いま
一世一代の
大勝負をする
Shall we dance
Are you ready?
第一の課題で手に入れた金の卵は、第二の課題のヒントになっているらしい。
それを聞いたハリー達は、宴会が行われているグリフィンドール寮内で意気揚々と卵を開け、後悔した。
聞こえてきたのは絶叫。
大絶叫だった。
ヒントも糞もない、なんだこれ?
「まあ、一筋縄じゃあ行かねぇよな……」
刀原はそう言った。
「一筋縄どころではないですけどね……」
雀部は半ば呆れながらそう言った。
これも課題の一環なのだ。
ならば、頭を捻るしかない。
だがとりあえず、一先ずは。
この
二人はその考えで一致し、宴会に戻った。
「此方に注目なさい!」
『変身術』のクラスにて、マクゴナガルの半ばイライラした声が教室中に響く。
何かしらの話をしようとしていたらハリーとロンが『だまし杖』という双子が発明したグッズを使ってちゃんばらをしていたからだ。
「全く、ポッターもウィーズリーも、歳相応な振る舞いをしていただきたいものです」
マクゴナガルは二人を睨みながら言う。
「全くね」
「そうだな」
「その通りです」
ハーマイオニー、刀原、雀部がうんうんと頷きながら言えば、何人かがクスクスと笑った。
「さて、皆さんにお話があります」
二人を叱ったマクゴナガルが真面目な感じで言う。
「クリスマス・パーティーが近づいてきました。
刀原はこれを聞いて苦笑いをした。
しかし見た目も良いメンバーなので、引く手あまただろうなとも思っていた。
「パーティーにはドレスローブを着用すること」
マクゴナガルのこの一言で、ハリーやロンの顔は「あ、あれか!」といった感じになった。
「ダンスパーティーは大広間にて、クリスマスの夜八時に始まり、夜中の十二時には終わります。つまり……クリスマスのダンスパーティーは私たちにとっては……羽目を外すチャンスだということになります」
マクゴナガルは渋々認めるといった声でそう言った。
「しかし、だからといって……決して、羽目を外しすぎて良い訳ではありません。グリフィンドール生がどんな形にしろ、学校に屈辱を与えるようなことがあれば……私としては大変遺憾に思います」
ハンガリー・ホーンテールと戦うのと女の子をダンスパーティーに誘うのとどちらがいいかと言われら、前者だとハリーは言った。
クリスマスにホグワーツに残留する生徒のリストには、ダンスパーティーに参加出来る四年生以上の生徒全員の名前が載っていた。
「どうして女子たちって、塊って動かなきゃいけないんだ?」
廊下で通り過ぎる女子集団を見ながら、ロンはハリーと刀原にそう言った。
「さあな」
刀原はそう言えばそうだなと思いながらそう言った。
女子が集団を組むのは日本も同じなのだ。
「いいよな、君たちは苦労しないで……」
ハリーと刀原の方を見てロンが言う。
「ハリーは代表選手だろ?ハンガリー・ホーンテールもやっつけたばっかりだ。みんな君の前に行列を作って行きたがるよ」
ロンが首を竦めながらそう言う。
「まあ、ハリーはそうだろうが……俺もか?」
刀原がそう言えば、ロンは溜息を吐く。
「君もある意味特別な存在だからね?ショウは全生徒中ホグワーツ最強って陰で言われてること、気が付いてないのかい?」
そんなロンの言葉に、刀原は口をあんぐりさせながら「初耳なんだが……」と言う。
「実力を持っている、容姿も良い。だからワンチャンを狙ってくる女子も多いんじゃないか?ダメ元でって奴さ」
「んな馬鹿な」
半ば呆れたようにそう言ったロンに、それはあり得ないと刀原は一蹴する。
「まあ、確かにショウにはもうパートナーがいるもんね」
ハリーは羨ましそうに言う。
「さあてな?」
パートナーというか相棒というか……。
まあ、誘う相手はもう決めているしな。
しかし、容姿が良いって……。
刀原はそんな風に考えていた。
だが。
「一応聞くのだけど……パートナーはもう決まったのかしら?」
「?いえ未だですが?」
「!?え、本当?じゃあ、もしよければ私とどう?」
「あー」
「あの、えっと、パートナーはもういますか?」
「まだだけど……」
「えっ、そうなんですか?じゃ、じゃあ…私とパートナーになって頂けませんか?」
「あー」
マジか、本当にあったよ、信じらんねぇ。
刀原はそんな思考だった。
まず声をかけられたのが、六年生の女子*1、次が三年生の子だった。
他にも二名ほど。
「いえ、すみません。申し訳ありませんがお断りさせて頂きます」
刀原がそう断れば、全員が「あ、やっぱりそうよね……。ありがとう、聞いてくれただけでも嬉しかった」と言って立ち去っていくのだ。
なんで相手は納得して立ち去るんだ?
