ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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友の仇
親の仇

いざ変えん

ただのネズミに。









死神とアズカバンの囚人編 決着と終幕

スキャバーズの正体は暴かれた。

その正体はピーター・ペティグリューだった。

 

背丈はハリーやハーマイオニーとあまり変わらず、てっぺんには大きな禿げがあった。

 

なるほどネズミだな。

刀原はそう思った。

 

そうであると踏んでいた刀原や雀部は驚かなかった。

だが、ハリーやハーマイオニー、スネイプは目を見開いていた。

 

そしてロンの驚き様は同情を禁じ得ないものだった。

今の今まで可愛がっていた*1ペットが、実は小汚い*2男だったのだ。

驚愕は一塩だった。

 

「やあ、ピーター。暫くだね」

 

三者三様の表情を皆がする中、ルーピンが朗らかに声をかけた。

 

「シ、シリウス……リ、リーマス……。友よ、懐かしの友よ……」

 

ペティグリューはそうオドオドと話す。

声までネズミのような声だった。

そして小物臭い。

 

「リーマス……君はブラックの言うことを信じたりしないだろうね?……あいつは私を殺そうとしたんだ」

 

「ピーター、二つ、三つ、すっきりさせておきたいことがあるんだが、君がもし」

 

「こいつはまた、私を殺しにやって来た!」

 

ペティグリューが突然ブラックを指差して金切り声をあげた。

 

「こいつはジェームズとリリーを殺した。今度は私も殺そうとしてるんだ。……リーマス、助けておくれ……」

 

「話の整理がつくまでは誰も君を殺そうとはしない」

 

「整理?」

 

ペティグリューはキョロキョロとあたりを見回し、窓とドアを確かめた。

 

「ああ、まだ完全に暴かれたわけではないからね。直、真相が明らかになるよ。ここにいるトーハラ君がそうしてくれるだろう」

 

ルーピンはそう言って刀原の方を見る。

 

「ええ、そうしましょう。……さて、スキャバーズはこの通りピーター・ペティグリューでした。つまり彼は今の今まで逃亡と隠遁の生活を余儀なくされていたことになります。本来の定説なら英雄として迎えられるのにも関わらずに。それは何故でしょうか?」

 

刀原は唯一の出入り口であるドアを塞ぎながら再び言う。

 

「怖かったからだ。こいつがわたしを狙って戻ってくると分かっていたからだ!」

 

「何故?一体何故()()()()()()()()()()()()()?」

 

「え?」

 

ペティグリューが答えれば刀原が聞き返す。

ペディグリューはそれを受けて間抜けな声を出した。

 

「貴方は定説では裏切り者であるブラックを一度は追い詰めた。たとえ返り討ちにあったとはいえ、皆は貴方を称えたでしょう。事実、貴方の死後にはマーリン勲等一等が贈られている」

 

「それはこいつが必ず戻ってくるからで、」

 

「ならばそう説明して守ってもらえばいい。多くの人はそう言うことならばと、貴方を庇護するでしょう」

 

「それは」

 

「貴方が今まで姿を隠していた理由。それはブラックをアズカバンに送ったからではない。ヴォルデモートの失脚に大きく関わっているからではないでしょうか?」

 

「……」

 

「大きく関わっているからこそ、貴方は逃亡したのです。それはブラックからでは無い。真相に気が付いた者から、そして未だ健在だというヴォルデモートの信奉者からだ」

 

 

「さて、ペディグリューはどのようにして関わっていたのか。そもそも事の発端はポッター家が狙われ、それを庇護するために『忠誠の術』という呪文を用い、ブラックが『秘密の守り人』となった事から始まっています。ブラックが守り人になったのは事実なのでしょう。そしてそのあと、守り人は変わっていたのではないでしょうか?そう、シリウス・ブラックからピーター・ペティグリューへと」

 

「「ペディグリューに?」」

 

ハリーとスネイプが聞き返す。

刀原は頷く。

 

