ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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ひとつの綻びが崩れ

それはやがて大きなものとなる

私は知るのが遅すぎた

もう取り返しがつかない

そして、せめて罪滅ぼしにと

私はそれを作ってしまう

より大きな綻びなるとも知らないで。







死神、護衛する。狂気と第三の課題 前編

 

 

 

第二の課題が終了したことで、人質役になった者も一時期脚光を浴びるようになった。

 

その一人であるロンは、人質になるまでの経緯を周囲に話していた。

 

まあ、最初はおそらく本当のことを言っていたが、次第にスリルに満ちた誘拐話に変わっていったが。

 

ハリーはとりあえず冷たい湖で寒中水泳をせずに済むことに安堵し、次に対抗試合にて比較的優位に立っているということを自覚していった。

 

そしてハーマイオニーは、クラムが一番失いたくないものが自身だったことを周囲がからかったり冷やかしたりするので、結構気が立っていた。

 

 

ハリーは対抗試合が始まった当初からシリウスと頻繁に手紙のやり取りをしていた。

 

そして第二の課題も終わり、いよいよハリーを狙う輩も本腰をあげるだろうと考えたシリウスは、次のホグズミード行きの日程に合わせてやって来るそうだった。

 

そしてハリーは目に見えて機嫌が良かった。

例え次の授業が魔法薬学の授業だったとしてもだ。

 

「鰓昆布とは、また考えたものだな?ポッター。珍しい植物だ、そこら辺に這えているようなものではない。我輩の保管庫からは……盗んではいないようだが」

 

スネイプが嫌味ったらしくそう言う。

 

やっぱりあったか、危ない危ない。

刀原はそう思っていた。

 

「だが、おまえの頭で考えたものではないだろう?それに入手方法もだ……。大方、親切で優秀な人物がバックにいて……おまえは何もしていない……そうだろう?」

 

うぐっ。

 

ハリーが一瞬固まる。

バック(刀原と雀部)は知らん顔をする。

 

「まあ、良い。だが、気を付けねばなりませんな……怪しまれますぞ?」

 

その言葉、そっくりそのまま返しますよ。

 

ハリーはそう思った。

刀原と雀部もそう思った。

 

なんなら殆どの生徒がこう思った。

 

怪しいのはおまえだと。

 

 

 

 

 

 

ホグズミードに行く日、五人はダービッシュ・アンド・バングズという店を過ぎた所の柵で午後二時に落ち合おうというシリウスとの約束のため、曲がりくねった小道を進んでいた。

 

暫く歩くと黒髪でスーツを着た男性が見えてきた。

 

「シリウス!」

 

「やあ、ハリー」

 

ハリーはシリウスに駆け寄り、熱い包容をかわす。

 

「みんな、来てくれてありがとう。夏以来だね?」

 

そう言うシリウスは去年よりも立派な服に身を包み、肉つきも良くなっていた。

 

「ショウ、ライカは久し振りだね。去年よりも心なしか立派に見えるよ。ロンやハーマイオニーもそうだが、ハリーのことを支えてくれてとても感謝している」

 

シリウスは刀原と雀部に向かってそう言う。

 

「お久しぶりだ、シリウス。ハリーのことは当然だ」

 

「それと、夏の招待には応じられなくてすみません」

 

「いや、ハリーからは事情を聞いているから問題ないよ。それに日本の和菓子が最高だったしね」

 

シリウスは刀原と雀部にそう返し、ウィンクする。

 

「それは良かった」

 

「選んだかいがありました」

 

二人は満足そうに頷いた。

 

 

「ハリー、みんなも……ますますきな臭くなっていることは何と無く分かるだろう」

 

シリウスはそう言って日刊予言者新聞を示す。

 

『バーテミウス・クラウチの不可解な病気』

 

『魔法省の魔女、未だ行方不明 本格捜査へ』

 

「ワールドカップでの闇の印の一件。魔女が行方不明。それと、先日ハリーが言ってきたカルカロフとスネイプの左腕の件。私はこれが繋がっているように思えてならない」

 

シリウスはそう警戒するように言う。

 

「シリウス、英国魔法省の動きは?」

 