刀原には
そしてそれをホグワーツやマホウトコロの男子陣に言ったところ……。
「何言ってんだお前?」
全員がそんな顔をした。
何故だ。
「誘ってくれるでしょうか?」
「大丈夫よ、きっと」
そう言うのは雀部とハーマイオニー。
常に共に居て、共に行動する人。
今回のダンスパートナーに真っ先に誘ってくれると思いきや、そんなことは無く……。
案の定、他の女子達に誘われている始末。
まあ、断っているのが幸いか。
「とりあえず、諦めるには早いわ」
「そうですね。待ってみます」
雀部はそう言ってハーマイオニーと別れた。
そして数分後。
「ちょっといいかい?」
雀部は知らない男子生徒から、また声をかけられた。
その頃。
「…何を緊張することがある」
刀原は緊張気味にそう言っていた。
刀原としては早めに目的の人……相棒といつも通り一緒に行動し、いつもの会話の様に誘うつもりだった。
だが、何故か切り出すことが出来ず……こうしてずるずると時が過ぎてしまったのだ。
「……よし。覚悟を決めるんだ」
刀原はそう決意し、相棒の元に向かうが……。
「すまないハーマイオニー、雷華にちょっと個別の用があるんだ。……あー、内密の用なんだが……雷華は?」
「ごめんなさい。さっき別れてしまったのよ」
なんと居なかった。
「分かった。ありがとうハーマイオニー」
刀原は一瞬面食らうが、直ぐに感謝を伝える。
そして霊圧感知で場所を探り、相棒の元に向かった。
「僕とダンスパーティーに来てくれないか?」
雀部は数えるのも飽きた、お誘いを受けていた。
「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。待っている人がいますので」
幾度となく言ってきた
ダメ元でやって来たホグワーツ生や、自信満々で来たダームストラングの生徒……。
一度断れば全員*2が諦めた。
だが、この生徒は諦めないらしい。
「そう、か……そうだよな。でもさ、君が」
しつこい。
雀部がそう思った瞬間。
【雷華!】
最も聞き慣れた日本語で、聞きたかった人の声が聞こえた。
パッと振り向く。
そこには待ち焦がれた人がいた。
【しょう君!】
雀部が見知らぬ男子に声を掛けられているの見て、刀原は不快になる。
気に入らねぇな……。
雀部の方も、不快になっている様に見える。
【雷華!】
【しょう君!】
刀原がそう呼び掛ければ、雀部が笑顔になりながら刀原の方にパッと振り向く。
【知り合いか?】
念のため、刀原はそう聞く。
【いいえ、違います。何でも、私と共にダンスパーティーに行きたいとのことで】
雀部はそんな問いにあっけらかんと答える。
【まあ、もう断りましたが】
【……良かった】
そして既に断ったことを伝えれば、刀原は小声で安堵の言葉を伝える。
「さて、再度お伝えします。申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」
雀部はペコリと頭を下げながら言う。
先ほどから蚊帳の外になっていた男子生徒は、青い顔になっていた。
「すいませんでした」
そしてその一言と共に生徒は頭を九十度下げ、逃げるように立ち去って行った。
【さて、改めて言うぞ雷華】
【はい】
刀原が真剣な顔で言えば、雀部も真剣な顔で答える。
【俺と共にクリスマスのダンスパーティーに来てくれないか?無論、パートナーとして】
刀原はフーっと息を吐いた後、ゆっくりと言う。
【もちろん、喜んでお受けいたします。よろしくお願いしますね、しょう君?】
雀部はその誘いにニッコリと笑いながら受ける。
【こちらこそだ、雷華】
刀原はそう言いながら、安堵したのだった。
他校の客人が来ている中、ごく普通の飾りつけでは沽券に関わるとホグワーツの飾りつけ担当は考えたらしい。
