ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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恐怖に怯えるな

だが、恐怖を捨てるな

一息吐いて

距離を離して

冷静になるべし

さあ、作戦開始といこうか。









死神、ノリが良くなる。第一の課題

 

 

 

俺は、高みの見物と洒落込む予定だった。

 

誰が勝つとかは言わないが、既に勝利が確定した対抗試合を雀部やハリー達と一緒に見る予定だった。

 

ハリーが予期せぬ五人目として乱入した……というかさせられたので、助ける為に知恵を絞るなんて予定していなかった。

 

乱入を手助けしたとして、ギャーギャー言われるなんて予定していなかった。

 

とりあえずそのギャーギャー言ってきた馬鹿は処理(公開処刑)したが、それはあくまでも刀原に対する文句*1だったので、ハリーに対する冷たい視線は収まらなかった。

 

頭足りてなくね?

俺はそうため息を吐いた。

 

何よりも面倒なのがハリーとロンの不毛な冷戦だ。

 

ロンの気持ち(嫉妬)は解らなくもないが、かといってハリーに当たることは無いだろう。

 

ハリーにはそれが何よりも辛いらしい。

 

ドンマイ……。

 

俺は泣きそうになっているハリーにそう言った。

 

「同情するなら変わってくれ」

 

それに対し、ハリーは暗い顔でそう言った。

 

俺はどう言おうかと悩むまでもなく。

 

「魔法契約で無理」

 

そうバッサリと切り捨てた。

 

そしてハリーは絶望した顔になった。

 

 

 

 

ハリーにとっては最悪の月日になった。

少なくとも、俺はそう思っていた。

 

ロンとは冷戦状態に突入し、生徒たちからは睨まれたり笑われたり、こそこそ何かを言いながら後ろ指をさされる日々。

 

対抗試合で使用する杖を調べる『杖調べ』では何もなかったが、その前で起こったリータ・スキーターとかいうゴシップ記者には散々嫌な目にあったらしい。

 

さらに。

 

その数日後、発売された記事にはハリーに対するでっち上げ記事が掲載され、記事を読んだロンが愚かにもそれを信じた為、ハリーはうんざりしていた。

 

 

うんざりしているのはハーマイオニーもだった。

 

ハリーとロンの間に入っている影響で二人の仲を何とかしようとしていたのだが、全くと言っていいほど成果は無く、ピリピリし始めた。

 

「男ってのは意地を張りたがる生き物だからな……。こればっかりは諦めた方がいい」

 

そういった俺の言葉に、考え込むようなそぶりをした後。

 

「……そうね。そうかもしれないわね」

 

とハーマイオニーは言ったが、効果はなさげだった。

 

おまけに、例のゴシップ記事にはハーマイオニーも乗っており、彼女は好奇の目に晒されることになった。

 

なお、俺と雀部の名は載ってなかった。

 

ちっ、勘の鋭い奴だ。

 

載っており、かつ誹謗中傷の内容が書かれていた場合、行動を起こせたのに。

 

 

 

そんなこんなでピリピリうんざりし始めた英国の友人を他所に置き、俺と雀部はマホウトコロを始めとした他校の面々にホグワーツや各教授陣の紹介や、やたらと鍛錬…というかスパーリングに誘ってくる黒崎や阿散井を何とかするので精一杯だった。

 

何故、他校のエスコートを留学生の俺らがやらなくてはならないのか?

 

マホウトコロの面々は分かる。

 

でも、ボーバトンやダームストラングの面々は意味が分からない。

 

確かにフランス語やドイツ語は喋れる。

 

だがそれは他の生徒でも出来るはずだ。

 

え、ご指名?

 

何故?

 

代表生徒の子たちが、是非とも君たちをと言ってきたからじゃ、だって?