「鈍い、非常に鈍い。漸く動き出したのも、あくまで格好だけと言った感じだ」

 

刀原の問いにシリウスは苦虫を噛み潰したような顔で、愚痴るように言う

 

「格好だけ、ですか?」

 

「ああ、『闇祓い』の中でもまともに受け止めているのは少ない。私、キングズリー、トンクス、スクリムジョールくらいか」

 

雷華が信じられないと言った顔でそう言えば、シリウスはまったくと言った顔で言う。

 

「楽観的だな……」

 

刀原はそれらを聞いて項垂れた。

 

 

「クラウチのことについてもそうだ。あいつは病気などで休むような男ではない。厳しい男だ、自分にも他人にも……。すばらしい魔法使いなのは認めざる得ないだろうが」

 

シリウスは苦々しい顔で言う。

 

「クラウチをよく知っているの?」

 

ハリーの言葉に「ああ、まあね……」とシリウスは歯切れが悪そうに言った。

 

「暗黒の時代、ヴォルデモートが全盛期の時、クラウチは頭角を現した。誰を信じて良いか分からない時代に、はっきりと闇の陣営に対抗していたからね。『魔法執行部』の部長になった彼は、闇の陣営に対し極めて厳しい措置を取り始めた。『闇祓い』達にとある許可を与えたのだ」

 

「とある許可?」

 

ハーマイオニーが首を傾げる。

 

「ああ。尤も、ヴォルデモートが台頭する前の時代、グリンデルバルドの時代にもあったらしいが……」

 

シリウスの言葉にハリー達は悩む。

 

「大方……殺しの許可、だろ?」

 

刀原が言う。

 

「……その通りだよショウ。目には目を歯には歯を、暴力には暴力を。疑わしいものには『許されざる呪文』の使用を許可したのだ」

 

「そんな……」

 

シリウスは刀原の答えに頷く。

 

ハーマイオニーは信じられないと言った顔だ。

ハリーとロンもだ。

 

刀原と雀部は逆に感心していたが。

 

「君らは肯定的なのか?これがどんなに危険で恐ろしいことか理解できる筈だ……」

 

二人(刀原、雀部)の反応が他の三人(ハリー達)とは違っているのを見たシリウスが、不思議そうに見る。

 

「肯定的……では無いが……」

 

「私達は、違いますからね……」

 

二人はバツが悪そうに言う。

 

「違う?」

 

「そんなことは……」

 

「いや、決定的に違う」

 

ハリーやハーマイオニーがそんなことはないと言うが、刀原は即座に否定する。

 

「私達は魔法も使いますが、結局は魔法使いではありません。死神です。そして将来は護廷十三隊の一員になる者達です。最終的に魔法は生活にのみ使うことが多くなります」

 

「切った張ったをするのが俺達だ。時には白刃を交じり合わせ切り合いをする。そこに躊躇いはない」

 

「躊躇すれば切られます。仲間を守れません」

 

「汝、友を、家族を、愛する者を、護廷を守りたくば、眼前の敵を切るのを躊躇うな」

 

「時には躊躇いが無粋になると知れ」

 

「それが俺達、死神の戦闘の心得です」

 

「第一、殺す者も殺される覚悟をするのが普通です」

 

二人はそう語った。

 

「……そうか、君達の強さが分かった気がするよ」

 

シリウスがそうポツリと言う

 

「ああ、ですが、それはあくまでも殺しの場合です」

 

雀部がさらりと補足する。

 

「服従、磔を疑わしき者にやるつもりはない」

 

「裁判無しで刑務所に送るのもです」

 

「それを聞いて少し安心したよ」

 

シリウスはそう言うが、ハリー達三人はドン引きしていたようにも見えた。

 

 

「話しを戻すよ。ヴォルデモートがいなくなった時、クラウチが魔法大臣に就くのは時間の問題だと思われた。しかし、それ待ったをかけた事件が起きた」

 

「事件?」

 

「ああ、クラウチの実の息子が『死喰い人』の一味と一緒になって捕まったんだ」

 

「死喰い人と?」

 

「本当なの?」

 

クラウチの息子が死喰い人。

 

一大スキャンダルだ。

 

「その息子は本当に死喰い人だったのか?」

 