かくしてホグワーツはクリスマスに向け、最高に素晴らしい飾りつけが成されていった。
大理石の階段の手摺には氷柱が下がっており、十二本のクリスマスツリーの飾りには赤く輝く柊の実や、ホーホー鳴く金色のフクロウまで盛り沢山だった。
そんな中、ハリーとロンは談話室で深刻な顔をしていた。
「我々は、歯を食いしばってやらねばならぬ」
ロンは、今から砦に攻め込む計画を練っているかのような顔で言った。
刀原が重爺みたいに言うな……と呑気に思っている中、ハリーはうんと頷く。
「今夜、この談話室に戻るときには二人ともパートナーを獲得している……いいか?」
「オッケー」
ロンの言葉にハリーは頷きながら言う。
「オッケーとは言うが、なにか当てでもあるのか?」
刀原はそうハリーとロンにそう聞く。
するとロンはサッと顔を背け、ハリーは顔を複雑な色にした。
「なんか情報ないの?誰が誰と行くとかさ」
ロンは背けた顔を戻して聞く。
刀原は「
「とりあえず、俺は決まった」
「知ってる」
「相手もね」
自身を指さすと二人は頷く。
刀原が雀部とペアになった事は、当人たちが公表していないにも関わらず、周知の事実になっていた。
ここ最近、何処となく不機嫌だった雀部に笑顔*3が戻っているのが動かぬ証拠らしい。
「あと、マホウトコロの連中は当の昔に決まってる」
マホウトコロの連中には、この場が国際交流の場であることなどお構いなし。
彼らは身内同士でペアを組んだのだ。
つまんねー奴らだな。
刀原は一瞬そう思ったが……。
自身とてそうなのだから*4口には出せなかった。
「ハーマイオニーは?」
「さぁ?分からん、情報は無いな。だが相手はいるみたいだぞ?ライカがそう言ってた」
ロンの問いに刀原がそう答えれば、二人は「嘘だ…」といった顔になる。
常に一緒に居るから気付かないってやつか。
刀原は半ば呆れる。
「他は?例えば代表選手とか…」
「そうだな……最近、あんまり情報収集して無かったから……フラーは確かロジャー・ナントカって奴だった筈だ。本人から聞いた」
「フラー?」
ロンは刀原のフラーに対する呼び方に疑問を持った。
刀原は名前呼びの文化に未だ順応しておらず、友人以外は全員苗字呼びの筈なのだ。
「ああ。ほら、俺ってホグワーツの案内役だろ?そん時に本人から「デラクール呼びじゃ嫌だ」って言われてな……ライカと一緒にフラー呼びになった。同じ理由でクラムもそう呼んでる……ちなみにクラムの相手はホグワーツ生らしい、詳細は不明だがな」
刀原がそう言えば二人は、驚愕を露わにする。
特にロンは口をカクーンと開けたまま動かなくなった。
「あと、セドリックは誰だっけ…これも本人から聞いたんだが……確か、レイブンクローのチョウ・チャンだ。クィディッチ選手の。ハリーは良く知ってるだろ?セドリックとは同じポジション同士で良い……」
刀原はここまで言って気が付いた。
ハリーもロンと同じ顔になっていることに。
あ、やっべ。
刀原は「んじゃ、健闘を祈る」と言って
残った二人……特にハリーは呆然としたまましばらく動かなかった。
その後……なんとか持ち直したハリーは、再び刀原と雀部に情報を貰い……刀原達が裏で手を回していたジニーと*5一緒に行くことになった。
そしてロンはパーバティと一緒に行くことになった。
無事パートナーを見つけたハリーには、懸念がいくつもあった。
まず初めに、直近の問題としてダンス。
ハリーはダンスが出来なかったのだ。
刀原も見てみたが、かなりギクシャクしていた。
「ハリーは一応代表選手なんだし……それに、折角パートナーになってもらったジニーに恥を搔かせられないよな?まあ、頑張れ」
刀原は呑気に言えばハリーはブスッとする。
「ならショウは出来るの?」
「ふ、出来なかったらこうして、呑気にクッキー食べてると思うか?」
ハリーの言葉に刀原は勝ち誇ったかのように言う。
