雛達は団結し
巣を飛び出して、懸命に羽ばたく
大空という未来へ向かって。
本来……『ホッグズ・ヘッド』と言うちょっと胡散臭いパブに、ホグワーツ生が来ることは稀であった。
しかし……本日のホッグズ・ヘッドは、約三十名ほどのホグワーツ生で溢れていた。
しかも全ての寮の生徒が同じ目的で来ていたのだから、彼らの目的を知らない教授達が見たら驚いていただろう*1。
さて、その気になる内訳はと言うと……。
グリフィンドールからは、ネビル、ディーン、ラベンダー、パーバティ、パドマ・パチル姉妹、ケイティ、アリシア、アンジェリーナ、ジニー、フレッド・ジョージ、リー・ジョーダン等。
レイブンクローからは、チョウ、ルーナ、アンソニー・ゴールドスタイン、マイケル・コーナー等。
ハッフルパフからは、セドリック、ハンナ・アボット、アーニー・マクミラン等。
スリザリンからは、マルフォイ、ダフネ・グリーングラスとその妹。
そして、主催のハリー、ハーマイオニー、ロン。
監督兼護衛の刀原と雀部だった。
「えー……それでは……えー……こんにちは」
まさかこんなに来るとは思っていなかったハーマイオニーが、緊張で声が上ずりながらそう言った。
「えーっと……じゃあ、皆さん。なぜ此処に集まったか、分かっていると思いますが……。私達は『闇の魔術に対する防衛術』を、本物の、アンブリッジが教えているようなことじゃないものを勉強したいと思っている為……それで、良い考えだと思っていますが……自分たちで自主的にやってはどうかと考えました」
ハーマイオニーがそう言えば、何人かの生徒が頷く。
「その理由は……ヴォルデモートが戻ってきたからです。私達は……それに備えなくてはいけません」
息を大きく吸い込んでそう言ったハーマイオニーに、生徒達は金切り声を上げたり、ビクッとしたり、身震いしたりする。
「じゃあ……とにかく、そういう計画です。皆さんが一緒にやりたければ……どうやってやるかを決めねばなりません」
「『例のあの人』が戻ってきたっていう証拠が、何処にあるんだ?僕たちは正確に知る権利があると思うな……」
ザカリアス・スミスと名乗った男子生徒が食って掛かるようにそう言った。
「それは……」
言われたハーマイオニーは、ハリーをチラリと見ながらどもってしまう。
「証拠ならあるぞ?」
それを遮って言ったのは刀原だった。
「オフレコでお願いするが……日本魔法省と護廷十三隊は『ヴォルデモートが復活した確固たる証拠』を既に入手している。具体的に言えば、おこわれた儀式の跡や形跡だな。故に……日本側は『ヴォルデモートの復活は確実』と判断している」
「護廷十三隊隊長の名に懸けての保証では不満か?」と続けてそう言った刀原に、ザカリアス・スミスは何も言えずに押し黙る。
「それじゃあ、さっきも言ったように……みんなが防衛術を習いたいのならやり方を、」
「ねえ、叔母から聞いたんだけど……守護霊の呪文を作り出せるって本当?」
ハーマイオニーの言葉を遮り、長い三つ編みを背中に垂らした女子生徒……スーザン・ボーンズがそう言う。
「ダンブルドアの校長室にある剣で、バジリスクに立ち向かったのは本当なのかい?」
テリー・ブートと名乗った男子生徒がそう聞く。
「ああ」
ハリーが少し恥ずかしそうに言うと、生徒達は感心したようにざわめく。
「それに、去年は魔法学校対抗試合で活躍した!」
セドリックがそう言うとハリーは照れる。
「でも、僕は……随分と色んな人に助けられたから出来たことなんだ」
「ドラゴンの時はそうじゃなかったろ?君はかっこ良かったよ……」
ハリーの否定にマイケル・コーナーがそう言う。
「それに……知ってるぞポッター。お前は昨年、そこのトーハラと地獄の特訓をしていただろう?」
マルフォイが追加でそう言い、それを聞いた刀原は「そういえば……ちょくちょく来ては、ハリーに声援を送っていたな」とふと思いだす。
「否定するなよハリー。君は凄い奴なんだ」
フレッドがそう言うと、全員が頷く。
「じゃあ、改めて……みんなはハリーに習いたい……で問題ないのね?」
ハーマイオニーの言葉に全員が頷いた。
その後、生徒達は積もり積もったアンブリッジや魔法省への批判を言い合い、一時は目的を見失いかけた。
しかし……最終的には連判状じみたリストに全員がサインし、最初の集まりの日時と場所が決まり次第伝言を回すことで話はまとまった。
「よし、じゃあ最後に……私達の監督を引き受けてくれる大人……ショウ達からお言葉を貰いましょうか?」
リストを回収したハーマイオニーが、刀原の方をじっと見ながらそう言った。
今まで沈黙を決め込んでいた刀原がそれを受けて立ち上がれば、全員が静かになり刀原を見た。
「まず、今回の一件について……護廷十三隊の総隊長、山本元柳斎重國殿からは「大いにやるべし。日本はお主等に期待しておる」とのお言葉を貰っている。他……日本の多くの大物達からも、激励の言葉を貰ってる。これから分かることはただ一つ……みんなこそが、次世代を担う者ってことだ!」
刀原がそう言えば、全員が「そうだ!」と言う。
「ファッジは恐れてる。それを間違いとは、言わない。誰もが、恐怖ってものは持つからね……。だが、その恐れを君達とホグワーツに向けるのは、間違ってるとしか言えない!」
「そうだ!」
「全くよ!」