「ただ単に居合わせただけの可能性だって……」

 

刀原と雀部の問いにシリウスは「わからない」と首を振りながら答える。

 

「いずれにしろ……あの時クラウチの息子と一緒に捕まったのが、死喰い人だったのは間違いない。それも、より過激な奴らだった……」

 

シリウスがまとめるように言う。

 

「息子さんはその後、アズカバンに?」

 

雀部がシリウスに聞く。

 

「嘘、流石にそこまでは……」

 

ハーマイオニーが信じられないと言う。

 

「ライカの言う通りなんだよハーマイオニー。一応親の情けで裁判にはかけた……それとて格好だけだったがね。半分はアピール目的だ」

 

シリウスは苦々しい顔で言う。

 

非情な男だ。

 

「十九歳になるかならないかだった、最初は泣き叫んでいたが……連れてこられて約一年後には死んだよ」

 

「死んだ……」

 

「死際、クラウチ夫妻が面会に来た。婦人はかなり憔悴していてね……息子の後を追うかのように亡くなったらしい。クラウチはすべてをやり遂げたと思ったら、すべてを失ったと言う訳だ」

 

「それは、なんと言うか……」

 

雀部が痛々しそうに言う。

 

「クラウチの息子には同情が少し集まった。れっきとした家柄で、成績も良く、立派な若者が何故?とね。結論は、父親が構ってやらなかったから、となった」

 

「構って欲しさにそう言うことをした、か……」

 

「最終的にクラウチは『国際魔法協力部』に事実上の左遷となり、繰り上げ人事もあってコーネリウス・ファッジが大臣に就いた」

 

シリウスの語りは終わり、沈黙が流れた。

 

 

ハリー曰く、以前深夜にクラウチはスネイプの保管庫に入っていたらしい。

 

それが何故かはわからないが、クラウチには考えがあるのだろうとシリウスは言う。

 

「気を付けてハリー、何か大きなことが起きる気がするんだ。用心してくれ……」

 

シリウスは懇願するようにハリーに言う。

 

「ロン、ハーマイオニー。ハリーを頼む」

 

同じようにロン達にも言う。

 

「ショウ、ライカ。ハリーを守ってあげてくれ」

 

そして刀原達にも言う。

 

「分かった」

 

刀原はそう言う。

 

シリウスは最後に見送ると言い、ホグワーツへの道ギリギリまで付いてきた。

 

「……シリウス。クラウチの息子の名前は?」

 

刀原は最後にそう聞いた。

 

「確か……バーテミウス・クラウチ・ジュニア。だった筈だが……それがどうかしたかい?」

 

シリウスは不思議そうに言う。

 

「いや、気になっただけだ」

 

刀原はそうシリウスに返す。

 

忍びの地図がマッド・アイに取られたのは痛いな……あれで色々と確認出来たんだが。

 

刀原はそう思いながら、ホグワーツに戻った。

 

 

 

 

 

 

日にちはあっという間に過ぎる。

 

そんなイースターも過ぎた五月の最後の週。

 

マクゴナガルがハリーと刀原を呼び止めた。

 

「ポッター、今夜九時にクィディッチ競技場へ行きなさい。そこで第三の課題を代表選手に説明します。それと、トーハラはそれに同行するように」

 

「同行……ですか?」

 

マクゴナガルの言葉に刀原はそう聞き返す。

 

「ええ、ポッターの件しかり、最近何やらきな臭いので……開催校であるホグワーツから、防衛戦力を出して欲しいとのことで。申し訳ないのですが……」

 

「……そう言うことでしたら、喜んでお引き受けいたします。お任せください」

 

刀原の言葉にマクゴナガルは本当に申し訳なさそうに「……よろしくお願いしますね?」と答えた。

 

そして玄関ホールを横切る途中でセドリックと合流しながら、刀原はハリーと共にクィディッチ競技場へ向かった。

 

「今度はなんだと思う?フラーは地下トンネルで宝探しをやらされると思っているらしい……」

 

セドリックは石段を下りながらそう話す。

 

「それならいいけど……」

 

ハリーはそう言う。

 

大方、先日ハグリッドから授業を受けたニフラーを借りて、探させるつもりだな?と刀原は思っていた。

 