 

ふざけんな。

 

 

 

その後。

 

「校長先生達に一歩も引かず、堂々と意見を言えるだなんてすごいと思ったので。それと、私の魅了に何故か掛からなかったのも不思議です」

 

「実は、大広間で突っかかってきた生徒をコテンパンにしたのを見た。出来れば強い人から聞きたい」

 

さりげなく聞いた結果、帰ってきたのはこれだった。

 

 

 

ボーバトンのフラー・デラクール。

 

ダームストラングのビクトール・クラム。

 

両名とも確かに代表に足る実力を有していた。

 

雀部も「他の面々とは格が違いますね」と言っているし、実際にそうだろう。

 

それに、他校の面々と親しくなっていれば横のつながりも出来やすいか。

 

……仕方ねぇか。

 

だが、日番谷、黒崎、阿散井。

おめーらはダメだ。

 

ホグワーツで剣を交えたら見世物になるだけだ。

だから小声で「ちょっと体動かそうぜ!」って言うな。

 

我慢しろ。

 

ここどこだと思ってる。

 

マホウトコロじゃねぇんだぞ。

ホグワーツにいるんだぞ。

 

今、西洋魔法薬学の本場にいるん(スネイプの授業を見学中)だから。

 

日番谷、おめー代表だろうが。

ちゃんとしろ、ちゃんと。

 

「卍解の鍛錬してぇな……」とか言うんじゃない。

 

おめーら三人とも、はしゃぎすぎだ。

雛森や朽木、井上を見習え。

 

あいつらはちゃんと大人しくして……ねぇな。

 

ダメだ、こいつら完全に遠足気分じゃねえか。

 

藍染校長からもなんか言ってやってください。

 

あれ、藍染校長?

 

あ、スネイプとなんか難しい話してる……。

スネイプも授業半ば放棄してんじゃん。

 

あちゃ……あの人の知識欲、舐めてたわ。

 

ほら、さっさとこのバカども引率してください。

はいはい、資料なら後で俺がマダム・ピンスに言って借りてきますよ。

 

え?

 

後で図書室の場所教えて?

 

ダメです。

 

貴方絶対入り浸るでしょ。

 

そんなこと無い?

 

絶対そうなるでしょ。

 

何言おうとも絶対ダメです。

 

……しょんぼりしたってダメです。

 

 

 

 

 

「さてさて、何がいるんだ?」

 

「この気配……ディメンターではありませんね」

 

「お前ら、ここって立ち入り禁止の森の筈だろ?何でそんなに慣れてんだ?」

 

「「あはははは……」」

 

生徒達の話題は複数あったが、その中でもとびきりの話題があった。

 

第一の課題の内容についてだ。

 

『勇気を試す』……一体どうやって試すのか。

強制的に関係者となったハリーの悩みの種だった。

 

そんな中、刀原と雀部は禁じられた森内で異質な気配を察知しており、それがおそらく課題の内容だと思っていた。

 

そして日番谷もそれを察知しており、三人は仲良く調査と洒落込むことにしたのだった。

 

「しかし、本当に良いのでしょうか?これってカンニングに等しい行為ですが……」

 

「気にすんな雷華。諜報活動なんて、どうせ運営も織り込み済みだろ。戦いは情報が重要だって師匠達も言ってたろ?問題ねぇよ」

 

「確かに、過去にはしていたらしいからな。大丈夫だろ、むしろウェルカムだろ」

 

雀部は乗り気では無さそうだが、刀原と日番谷はノリノリであった。

 

そして乗り気では無さげな雀部も一応言っただけであり、実際にはノリノリであった。

 

本番を前に入念な準備をするのは当たり前、そして準備をするために情報を得ようとするのは当然である。

 

勝ち方を問うのは勝鬨を挙げた後で良い。

おのれ卑怯な!は所詮負け犬の遠吠え。

 

だったら勝つための努力は怠らない。

 

以上が三人の思考である。

 

「第一、諜報活動がダメなら最初に言う筈だ」

 

日番谷がそう言う。

 

実際には「まさかとは思うけど、言わなくても分かるよね……?」という、暗黙のルールであるからだ*2

 

「そうそう。それに、俺達はあくまでも『禁じられた森の内部に、異質な気配があるからそれを調査する』だけであって、別に『この気配は多分第一の課題の内容だから、ちょっと見に行って暴いてやろう』なんてつもり、さらさら無いからな」