刀原は夏休み期間中、休みの合間を縫っては雀部と練習していたのだ。
講師役には雀部長次郎がいた為、練度に関しても文句は付けられない。
対策はバッチリというやつだ。
そもそも……五歳の頃からほぼ毎日一緒に居た雀部とは、息ピッタリなのだ。
苦戦はあり得なかった。
「せっかく雀部が練習相手になってくれてるんだ。とりあえず練習あるのみ、頑張れ」
「そうです。頑張りましょう!」
刀原と雀部はそう言うが……残念ながらハリーのギクシャク感は本番当日まで抜けなかった。
次に、第二の課題に対する対策だ。
第一の課題がドラゴンだったことからも分かる通り、やはり対策をしてないとマズイ事態になるのは確定だ。
刀原、雀部、ハーマイオニーからなる対策陣は、ハリーに対し「二月二十四日まで“約二か月しかない”のだから、金の卵の解明を急ぐべき」と再三言っているのだが……。
当の本人は“まだ約二か月もある”としているのだ*6。
シリウスから第一の課題について祝福と、警戒を怠るなという内容の手紙にも「あーはいはい」という感じだった。
「とりあえず……年明けから本格的に動けば、間に合うだろう……」
刀原は雀部とハーマイオニーと共に溜息を吐きながらそう言った。
クリスマス当日。
どうにかしてくれと頼まれたロンのドレスローブの
俺は下にはスーツを着こなし、上には黒く大きめの羽織をマントの様に羽織っていた。
羽織は夜姉が、スーツは京楽兄がねだっても無いのに用意してくれた一品であり、特に羽織は金色の刺繍が淵を囲んでいる物で……値段の想像が出来なかった。
そして普段は手に持っている斬魄刀も腰に差し、鏡の前に行く。
くるっと回る。
ネクタイ良し、ベスト良し、雀部副隊長から貰った懐中時計も良し。
羽織るならジャケットは着ない方が良いって京楽兄が言ってたな。
……個人的には、和装にしたかったが。
「雷華ちゃんはドレスなんでしょ?だったら将平君も洋装にしなくちゃね。よし!僕が見繕ってあげるよ」
なんて言われたら断れないし、確かにそうだった。
……駄目だな、バジリスクの時より緊張する。
「ショウ!君、バッチリ似合ってるよ!」
「おう、ありがとう。ハリーも決まってるな」
ハリーの褒めに俺はそう返し、一足先に談話室へと向かった。
談話室はいつものような黒いローブでは無く、色とりどりのドレスなどで溢れ返っていた。
雷華は、まだの様だな。
そう思っていると、雷華がゆっくりと女子部屋の階段から降りてくる。
白を基調としながら中心には黒地に金の刺繍があり、裏地は青色のドレス。
綺麗だ……。
少し……何というか、圧倒される。
「待たせてしまいましたか?」
「いや、今来たばかりだよ雷華」
では行こうか?
そう言った俺の声は震えていなかっただろうか?
そう思いながら、エスコートのために腕を出す。
雷華は嬉しそうにその腕に捕まり、俺たちはゆっくりと大広間に向かった。
だから
もっとも、組んだ相手以外の相手など全く考えてなかったし考えられなかったが。
そこでハリーが
なお……これで困ったのが、ネビルである。
彼はハーマイオニーに断られたあと、ジニーに声を掛けたのだ。
最後の望みとして。
刀原達はジニーから推薦を貰い、ネビルは彼女の友人でもあるレイブンクローのルーナという少女と共に行くことになったのだった。
雷華のドレス衣装は、容姿のモデルとなっているアルトリア・キャスターの第三再臨の衣装を想像していただければと思います。
一つにまとめると一万二千文字になるため、前編と後編に分けました。
後編は来週になります。
お楽しみに。
感想、評価、お気に入り。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
さて次回は
クリスマスパーティー 後編
次回もお楽しみに。