そんな話をしながら三人は芝生を歩き、クィディッチ競技場のピッチに出た。

 

「あれまあ……」

 

「一体、何をしたんだ!?」

 

刀原は唖然とし、セドリックは憤慨した。

 

平らで滑らかだったクィディッチのピッチが、四方八方に長く低い壁が張り巡らしていたのだ。

 

「生け垣だ!」

 

その壁を調べたハリーがそう言う。

 

「よう、来たな」

 

バグマンはそう元気良く呼び掛けてくる。

側には日番谷達、代表選手も既に来ていた。*1

 

「さあ、どうだね?しっかり育ってるだろう?あと一ヶ月の経てば、ハグリッドが六メートルほどの高さにしてくれる筈だ……」

 

「ろ、六メートル……」

 

セドリックがそう言う。

 

「ああ、心配は無用だ。課題が終わればピッチは元通りにして返すよ!」

 

バグマンが付け足すようにそう言った。

ホグワーツのクィディッチ選手であるハリーやセドリックの顔がご機嫌麗しくない(ちゃんと責任もって直すよな?ああん?)のを見たためだ。

 

「さて、私達がここに何を作っているのか、君達は想像できるかね?」

 

「迷路だろう?」

 

バグマンの問いに日番谷が即答する。

 

「その通り!迷路だ」

 

正解だとバグマンが言う。

 

「第三の課題は極めて単純で明快、迷路の中心に置かれる優勝杯を取ること。最初にこの優勝杯に触れた者が優勝、というわけだ。」

 

バグマンが楽しそうに言う。

 

「迷路を早く抜けるだーけですか?」

 

フラーが言う。

 

「いや、障害物がある。ハグリッドが色々な生物を置いたりしているし、様々な呪いを破らなければ進めない。まあ、そんな感じだ」

 

バグマンはそう言う。

 

「さてと、迷路に入る順番だが……これまでの成績で決める。点数がリードしている選手が先にスタートする……まず、ミスター・ヒツガヤ」

 

バグマンはそう言ってまず日番谷を見る。

 

「次にハリーとセドリック、その次にミスター・クラム。最後にミス・デラクールとなる。しかし、全員に優勝出来るチャンスがある。まあ、障害物をどううまく切り抜けるかによるけどね。おもしろいだろう?」

 

面白いかはともかく、代表選手達は頷く*2

 

「よし、それじゃあ戻ろうか」

 

バグマンがそう言ったため、全員が育ちかけの迷路を抜けて外に出ようとする。

 

「ちょっと君と話したいんだけど?」

 

ハリーと刀原もそうしようとしたが、クラムがそう言ってハリーの肩を叩いたため立ち止まる。

 

「ああ、いいよ」

 

ハリーはちょっと驚きながらもそう言う。

 

「俺も同行して良いか?」

 

「……いいよ」

 

刀原はそう聞き、クラムは少し悩んだあと渋々といった感じでそう答えた。

 

 

 

 

 

 

「知りたいんだ。君とハーマイオニーとの関係は、どんな関係なのか……をね」

 

禁じられた森の方に向かいながら、クラムはハリーに対してそう言った。

 

クラムがハリーに何を話すのか気になったが、内容がハーマイオニーとハリーの関係だったことに、俺は半ば拍子抜けしていた。

 

クラムはカルカロフ(最重要容疑者)の生徒であるため、半ば警戒していたのだが、杞憂だったか。

 

「何もないよ。僕たち友達なだけだ」

 

ハリーはこう言うがクラムは疑う。

 

「彼女は、しょっちゅう君のことを話題にする」

 

「友達だからだよ」

 

「君達は、一度も?」

 

「一度もないよ」

 

クラムは怪しむが、ハリーは否定する。

 

「……ショウ」

 

「本当だよ、間違いない。ただの交遊関係だ」

 

俺もそう言って頷く。

 

それをようやく信じたのか、クラムは少し気が晴れたような顔をして、再度ハリーを見てこう言う。

 

「君は、飛ぶのが上手いな。第一の課題の時、僕、見ていたよ……」

 

ハリーはニッコリと笑い「ありがとう」と言った。

 

