ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

44 / 93



諦めることなく

媚びることなく

震える己を奮い立たせ

杖を握って前を向き

僕は、死ぬ準備をする。





死神、圧倒する。復活のVと破面(アランカル)

 

 

 

ワームテールが見るからにおぞましく、思わず眼を背けたくなるような何かを鍋に入れる。

 

溺れてしまえ……お願いだから……!

 

ハリーは傷む傷痕に耐えながらそう願った。

 

しかし、願いは届かなかった。

 

 

「父親の骨……知らぬ間に与えられん……。父親は息子を蘇らせん」

 

杖を上げ、両目を閉じ、ワームテールがそう唱えると、ハリーの足下の墓の表面がパックリと割れ、そこそこ大きい骨が浮かび上がった。

 

 

骨はゆっくりと静かに鍋に入った……。

 

 

「しもべの……肉……よ、喜んで差し出されん。……しもべは……ご主人様を……蘇らせん」

 

ヒーヒー泣きながらワームテールはそう言って、指が欠けている右手を鍋の上に持ってくる。

 

ハリーはワームテールがやろうとしていることを事の直前に悟り、両目を固く閉じた。

 

だが、夜に響く悲鳴は防げなかったが……。

 

 

何か(右手)が鍋に落ちる音がした……。

 

 

「敵かたきの血……力ずくで奪われん……汝は……敵を蘇らせん」

 

ワームテールが苦痛に喘ぎながらハリーに迫る。

 

ハリーは必死に逃げようとするが、縄で縛り付けられている以上どうしようも出来ない。

 

やがてハリーは右腕の肘の内側に鋭い痛みを感じ、そこからは鮮血が滴り始めた。

 

そしてガラスの薬瓶で滴る血を採取したワームテールは、鍋にハリーの血を注いだ。

 

 

鍋の中にある液体は目も眩むような白色に変わり、四方八方にダイヤモンドの閃光を放っている……。

 

 

大鍋の中から痩せ細った男がゆっくりと立ち上がる。

 

「ローブを」

 

甲高く、冷たい声だった。

 

骸骨より白い顔。

 

細長く、真っ赤で不気味な目。

 

蛇のように平らで、切れ込みのような鼻。

 

ヴォルデモート卿が復活した。

 

 

 


 

 

 

一人につき一人、じゃねぇのか。

 

刀原はそう思っていた。

 

空にひびが入り、それがやがて巨大な口のようになった穴から出てきたリーダー格とおぼしき奴ら。

 

自らを破面(アランカル)と名乗る奴らは、(ホロウ)を相手に大立ち回りしていた刀原達の目の前に立ちはだかった。

 

霊圧でそれを感じていた刀原は把握しているが故に、目の前にいる三人の女性を見ながらそう思わざる得なかったのだ。

 

まあ、良い。

とっとと無力化して、もろもろ情報吐かせよう。

 

それに、霊圧的に言えば日番谷、黒崎と対峙している奴らがヤバそうだからな。

 

刀原はそう思いながら、既に始解状態の刀を浅打(刃が潰れている)状態に戻す。

 

斬るより叩きのめすのを優先するためだ。

 

「一応言っとくけど、早く降参してくれよ?」

 

刀原はおどけながら構え、そう言った。

 

「なんだとてめぇ!」

 

「生意気ですわね!」

 

「調子に乗るんじゃないよ!」

 

目の前にいる女性達はキレた。

 

 

 

此処でいきなり話を折るが……。

 

刀原が納めている剣術は大きく分けて三つ。

 

曾祖父から教わった『刀源流』

 

山本元柳斎から教わった『元流』

 

卯ノ花から教わった『八千流(やちる)の剣術』

 

その三つの特徴は。

 

『刀源流』は一対多数戦を想定。

 

『元流』は剣術の基礎。

 

八千流(やちる)の剣術』は全てに対応できる。

 

となっている。

 

さて、当然ながら刀原がそのうち最も得意な剣術は……次期宗家になる予定の『刀源流』である。

 

まあ、最近は三つの良いとこ取りをしているが。

 

 

そして、何が言いたいのかと言うと……。

 

 

「つ、強ぇ」

 

オッドアイで左目の周りに隈模様があり、額に角のような仮面の名残が付いている女性……エミルー・アパッチが悔しそうに言う。

 

「なんなんだ、こいつ……!」

 

