ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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我が身も

我が心も

我が周りでさえも

全て統べてピンクにすれば

私もピンクになれるだろうか。







死神、挨拶する。ピンク蛙と読書の時間

 

 

九月一日。

 

キングズ・クロス駅にも、ホグワーツ特急の中にも、馬車にも、刀原と雀部の姿は無かった。

 

約一ヶ月前、ハリ-達が起床した時には刀原の姿は既になく、数日後に手紙*1がやって来た。

 

そして裁判が終わって無罪だった為、その手紙*2を書いても返事は最低限だけで、それ以降は来なかった。

 

「きっと忙しいのよ」

 

ハーマイオニーはそう言ったし、ハリー自身もそう思っていたが……それでも心の余裕は次第に減っていた。

 

それに、監督生に関してもそうだ。

 

ロンとハーマイオニーが監督生になったのは喜ばしいが、僕よりもロンが優秀な人だというのか?

 

双子(フレッド・ジョージ)は「ハリーが本命だと思ってた」と言ったし、さっきバタバタとやって来たマルフォイも「どういう事だあれはぁあああ(何で君じゃないんだぁあああ)!?」と言っていたし……。

 

ハリーはそんな暗い事を思い(暗黒面に染まり)ながら、少し寂しい列車に揺られていた。

 

そしてホグワーツ城に着き、大広間のテーブルに座り、組分け帽子が警告をし、いつものように豪華なディナーを食べ始めても、刀原達は来なかった。

 

食べ終わり、ダンブルドアが話し始めてもだ。

 

「最初に新しい先生を紹介しようかの……?まずは、グラブリー・プランク教授が復帰なさる。『魔法生物飼育学』じゃ。そしてドローレス・アンブリッジ教授……『闇の魔術に対する防衛術』の新任教授じゃ」

 

ハリー達は内心、穏やかではなかった。

 

プランクがハグリッドの代理なのか、それとも完全に変わったのか、言わなかったのだ。

 

それに……アンブリッジ。

 

けばけばしいピンクの装いに身を包んだこのガマガエルみたいな女は、チキン・ファッジの手先なのだ。

 

「次に、とっても重要なお話じゃ……。昨年、ホグワーツ城において、」

 

ダンブルドアがそう話を続けた時だ。

 

「ェヘン、ェヘン」

 

アンブリッジがそうわざとらしく咳をする。

 

ダンブルドアもさすがに無視ができなかったのか、アンブリッジに発言を許す。

 

そして……生徒はニヤニヤしている者が多かった。

 

この()、ホグワーツの仕来りを知らないな?

と思っていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「魔法省から参りました。ドローレス・アンブリッジと申します」

 

大勢の生徒達から心の中で馬鹿にされてることも露知らず、アンブリッジは作り笑いをし、女の子のような甲高くて人を小馬鹿にしたような声で話し始めた。

 

しゃべったぁあああ!?

やっぱり人間だったんですか!?

 

そして、それを端で見ていた刀原達は驚愕していた。

 

アンブリッジが余りにもガマガエルそっくりだった為、先ほどまで【あのピンク女……蛙人間とか?】【新種の可能性も……】【喋れるのかな?】【「ゲコゲーコ」とかだったら、みんな困りますから……多分大丈夫かと】等と言い合っていたからだ。

 

「ホグワーツに戻って来れて嬉しいですわ。そして……可愛い皆さんが幸せそうな顔で、私を見上げているのは素敵ですわ」

 

そう言われて刀原はぐるりと見渡す。

 

……誰も幸せそうな顔などしておらず、逆にドン引きしていたり、愕然としていたり、生理的嫌悪感が拭えない……と言った顔で一杯だったが。

 

隣にいる最愛の相棒たる雀部も【めっちゃキモいです。生理的に無理です。あのオバサン、嫌いです】と真っ青な顔で、嫌悪感を露にしていた。

 

かくいう刀原も【無いわー……。あのピンクガマガエル……。無いわー】と言っていた。

 