「ペディグリューの評価はブラックを追い詰めるという局面まで、かなり悪いものでした。まあ簡単に言えば、強い者に居る腰巾着といった風にね。だからブラックはこう考えたのではないでしょうか……自分を囮とし、目暗ましとしてペティグリューを守り人とする。そうすればブラックが狙われると。……完璧な作戦でしたが、ブラックは二つの失態を犯した。一つ目は秘匿性を重視するあまり、もしものことに備えて守り人を変更したことを信頼できる他の人に教えなかった事。二つ目は変更先が実は既に裏切っていることに気が付かなかった事……」

 

刀原はここまで言った後、ペティグリューを見る。

ペディグリューは口をパクパクしていた。

 

「ピーター・ペティグリュー。貴方が裏切り者です」

 

 

 

 

 

「正気の沙汰じゃない。君はどこか大きな勘違いを……」

 

「ではそうだという証拠や証言をどうぞ」

 

「……君はこいつからそう言えと言われたからで、」

 

「既にブラックの生殺与奪は握っています。そんな状態でそれを実行するとでも?」

 

「……」

 

「ちなみに操られてもいませんよ?ブラックが僕の前にノコノコ現れたらその時点で捕縛してます。さっきの様にね」

 

ペディグリューは完全に追い詰められた形となった。

周りを見渡しても逃げ道はドアしか無く、それは既に刀原が抑えている。

ブラック、ルーピンの両名を簡単に制圧する者を突破出来るとは思ってないだろう。

 

おまけにブラックは未だ捕縛されたままとしても、ルーピンとスネイプが居る。

 

だが相変わらず窓やドアに視線が移るのはそれを諦めていない証拠だ。

まあ、たとえ逃げられたとしても二度と表には出れなくなるだろうが*3

 

「とりあえず彼は開放してもいいよね?」

 

「……まあ、いいだろう」

 

雀部がそう刀原に聞けば、渋々と言った感じで頷く。

 

「ブラック。一応言っておきますが、妙な真似をしたら今度は失神させますのでそのつもりで」

 

刀原はブラックにニッコリ笑いながらそう警告する。

 

「……分かった。そんな真似はしないと誓おう」

 

ブラックは引き攣った顔でそう返す。

そしてブラック(ピーター絶対殺すマンの狂犬)解放された(野に放たれた)事で、ペディグリューはいよいよ追い込まれた。

 

「ショウ……。ちょっと聞いていい?」

 

ハーマイオニーがおずおずと口を開く。

 

「もちろん。どうぞハーマイオニー」

 

刀原はそう返す。

 

「えっと……仮にショウの推理が正しいのならば、すきゃ、この人は『例のあの人』の手先ってことよね?」

 

「その通りだよ」

 

「でも、ハリーと同じ寝室で三年間も一緒だったわよね?なら、なんで今までハリーを傷つけなかったの?」

 

「確かにそうだね」

 

ハーマイオニーの指摘に刀原も頷く。

ペディグリューは正に救世主現るといった感じで顔を輝かせる。

 

「その通りだよ!私は今までハリーの髪の毛一本たりとも傷つけていない!それが、」

 

「折角の指摘を潰すようだがハーマイオニー。それには理由がある」

 

ペティグリューの言葉を遮り、刀原が言う。

 

「ヴォルデモートは既にペティグリューと一緒で十二年間も行方不明で、死んだ、とも言われている。どちらにしても半死半生だろう。そしてそのままそうなり続けるかもしれない。そんな奴の為にハリーを傷つけるなんてリスク、ましてや今世紀最強と称されるアルバス・ダンブルドアの目と鼻先でする筈が無い。大方、奴が万が一戻って来た際の手土産にするつもりだったんだろう……」

 

「簡単でしょうね。友人のネズミが、実は裏切り者だと誰も想像しないでしょうから簡単に襲えるでしょうね。そしてハリーを差し出せば、ヴォルデモートを裏切ってはいないという確固たる証拠にもなります。実に姑息で、汚くて、外道です」

 

「ショウとライカの推理は正しいだろうね」

 

刀原と雀部の言葉にルーピンも同意見だという。

 