褐色肌で露出の高い服を着ており、上腕と腰には紫色の宝石のような装飾品を着けている女性……フランチェスカ・ミラ・ローズが顔をしかめながら言う。

 

「始解すらして無い筈なのに……」

 

長髪で、アオザイのような袖の長い服を着ている女性……シィアン・スンスンが半ば呆然としながら言う。

 

 

最も得意な状況で彼が遅れをとることは無い、ということを言いたいのだ。

 

 

キレた三人は一斉に刀原へと襲いかかったのだが、刀原は飛んで火にいるなんとやらとばかりに迎撃した。

 

アパッチが投げたチャクラムをフランチェスカに向かって弾き、彼女(フランチェスカ)が怯んだ隙をついて一気に接近する。

 

そして人体急所である左脇の下を一閃し、続けて右袈裟斬りで止めを差す。

 

「破動の一『衝』」

 

「グッ!?」

 

「は?」

 

左手で衝をスンスンに打ち込み、迂闊にも左横にいた彼女の方を見てしまったアパッチを右逆袈裟斬りで怯ませ、直後一瞬浮かせ右凪払いを叩き込む。

 

「ッ!」

 

右横にいたスンスンが釵で突きをしてくるが後ろに体を反らして躱し、柄頭でみぞうちを打つ。

 

そして怯んだところを左袈裟、右逆袈裟斬りを叩き込みつつ、距離を離した。

 

 

 

「くそが……」

 

三人は苦しそうにしながらも立ち上がる。

 

所詮は刃が無い刀、殺傷力には雲泥の差がある為、致命傷とはならないからだ。

 

だが刃があった場合、死んでいたのは事実だった。

 

「此処で使うぞ」

 

「本気ですの?」

 

「まあ、しょうがないか」

 

三人は苦々しそうに言う。

 

切り札を切る気か。

 

その様子を見て、刀原は警戒する。

 

「こんな序盤で使いたくはなかったが」

 

「しょうがないですわ」

 

「こうなったらな」

 

 

「「「『混獣神(キメラ・パルカ)』」」」

 

 

三人はそう呟き、召還されたのは……鹿の角とヒヅメ、ライオンのタテガミ、大蛇の尾を生やした巨大な獣人のような姿をしている巨大な怪物だった。

 

「あたし達三人の左腕から創ったペットだ」

 

アパッチからそう説明された『アヨン』という怪物を見て、刀原は間をおいて一言こう言った。

 

「どう見てもペットじゃねぇだろ」

 

 

 

 

 

「な、なんじゃ……あれは……?」

 

ダンブルドアが驚きを隠さずに言う。

 

空の亀裂、謎の怪物と、驚くべき事が続いていたのに、ここにきて巨大な怪物が出現したのだ。

 

各教授達も驚愕を隠していない。

 

「だ、大丈夫……かしら……?」

 

「だ、だだ、大丈夫だって……」

 

「ほ、ほほほ、ほんt、本当だろうなぁ!?」

 

ハーマイオニー達は観客席で震えるしかなかった。

マルフォイに至っては腰を抜かしていた。

 

「刀原君……みんな、見誤らないようにね……」

 

朽木と雛森が頭に包帯を巻いた灰色の髪を持つ男(ディ・ロイ・リンカー)と、右半分だけ仮面をつけたオカッパ頭の男(ナキーム・グリンディーナ)と対峙しているため、代わりに(ホロウ)達を殲滅していた藍染は、一瞬だけ目を細めながらそう呟いた……。

 

 

 

「どうした?あちらが気になるか?」

 

刀原とアヨンの方に一瞬目をやった日番谷に対し、ティア・ハリベルと名乗った金髪で褐色の肌を持つ女性がそう聞く。

 

日番谷とハリベルはここまで互角の斬り合いをしており、周りには日番谷(氷輪丸)の影響で氷があちこちにあった。

 

「デカイから、目が行っただけだ」

 

日番谷がそう返す。

 

「心配してもどうせ無駄になるだけだ。それよりも……私に集中しろ」

 

ハリベルが言う。

 

「無駄?確かに無駄だったな」

 

「なんだ、心配してないのか?」

 

日番谷の言葉にハリベルが尋ねる。

 

「ああ、アイツがこんなところで死ぬ筈がない」

 

日番谷は断言するように言った。

 

「信頼……というやつか……」

 