「魔法省は『若い魔法使い達への教育は非常に重要である』と、常に考えてきました……。ーーーー」

 

アンブリッジはそう長々と演説をし始めた。

 

長い上に噛んでも苦く、全く飲み込めない。

 

しかし刀原は一応、聞く必要があった。

 

そして長々と続いた演説も終わり、アンブリッジが座ると、ダンブルドアが拍手をする。

 

しかし、生徒達で拍手をする者は殆どいなかった。

 

「ありがとう……。実に啓発的じゃった」

 

ダンブルドアがそう言って会釈する。

 

「啓発的ちゃ、啓発的だな?」

 

「ええ、全くですね」

 

「記録は?」

 

「バッチリです」

 

刀原達はそんなやり取りをする。

 

「やはり……英国魔法省は、ホグワーツに介入と干渉をする気のようだな。全く、教育と政治は極力切り離すのが前提だと言うのに」

 

「一歩間違えれば洗脳や軍隊ですからね」

 

二人は思わず溜め息を吐く。

 

はぁ、もう帰りたい。

誰が好き好んで火中の栗を拾おうと言うのか。

 

そう思いつつ、二人は死んだ目で大広間を見ていた。

 

 

 

 

「昨年、ホグワーツ城において……謎の存在である(ホロウ)破面(アランカル)が出現した。率直に言おう、隠さずに言おう。わし等や魔法省では対処不可能な存在じゃ……」

 

ダンブルドアが赤裸々にそう言えば、生徒達はざわざわと騒がしくなる。

 

アンブリッジはそれを苦々しくを見ている(余計なこと言いやがって)

 

ハリーはヴォルデモートと対峙していたために見ていないが、聞く限り……ヴォルデモート並みに恐ろしい敵だと認知していた。

 

「じゃが……日本の護廷十三隊の方々が、ホグワーツの守護をしてくれることとなった。彼らは摩訶不思議な存在である虚にも対抗が出来るのじゃ」

 

ダンブルドアが微笑みながらそう言えば、生徒達は安堵したかのような反応をしていた。

 

「ショウ達が所属してる組織だ……」

 

「良かった……来てくれるのね」

 

「ファッジもそこまで馬鹿じゃなかったんだ」

 

ハリー達は諸々の事情(大臣が日本を怒らせた)を知っているため、他の生徒以上に安堵していた。

 

「護廷十三隊の歴史は、このホグワーツ以上にある。……古来より日本を悪しき者達から守ってきた、素晴らしい方々なのじゃ。今回の一件では、有り難くも二名の隊長を派遣して下さった」

 

ダンブルドアの言葉には溢れんばかりの敬意があり、よく知らない生徒達も、その凄さがなんとなく分かるだろう。

 

現に生徒達は『とんでもない人』が来ていることを察知して、息を飲むような感じとなっていた。

 

そんな中、ハリー達はニヤリと笑い合った。

 

「さて……早速ご紹介しようかの?」

 

ダンブルドアがそう言って目配せをすると、二人の死神が入ってくる。

 

そして、そんな二人は感慨に浸っていた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

約二ヶ月前。

 

「皆も知っておろうが……この度、空席となっておった三番隊、五番隊、十番隊の隊長を任せるに値する者が現れた」

 

元柳斎は隊長格を初めとした、日本魔法界上位陣が集まった特別隊首会にてそう言った。

 

「既に、隊首試験は行われており……特に三番隊の新隊長は、数多くの推薦を受けておる」

 

「そりゃそうだろうね……」

 

元柳斎の言葉に、京楽はそう呟く。

 

「わし、四楓院、卯ノ花、朽木……長いわ、十一番隊隊長以外の隊長達と、市丸(魔法省)藍染(マホウトコロ)から推薦の新三番隊隊長。同じく、わし、四楓院、卯ノ花、京楽、浦原、浮竹、藍染から推薦の新五番隊隊長。同じく、四楓院、卯ノ花、京楽、浦原、浮竹、藍染から推薦かつ隊首試験合格の新十番隊隊長。いずれも、その実力は皆も知るところであろう?」