 

刀原はそう言うが、詭弁である。

むしろ日番谷(代表選手)を連れている辺り、確信犯である。

 

「まあ、確かにそうですよね!」

 

雀部はそう言って遂に乗り気になる。

 

そしてストッパーの役割を果たす雛森と朽木、井上がこの場に不在の為、最大の抵抗勢力になる()()しれなかった雀部が乗り気になったことで、三人を止める存在は居なくなった。

 

三人の胸中には、久方ぶりに三人そろって行動出来ることへの喜びがあった。

 

かくしてマホウトコロのトップスリーは、気分上々で禁じられた森の内部に向かったのだった。

 

当然、見つかれば怒られる行為である。

 

 

 

「なんでいるんだ?ショウ、ライカ」

 

「あ、やべ」

 

禁じられた森の奥深くにて、三人と出会ったのはハグリッドだった。

 

「隣にいるのは誰だ?」

 

「ああ、こいつは日番谷冬獅郎。マホウトコロでの俺たちの親友で幼馴染だ」

 

ハグリッドと日番谷は会うのが初めてなので刀原がそう紹介する。

 

脇では小声で日番谷と雀部が「こいつがあの?」「ええ、そうです」というやり取りをしていた。

 

「もしかして、マホウトコロの代表か?」

 

「まあな」

 

ハグリッドの疑問に刀原がそう答えれば、ハグリッドは途端に眉をひそめる。

 

その表情からして、他の代表選手には見せたくないもの(第一の課題内容)があるのだろうと刀原は推察する。

 

「それで、なんでお前さんらここにいるんだ?」

 

「なんでって…そりゃあこの森に異質な気配を察知したからだ。もしヤバいものだったら大変だろ?その調査だよ」

 

刀原は兼ねてからの言い訳を言う。

 

それを聞いてハグリッドは「やっぱり、お前さんらは気づくか…」という。

 

「しょうがねえ、ここまで来たんならな。よっしゃ、一緒について来いや。実は、俺も見るのは初めてなんだ…きっと吃驚するぞ!」

 

そう言ったハグリッドはどこか興奮気味に三人の先頭を歩き始め、三人はそれに大人しくついていくことにしたのだった。

 

 

暫く歩くと、突然の咆哮が響く。

 

「まさかでしょうか?」

 

「まさかか?」

 

「まさかだろうな」

 

咆哮を聞きながら、三人はそう反応する。

 

そしてある程度広いスペースにあったものを見て納得する。

 

確かに勇気を試すには相応しい相手だと。

 

最も、付き合いが長いハグリッドがどこかで見たことのある興奮気味な時点で、刀原は何となく察していた。

 

三人の目の前にあったのは巨大な檻に入れられた魔法生物…ドラゴンだった。

 

これは……ハリーには難敵だ。

 

俺たちならまだ対処が出来る。

だが成体の、おそらくあの様子だと営巣中の母親ドラゴン相手だとハリーの手には大いに余るだろう。

 

刀原は腕を組みながらそう思っていた。

 

「これは、手が抜けねぇな…。だが仕留めるのはあまり好ましくねぇし…。さて、どうするか…手っ取り早く氷漬けか?」

 

刀原の横では日番谷がそう呟いていた。

 

「うーん…。縛道系の鬼道で捕縛するか…。あるいは麻痺させて弱らせるか…」

 

同じく横にいる雀部も、自分ならドラゴンをどうやって突破するかを考えていた。

 

そして、二人に釣られ刀原も考え始める。

 

やっぱり、王道は縛道で捕縛だな。

 

火炎放射の射程や威力は知らんが…『断空』で止められるだろうから問題ねぇな。

物理攻撃(爪や噛みつき攻撃)は斬魄刀でどうにか出来るだろうし。

 

縛道以外だと、どうやって仕留めずに済ませるかが問題となるが…まあ『唐竹割』や『海割』で脳震盪を起こせば失神させられるでしょ。

 

