悪意ある者によって
切っ掛けが生まれ
怯える者によって
お膳立てがなされ
狂気ある者によって
実行される。
死神、日本にて。四学年に向けて
《親愛なるハリーへ
先日はお手紙とお誘い、ありがとう。
英国で行われるというクィディッチ・ワールドカップの決勝戦とは、なかなかに面白そうで雀部と一緒に行きたかったのだが、生憎と忙しくてな……。
残念ながら行けそうにない。
すまん。
その代わりとはいってはなんだが、日本のお菓子を大量に同封している。
俺達の代わりに皆に振る舞ってくれ。
よろしく頼む。
それと、わざわざチケットを用意してくれたウィーズリー氏やシリウスに、トーハラが謝っていたとも伝えておいてくれ。
感謝していたともな。
それで、何故忙しいかについてだが……。
簡単に言えば修行だ。
長期間集中しないといけないものでな、本腰を入れないといけないのだ。
それに、例の予言にも関わる事でな……。
俺も雀部も、それを習得するまでは英国に行けないかもしれないから、来年度もホグワーツで会うための布石だと思ってくれ。
それと、ペディグリューの話聞いたか?
あんにゃろう、やっぱり片腕ぐらい潰せば良かったと後悔しているところだ。
だが、ハリー。
君が気に病む事はない。
あの時ハリーは人として最高の判断をしたんだ。
誰でも出来る判断じゃない。
胸を張れ。
ちなみに俺だったら始末したがな。
とりあえず気を付けろよ?
まあ、シリウスとかも一緒だろうから、心配してはいないがな。
ではまた。
ホグワーツ特急で会えることを願っている。
それでは良い夏を。
君の友人 刀原将平》
ーーーーーーーー
ハリーからのお誘い……。
行きたくない訳じゃない。
ただ、時期が悪いだけだ。
日本に帰ってきた直後、知らせを受けた。
両親がいよいよヤバいということだ。
そして俺が聞いた予言の内容が内容だった。
闇の帝王とは、ヴォルデモートのこと。
極東の歪んだ者とは、十数年前に反乱の首謀者となった者のこと。
破れた仮面の者の詳細は分からないが、良くない者達であることは明白。
少なくとも、日本魔法省と護廷十三隊はそう結論したし、俺もそう思った。
そして代表……。
おそらく例の代表だろう。
両親を死の淵から何とかするため。
代表となったものを守るため。
そして近づいているという戦乱に対応するため。
俺は求めた。
『卍解』を。
そして雷華、日番谷、雛森もついでに卍解習得のために本腰を入れ始めた。
卍解への道は当然ながら簡単では無い。
雷華は彼女の祖父である雀部長次郎副隊長が。
日番谷は彼らの師匠であるマホウトコロの校長が。
雛森はその校長の元上司である平子元隊長が。
それぞれ付きっきりの師匠となった。
そして俺は。
「ゆくぞ!」
「おう!」
「万象一切灰塵となせ『流刃若火』!」
「万象一切両断せよ『神殲斬刀』!」
「うりぁあああ!!」
「せやぁあああ!!」
月曜日、重じい。
「行きますよ!」
「お願いします!」
「「はぁあああ!!」」
火曜日、やち姉。
「加減はなしだよ?」
「行くぞ将平君!」
「無論です!」
水曜日は京楽兄と浮竹兄。
木曜日は再び重じい。
金曜日は再びやち姉。
「準備はいいかの?」
「いつでも!」
土曜日は夜姉。
日曜日は雷華達と合流して、特別な許可が降りた*1為、霊王宮に行き、零番隊の方に稽古を付けて貰う。
正直いってヤバい内容だと後々思うのだが、そんなことを思えたほど、暇も余裕も無かった。
そして夏はあっという間に過ぎ去り、英国行きまで残り二週間になった日。
俺は斬刀から本当の名前を聞いたのだった。
そして、師匠達は一切の手加減をしなくなった。
特に最年長の二人は。
「せよ」
「しておきなさい」
『せねば……」
「でなければ……」
「死ぬぞ?」
「死にますよ?」
とりあえず、本気になったあの二人は鬼です。
そして…………。
両親は死の淵から戻ってきた。
ーーーーーーーー
その頃、英国では。
「ショウとライカ、来れないって」
「そう、残念だわ……」
「でも代わりに、これみんなで食べて、だって」
「なんだい、これ」
「これ……確か、
「じゃあこれは?」
「プティングにしては茶色だなぁ」
「確か、オマンジュウよ。ライカが教えてくれたわ」
「これはなんだい?白くて固くて食べられないよ」
「さあ……あ、説明書ついてるよ」