 

元柳斎が言えば、その場にいる全員が頷く。

 

「では、念のため……三名の新隊長就任に異議が有る者はおるか?」

 

沈黙が流れる。

 

「よし……ではこのまま就任式と行こうかの?新隊長三名は中へ!」

 

元柳斎の合図で扉が開く。

 

勝手知ったる場所ではあるが……三人の足取りは慎重であり、ゆっくりとしたものだった。

 

「お、三人とも凄く似合ってるねぇ!」

 

「立派じゃぞ!」

 

三人を見た京楽と四楓院がそう言う。

 

「これで護廷の未来は更に安泰となるな」

 

「まさに新世代だな」

 

東仙や狛村も頷きながらそう言う。

 

「凛とした風格、素晴らしいですね」

 

卯ノ花がそう誉める。

 

「新三番隊隊長には刀原将平。新五番隊隊長には雀部雷華。新十番隊隊長には日番谷冬獅郞。この三名を、今日この時をもって護廷十三隊の隊長とする。三名とも、護廷の為に身命を尽くせ!」

 

「「「はい!」」」

 

元柳斎の檄に刀原、雀部、日番谷は声をあげた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

「お初に……じゃないですけど、お初にお目にかかる。約二ヶ月前、ホグワーツ城にて発生した虚に対して、皆様の守護するために派遣されました……護廷十三隊 三番隊隊長 刀原将平と申します」

 

「同じく派遣されました……護廷十三隊 五番隊隊長 雀部雷華と申します」

 

気概も新たにした刀原と雀部は、少しだけ霊圧を出し、新しさが未だにある白い隊長羽織を身に付けて、ハリー達ホグワーツの生徒達にそう言った。

 

去年もホグワーツにいた生徒達は、一瞬驚いたような顔をしていたが、直ぐに納得した様子に変わる。

 

「我らが此処、ホグワーツ城に布陣する限り、皆さんに降りかかる()()には、指一本足りとも触れさせません。……どうかご安心を」

 

「但し、私達の避難指示等に従わないのであれば……その限りではありませんので、あしからず」

 

刀原が高らかに言えば……生徒達は頼もしそうに頷き、雀部が冷徹に言えば……生徒達は真面目な顔で頷いた。

 

「「では、宜しくお願いします」」

 

二人はそう言ってほんの少しだけ頭を下げると、大広間には先ほど行われたアンブリッジの演説とは違って、万雷の拍手が響いた。

 

 

少しの間を待ってから……ダンブルドアが両手を上げて静まるよう合図する。

 

「なんとも頼もしいお二人じゃ!わしの方からも改めて宜しくお願い致しとしよう!彼らはまだ若いが、その実力は皆が知っておるはずじゃ……。彼らが守ってくれる……じゃから皆は安心して勉学に励んでくれい」

 

ダンブルドアがそう言えば、生徒達は一安心だと言った顔をする。

 

「それと……一応伝えておくが……お二人にはグリフィンドール寮で過ごしていただく。じゃが、グリフィンドールの諸君は普段通りで良いからの?」

 

それを聞いた生徒達……特にグリフィンドールの生徒達はニヤッと笑い、頷く。

 

刀原と雀部の二人は、去年まで留学生としてグリフィンドールに在籍していたのだ。

 

その証拠として……彼らが身に付けているネクタイは赤と金色(グリフィンドールカラー)であり……まるで『自分達は今もなお、ホグワーツの生徒だ』と言っているみたいだった。

 

 

 

 

宴会も終わり、刀原達はダンブルドアや寮監の教授達との打ち合わせを行うために、校長室にいた。

 

「これが派遣に関する正式な任命書です」

 

刀原はそう言ってダンブルドアに紙を渡す。

 

ダンブルドアは「ありがとう」と言ってそれを受け取り、一読する。

 