三人の思考には如何にドラゴンを出し抜くかではなく、如何に殺さずに済ませるかが焦点となっていた。

 

 

 

 

 

刀原、雀部、日番谷がドラゴンと遭遇した数日後、ハリーもドラゴンとの衝撃的な邂逅をしたらしい。

 

「ショウ!第一の課題がドラゴンを出し抜く内容だって、何で教えてくれなかったの !?」

 

ハグリッドとの深夜のお散歩を終えたハリーは、寮に戻ってきて早々、刀原にそう突っかかった。

 

「教えたところで現実は変わらんから、自分の目で見たほうが良いと思ったのでね」

 

刀原がそうケロッとした感じで言えば「確かにそうだけど……」とハリーは口詰まる。

 

「で、どうすんだハリー?ドラゴンとやり合う方法は思い付いたか?」

 

「無理だよ……ドラゴンとだなんて……」

 

刀原の言葉に、ハリーは力無く項垂れる。

 

「大丈夫。バジリスクよりかはマシだ」

 

刀原はそう言う*3が、ハリーの表情は青いままだ。

 

「あの時と違って、今回はショウが居ないじゃないか……。もうダメだ、おしまいだ。五分も持てば良いほうだ……」

 

ハリーは、まるでこの世の終わりのような感じでそう項垂れ、絶望していた。

 

「大丈夫。ドラゴンなんて一捻りだ」

 

「そうです!ケチョンケチョンにしちゃいましょう」

 

刀原と雀部はそう言って励まそうとするが、効果は全く無さげだった。

 

ハーマイオニーに至っては、いつもなら頼りになる二人がどこか妙なテンションな(頼りにならない)ので「……去年のような慎重さは何処に行ったのかしら?」と頭を抱えていた。

 

ちなみに何故かというと……。

 

去年通りであれば、ホグワーツ生として(ハリーの目線と斬魄刀抜き)の意見を言ったであろう二人だったが、マホウトコロの面々がいることでその意識が薄れており、斬魄刀ありきでの意見とノリになっていたのだ。

 

 

そして更に数日後。

 

「ショウ、引き寄せ呪文のコツってある?」

 

ハリーはどうやら、何とか自らが消し炭にならない方法を発見したようだった。

 

 

ハリーはフィクサー役となったらしいムーディの助言により、唯一の武器である杖を使って箒を引き寄せ、ドラゴンと空中戦をするという戦術を発案した。

 

そして、その戦術には『引き寄せ呪文』の習得が必然的に必須となり、四年生の授業内容ではあるが未だ習得していないハリーには時間の無さも相まって、猛練習をしなくてはならなかった。

 

「引き寄せ呪文のコツはやっぱイメージだと思うな……。引き寄せる、手元に必ず来るという強いイメージ。それを持つんだ」

 

空き教室にて、刀原はそうハリーに言った。

 

「分かってるんだけど……」

 

「いや、完全には分かっていないんだ。心の中で「僕にはどうせ無理」ってなってるんだ」

 

ハリーは自信無さげだった。

 

「……やってみるよ」

 

「ハリー?」

 

ハリーの半ば投げやりな言葉に、真顔で嗜める。

 

「やってみるじゃダメだ、やるんだ」

 

いいな?と続けた刀原にハリーは真剣な顔になった。

 

 

 

その後、ハリーは『引き寄せ呪文』を習得した。

 

 

 

「彼の仕上がりはどうだい?」

 

刀原は第一の課題が始めるの前日の夜、マホウトコロの列車を訪れていた。

 

藍染は探るように刀原にそう聞いた。

彼とは当然ながらハリーのことだ。

 

「まあまあ、といったところでしょうか。作戦も勝率の角度が高いものですし、派手さもありますからね」

 

「君がブレーンになってるんだ。間違いはないだろう?」

 

「いや、この作戦を考えたのは『闇の魔術に対する防衛術』のマッドアイ・ムーディ教授らしいです。どうやらハリーをこの他贔屓しているみたいですね」

 

刀原がハリーの影の参謀になっているムーディのことを明かせばその場にいる者全員が顔を顰める。

 