ハリベルはどこか羨ましそうに言った。

 

 

 

 

「『雷光閃』!」

 

ドンッという落雷のような音ともに突きを放つ。

 

そしてそれを受け「ぐぅうう」という呻き声と共に、帽子のようなものが左目を隠している男、シャウロン・クーファンが吹き飛ぶ。

 

雷華vsクーファンの対決は、雷華のスピードと落雷の火力にクーファンが終始圧倒される展開となった。

 

 

最初から始解状態の雷華はクーファンを雷撃の放射と落雷で攻撃し、それに応戦するためか、クーファンは斬魄刀で始解する時のように「『五鋏蟲(ティヘレタ)』」と言った。

 

するとハサミムシのような装甲に身体が覆われ、両手に装備された長い爪が武器のようになったのだ。

 

だが、それでも雷華の猛攻は防げない。

 

雷華の斬魄刀『雷霆』の真髄は雷を落とすだけではなく、その雷エネルギーを使った爆発的なスピードとパワーにあった。

 

山本元柳斎の戦闘スタイルも取り入れており、攻守遠近共に隙など無い。

 

氷輪丸や流刃若火と同じく、雷系統の斬魄刀で最強と言われ始めているのだ。*1

 

「み、見事だ……」

 

やがてクーファンはそう言って崩れ落ちる。

 

「しょう君……大丈夫よね」

 

雷華は事切れたクーファンに片手で祈った後、刀原と対峙している巨大な怪物の方を見てそう言った……。

 

 

 


 

 

ホグワーツの巨大な怪物が現れた頃。

 

 

復活したヴォルデモートは、ワームテールの左腕にある髑髏の口から蛇が飛び出している刺青……『闇の印』を指で押し当てた。

 

ワームテールは悲鳴を上げる。

 

「戻る勇気のある者が、何人いることやら……」

 

ヴォルデモートがワームテールの腕から手を離し、暗い墓場を見渡しながらそう言う。

 

「そして離れようとする愚か者が何人いることやら」

 

そして吐き捨てるように言った。

 

やがてマントを翻す音が辺りに響き、一人また一人と魔法使い達が『姿現し』してきた。

 

全員が黒いフードを被り、髑髏の仮面をつけている。

 

「よく来た『死喰い人(デスイーター)』達よ……俺様の真の家族よ……」

 

ヴォルデモートが静かに言う。

 

「十三年だ……十三年が過ぎた。だがなぜ、誰も……お前達は主を助けようとは思わなかった?お前達は特に魔力を失っていない……つまり、五体満足で何不自由なく過ごしていた筈なのに……」

 

「俺様は失望した」と吐き捨てるように言う。

 

「ルシウス。抜け目の無いわが友よ……世間的には対面を持ちながら上手くやっていると聞いているぞ」

 

「我が君。私は、常に準備しておりました。あなた様からの印が、あなた様に関する情報、ご消息などが少しでも耳に入っていたら私は……」

 

「馳せ参じるつもりだったと……?だが、お前はこの夏、俺様の忠実なる下僕(しもべ)が空に打ち上げた『闇の印』を見て逃げ出したと聞いたが?」

 

ヴォルデモートの指摘にマルフォイ氏は口をつぐむ。

 

「お前にも失望した……。これからは、もっと忠実に仕えて貰うとしよう」

 

「勿論です、我が君。お慈悲を感謝致します……」

 

ヴォルデモートは満足そうに頷く。

 

「ここにはいない者達もいる……レストレンジ達がそうだ。忠実な者だった……。奴らはアズカバン行きを選んだのだ。彼処が解放された暁には、彼らは最高の栄誉を受けるだろう……吸魂鬼(ディメンター)も我々に味方するだろう。彼らは生来、俺様達と同じく闇の住人なのだからな……」

 

「次に欠けた六人の者達。三人は任務で死に、一人は臆病風に吹かれて戻らず、一人は永遠に俺様の下を去った……」

 

「そしてもう一人、最も忠実な下僕(しもべ)はホグワーツにて、既に難しい任務に就いている。その者の尽力によって、我らが若き友人を招待させる事が出来た」

 

ヴォルデモートは知らしめるように死喰い人に言う。

 

死喰い人達はざわつき、互いに見交わしている。

 

「ハリー・ポッター君が俺様の復活の儀式にわざわざご参加してくれたのだ。賓客だな?」

 