「僕、クィディッチ・ワールドカップで君のこと見たよ。ウロンスキー・フェイント。君って本当に、」

 

その時、クラムの背後の林の中で何かが動いた。

 

「ハリー、クラム!俺の背後に!」

 

即座に鯉口を切れるように構えながら、二人を背後に移動させる。

 

ハリーも今までの経験から、本能的にクラムの腕を掴みながら俺の背後に移動する。

 

「何だ?」

 

クラムがそう言う。

 

油断なく気配がある方を見ていると、大きな樫木の陰からよろよろと男が現れる。

 

「まさか……クラウチさんか!?」

 

俺は目を見開く。

 

クラウチさんは何日も旅をしてきたかのように、ローブはボロボロで、顔は傷だらけ、無精髭も伸び、疲れきっていたようにだったのだ。

 

おまけにきっちりと分けられていた髪のボサボサで汚れており、明らかに不審者だった。

 

だがそんな格好より、行動が不審者だった。

 

ブツブツと何か言いながら、身振り手振りで見えない誰かと話しているようで……。

それはまるで麻薬患者のように不気味だった。

 

「確か、審査員の一人ではないのか?」

 

クラムがそう言う。

 

「ああ……。クラウチさん、大丈夫ですか?」

 

俺はクラウチさんが一種の極限状態かつ錯乱状態だと判断し、慎重に接近しつつ声をかけた。

 

だがクラウチさんはブツブツ言ったままだ。

 

内容的に、今回の対抗試合についての調整をしている話だったが……。

 

「クラウチさん?」

 

ハリーも声をかけるが、効果は無い。

 

完全にラリっているようだった*3

 

「この人、いったいどうしたの?」

 

「分からない……」

 

クラムもハリーも、クラウチの異常性に戸惑っているようだった。

 

「ダンブルドア!!」

 

「うわっ!」

 

クラウチさんが突然叫び、手を伸ばす。

 

思わずサイドステップで避けてしまい、クラウチはハリーのローブをグッと握り締める。

 

「私は……会わなければ……ダンブルドアに……」

 

あらぬ方を見ながらそう言う。

 

「分かりました。一緒に行きますよ……」

 

ハリーはそう言う。

 

「私は……馬鹿なことを……してしまった……」

 

クラウチさんが後悔しているように言う。

 

「どうしても……話す……警告を……ダンブルドアに……」

 

目は飛び出しているようで、それに加えてぐるぐる回り、涎もだらりと垂れていた。

 

ヤバイな……。

 

「ありがとう、それが終わったら紅茶を一杯貰おうか。今夜はファッジご夫妻とコンサートに行くのだ。妻と息子も一緒にね」

 

すると、いきなり木に向かって流暢に話し始めた。

 

「そうなんだよ。息子は最近『O・W・L(ふくろう)試験』で十二科目もパスしてね。満足だよ。いや、ありがとう。全く、鼻が高い」

 

尋常ではない。

 

妻や息子は既に死亡しているはずだ。

 

「ハリー、呼び掛け続けてくれ!とりあえずダンブルドア校長を呼ぶ!」

 

俺はこのままではマズイと判断する。

 

「え、そんなこと出来るの?」

 

ハリーがそう聞いてくる。

だが、返答をしている暇はない。

 

「黒白の(あみ) 二十二の橋梁 六十六の冠帯 足跡・遠雷・尖峰・回地・夜伏・雲海・蒼い隊列、太円に満ちて天を挺れ 縛道の七十七『天挺空羅(てんていくうら)』!」

 

天挺空羅を使い、ダンブルドアへ。

 

「『トーハラよりダンブルドア校長へ。錯乱状態のクラウチさんを発見しました。かなり危険な状態です。ハリーを向かわせますので、急ぎ玄関ホールまで来てください!』」

 

メッセージを飛ばす。

 

その間もクラウチは支離滅裂な事を言い続けている。

 

「ハリー!ダンブルドア校長を玄関ホールに呼んだ!迎えに行ってくれ!」

 

「わ、分かった」

 

俺の言葉にハリーは頷き、ローブにしがみつくクラウチを何とか振りほどいて学校に向かって走り出そうとした。

 

だが走れなかった。

 

「私を……置いて……行かないでくれ!」

 