「おいおい、教授の助力はご法度だった筈だろ?ずるじゃねぇか?」

 

そう言った阿散井に、刀原は苦笑いする。

 

「まあ、そう言ってくれるな……。一応ハリーはまだ年若いし、未熟だ。それに、ダメな作戦なら不採用にするが、最適な作戦なら採用するのは当然の選択だろ?……最も『ムーディ教授が勝手に言った案を改良した』作戦だから、くだらん批判もそらせられる」

 

「確かにそうだが……それで納得出来るのは、ろくにいないのではないか?」

 

「苦しい言い訳なのは理解しているさ」

 

朽木の言葉に、刀原はしょうがないという顔でそう答える。

 

刀原としても批判の種になりうる行為(教授からの作戦提供)は避けたかったが……如何せんハリーが採れる(出来る)作戦の数が限られていたのだ。

 

何より、箒を引き寄せてからドラゴンとの空中戦は実に妙手だと思ったし、よくよく考えてみるとそれしかないのでは?とも思ったのだ。

 

その為、遺憾ながらも採用となったのだ。

 

「それにしても、ドラゴンと戦う課題なんて……みんなは余裕だと思うけど、他校の生徒達はどうするのかな?」

 

「我々とは違い、彼らは西洋魔法だけだからね。有効性が高いのは『結膜炎の呪い』とかかな」

 

井上が首を傾げながら言えば、藍染が答える。

 

「『結膜炎の呪い』ですか?」

 

「ああ、そうだよ井上君。ドラゴンの弱点は目だから、それが有効的な呪文となる」

 

「ですが藍染校長。『結膜炎の呪い』を使用するとドラゴンが暴れてしまいます。周囲への被害が甚大になってしまうのでは?」

 

鬼道や西洋魔法においては刀原と互角の腕と知識を持つ雛森が、考えられるデメリットを言う。

 

「素晴らしい、その通りだよ雛森君。課題の内容によってはそれがデメリットになってしまう。そこは臨機応変さが求められるという訳だ」

 

藍染とて、それは承知の上である。

 

「まあ、冬獅郎の戦法には絡まないだろ」

 

「そうだね」

「そうよね」

「そうだよな」

「そうだろうな」

 

黒崎の言葉にその場にいる全員が同意する。

 

正面からドラゴンと渡り合える日番谷が、そんなまどろっこしい戦法を採る筈がないからだ。

 

その後……。

 

「ポッターのやつに、こんがり美味しく頂かれねぇようになって言っとけ」

 

「おい、失礼だぞ恋次!将平、ポッターに励ましの言葉を伝えておいてくれ」

 

「応援してますと言っておいて下さいね」

 

「頑張ってねって伝えておいてね!」

 

「将平はポッターの奴だけ見てれば良いぜ。冬獅郎に心配は要らねぇだろうからな」

 

「お、おう。伝えておく」

 

どうやらこいつらは、勝ち確な(ほぼスリル無し)方より心配な(ハラハラする)方を応援するらしいな。

 

刀原はそんな仲間達に若干呆れながらも、自分も日番谷の心配は全くしてないということに気が付いたのだった。

 

 

 

 

 

来る十一月二十四日。

 

第一の課題を行う特設ステージでは、代表選手対ドラゴンの激戦が繰り広げられていた。

 

そして既にセドリック、クラム、フラーの出番は終了しており、残すは日番谷とハリーのみとなっている。

 

 

 

 

ちなみに終了した代表の作戦はというと……。

 

セドリックは岩を犬に変えて注意を引き付ける撹乱作戦を実行したが、顔に火傷を負ってしまった。

 

クラムは『結膜炎の呪い』を使用したが、懸念通りドラゴンが暴れて本物の卵を破損させてしまった。

 

フラーは魅惑呪文で陶酔させて眠らせるという作戦を行ったが、スカートに引火してしまった。

 

そして刀原はこの結果に対し『まあ、上出来な方じゃないか?』と判断していた。

 