「改めて言おう。こんな状況下にも関わらず、来てくれてありがとう。ホグワーツを代表してお礼を」

 

ダンブルドアはそう言って深々と頭を下げる。

 

「いえ……お礼ならば、派遣を決定した護廷十三隊と日本魔法省に言ってください。我々はあくまで任務として来ていますので……」

 

刀原はそう言うと、ダンブルドアは「だとしてもじゃよ」と言う。

 

「立派になりましたね……トーハラ。ササキベもです。グリフィンドールの寮監としても鼻が高いです……」

 

隊長羽織を見ながら、マクゴナガルは半ば目を潤ませつつそう言う。

 

「「ありがとうございます」」

 

二人は照れつつもも、お辞儀をしながら言う。

 

「さて……一応、わしは知っておるがの……改めて君たちの任務の内容を共有しておきたいのじゃが?」

 

ダンブルドアが真面目な顔でそう言う。

 

「まず……虚及び破面の討伐と主要防衛戦域……即ちホグワーツ城周辺の防衛が主任務となります」

 

刀原がそう言うと、教授達は頷く。

 

「魔法省は防衛しないのですか?」

 

スプラウトが聞いてくる。

 

「はい、英国魔法省周辺は含まれておりません」

 

刀原がきっぱりと言う。

 

「我々が行った事前調査の結果、ホグワーツ城は『重霊地』……虚が集まりやすい地域に指定されました」

 

『重霊地』は日本にも数ヶ所ほどある『虚が出現する場所』であり、護廷十三隊はこの重霊地に駐在部隊を配置することで重点的に守っている。

 

「派遣される人数がもっといれば、英国魔法省に人員を割くことが出来ましたが……。生憎と二名しかおりません。我々は『重霊地』たるホグワーツを重点的に守護する必要がある為、英国魔法省へは『出現が確認され次第』となります」

 

続けてそう言った刀原に教授達は苦笑いする。

 

当初の予定は六名であり……隊長三名と副隊長一名でホグワーツを防衛し、残る副隊長二名でロンドン(英国魔法省)を守る予定だった。

 

だが……どっかの無能(チキン・ファッジ)が六名と言う数を拒絶したため、ホグワーツのみの防衛になったのだ。

 

その理由があるため、英国魔法省(クレーマー)ブーブー文句を(此方も守ってよ!)言って来ても『そちらが人数制限をしたからですよね?』と言えるのだ。

 

「そして、非公式な命令が……今年度に魔法省が送り込んでくる出向者(アンブリッジ)の動向の監視と、抑止力になること」

 

「抑止力……なるほど、外交特権ですね?」

 

言葉の意味を読んだマクゴナガルがそう言う。

 

「流石はマクゴナガル教授、その通りです。この際ですので、明かしておきます。我々は外交特権の他に……『特命全権大使の権限』と『英国魔法省に対する最後通牒』を持っています」

 

 

刀原達は英国魔法省の正式的な要請を受け、日本魔法省と護廷十三隊から正式的な命令を受けている。

 

つまり、二人は外交特権を持っているのだ。

 

その為……アンブリッジが手出しをしようとも、刀原達は外交特権でそれを拒絶出来る。

 

また……ホグワーツの教育に英国魔法省が介入して、生徒達に洗脳教育が施されたり(魔法省至上主義に染めたり)、生徒を傀儡化させる(魔法省に忠実な兵隊とする)可能性を日本側は考えていた。

 

その為……。

 

生徒達を*3守る為にも、日本魔法省と護廷十三隊は刀原達(抑止力)をホグワーツに送り込んだのだ。

 

そして生徒達に手出しをすれば……その報告を刀原達が日本魔法省に上げて、英国魔法省にそれを突き付けられることも狙っている。

 

また刀原には、最後通牒……『ヴォルデモート復活が確認された確固たる証拠』を持たされており、万が一の時には開示しても良いと言われている。

 

ファッジが恐れているのは『刀原達(日本)が密かに、ヴォルデモート復活の証拠を発見する』ことであるが……残念ながら既に握られているのだ。

 