「じゃあ、なんで僕の家に来たの?」

 

「それはな、ロン。魔法使いの家で過ごせば情報が容易く手に入るからだ。ロンの家を選んだのは……おそらくハリーと同学年になりそうな子供が居たからかもな。もちろん組み分けの事もあるからハリーに近づけるかは賭けだったろうが……いや、それも計算に入れた可能性は大いにある。なんせハリーの両親はグリフィンドールだった。ハリーもグリフィンドールになるかもしれないから、代々グリフィンドールのウィーズリー家を選んだのかも」

 

おそらく図星だったのだろう

ペティグリューは首を振ることしかしていなかった。

 

 

 

 

「信じてくれ」

 

掠れた声でブラックがそう言った。

 

「信じてくれ、ハリー。私は決してジェームズやリリーを裏切ったことはない。裏切るくらいなら私が死ぬ方がマシだ」

 

ようやくハリーはそこで、ブラックを信じることが出来たらしい。

ハリーが頷くと、ブラックは目を輝かせ、ホッとしたように大きく肩が上下する。

 

反対にガックリと膝を付いたのはペティグリューだった。祈るように手を握り合わせ、這い蹲っている。

まるで死刑判決を受けた様だった。

 

「だめだ!シリウス、私だ……ピーターだ……君の友達の……まさか君は……」

 

「私のローブは十分に汚れてしまった。この上お前の手で汚されたくはない」

 

ブラックが蹴飛ばそうとすると、ペティグリューは後ずさりする。

 

「リーマス!君は信じないだろうね………。計画を変更したら君には話すだろう?」

 

「シリウスが私をスパイだと思っていたのならば、話さなかったのも理解できる。そうだろう?」

 

「すまなかった、リーマス」

 

「気にするな。我が友、パットフット」

 

ルーピンはにこやかにそう言った。

 

「その代わり、私が君をスパイだと思い違いをしたことを許してくれるか?」

 

「もちろんだとも、我が友」

 

「そう言う訳だ、ピーター」

 

蔑むような目で、ルーピンはペティグリューを見た。

それを受け、ペティグリューはルーピンに伸ばしかけていた手を引っ込める。

 

「セブルス。君は、シリウスを憎んでいた筈だ………。強い恨みがある筈だ……」

 

「その通りだ、そして貴様にもな。まずは貴様から先に始末するとしよう」

 

スネイプとジェームズ等とは確執があるとは思っていたが、やはりあったか。

刀原はハリーを上手く誘導して、スネイプのうざったい嫌がらせを止めさせるか、と企むことを決意した。

 

「ロン……私はいい友達、いいペットだったろう? 私を殺させないでくれ、ロン。お願いだ……君は私の味方だろう?」

 

「自分のベッドにお前を寝かせてたなんて!」

 

「優しい子だ……情け深いご主人様……殺させないでくれ……私は君のネズミだった、いいペットだった……」

 

「人間の時よりネズミの方がサマになるなんていうのは、ピーター、あまり自慢にはならないな」

 

ブラックが冷たく言う。

ロンは折れた脚を痛みを堪えながら、ピーターの手の届かないところへと捻る。

 

「優しいお嬢さん……賢いお嬢さん……貴女は、貴女ならそんなことをさせないでしょう? 助けて……」

 

ハーマイオニーは怯えた顔で、壁際まで下がった。

 

年頃の少女に近付く男。

ただの変態である。

 

「美しいお嬢さん、貴女は賢く、そして強い……。私を殺人鬼から守っておくれ……助けておくれ……」

 

「私の剣は貴方にみたいな外道の為に振るわれるほど安くはありません。貴方など、守る価値すらない。さっさと罪を認めて裁きを受けなさい」

 

雀部は冷徹な目で見ながらそう吐き捨てる。

いつも笑みを絶やさず、優しい雀部とは思えない発言から、よほどなのだろう*4

 

 

「あぁ、ハリー……君は……君は両親の生き写しだ。顔は全体的にジェームズで、目はリリーだ。そっくりだ……」

 