ドラゴンを殺さずに無傷で完封出来るやつなど少なく、マホウトコロでも僅かだろう*4

 

そんなことを思っていた刀原の耳に、実況をしているルード・バグマンの声が響く。

 

「次に登場するのは、極東はマホウトコロのトーシロー・ヒツガヤ!ドラゴンは『シベリア・スノーホワイト種』!寒さに一段と強い種であるとのこと!」

 

バグマンの解説に思わずニヤリとする刀原と雀部に、隣にいるハーマイオニーは首を傾げながら「寒さに強いことが良いことなの?」と聞く。

 

「ああ、その方が楽だろうな」

 

「下手に弱いと死んじゃうかもしれませんからね」

 

二人にとってはむしろ好都合らしい。

 

「心配じゃないのか?彼は向こう(日本)での友人だろう?」

 

何故かいるマルフォイが二人に言う。

 

「全く心配していない」

 

「むしろドラゴンが心配です」

 

二人はケロッとしながらそう言った。

 

そんな二人を見て、引きつった顔をするマルフォイとハーマイオニー。

 

そんなことをしている間に準備は終わった。

 

 

 

日番谷が颯爽とフィールドに姿を現した。

 

まさに余裕綽々といった感じで、そこには恐怖も緊張も無さげだった*5

 

「さてさて、お手並み拝見といくか……。お前ならどうやる?見せてくれ冬獅郎」

 

刀原は腕を組ながらそう言った*6

 

開始の合図もそこそこにドラゴンが火を吹く。

 

が、日番谷がそれを食らう筈もなく『双蓮蒼火墜』で相殺する。

 

巻き起こる爆風と爆音。

響く歓声。

 

「さっさと決めるか」

 

そう言ったのを聞き取れたのは数人だろう。

 

霜天(そうてん)()せ『氷輪丸』」

 

日番谷が解放する共に、柄尻に鎖で繋がれた龍の尾のような三日月形の刃物が付く。

 

そして空は途端に曇りとなる。

 

天相従臨(てんそうじゅうりん)という天候を支配する能力だ。

 

雀部の『雷霆』も実は可能なのだが、初使用*7は最初から雨雲があったし、二回目は手加減して解放した。

 

その為、こうしてあからさまに曇天に覆われるのは初めて見るだろう。

 

何も知らない面々は驚愕の顔をしていた。

ハーマイオニーとマルフォイもそうだった。

中には腰を抜かしている者もちらほらいた。

 

解説のバグマンは興奮しまくっていた。

 

日番谷はそれらを意に返さず、ただ慎重に斬魄刀をドラゴンに向けた。

 

そして、刀を切り上げた。

 

疾る氷。

だが、本気ではない。

 

何度も共に鍛練し、斬魄刀を交わしてきた刀原や雀部は容易に分かった。

 

それでもドラゴンを凍らせるには十分だった。

 

ドラゴンが完全に沈黙したことを確認した日番谷だが、始解は解かないままゆっくりとドラゴンの元にある金色の卵に向かって歩き、確保した。

 

そしてようやく始解を解き斬魄刀を鞘に収めれば、途端に氷は砕かれ、沈黙したドラゴンが出てくる。

 

日番谷はそんなドラゴンに歩み寄り、顔を擦る。

 

どうやらドラゴンは無事らしく、日番谷はそれを確認した後に悠々とフィールドを後にした。

 

審査員の得点はカルカロフを除いて全員高く、当然ながら一位となる。

 

しかし、会場には余りにも凄まじい光景に、何も言えなくなった観客の沈黙が流れていた。

 

「圧倒的……だったな……」

 

マルフォイが呆然としながらそう言う。

 

「ショウやライカみたいに……別次元ね……」

 

ハーマイオニーもそう言った。

 

「手加減してましたね」

 

「まあ、そりゃあそうだろう(死んじゃうから)な」

 

刀原と雀部が平然とそう言う。

 

!?(あれで!?)