ヴォルデモートはニヤリとしながら見る。

 

「我が君……。どのようにしてお戻りに?」

 

マルフォイ氏が尋ねる。

 

「ああ、ルシウス……それは長い話になるな……」

 

ヴォルデモートはそれから語った。

 

赤ん坊のハリーを襲った時、ハリーの母、リリー・ポッターの護りによって返り討ちにあったこと。

 

確実に死んだ筈だが死の克服に取り組んでいたことで、辛うじて霊魂にも満たないものになったこと。

 

時には動物に取り憑きながら存在していたが、四年前にクィレルと出会ったこと。

 

賢者の石の奪取を目指すも叶わなかったこと。

 

望みを捨て諦めかけていた時、ワームテールがやって来たこと。

 

ついでに英国魔法省の役人、バーサ・ジョーキンズもやって来ており、彼女から有益な情報……魔法学校対抗試合がホグワーツで開催されることなどを引き出したこと。

 

そして古い闇の魔術だが、魔法薬、下僕の肉、肉親の骨、(かたき)の血を使い、復活すると決めたこと。

 

などを。

 

「『炎のゴブレット』に名前を入れさせ、ハリー・ポッターが試合に優勝させる。ダンブルドアの庇護は無いこの場に来れるようにな…」

 

ヴォルデモートは大変だったと言うよう語る。

 

「そして三年前、賢者の石の奪取の時に俺様を妨害した日本の小僧(刀原)のことも、予てより懸念であった日本の死神達と同様に対抗策が出来た」

 

「た、対抗策……でございますか?」

 

「そうだ。血筋は良いらしいが、護廷十三隊の怪物達もなんとか出来ると豪語していた、いけ好かん男ではある。そして無礼な男でもあるな。まあ、利用価値はあるので日本の奴らをなんとか次第消す。奴と手を結んでいる破面(アランカル)とか言う者共はいずれ、我が配下となろう」

 

忌々しそうにヴォルデモートは言う。

 

「さて、日本の事など端に置いてだ……。こうしてポッターは我が両腕の中に連れてこられ、俺様がより強力に復活する為の糧となってくれた訳だ……。俺様はつい先程まで、小僧に触れるとすら出来なかった……。俺様は無力だった……。だが!」

 

そう言いながらヴォルデモートは、ゆっくりとハリーに近付いて来る。

 

「今はお前に、触れる事が出来る……!」

 

そして抵抗できないハリーの額の傷跡に、蒼白く細い指先を押し付けた。

 

「うわぁあああああああ!!!!」

 

額から頭が割れるかと思うような痛みが走り、ハリーはくぐもった声をあげる。

 

「見たか!この小僧が俺様より強かった事など、ありえんことなのだ!」

 

ヴォルデモートは高らかにそう言う。

 

「そして、ここでお前達全員の目の前でこの小僧を殺すことで、俺様の力を確固たるものとしよう。ダンブルドアもいない、小僧の為に死んでくれる母親も、頼れる日本の者共(刀原、雀部)もいない。文字通り、一対一だ」

 

ヴォルデモートは言う。

 

「さあ、こやつの縄を解けワームテール」

 

そう言うとワームテールがハリーの縄を解く。

 

久方ぶりの自由だが感傷に浸っている場合ではない。

 

「杖を取れポッター!立て、早く!」

 

ヴォルデモートが白い杖を構えている。

 

ハリーはここで始めて、明確に死を感じた。

 

 

 


 

 

 

「一閃煌めき両断せよ『神殲斬刀』」

 

刀原は霊圧感知で日番谷、黒崎以外の面々が勝利しつつあることを知りつつ、再度始解した。

 

軽く八メートルはある巨体を前に、浅打(刃が潰れている)のままでは力不足と判断したからだ。

 

「さて、先ずは……元流 九ツ目『突き』」

 

刀原は始解早々、人体でいえば心臓がある部分に突きの斬撃をアヨンに向かって飛ばす。

 

光の矢のように飛んだ斬撃は狙い通りにアヨンの左胸へと直撃し、その筋肉隆々の巨体に容易く、大きい風穴が空く事になった。

 

アヨンは首を少しだけ傾げて自身に空いた穴を確め、そして何度もその部分を掌で叩く。

 

何度も。

 

何度も。

 