《そいつは餅って言ってな、焼いて食べるんだ。一緒に入っている少し黄色い粉……きな粉をかけて食べると美味いぞ。ちなみにプクーッと膨らんできたら食べ頃だ。……まさかそのまま食べたりしてねぇよな?》
「だって」
「……とりあえず焼いて食べましょう」
「あ、あと追伸もあるよ」
《そうそう、よく噛んで、小さくして食べろよ? それを喉に詰まらせて死んでる人、結構いるからな……》
「……恐ろしい食べ物ね」
「注意して食べよう」
ーーーーーーーー
「火急である!!」
夏がもうすぐ終わり、刀原達が明後日には英国へ向かうという日。
護廷十三隊では臨時の特別隊首会が行われた。
集まったのは現役の隊長は勿論、元隊長から隊長待遇の者まで。
つまり、日本魔法界の最高戦力が集まったのだ。
参加者は以下のとおり。
護廷十三隊 総隊長 兼 一番隊隊長
山本 元柳斎 重國
同隊 二番隊隊長 兼 隠密機動総司令官
四楓院 夜一
同隊 四番隊隊長
卯ノ花 烈
同隊 六番隊隊長
朽木 白哉
同隊 七番隊隊長
狛村 左陣
同隊 八番隊隊長
京楽 春水
同隊 九番隊隊長
東仙 要
同隊 十二番隊隊長
浦原 喜助
同隊 十三番隊隊長
浮竹 十四郎
鬼道衆 総帥・大鬼道長
握菱鉄裁
日本魔法省 魔法大臣
市丸 ギン
同省 魔法執行部部長
黒崎 一心
同省 情報捜査部部長
砕 蜂
同省 魔法神秘部部長
涅 マユリ
大陸探題部
部長 刳屋敷 剣八
平子 真子
六車 拳西
愛川 羅武
鳳橋 楼十郎
錚々たる面子*2だった。
なお、オブザーバーとして。
「場違いじゃねぇか?」
「場違いですよね?」
「場違いだよな?」
「場違いです……」
現役のマホウトコロの生徒でトップの四人。
刀原、雀部、日番谷、雛森。
そして。
「そんなことはないさ。少しは自信を持ちなさい?」
マホウトコロの校長も同席していた。
議題は刀原が持ち帰ってきた予言についてだった。
闇の帝王ことヴォルデモート。
反乱を首謀した者。
それらがおそらく手を結ぶのだろう。
そしてヴォルデモートは英国を、反乱首謀者は日本をそれぞれ狙うのだろう。
確かに、それらが実際に起これば戦乱となるのは確実だが、護廷十三隊等が手を打てば勝てる。
だが、慢心など愚のする事。
対策の為、緊急特別隊首会が行われるのだ
「皆、予言の件は聞いておるな?」
総隊長がそう聞けば、全員が頷く。
「英国では先日、刀原が捕縛したピーター・ペディグリューとやらが監獄へ連行されている間を縫って逃亡した。……ハリー少年が聞いた予言の内容の者じゃ。つまり……其奴が逃亡したと言うことは、ヴォルデモートなる痴れ者が再び表舞台に立つということとなる」
「あんにゃろう……」
「やっぱり始末するべきでしたかね……?」
総隊長の言葉を聞き、刀原と雀部は苦い顔をする。
ペディグリューが逃亡した一件は、事の当事者がいる影響で日本にも早く伝わった。
そしてハリーからは自分は正しかったのかと問う内容の手紙、シリウスからは怒りと悲しみの手紙がそれぞれ刀原と雀部の元に送られていたのだ。
なお、ハリーには「ハリーは間違ってない」という内容の手紙を送り、シリウスには「気持ちは分かるが早まるな。ハリーを今守れるのはシリウスしか居ない」という手紙を送っている。
「そして先日英国で行われた『くぃでぃっち・わーるどかっぷ』の会場でも騒動が起きたそうじゃな?」
「はい、そのとおりだそうです」
総隊長の問いに、砕蜂が一歩前に出ながら答えた。
彼女は去年の春に護廷十三隊*3から日本魔法省に移動し、情報調査部の部長に就任した。
なお、移動に対し彼女はかなりゴネにゴネたらしいが、卍解を習得したことに加え、適任者が彼女しか考えられなかったこと、尊敬と敬愛している四楓院から「頼むぞ砕蜂!」とニカッと微笑みながら言われた為、
「
砕蜂がそう言えば、全員が「やっぱりそうか」といった反応をする。
「これらのことから分かるとおり、最早ヴォルデモートの復活は間近と考えるべきじゃ。市丸や、英国魔法省の動きは?」
「それがどうも、危機感が足りんようです……」
総隊長にそう聞かれると、市丸が頭を掻きながら苦い顔でそう答える。
「外務の子が言うてはりました。「「そんな事はあり得ない」と答えられました」って。
市丸がそう言えば、全員が苦い顔をする。
「そんな頭足りん奴らの為に、俺らが命張る必要なくねぇか?向こうはダンブルドアのお膝元だろうし、俺達が出張る必要ねぇと思うぜ」