ペディグリューは最終的に、あろうことかハリーにすり寄っていき、命乞いをした。

面の皮が厚い下衆だと誰もが思った。

 

ブラックとスネイプが、ハリーの間にペティグリューの間に割って入る。

確執がある筈だが共通の敵がいる影響で、不思議と息はピッタリとなった。

 

「ハリーに話しかけるとは、どういう神経だ!?この子に顔向けが出来るのか!?よりによって、ジェームズとリリーの事を話すとは!どの面下げて出来るんだ!」

 

「ハリー……君もご両親に似て優しいのだろう?助けておくれ……。ジェームズなら私に情けをかけただろう……」

 

ルーピン、ブラック、スネイプの3人は大股にペティグリューに近付く。

そしてペディグリューの肩を掴み、床の上に仰向けに叩き付ける。

ペティグリューは座り込んで、恐怖にヒクヒク痙攣させながら3人を見つめた。

 

「お前は、ヴォルデモートにジェームズとリリーを売った。否定するのか?」

 

ブラックが体を震わせながら言う。

するとペティグリューがワッと泣き出した。

 

おぞましい光景だ。

育ち過ぎた、頭の禿げかけた赤ん坊みたいな感じで見るに耐えない物だった。

 

「シリウス、リーマス。私に何が出来たって言うんだ?闇の帝王は……君達には分からないんだ。あの方には、君の想像もつかないような武器がある。怖かったんだ……私は勇敢じゃなかった。やりたくてやったわけじゃない……闇の帝王が無理矢理……」

 

「嘘を付くな!ジェームズとリリーが死ぬ1年も前から、お前は奴に密通していた!その少年の推理通り、お前がスパイだった!」

 

「あの方は――あらゆる所を征服していた!あの方を拒んで、何が得られただろう?」

 

「史上最悪の魔法使いを拒んで、何が得られたかだと?」

 

シリウスの顔は、凄まじい怒りに満ち溢れていた。

 

「それは何の罪も無い人々の命だ!ピーター!!」

 

「君には分からないんだ!シリウス!!」

 

ペティグリューは情けない声で訴えた。

 

 

ついに万策尽きたかにように見えたペディグリューは、最後の砦とばかりに刀原の下へ駆け寄った。

 

「トーハラ君と言ったね……?確かに君の言う通り、私はジェームズ達を裏切った」

 

「罪を認めるんですね?」

 

「仕方がなかったんだ。私の命の危機だったんだ。君なら分かってくれるよね……?」

 

ペディグリューは懇願するように言った。

 

「いや、まったく」

 

「え」

 

「迫られたのなら、その場は上手いこと切り抜けたり、スパイになったふりして二重スパイになるなど色々出来たはずでは?」

 

「そ、それは……」

 

「貴方に罪の意識や申し訳なさがあったなら、とっくの昔に姿を現して自白すればよろしいかったのでは?まあ、そのあとアズカバンに放り込まれるでしょうが……」

 

「……」

 

「そもそも友を裏切ること自体、僕にはあり得ませんし、理解できません」

 

敵に命乞いするより、如何にして道連れにするか一太刀食らわせるかを考えるだろう。

刀原が続けそう言えば、ほぼ全員が苦笑いした。

 

 

「お前は気づくべきだった」

 

ルーピンは静かに言った。

 

「ヴォルデモートの信奉者ではなく、裏切った代償として我々が殺すと。ではさらばだ、ピーター」

 

ルーピンとブラックが杖をあげる。

しかし、何も出来なかった。

刀原が介入したからではない。

 

「やめて!」

 

ハリーがそう叫んだからだ。

 

「殺しちゃ駄目だ」

 

「ハリー……。このクズのせいで君は両親を失ったんだぞ。君もその時死んだとしても、平然とそれを眺めていた筈だ」

 

「分かってる」

 

ブラックが唸るように言うが、ハリーの意志は揺るがなかった。

 

「こいつはアズカバンに行けばいい。僕のお父さんは、親友がピーターみたいな者の為に殺人者になることは望まない筈だから……」

 