やがて完全に怒ったのか、アヨンは思わず耳を塞ぎたくなるような咆哮を上げ、そして今まで顔だと思っていた髑髏の仮面のある部分の左右に眼が、下には口が露になった。

 

そしてアヨンに風穴が空いた瞬間、歓声が沸き上がっていた観客席にもそれは聞こえ、その場の者達を恐慌状態にさせていた。

 

「ありゃ、大して効いてねぇ」

 

刀原はめんどくさそうに言う。

そして「そこが顔じゃねぇのか……」とも思っていた。

 

その間にもアヨンはズシンズシンと接近して、刀原を上から殴り潰そうとし、右拳を振り抜いた。

 

大地が割れるかのようなその一撃はまさしく大爆発のようで、観客席で震えるしかない者達を絶望させるに相応しい光景だった。

 

が……。

 

「ハッ、遅いわ。当たんねぇよ」

 

刀原には当たらず、アヨンの右肩付近にいた。

 

瞬歩で回避していたのだ。

 

「とりあえず……このままだと周辺がヤバいことになる(破壊される)からさ……貰っといたわ、右腕」

 

そしてそう言って斬魄刀を鞘に納めると、アヨンの右腕が音もなく斬り落とされた。

 

「………ーーーーーーー!!」

 

すると、アヨンはピタリと止まって右腕の方を向き、そして無いことを確認した。

 

そして再び咆哮を上げ、痛みなど感じないかのように残った左拳を刀原に向けた。

 

「人を殺すことしか考えられねぇ物の怪か」

 

刀原は呆れたように、哀れむように言う。

 

そしてアヨンの左拳を易々と躱し、左腕も斬り裂く。

 

右腕と同様、音もなく落ちる左腕。

 

アヨンは自身の残った左腕すら斬り落とされた事を自覚すると、瞬歩で距離を取っていた刀原に眼から虚閃(セロ)を放った。

 

「甘いわ」

 

刀原はそう言いながら虚閃を斬って防ぐ。

 

虚閃より呪文の方が早い。

 

つまり、迎撃出来ない筈がないのだ。

 

そして、決めにかかる。

 

「『海割』」

 

刀原はそう呟き、アヨンを頭から真っ二つにした。

 

だが。

 

アヨンは半身になっても立ち上がる。

 

「もう止せ、てめぇみたいな哀れな物の怪を、そう何度も斬りたくはねぇ」

 

刀原は諭すように言う。

 

だが、アヨンは止まらなかった。

 

「止せって言ってんのが、判らねぇのか!」

 

刀原はうんざりし、そう吐き捨て、一閃する。

 

「『千斬り』」

 

アヨンの身体には幾千もの斬撃が走り、刀原が斬魄刀を鞘に納めると、文字通りバラバラに切り刻まれた。

 

「そんな!」

 

「くそっ!」

 

「おのれぇ!」

 

バラバラに散ったアヨンを見て、既に片腕がない状態のアパッチ、スンスン、フランチェスカが刀原に特攻を仕掛ける。

 

だが力の差は大きかった。

 

「『斬払い 陣円閃』」

 

「「「ぐぁああ!」」」

 

一閃で三人は吹き飛ばされる。

 

「片腕で来たからな、その意気に免じて命までは獲らないでおいてやるよ」

 

刀原はそう言って斬魄刀を鞘に納めた。

 

 

 


 

 

 

「決闘のやり方は学んでいるな?」

 

ヴォルデモートはどこか興奮気味に言う。

 

その言葉には余裕が感じられた。

 

尤も、ハリーにそんな余裕などある筈もなく、二年前にほんの少しだけ参加した決闘クラブを前世の事のように思い出していたが。

 

「先ずはお辞儀だ……」

 

ヴォルデモートは軽く腰を折る。

 

「格式ある儀式には守らねばな?さあ、死にお辞儀を……するのだ!」

 

ハリーが頭を下げない(お辞儀をしない)のを見たヴォルデモートが杖をハリーに向ける。

 

すると見えない手がハリーを強引に頭を下げさせ、観客となっている死喰い人はそれを見て拍手する。

 

「よろしい、良い子だぞハリー……」

 

ヴォルデモートが楽しそうに、満足そうに言う。

 

「さあ……今度は男らしく俺様の方を向け……。背筋を伸ばし誇り高く……。お前の父親が死んだ時のように……さあ、決闘だ」

 