クラウチがハリーにしがみついているからだ。

 

「逃げて来たんだ……警告しないと……言わないと……ダンブルドアに……私のせいだ……全て……私のせいなのだ……バーサ……死んだ……私のせいだ……息子も……妻も……私のせいだ」

 

悔やむように、謝るように呟いている。

 

「ダンブルドアに……言わなくては……ハリー・ポッター……闇の帝王……より強くなった……ハリー・ポッター……警告を……」

 

「今からダンブルドアを連れてきますから!」

 

ハリーが叫ぶようにそう言ってクラウチを振りほどき、ホグワーツ城へ全力疾走した。

 

「とりあえずダンブルドアを待とう」

 

俺は相変わらずブツブツ言っているクラウチを見ながらそう言い、クラムは頷いた。

 

すると人の気配を察知すると同時に『失神呪文』が飛んでくる。

 

「ッ!?」

 

即座に反応して刀で呪文を弾く。

 

「誰だ」

 

「さてな」

 

のっそりと男が現れる。

 

ダメ元で聞いてみたが、やはり返答はない。

 

「見事だ、完璧な不意打ちだと思ったが」

 

「褒めたって何も出ねぇよ?」

 

そう言いながら刀を左手に持ち直し、左腕にあるホルスターから杖を取り出す。

 

「さて……残念ながら、ダンブルドアが来てもらっては困るから……君たちには気絶してもらう」

 

「そう簡単に出来ると思うか?」

 

「思うな」

 

「なめんな」

 

「「『ステューピファイ(麻痺せよ)』!」」

 

同タイミングで放った失神呪文は、俺と男の中心でぶつかる。

 

バチィイイ!!

 

ぶつかった呪文は一本の線となり、すぐに弾ける。

 

「小生意気で小賢しい日本のガキが……!」

 

「なんだ?人種差別か?受けて立つぞ?お?」

 

苦々しそうに悪態をついた男にそう言われ、思わずそう返す。

 

「邪魔をするな」

 

「お前が諦めて大人しくズゴズゴと帰るなら、邪魔も何もないぞ?」

 

最初こそ丁寧な口ぶりだったが、次第に乱暴な口ぶりに変わっていく。

 

「さてと…どうせお前、あの()()()()()()()()使()()のしもべの一人でしょ?」

 

とりあえず情報を収集するためと、ダンブルドア達が到着するまでの時間稼ぎの為に対話を試みる。

 

「頭のイカれた魔法使い?」

 

「あれ、違った?ヴォルデモート(頭のイカれた魔法使い)忠実なしもべ(笑)(不愉快な狂人たち)……でしょ?」

 

やっべ、つい隠語使っちゃったぜ。*4

 

「き、貴様ぁああ!」

 

「君らが求めてるハリーは居ないよ?ほらほら、さっさと()()()()()帰りなよ、見逃して()()()からさ」

 

「殺す!」

 

俺の言葉にそう言い返した男は即座に無言呪文を放ってくるが、そんなものは容易く弾き返す。

 

「許さん!あのお方を侮辱しt」

 

「破道の三十三『蒼火墜』!」

 

「は!? ぐわぁああ!!」

 

男は何やら言ってきたが、完全に隙だらけだ。

 

蒼火墜は吸い込まれるように向かい、直撃する。

 

爆炎と爆音が響き、煙も出る。

 

「あっちです!」とハリーの声も聞こえてくる。

 

「ほら、さっさと撤退を……!」

 

そう言って煙が晴れた先を見るが、そこには誰もいなかった。

 

逃げた……。

 

ちっ、日和ったか*5

 

「ショウ!クラム!クラウチさん!大丈夫!?」

 

「ありがとうショウ、二人を守ってくれたんじゃな?礼を言わなくてはの」

 

ハリーとダンブルドア校長が近寄ってきてそう言う。

 

クラウチが居たから、積極的攻勢に出れなかった。

まあ、ひとまずは良しとしよう。

 

刀原はそう言いながら「大丈夫だよハリー」と答え、斬魄刀を納めた。

 

一抹の不安を感じながら。

 

 

 

 

 

 

ホグワーツで狂人状態のクラウチが保護された事は、瞬く間に魔法省に知らされ、新聞にも掲載された。

 