ハリーはそう言い放った。

 

「ハリー……。本当に良いのかい?」

 

「ポッター……」

 

ルーピンとスネイプが探るように聞くが、ハリーは頷いた。

 

「では、とりあえず捕縛しておきましょうか。縛道の六十三『鎖条鎖縛』」

 

雀部が一連の流れの後に鬼道を放つ。

そしてそれは吸い込まれるかのようにペディグリューを捕縛する。

 

「それではホグワーツ城に戻りましょう」

 

雀部の言葉に全員が頷いた。

 

 

 

 

捕縛したペディグリューを引っ立てながら、全員はトンネルを戻り、城のほうに戻っていった。

やがてトンネルは終わり、暴れ柳の根本から外に出た。

辺りは完全に夜で、城の窓から灯りが漏れている様子は美しい。

 

ハリーは移動中、ブラックと話し込んでいた。

内容は聞こえなかったが、ハリーが嬉しそうな声をあげていることから良いことがあったのだろうと思った。

 

そんな俺には底知れぬ嫌な予感がしており、盛んに首をかしげていた。

だが暴れ柳からも離れたことで、もう大丈夫だろうと思い、ホグワーツにいる他の教授陣や生徒たちにどうやって説明しようかと悩み始めた。

 

そして校庭を歩いていると、少しだけ周りが明るくなる。

咄嗟に振り向く。

 

()()だ。

 

「いかん!」

 

時既に遅く、ルーピンは満月を見てしまっていた。

 

ルーピンは唸り声をあげ、狼人間に変身した。

そしてそのまま近くにいたハリー達に襲い掛かろうとした。

ブラックは雀部と共にペディグリューを押さえていたから間に合わない。

 

咄嗟にスネイプが自らを盾にしてハリー達を守ろうとする。

やはりこの人も先生なのだと実感した。

 

「縛道の四『這縄』!」

 

ルーピンがスネイプに攻撃しようとした瞬間、縛道で動きを止める。

 

「グルルルル」

 

「ルーピン教授!」

 

話しかけるも返事はやはり無い。

チラリと周囲を見る。

 

ハリーとロン、ハーマイオニーは、スネイプが既に城へ避難させようとしていた。

ブラックと雷華は少し遅れているが、泣き喚いているペディグリューと移動しようとしていた。

 

俺の役目は、ルーピンをここで止めること。

 

「そっちは任せました!」

 

そう言うとスネイプと雷華から了承の言葉が来た。

 

 

 

「ガァアアア!!」

 

ルーピンが襲い掛かってくる。

無傷のまま制圧する*5には殺傷力が高い鬼道や始解は出来ないし、打撃もあまり宜しくない。

さて、どうするか……。

よし。

 

浅打の(刃がない)まま抜刀して迎え撃つ。

 

「吹き飛べ『切り払い』!」

 

霊圧を込めたこの技は、本来は敵を切りながら吹き飛ばす技なのだが、俺の斬魄刀の性質上ルーピンを切ること無く吹き飛ばす。

 

近くの大岩に激突するルーピン。

 

「縛道の三十『嘴突三閃』!縛道の六十二『百歩欄干』!」

 

間髪入れず縛道を撃ち込む。

 

俺はルーピンを岩に縫い付ける方法を考えたのだ。

 

そして狙い通りに縫い付けることには成功するも、完全制圧には程遠く、ルーピンは岩ごと動こうとする。

 

しょうがねぇな。

 

「たんこぶぐらい、許して下さいね!」

 

跳躍し、そのままがら空きの脳天に一撃叩き込む。

ルーピンはぐらりとした後、沈黙したのだった*6

 

 

 

 

刀原は完全に沈黙したルーピンを見て一息つく。

その直後。

 

「「「うぁあああああ!」」」

 

という絶叫が聞こえてくる。

ハリー達の声だ。

 

それを聞きいた刀原は急いで彼等の元へ向かった。

そして目撃した。

彼等に、膨大な数の吸魂鬼(ディメンター)が迫っているのを。

 