 

それを聞いたマルフォイとハーマイオニーは、本日二度目の驚愕の顔をした。

 

 

 

 

 

日番谷の競技が終わり、後はハリーだけとなった。

 

「なんか、緊張しますね……」

 

そう言うのは雀部。

 

「大丈夫かしらハリー……」

 

雀部の左隣でそう言うのはハーマイオニー。

 

「ポッターなら大丈夫だろう。…………多分」

 

雀部の右隣に座っている刀原の隣でそう言うのは、何故か平然と座っているマルフォイ(ハリーのライバル)

 

四人は遂にやって来たハリーの出番(晴れ舞台)*8を前に、我らが哀れな勇者(ハリー)の登場を待っていた。

 

そしてハリーは、後は胃をひっくり返したかのような感覚に陥っていた。

 

日番谷がドラゴンを圧倒した為、最後となったハリーの緊張はとんでもないものになっているだろうと刀原は思っていたが、その通りだった。

 

鱗に覆われた黒いトカゲのような怪物……ハリーが相手する『ハンガリー・ホーンテール』は、棘だらけの尻尾を地面に打ち付けていた。

 

「ハリー……お前ならやれる。落ち着いていけ」

 

顔面蒼白に成りながらも、冷静さを失わず*9に開始早々『引き寄せ呪文』を使ったハリーを見ながら刀原はそう言っていた。

 

僅かなタイムラグ。

 

そして聞こえてきたビューという音。

 

「……来た」

 

刀原はそう呟く。

 

そしてファイアボルトがやってきた音はハリーにも聞こえたらしく、彼が振り返えると成功した証拠……『ファイアボルト(ハリーの愛箒)』が飛んでくるのが見えてきた。

 

そして忠実に主人の近くで止まったファイアボルトに跨がり、ハリーは一気に急上昇する。

 

更に沸き上がる歓声。

 

その瞬間、刀原は見た。

 

ハリーが恐怖から離れたのを。

 

 

 

そこからのハリーは、まるでクィディッチの試合中かのような飛びっぷりを見せた。

 

急降下し、翻弄し、動きを読んで火炎放射を避け、隙を伺い、チャンスを探った。

 

そして焦れったくなったドラゴンが、上空にいるハリーを捕まえるべく後脚で立った。

 

「そこだ!」

 

「今です!」

 

そう思わず叫んだ刀原と雀部と同様、ハリーはその決定的なチャンスを逃さなかった。

 

全速力で突っ込んでがら空きになった金の卵を掴み取り、再び空高く舞い上がった。

 

ハリーは見事に課題をクリアしたのだった。

 

 

 

 

刀原と雀部、ハーマイオニーはすぐさま選手控え室があるテントに急行した。

 

後ろにはロンも着いてきていた。

 

「ハリー!貴方、素晴らしかったわ!」

 

「よく頑張りましたね!凄かったですよ!」

 

ハーマイオニーと雀部はそう賛辞を送ったが、ハリーはロンの方を見ていた。

 

「ハリー……君の名前をゴブレットに入れた奴が誰だったにしろ……僕、そいつが君を殺そうとしてるんだと思う」

 

ロンは深刻な口調で言った。

 

「気が付いたって訳?随分長いこと掛かったな」

 

ハリーはそう冷たく言う。

ハーマイオニーは心配そうにそんな二人の間に入る。

 

ほんの僅かな時間が流れる。

 

「いいんだ。気にするな」

 

何か(謝罪)を言おうとしたロンに先んじてハリーがそう言った。

 

「いや、僕、もっと早く、」

 

それでもロンは言おうとする。

 

「気にするなって」

 

それを遮りハリーがそう言う。

 

言葉が終わりロンがおずおずと笑いかければ、ハリーも笑い返した。

 

「二人とも、ほんとに大バカなんだから!」

 

ハーマイオニーはワッと泣き出した。

 

ハリーもロンもおろおろする。

 

「クックック、確かにそうだな?ハリー、ロン。二人ともハーマイオニーに散々、迷惑かけたからな」

 

刀原はそんな三人を見て笑う。

 

「確かにそうですね。二人とも、ハーマイオニーに謝罪を」

 

