリザリンの試合の予定だった。

しかしグリフィンドールはハッフルパフと対戦することに変わった。

スリザリンチームのキャプテンたるマーカス・フリントは、試合に向けて次第に悪くなっている天候を恐れたのだ。

 

「僕としては、天候など関係なく君からスニッチを奪える!と豪語したんだがな……」

 

マルフォイは『魔法生物飼育学』の授業の最中、ハリーにそう言った。

 

「マルフォイは不本意なのか」

 

ハリーが聞く。

 

「当然だ!どんな状況だろうと僕は負けない!」

 

高らかに言い放つマルフォイ。

 

上から目線だが「どうせ君もそう言うだろう」と続けるあたり、マルフォイはクィディッチに関してハリーに一定の評価をしている故の発言なのだろう。

 

「いいかポッター。君を倒すのはこの僕だからな」

 

マルフォイはそう言ってハリーの元を去る。

 

「それまで負けるなよポッター」

 

刀原が続ける。

 

「完全にツンデレですね」

 

雀部が評価する。

 

「誰がツンデレだ!あと僕の気持ちを()()するな!」

 

マルフォイが戻ってきてそう言う。

 

「代弁って言ったよ……」

 

ロンがマルフォイが滑らした言葉を指摘する。

 

「ありがとうマルフォイ。君のライバルとして頑張るよ」

 

ハリーが少し照れながら言う。

完璧に本音を言ってしまったマルフォイは数秒の後に開き直り「分ればいいんだ!」と言って今度こそ離れていった。

 

 

 

マーカス・フリントが逃げ出すのも無理はない。

クィディッチシーズン最初の試合は、かねてからの予報通り最悪の天気だった。

 

tyuusida、tyuusi!(中止だ、中止!)

 

刀原がそう日本語で叫ぶ。

 

mattakumotte、sonotooridesu !(全くもって、その通りです!)

 

雀部もそう日本語で叫んだ。

 

「なんて言っているのか分からないけど、この天候でもクィディッチをやる事に怒っているのならその通りだと思うわ」

 

ハーマイオニーはジト目になりながらそう言う。

 

「ちょっとぐらいの雨はへっちゃらよ」

 

朝食時、グリフィンドールチームはそう言ったらしいが、雨は「ちょっと」では済まされなかった。

 

風は突風、耳をつんざく雷鳴が響き渡り、観衆の声援は消される。

もはや台風である。

 

「正気の沙汰とは思えん」

 

「馬鹿です。言い方は悪いですが、馬鹿です」

 

刀原と雀部がようやく分かる言語( 英 語 )で言えばハーマイオニーも頷いた。

 

兎にも角にも試合は行われるが、まあ酷い。

 

何とか歓声を上げようとするが、風と雨で正面が向けないのだ。

当然正確な試合状況など分かるはずもない。

 

特にハリーはからっきしだった。

おそらく眼鏡が役に立ってないのだろう。

刀原と雀部は荒天時の訓練をしていた為、その状況を察した。

 

「ハーマイオニー、防水呪文を使えるか?」

 

「ハリーの眼鏡にかけるのね?分かったわ」

 

刀原がそう指示を出せば、ハーマイオニーは意図を把握してピッチに降りた。

 

【しょう君が行かなくていいのですか?】

 

【大丈夫だろ。俺が指示出さなくてもハーマイオニーなら行っていたしな】

 

刀原の読みは当たっていた。

ハーマイオニーが刀原達の元に戻って来た時には、ハリーの動きが良くなっていたからだ。

 

そして戦局が動いた。

ハッフルパフのシーカー、セドリック・ディゴリーがスニッチを見つけ、上空へ急上昇したのだ。

つかさずハリーも追いかける。

 

 

その時。

刀原が何かを察知する。

 

直後、ハリーが落ちてくる。

 

まず事前に察知していた刀原が動き、次にダンブルドアが動いた。

 

【縛道の三十七『吊星』!】

 

「『アレスト・モメンタム(動きよ、止まれ)』」

 

墜落しているハリーをダンブルドアが遅くし、刀原が用意した霊圧のクッションでキャッチした。

 

そしてやって来たのはディメンター。

 

「お灸をすえねばならんの」

 

「全くだ」

 

ダンブルドアは本気で怒っており、刀原もまた白髪になっていた(本気モードだった)

しかし、既に攻撃態勢に移行していた者が居た。

 

 

 

雀部雷華だ。

 

 

 

 

 

【雷鳴響け】

 

 

 

 

 

 

【『雷霆』】

 

 

 

 

 

特大の雷鳴が響き渡る。

雀部が持っていた斬魄刀が細身のロングソードに変わり、その剣は稲妻を纏っていた。

 

【落とせ雷霆】

 

雀部が縦に剣を振り下ろした直後、ディメンターに等しく落雷が直撃する。

焼き焦げたディメンターの完成だった。

 

【駆けよ雷霆】

 

雀部は剣を持って舞う。

 

優雅に。

可憐に。

 

しかし上空には落雷が駆け巡り、逃げ惑うディメンターを正確に追撃していた。

それは確実にディメンターを焼き焦がし、塵すら残さなかった。

 

「出番を取られたの」

 

「そうですね」

 

ダンブルドアも刀原も手は出さなかった。

 

 

そして雷鳴ではなくホイッスルが響く。

どうやらセドリック・ディゴリーがスニッチをキャッチしたらしい。

つまり試合終了だということだ。

 

 

「まあ、こんなところでしょうか?」

 

雀部がニッコリと笑ってそう言う。

 

「流石は雷華だな」

 

刀原もニッコリ笑った。

 

「やりすぎだ馬鹿」

 

「アイタッ」

 

そして優しく雀部の頭を杖で叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
マルフォイも同感だと言っていた

*2
人ではなく猫だったが

*3
まあ、それに文句を言うつもりは無く、もしろ企んだ真犯人(ダンブルドア)に拍手喝采を浴びせたいが

*4
雀部もそうなりかけたが【ハロウィンディナー】と刀原が囁いた為、鋼の精神で程々にしていた。

*5
双子は「「ツンデレって言うんだぜ、そういうの」」と茶化した




と言うわけで、オリキャラの始解の御披露目です。

名前が雷華ですし、あの副隊長の孫なので雷系の斬魄刀です。
雷系の斬魄刀って少ないので、色々と盛り込めそうで楽しみです。


感想、考察、ご意見、評価。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。



では次回は
炎の雷と守護霊
次回もお楽しみに




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