顔面蒼白のハリー達を守らんと、悲痛そうな顔をしてるスネイプがディメンターに杖を向けて呪文を唱えているように見えるが、流石に多勢に無勢のようだ。

 

そして端ではハリー達と同じく顔面蒼白のブラックと、険しい顔をしている雀部が、ピーピー喚くペディグリューを連れながらハリー達の元に駆けつけている様子が見えていた。

 

「ライカ!八十八番でいくぞ!」

 

【分かった!】

 

名前を叫び、数字を叫べば完璧に把握してくれる。

 

「「破道の八十八『飛竜撃賊震天雷砲』! 」」

 

放った鬼道は何体かのディメンターを焼却して、真っ直ぐに進む道を作る。

そしてそこを瞬歩で駆け抜け、刀原はハリー達の元に合流することに成功した。

 

 

ディメンターは感情が無い筈だが、同族を焼却されたことに少なからず恐怖を抱いているようだった。

しかしどうやら此処まで来て撤退はないらしい。

 

ジリジリと迫ってくる。

刀原の後ろにいるご馳走に目が眩んでいるのだろう。

 

だがここは食事場ではなく処刑場なのだ。

 

 

ikeruka?(いけるか?)

 

motironn!( 勿 論 !)

 

刀原と雀部は互いに頷き合う。

 

 

 

「万象一切両断せよ」

「雷鳴響け」

 

 

 

 

 

「『神殲斬刀』」

「 『雷霆』」

 

 

 

そして同時に始解した。

 

 

 

「切り開くぞ」

 

「うん」

 

言葉は少なくて良かった。

 

 

「一掃せよ『陸薙』」

 

「 爆ぜよ『雷陣』」

 

 

刀原が横薙ぎに霊圧を込めながら最もディメンターがいる方向に一閃し、雀部が雷霆を一旦地面に突き刺したあと回転する。

 

後にハリー達から「驚愕と頼もしさがあったけど、何が起こったのか分からなかった」という証言を貰うこの一撃の結果、ディメンターは全滅こそしなかったが、大幅に数を減らした。

 

「後は撤退させるだけです!」

 

雀部が凛とした響く声でそう言った。

 

「「「「エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ来たれ!)」」」」

 

守護霊の呪文で出てきたのは(刀原)雷鳥(雀部)牡鹿(ハリー)牝鹿(スネイプ)

 

四匹は既に逃げ腰になっていたディメンターを、文字通り蹴散らしながら駆け回る。

 

やがて辺り一面を埋め尽くしていたディメンターは一匹たりとも残らず逃げ去り、刀原と雀部は入念に周囲を見渡したあと、ホッと一息ついたのだった。

 

 

 

 

 

戦闘中でもペディグリューの身柄は拘束されたままだった。

 

その為、凶悪犯シリウス・ブラックの罪は冤罪であり、その冤罪を仕向けた真犯人は勇敢で哀れな被害者であった筈のピーター・ペティグリューだという事が、白日の元にさらされた。

 

そして死んだ筈のペディグリューはちゃっかり生き延びており、今は失神して鬼道で捕縛されたまま転がされているという事態になった。

 

深夜になっていたのにも関わらず叩き起こされた教師陣達は、まずブラック(凶悪犯)杖を向け(何故此処にいる?)た。

次にペディグリュー(死んだ筈の人間)首をかしげた(何故生きてる?)が。

 

そして顔面蒼白のハリー、ロン、ハーマイオニーをとりあえず医務室に叩き込んだ。

 

教授達はまさに混沌としか言えない目の前の光景に*7頭が真っ白になっている様だった。

 

その為、何故か一緒にいて、自分達と同様に戸惑いから完全に抜け出しておらず、かつ私怨を挟みそうなスネイプに聞くより、何故か平然としており、基本的に中立を保つであろう刀原と雀部に事情を聞くことにしたらしい。

 

そしてダンブルドアがいつの間にか現れたことで、教師陣もひとまず正気には戻った。

戸惑いを見せるマクゴナガル達をよそに、ダンブルドアは静かに現状を確認していく。

 