もし刀原が持っている最後通牒(ヴォルデモート復活の証拠)を開示すれば、日本魔法省は有事と判断して英国にやってくる。

 

また日本だけではなく……闇の魔法使い(グリンデルバルド・ヴォルデモート)を放っておけば面倒なことになる(余計大変になる)過去の一件(グリンデルバルド)で学習した米国(アメリカ)仏国(フランス)独国(ドイツ)が雪崩を打ってやってくる。

 

ヴォルデモートとしても、ダンブルドアやハリーが健在なのに日本(護廷十三隊)や米国と戦争する訳にはいかない。

 

日本や米国とて、多くの死人が出るそれ(戦争)をしたくないし……本国で問題がある(賊軍が暴れてる)のに、そんなことをしてる暇も余裕もない。

 

そしてそれが始まる前に……英国(ファッジ)は崩壊するだろう。

 

誰も望んでいない泥沼の地獄(全面的な魔法戦争)が英国に形成されることになるのは……なんとしても避けたい。

 

 

「最後通牒……!それは……貴方の懐でずっと眠って貰いたいですね……」

 

苦虫を噛み潰した顔をした刀原を見て、全てを察したマクゴナガルが言えば、他の教授達も頷く。

 

「僕としても、その思いです」

 

刀原達としては、あのピンクガマガエルが『それが分からぬ無能』でないことを祈るばかりである。

 

「しかし、魔法省の最終的な目標が『ホグワーツの完全掌握』でほぼ間違いないと我々は確信してます。プロパガンダは学校から、騙しやすい純粋な子供は染めやすいですからね。かのNSDAP(ナチスドイツ)が良い例でしょう?」

 

「今時ではないのう……」

 

刀原の言葉に当事者だった(その時代を生きていた)ダンブルドアは嘆いた。

 

「そんなことはしない。……と思いたいですが」

 

苦虫を噛み潰したような顔で刀原は言った。

 

しかし……そのささやかな願いは、脆くも潰れる。

 

 

 

 

 

 

「は?読書?それで終わりで実技は無しですか?」

 

授業見学と言う名目でハリー達と共にアンブリッジの授業を見ていた刀原は、いつもの表情(目が笑ってない満面の笑み)でそう言った。

 

先ほどアンブリッジが生徒達に『実技など必要ない』『理論だけで良い』と言い放ち、それを疑問に思った生徒達の質問も一蹴したからだ。

 

「ミスタートーハラ。これが英国流ですのよ?」

 

アンブリッジは見え透いた笑みを張り付け、人をイライラさせるような声で、小馬鹿にするように言った。

 

暗に日本を馬鹿に(田舎扱い)するような発言だが、そんな事に動じる刀原ではない。

 

「そうなんですか。英国は西洋魔法の本場と伺っておりましたが……随分と遅れてる……失礼、安全第一で昔ながらの授業なのですね?」

 

ニコニコと笑いながら、刀原は平然とそう言う(カウンターを叩き込む)

 

ハリー達は内心あわあわしつつ(ショウ、怒ってる……)期待しつつ(いけ!やっつけてくれ!)、二人のやり取り(論戦)を固唾を飲んで見ていた。

 

ちなみに止め役の雀部は、外周り中なのでいない。

 

「しかし……『実技無くば実践無し』と言う言葉はご存知ですよね?確かに教授の仰る通り、この授業中で襲われることはないでしょう。では試験はどうなのですか?実技は無いのですかな?」

 

「理論を十分に勉強すれば、呪文がかけられないということはあり得ません。理論的な知識で十分足りるのが魔法省の見解です」

 

「ほう?本を読み込めば本番でも出来ると?ですが、どうでしょうね……。店で客に料理を振る舞う料理人が、必ず試作を繰り返すように……。普通は理論を学んだ後、それを教授の指導の下で実践をするのではないのですかな?」

 

「有りません。『その必要は無い』と言うのが、魔法省の見解です」

 