そう言われたハリーが何か手を打つ前に『磔の呪い(クルーシオ)』が襲い掛かる。

 

全身を消耗させる痛み、あまりに激しい痛みにハリーは自分が何処にいるのか判らなくなってしまった。

 

熱いナイフで全身の皮膚を切られたみたいだった。

 

やがて痛みが止まり、地面に転がっていたハリーは生まれたての小鹿のようによろよろと立ち上がった。

 

「ひと休みだ」

 

ヴォルデモートが遊ぶかのように(ニコニコ顔で)言う。

 

「ほんのひと休みだ……ハリー、痛かっただろう?もう二度として欲しくないだろう?イヤだろう?答えるのだ!『インペリオ(服従せよ)』!」

 

ハリーは頭がふわふわする。

 

『イヤだと言えば良いんだ』

 

甘い、甘美な言葉……だが。

 

「僕は言わないぞ!」

 

ハリーは叫ぶ。

 

「ほう、言わないか……」

 

ヴォルデモートが静かに言う。

 

「どうやら従順さは得だと、死ぬ前に教える必要があるな……。では、もう一度痛い薬を与えるべきだな?」

 

ヴォルデモートはそう言って呪文を飛ばすが、今度はハリーも反射神経で避けられた。

 

ハリーはヴォルデモートが猫撫で声(ウキウキ気分)で近付いて来るのを感じとり、最期が来たことを悟る。

 

そしてただ一つの事を思っていた。

 

《死ぬならせめて一太刀いれてから》

 

親友であり頼れる人、ショウ(刀原)がそう言っていた。

 

そうだ。

 

ヴォルデモートに跪くものか!

 

堂々と立ち向かって死ぬのだ!

 

ハリーは立ち上がる。

 

そして杖をしっかり握り締め、身体の前にすっと構え、ヴォルデモートと向き合った。

 

「『エクスペリアームス(武器よ去れ)』!」

 

「『アバダ ケダブラ(息絶えよ)』!」

 

二人は同時に叫ぶ。

 

そしてハリーの赤い閃光とヴォルデモートの緑の閃光が、空中でぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

赤と緑の閃光はやがて金色の糸となり、やがて二人の周囲は金色のベールにすっぽりと覆われた。

 

「手を出すな!俺様の獲物だ!」

 

ヴォルデモートが周囲を確認しながら、杖をだし始めた死喰い人にそう命令する。

 

そしてここまで終始余裕を見せていたヴォルデモートを、驚愕させる事が起きた。

 

灰色のゴーストとおぼしきものが飛び出したのだ。

 

『やっつけろ、坊や……俺の代わりに……』

 

ハリーの夢に出てきた老人。

 

『手を離すんじゃないよ!絶対に!』

 

バーサ・ジョーキンズ。

 

そして……。

 

『お父さんも来ますよ……ハリー、頑張って……』

 

今宵、ハリーが誰より心に思っていた母。

 

『繋がりが切れると、僕達はほんの僅かしかこの世に留まれない。それでも時間を稼ぐこと位は出来る。だから振り替えらずに移動キー(ポート・キー)まで行くんだ。わかったね、ハリー?」

 

支えてくれた父がそう言う。

 

「ありがとう……」

 

そしてハリーは渾身の力を込めて、杖を捻り上げた。

 

途端に金色の糸もベールも消え去る。

 

ハリーは走り、優勝杯(ポート・キー)までたどり着いた。

 

ヴォルデモートが迫るが、もう遅い。

 

ハリーは消え去り、ホグワーツへと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1

厳霊丸を差し置いて。

 

「孫……ということを考慮に入れずに言うが、彼女は天才だ」

 

雀部長次郎は自慢げにそう語っている。






黒き死の飛翔

白き髑髏の仮面。

肉と骨と血。

虚ろなる穴。

さあ、地獄の釜を開けるとしようか。







V卿復活おめでとう。

英語版だとそんなこと無いのに、日本語版だと楽しげなヴォルデモート……。

お辞儀様だの、ヴォルちゃんだの言われてますが……。

本当はもうネタキャラ化させたかったのですが、ハリーしか居ないので断念しました。

良かったね!


アヨンを圧倒できるのは隊長達くらいでしょうか。

まあ、もしこの場面で刀原が倒されても藍染様がなんとか出来ますので……。



感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。



では次回は

死神と炎のゴブレット編 決着と終幕

次回もお楽しみに。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。