そこでは此処でも自らの推理を語る刀原がいた。

 

 

あらかたの確認を終えたダンブルドアは、どうやら刀原の推理が真実だと確信したらしい。

即座にペティグリューの身柄を雀部から引き継ぐ形で確保し、今度はスネイプとブラックにも事情を説明するよう求めた。

 

スネイプはなにやら言いたげな感じだった。

だが終始、目が笑ってない満面の笑み(妙な真似したらどうなるか分かってるよね?)を刀原と雀部がしているのを見て苦笑い(了解)しながら証言していた。

 

最後にダンブルドアは、未だ戸惑いと衝撃から抜け出せない様子のマクゴナガル達に刀原の推理を支持することを表明。

 

マクゴナガル達も刀原に幾つかの質問をした後、それしか状況説明のしようがないことを確認。

 

かくして全英を驚愕させることになる事実と真実を、魔法省に報告したのだった。

 

 

 

 

 

凶悪犯シリウス・ブラック 実は冤罪であった !?

 

という大見出しを飾った一報にホグワーツのみならず英国魔法界全体に激震を走らせた。

 

当初は英国魔法省は事実では無い、としていた。

英国魔法界を取り仕切る者として、自分達は絶対正しいとしたい(しておきたい)魔法省に大きな過ち( 冤 罪 )があったなど、認められるはずがないからだ。

 

しかし真犯人であるピーター・ペティグリューの存在が決定的であり、ならば失態を隠蔽しようするのが定石。

英国魔法省は早速隠蔽工作をしようとするも、新聞に今回の真相を見破った少年の推理内容が載った事でそれも不可能になった。

 

ぐうの音も出ないものだったからだ。

 

おまけにその少年は日本からの留学生であり、そのバックには日本魔法省と護廷十三隊がいる。

 

日本魔法省に報告されるのは百歩譲ってしょうがないとはいえ、隠蔽しているそれを国際魔法使い連盟の会議場等で「あ、そう言えば……」的な世間話感覚で出せれてはたまったものではない。

 

ただでさえヤバそうなスキャンダル(下の何人かが首になる話)なのに、それを国際的な一大スキャンダル(上を含む大勢の首を捧げなくてはならない話)にされれば魔法省の今後の信頼に関わる。

 

当然それを押さえるにはそれ相応の代償(大臣以下総辞職)を払わなくてはならないだろう。

 

これら諸々が決定打となり、魔法省は真実を大衆に知らせざるを得なくなってしまったのだった。

また、隠蔽工作の件もバレた事で、現在魔法省はてんやわんやの大騒ぎとなったのだった。

 

 

 

 

 

そんな政治的判断(保身と給料)によってブラックは無罪となり、かつ謝罪金をたんまり貰うことになった。

ペディグリューはマーリン勲章の剥奪とアズカバンで余生を過ごすことになった。

 

そしてルーピンは辞表を提出した。

 

曲がりなりにも生徒を襲ってしまった*8ことに加え、()()()()()()スネイプがルーピンの正体(狼人間)を漏らしてしまったのだ。

 

こいつ……。

刀原と雀部はジト目で睨んだが、スネイプは何処吹く風だった。

 

 

そんなスネイプだが、彼の守護霊がハリーの母親の守護霊と同じ牝鹿であることにハリーは疑問に思ったらしい。

 

そしてハリーは刀原に意見を求めた。

偶然かなぁ? と。

 

偶然では無いかもね?

刀原はそう答えた。

 

刀原は守護霊が変わる事例をハリーに教えた。

すなわち夫婦で対になるか、好きな人の守護霊に変わるかだ。

 

スネイプはもしかしたらハリーの母……リリー・ポッターが好きだった、或いは好きなのでは?