「では彼らが卒業した時……例えば暴漢に襲われた時に、本当に冷静に対処出来ると?学校外にある危険に対して、理論のみでそれ以外の準備が本当に必要ないと?英国魔法省はそんな『危険極まりない』見解なのですか?」

 

「外で危険などは有りません。そちら(日本)と違って英国は安全なので」

 

「おお、それはそれは……安全なのは良いことです。ですが……昨年のクィディッチ・ワールドカップで、死喰い人の残党が暴れまわった事件は記憶にも新しいですよね?それらは危険ではないのですか?その一件の犯人達は未だに野放し……失礼、捕まっていないと聞いていますが?」

 

「……それらについては魔法省が行方を追っております。何も心配は有りません」

 

「そうですか。ですが未だに捕縛されていない以上、いくら安全だと言っていてもそれは妄言に等しいと思いますが?それともこのような()()()な授業だったため、捕縛が出来ないとかでは無いのですか?」

 

「現役の闇祓い達は旧式の指導要綱です」

 

「おや?先ほど、「これが英国流」と自慢げに言っていたの事実ではないと?」

 

「新しい英国流です」

 

「では……かつてヴォルデモートと戦った戦士達が学んだ授業のほうが良いのでは?」

 

「先ほども言いました通り、理論的な知識で十分足りるのが魔法省の見解となります」

 

「理論ばかりでは、実力の低下は否めないと判断してないのですか?」

 

「……判断はしておりません」

 

ニコニコの笑みを崩さず淡々と問う(殴りかかる)刀原に、アンブリッジは最初(反撃)の余裕が無くなりつつあった。

 

「では……万が一生徒達が卒業後に暴漢に襲われ、負傷または死亡した際……貴女は、英国魔法省は……その責任を取れるのですね?」

 

「……そ、それは」

 

刀原が責任の所在を問えば、アンブリッジはあからさまに動揺する。

 

「取れないのであれば、止めておいた方が良いでしょうね……。無論、これはたんなる忠告ですがね?」

 

「…………検討しておきますわ」

 

たどたどしくアンブリッジはそう言う。

 

刀原がチラリとクラスを見渡せば、ハリー達が寮の垣根を越えて目をキラキラさせていた。

 

「そう言えば……『ヴォルデモートが復活した』等と言う()が最近有りましたよね?それが真実かどうかは知りませんが……それがもし事実であれば、備えなくてはならないのでは無いのですか?」

 

「例のあの人が復活したと言うのは嘘です。その危険性は全く有りません」

 

あからさまに溜め息を吐きながら刀原が言えば、アンブリッジは息を吹き替えしたかのようにそう言う。

 

「ヴォルデモートの死体や死亡は確認されていませんよね?確認していない以上……潜伏中だと言う可能性もありますよね?それとも死んだと言う確実な証拠があるのですか?見つかったのですか?あるのならば、何故公表しないのですか?公表すれば復活が嘘であることも証明となりますし、英国魔法界も、各国も安心させられますが?」

 

「それは……」

 

しかし、刀原がそう言えば何も答えられない。

 

「証明がなされていない以上、復活がデマであると断言は出来ませんよね?先ほども言いましたが、それでは『妄言』に等しいですが」

 

「妄言などでは有りません!」

 

刀原の言葉に、アンブリッジが怒鳴る。

 

「では、その証拠をご提示願いたい。妄言ではない、復活は嘘である、死んでいると言う『確固たる証拠』を。我々日本側としても、それがなければ納得出来ませんよ?」

 

「…………」

 

アンブリッジはついに沈黙する。

 

「沈黙、ということは……『証拠は無い』と言うことで相違無いですね?と言うことは……ヴォルデモートが復活していると信じている生徒を『言ったから罰則する』とかも……勿論、無いでしょうね?英国魔法省が独裁政権のような『言論・思想統制』を行うはず、有りませんよね?」

 

「…………勿論ですわ」

 

刀原にぎこちない笑みでアンブリッジは返す。

 