雀部がハーマイオニーの前に腕組みしながらそう言えば「「ごめん、ハーマイオニー」」と二人は謝った。

 

「許しますとも」

 

ハーマイオニーは泣きながらも言う。

 

「はい、じゃあ、解決!」

 

それを確認した刀原がニコッと笑い、手をパンッと叩きながらそう言った。

 

こうして、再び仲良し五人組に戻ったのだった。

 

 

 

 

第一の課題はこれにて終了となった。

 

次の課題は二月二十四日。

 

ヒントは卵の中にあるとのこと。

 

しかし早速卵を開けたが、開けた途端に世にも恐ろしい大きなキーキー声の咽び泣くような音が響いただけだった。

 

なんだこりゃ?

 

刀原は耳を塞ぎながら、首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

*1
というかいちゃもん

*2
ちなみに言われてるのがこれらである。

 

「どのような形であれ、先生方からの援助を頼むことも受けることも許されない」

「選手は杖、あるいは斬魄刀を武器として携帯を許される」

 

つまり簡単にまとめると…。

 

『教職員からの協力の禁止』

『杖、斬魄刀以外の武器の使用禁止』

 

である。

 

つまり、今まさに刀原たちが行っていること…。

 

『スパイ活動、および課題内容の情報収集、諜報活動』

『生徒間での協力』

『他校間での課題内容についての討論、及び合同作戦会議と調査』

 

は禁止事項では無いのだ。

 

最も、代表選手本人がそれをする可能性は『生徒間での協力』を除いて少ない。

卑怯だと考えるだろうからだ。

 

だが、それに当てはまらない者もいる。

 

*3
なお、心の中ではサムズアップしている

*4
刀原、日番谷、雀部、雛森が主に挙げられる。

 

阿散井は鬼道が苦手の為、斬魄刀を使う他無いのだが、彼の『蛇尾丸』では制圧が厳しいだろう。

黒崎も同じ理由で厳しい。

井上は西洋魔法に特化しているため難しい。

留守番している吉良の『侘助』ならその能力から可能かもしれない。

 

といった感じだ。

*5
なお、何故か野次が飛んだ。

その内容は……。

 

「殺すなよ!手加減しろよ!」

 

「行け!やっちまえドラゴン!お前なら出来る!」

 

「あまり本気を出すでない!」

 

である。

 

当然ながら日本語だ。

 

*6
ちなみに刀原の戦法はというと……。

 

ドラゴンが疲れるまでブレスを吐かせ、自身は『断空』でひたすら耐久する。

 ↓

ドラゴンのブレスが途切れた瞬間、瞬歩で一気に接近し、『双骨』を叩き込む。

 ↓

それだけではどうせダメなので、縛道の『六杖光牢』『百歩欄干』『鎖条鎖縛』による三連コンボに『倒山晶』『五柱鉄貫』を間髪入れずに打ち込む。

 ↓

作戦終了

 

といった感じだ。

 

なお、雛森の作戦は『双骨』の代わりに『双蓮蒼火墜』を叩き込むこと以外同じであるらしい。

 

*7
ハリーがディメンターによって落っこちた時

*8
なお、ハリーについて絶賛ネガティブキャンペーン中のスリザリンは『公開処刑』『生け贄』『餌』などと叫んでいた。

*9
『冷静さを失わないこと』

ハリーが最も意識するのはその一点にある……

 

刀原はこれをハリーに言い聞かせていた。






見たもの
聞いたもの

それが真実だなんて

誰が決めたんだい?



大変お待たせ致しました。



BLEACHメンバーは殺傷力高い連中ですから……。
さすがに……殺しちゃ駄目だよね……。


映画ではドラゴンとのドッグファイトをしていたハリーですが、小説ではそんなことしてません。
結構地味です。

映画版を文字で表すのは正直に言って手間だったので、小説版を採用しました。

あと、映画版観客サイドで見ると何が起こってるのか分からないんですよね。



感想、評価、お気に入り。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


さて次回は

クリスマスパーティー

次回もお楽しみに。



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