刀原はそう付け加えた。

 

ハリーは凄まじく「複雑ぅ……」といった顔をした。

 

これを機に和解してくんねぇかな……。

刀原はそれに期待した。

 

 

 

 

 

試験の結果も返ってきた。

寮杯もグリフィンドールが頂いた。

 

後は家に、日本に帰るだけだった。

 

 

ホグワーツ特急ではいつもの面々で楽しく過ごした。

 

ハリーにはシリウスから手紙が届いていた。

 

ファイアボルトを買ったのは自分だということ。

ホグズミードへの許可証が同封されていたこと。

等々。

 

ハリーはシリウスと共に暮らすことは出来ないらしいが、夏休みの大半は共に過ごしてもいいそうだ。

 

良かったな、ハリー。

 

 

賑わっているハリー達を横目に、俺は流れる車窓の風景を見ていた。

 

「少し浮かない顔ですね?」

 

雷華がこっそり言ってくる。

彼女に隠し事は無理そうだ。

 

「まあな、考え事さ」

 

俺の頭には、とある人の言葉が流れていた。

 

ハリーに聞いていた状態が当て嵌まっていた。

 

とある人とはトレローニー教授のことだ。

昨日、占い学の今年度限りで授業を辞めることを伝えに行った際、言われたのだ。

 

人は、俺は。

それを予言だと呼ぶ。

 

【面倒で厄介なことになりそうだ……】

 

俺は飛びっきりのクソデカため息を吐いたあと、思考を切り替え、雷華やハリー達の会話に混ざった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、その予言がこれだ。

 

 

 

 

「時は近づいている……。闇の帝王は逃れた召使いの力を借り、再び肉体を手にする。そして帝王の元には、極東から使者が訪れる。その者、古からの高貴な血を持った歪んだ者。彼は帝王と共に破れた仮面を着けた者達に接触する……。そしてその者達が再び返り咲く時、代表となるものは死に絶えるであろう……。時は近づいている。帝王、歪んだ者、破れた仮面の者が、二つの島国に近づいている……。戦乱が近づいている……」

 

 

 

な、ヤバそうだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
存外に扱っていたこともあったが

*2
しかも曰く付き

*3
ルーピンのみならずスネイプまでもこの推理を聞き、碌な反論も出来ていないペティグリューを見ているのだ。

*4
なお、万が一触れるようだったら腕をへし折る気満々だった

*5
この時、刀原は自身が傷つくことを想定していなかった。

理由は単純。

狼人間よりよっぽど手強い人達と修行していたからだ

*6
なお、後にルーピンにはきっちり謝罪した。

ルーピンはちょっとしたたんこぶを擦りながら許してくれた。

*7
深夜だと言うこともあるだろうが

*8
返り討ちにあったが




没案

「年貢の納め時だ、ピーター・ペティグリュー」

「それってどういう意味?」

「あー、たまったツケを払うときだからもう諦めろって意味だ。ンンッ。観念しろペティグリュー」

「どうも締まらないですね」

「文化の違いがこんなところで響いてくるとは」



スネイプをゴネらせたり、魔法省にゴネらせたりすることも出来ましたが、まあ黙らせました。
理由は面倒だからです。


またペディグリューを逃がすルートも考えましたが、シリウスを無罪にした方が良いかなと思ったので……。

さらばペディグリュー。
アズカバンで長い余生を過ごすんだぞ☆



感想、考察、ご意見、評価。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。

投稿した賢者の石編等の文章間隔を空ける修正と、所々の文章整理をしています。
大幅な修正はしていませんので特段読み直さなくても結構です。


では次回から
炎のゴブレット編開始となります。
次回も楽しみに















おまけ。
一ファンとしてのファンタビの感想。



ファンタビ、観てきました。
ネタバレになるので多くは言いませんが、とりあえず一言。

ダンブルドアもグリンデルバルドも、マジかっこ良かった。
全盛期やべぇなとも思いました。

マッツ・ミケルセンさんもデップデルバルドとはまた違った感じ良かったです。
ジョニー・デップさんも良かったんですけど。

カリスマ性が同じのようで違う。
甲乙つけがたいです。

とりあえず字幕版でもう一回見ようと決意してます。


それと、うちの主人公が勝てるビジョンが見えませんでした。
でも成長したら行ける筈。

頑張れ、うちの主人公!







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