一歩前に出ながらそう言うのは大陸探題部の部長、刳屋敷剣八……召集された面々の中でもトップクラスの実力者だ。
彼は7代目剣八として名を馳せていたが、刀原の祖父であり大陸探題部の先代部長、刀原将之介平三郎が亡くなった際、その後任として隊長職を退いた。
ちなみに、本来なら剣八の名を明け渡すところなのだが、剣八として敗北した訳ではないということで未だに名乗る事を許されている*4。
「確かにそうだよね」
刳屋敷の言葉に京楽が頷く。
しかし。
「刳屋敷、お主の言うことも道理じゃ。それがヴォルデモートだけならばの」
総隊長がそれに待ったをかける。
そして続ける。
「じゃが、そうはいかん。十数年前に反乱を行ったあ奴がヴォルデモートに接触している可能性が大いにあるのじゃ。あ奴は我らでないと倒せん」
総隊長は嫌そうな顔をしながらそう言う。
「それじゃしょうがねぇか……」
刳屋敷も嫌そうな顔をしながら退く。
「あ奴に関しては、大陸にいる……としか分からん。隠密機動としては苦い結果じゃがの」
四楓院が特大な苦虫を噛み潰したような顔をしながら言う。
親友夫婦に今の今まで寝たきり生活を余儀なくさせた敵だからだろう。
「あ奴もそうじゃが……予言にあった『破れた仮面の者』なる者共の存在じゃ。四楓院、砕蜂、何か手掛りは掴めたかの?」
そしてそんな馬鹿どもより、『破れた仮面の者』の連中が問題だった。
その正体が分からないからだ。
「申し訳ないが、全く」
「こちらもです……」
四楓院も砕蜂も首を横に降る。
「うむ……技術開発局はどうじゃ?」
「此方は手掛りなしっす」
浦原が首を横に降る。
「魔法神秘部は?」
「残念ながら総隊長、こちらも手掛りは無かったネ」
首を浦原と同様に横に降るのは魔法神秘部の部長、涅マユリだ。
元十二番隊副隊長の彼は、技術開発局よりも潤沢な研究が出来る魔法神秘部に移動したのだ。
ヘッドハンティングでもあったが。
「そうか……。実はお和尚に聞いたのじゃが……「古の、それも力をつけた『虚』の亜種、或いは進化先と考えた方が良いじゃろう」とのことでの……まあ、間違いなく敵じゃろう」
総隊長はそう語る。
和尚とは零番隊の筆頭、兵主部一兵衛の事だ。
「そして……霊王様からじゃ「間違いなく、備えた方がいい」とのことじゃ」
霊王様の言葉で全員が「おお……!」となる。
「そう言う訳じゃ」
その言葉を合図に、全員の顔が引き締まる。
護廷十三隊と日本魔法省、大陸探題部はそれをもって事にあたることとなった。
「さて、事にあたることは決定だとしても、問題は人材じゃな。護廷十三隊に三人、隊長の欠員がいるのは喜ばしいことじゃないからのう?」
実は問題になっている人材不足。
隊長職を出来る者はいるが、その者達には違う立場があり、それも欠員を出すわけにはいかない。
「じゃあ僕が隊長職に復帰を……」
元隊長の市丸が手を上げる。
「駄目じゃ市丸。お前は魔法大臣という重責がある」
だが、総隊長が即座に却下する。
ガックリと項垂れる市丸。
「将一郎君は?三番隊隊長に復帰出来ないの?」
京楽がそう聞くが、総隊長が否定する。
「三番隊隊長の刀原将一郎は、隊長職への復帰は出来ないとのことでの。先程本人の口から、正式に引退宣言がなされた」
「残念っす」
「全くじゃ」
浦原と四楓院がそう言う。
「さて、そんな隊長不在の三番隊、五番隊、十番隊の隊長じゃが……一応、候補者が見つかった」
「おお!」
「遂にか!」
多くの者達から声が上がる。
「早速、隊首試験を……と行きたいがの、彼らは学生じゃからまだ就任は出来ぬ。それに学生だからこそ、頼みたいこともあるしの」
「例の件ですか?」
「そうじゃ」
ドンっと総隊長が杖を床に打ち付ける。
「刀原、雀部。お主達は例年通り英国へ向かうのじゃ。そして日番谷と雛森らは例の件に合わせよ」
総隊長の言葉に四人とも頷く。
そして総隊長は頷き返す。
「では皆、抜かり無く」
破れた仮面の連中を予言で言うのはすごく悩みました。
いきなり登場させるべきかとも思いましたが……明かした方がいいかなと思ったのでね……。
感想、考察、評価
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
さて次回は
魔法学校対抗試合
次回もお楽しみに