「それは良かった。では、失礼」

 

刀原はニッコリと嗤い、ほんの少しだけ腰を折って礼をして教室を出た。

 

『言質は取った』とばかりに。

 

そしてアンブリッジは、それを悔しそうに見ていた。

 

 

 

 

 

刀原とアンブリッジが論戦をし、アンブリッジが完敗したことはホグワーツ中にひっそりと知れ渡った。

 

しかし……アンブリッジは残念ながらその後も、忍耐力しか身に付かない読書の時間(呪文を使わせない授業)を続けた。

 

 

 

ハリーやハーマイオニーは刀原に泣き付いたが……いくら外交特権を持っているからといって、そう何度もアンブリッジと論戦をするわけにもいかない。

 

刀原達には、警備の任務や考えることがあるのだ。

 

幸いにもまだ姿を現さないが……虚や破面が、いつやって来るか分からないし、アンブリッジ(英国魔法省)の次の一手は何かも読まなくてはならない。

 

おまけに……ハリーは何かとピリピリしており、ハーマイオニーやロンにも噛みついていると言うのだ。

 

そして……ハリーは迂闊にもアンブリッジに罰則の口実を与えてしまい、『I must not tell lies(僕は嘘を言ってはいけない)』と言う文字を物理的に手の甲に刻まれてしまった。

 

刀原としてはこの一件(非道な体罰)を何とか問題化したかったが、流石に『情報と証拠を残すこと』しか出来なかった。

 

はぁ……もう日本へ帰りたい。

 

様々な問題を抱えた刀原と雀部は、精神的な疲労のあまり……晩御飯を食べながら一緒に小声でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ーーーーーーーー

 

ハリーへ。

 

君が有罪になった時、君を日本に亡命させる為に日本の者が裁判に潜入する。

 

そして、もし有罪判決が出たら……その瞬間に君を日本に拉致する予定だ。

 

だから……ハリーは大人しく拉致られろよ?

 

じゃないと……『気づいたら日本(失神させて拉致る)』だからな?

 

ーーーーーーーー

*2
ーーーーーーーー

 

ショウへ。

 

僕の裁判の結果は無罪だった。

 

それと僕の為に準備してくれてありがとう。

 

ファッジは頷いた?

ホグワーツにショウ達は来るの?

 

ーーーーーーーー

*3
というより、ハリー・ポッター(対闇の帝王決戦兵器)





真の恐怖は

往々にして見えぬ

だからこそ良い

見なくて済むのだから。




大衆の多くは無知で愚かである。

大衆は忘れる事が極めて多い。

大衆が理解することは極めて少ない。

これはNSDAP(ナチスドイツ)の国民啓蒙・宣伝相『ヨーゼフ・ゲッベルス』の言葉です。

ファッジよ、知らないとは言わせないぞ?


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ありがとうございます。
そしてお待ちしております。



では次回は

高等尋問官と結束する生徒

次回もお楽しみに。




おまけ

刀原達が隊長に就任したその祝いの宴にて。

京楽曰く……『孫に囲まれて幸せなそうなおじいちゃん』の様だった元柳斎は、盛り上がっている会場の庭で感慨に浸っていた。

「これで安心出来るの……」

ボソッとそう言った元柳斎の言葉の意味を知っているのは、傍に控えていた雀部長次郎だけだった。

「某も、お供いたしますぞ」

雀部の言葉に元柳斎は頷く。

「良い場所を見つけねばの?」

「しかし、呼ばれるのでは?」

「かもしれんがの」

二人の会話を知る者は居ない…………。

アンブリッジの末路。どうしましょうか……?必ずしも反映するわけではないのですが……宜しければお答えください。

  • 1『問答無用!』物理的に抹殺ルート
  • 2『人生終了宣言 』社会的に抹殺ルート
  • 3『我らは慈悲深い』救済ルート
  • 4『原作通りに……』原作追随ルート
  • 5『容赦無し!』社会的+物理的抹殺ルート
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