シリウス曰く、それでも英国魔法省……というかコーネリウス魔法大臣は何のリアクションも起こさず、静観に留める方針らしい。

 

そしてクラウチは、聖マンゴ魔法疾患傷害病院と言う英国魔法界の病院に送り込まれる事になった。

 

ホグワーツではカルカロフがクラムが危機に瀕したこと等で軽い恐慌状態に陥り、意味不明な事*6を羅列する等があったが、一ヶ月後に控えた第三の課題は予定通り行う事になった。

 

そんなことがありながら、ハリーは迷路を攻略するべく対策を始めるのだった。

 

失神呪文(ステューピファイ)妨害呪文(インペディメンタ)盾の呪文(プロテゴ)爆発呪文(コンフリンゴ)四方位呪文(ポイント・ミー)武装解除呪文(エクスペリアームズ)等々。

 

他にも多数の呪文を、ハリーは叩き込まれた。

 

ハーマイオニーやロン曰く、それはまさに地獄の試練と言うに相応しいものだった*7

 

ハリーは迫り来る刀原*8に対し、時は半泣きになり、時に絶叫し、たんこぶを幾つも作り、幾度も吹っ飛ばされながら、それでも多数の声援もあって、何とかこの試練を耐えた。

 

「……まあ、マシにはなれたかな?」

 

第三の課題前日、肩に竹刀をトントンと叩きながらそう言った刀原に、ハリーは芝生の上に横たわりながら「ほ、本当?」と弱々しく言う。

 

「おう、んじゃ仕上げだ。ハリー、立て。そして自分なりの得意呪文で、そして出来るだけ最速で呪文打ってこい」

 

刀原は竹刀を放り捨てながら言う。

 

「わ、分かった。行くよ?」

 

ハリーはゆっくりと立ち上がりながら言う。

 

「ああ、やり返すつもりでな」

 

「よ、よーし……『エクスペr(武器よs)ステューピファイ(失神せよ)』!」

 

ハリーが呪文を放つ前に、失神呪文を打つ刀原。

 

その早さにハリーは全く対処出来なかった。

 

「あっははは!まだまだ未熟だなハリー」

 

高らかにそう言う刀原。

 

完全に失神しているハリー。

 

唖然とする周囲。

 

やると思った……と言わんばかりに手を額に当て、頭を横に降る雀部。

 

「まあでも、本気で早打ちしなきゃ……相討ちだったかな。早くなったなハリー」

 

ふとそう言った刀原に周囲は少しどよめく。

 

「明日は大丈夫だろう」

 

自身の弟分にそう言い、刀原は夕暮れの空を見た。

 

 

 

 

 

 

*1

なお、刀原がいることに疑問を持った日番谷が「何でお前がいるんだ?」と言ったため「ああ、護衛を頼まれたからな」と刀原はケロッと言った。

 

日番谷は【ああ、大変だな】と同情するように言った。

 

フラーは頼もしそうにした。

 

クラムは感心するような素振りを見せた。

 

バグマンはすまなそうにしていた。

 

*2
少なくとも誰も心から面白がっていないようだった

*3
少なくとも去年のトレローニーの比ではなかった。

*4
もちろんわざと

*5
撤退を薦めていたのはお前だろう

*6

これは罠だ!私を英国に呼び寄せて嵌めるつもりなのだろう!

*7

右手に杖、左手に竹刀を持ち、ハリーをボコボコにする気満々の刀原と戦うもの。

 

刀原は時々魔法も使うが、基本的に接近戦を仕掛け、瞬歩や鬼道は無し。

 

ハリーは刀原からひたすら逃げつつ、魔法を当てる。

 

*8

「雰囲気を作った方が良いのでは?」

という雀部の助言を受け、刀原は笑いながらハリーに迫った。






クラウチ生存です。

彼にはやることがある……予定。

生きろ、そして償え!


個人的に死喰い人は煽り耐性に低いと考えてます。

あの御方を侮辱するとは!的な感じで。

戦いは頭に血を昇ったらつけ込まれますよ?


感想、評価、お気に入り。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


さて次回は

第三の課題 後編。

次回もお楽しみに。

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