「そして……アンブリッジ。あのカエルは、間違いなく君達を舐めてる。実際にハリーはこの前、彼奴から悪逆無道の体罰を受け、手から出血までした。反撃されないと踏んでいるからだ!あの授業も、あのカエルが君達を無能に仕立て上げるためにやっている!それは君達の未来を汚そうとする行為だと、俺は思う!学生の本分は、学ぶことだと言うのにも関わらずにだ!」
「そうだ!」
「俺たちは学びたい!」
「あのカエルは分かってない!健全な知識は、経験は、実力は、健全な教育によって身に付くものだ!理論だけ身に付くものでは、断じてない!あえて言おう……アンブリッジの授業はカスであると!」
「そうだ、読書はもう沢山だ!」
「君達がこのままで良い筈がない。学びの機会、大切な時間を捨てられて良い筈がない!君達にはしっかりと学ぶ権利があるんだ!」
「
「諸君!今こそ立ち上がる時!今こそ学ぶ時!未来の為に!自らを、友を、大切なもの守る為に!ハリーと、俺と、みんなで学ぶんだ!防衛術を!」
「そうだ!そうだ!」
「責任は全て俺が取る!諸君、大いにやるべし!」
刀原が高らかに言えば、全員が歓声を上げた。
因みに……。
「君は扇動力があるな……」
近くで刀原の言葉を聞いていたアバーフォースは、何やら苦い顔でそう言っていた。
「ヤケに……対応が早いですね……」
「…………ああ、そうだな」
会合があった日の翌々日、雀部と刀原は神妙な顔でそう言い合っていた。
なぜなら……二人の視線の先にはとある広告が張り付けてあり、その内容がとんでもないものだったからだ。
『ホグワーツ高等尋問官令。
学生による団体・チーム・グループ・クラブ等は、ここに全て解散される。
再結成の許可は
承認外の組織等を結成、属した生徒は退校処分
以上は、教育令二十四号に則ったものである。
高等尋問官 ドローレス・アンブリッジ 』
これを見た刀原は思わず【全く……
その隣にいる雀部も【あれ?此処って学校でしたよね?】と、もはや呆れて溜め息も出なかった。
直後やってきたハリー達も、呆れ半分怒り半分、少しだけ困惑気味の様子だった。
「狙い済ましたかのようね」
「一昨日だもんな……」
ハーマイオニーとロンが苦い顔でそう言う。
「どうします?抗議は出来ませんし……」
「ああ、どうせ紙の無駄になるだけだ」
雀部の言葉に刀原は頷く。
「それよりも……ハーマイオニー。アホカエルの奴に、例の件の許可を願い出ろ」
「ええ!?」
刀原がハーマイオニーの方にそう言えば、彼女は心底驚いたように言う。
「それこそ紙の無駄ってやつだよ」
「そうよ。絶対に許可されないわ」
ハリーはそう言い、ハーマイオニーも頷く。
それは刀原とて当然分かっているらしく「ああ、十中八九許可なんておりないだろうな」とのたまう。
「だったらなんで?」
「やることに意味があるからだ」
ロンの問いに刀原はそう言った。
「いいかハーマイオニー?それとお前ら。俺が今日中に奴に出す届け出を書くから、ハーマイオニーは一人で持っていくんだ。内容は『生徒による、生徒の為の、生徒だけで行う、生徒同士による学力向上の為の自主的自習会』と書く。マルフォイやセドリックとかの名前も出して渡せ」
「でも、絶対に許可は……」
「ああ、降りない。これは奴が潰したい組織に他ならないからな。だが、出さなければ駄目だ」
「だったらなんで?」
「それは……後で話す」
刀原は何やら思わせ振りにそう言った。
「……まあ、分かったわ」
ハーマイオニーやハリー達は訝しげに頷いた。
「私は今年度が始まって以来、アンブリッジ教授やファッジ大臣がおっしゃる『ホグワーツの著しい学力低下問題』を何とかしようという思いに、凄く共感していました。
そこで……私達、生徒の方からも変えていこうと思い、心ある生徒達と数日前にその会合をしたばかりでした。
実は既に試験運用も済ませ、各寮からも賛同……具体的にはスリザリンのマルフォイ君やハッフルパフのセドリック先輩等から賛同を得ております。
ですからアンブリッジ教授、是非とも私達の『生徒による、生徒の為の、生徒だけで行う、生徒同士による学力向上の為の自主的自習会』略して『生徒自主自習会』の許可を頂けないでしょうか……?」
ハーマイオニーは刀原の書いた台本通りに言った。
しかし最初から結論を言えば、許可は降りなかった。
そしてハリーやハーマイオニーは、最初から結果が分かっていたこの行為に首を捻っていた。
しかし、それ以上に首を捻ったのは刀原の反応だ。
「……そうか、やはり不許可だったか……」
それは刀原が考えこむようにそう言い、少しだけニヤリと笑みを浮かべていたからだ。
それを見ていた雀部は何かを察していた。
さて……そんな一幕がありながらも、彼らは取り組まなくてはならないことが沢山あった。
まず、
今年度から異様に増えた宿題を、ハリーとロンは去年より助っ人が少ない状態*2でやっつけなくてはならないからだ。
次に『自習会』の場所。
人数がなんやかんやで三十人を越えているうえ、それらが一堂に会して練習が出来て、かつ秘匿性がある場所……。
忍びの地図やシリウスから情報を貰ったりしているが、ふさわしい場所を発見する難易度は非常に高く……残念ながら未だ発見には至っていなかった。
しかし、そんな彼らに救いの手が差し伸べられる。
偶然にも、『必要の部屋』と呼ばれる部屋を発見することに成功したのだ。
この『必要の部屋』またの名を『あったりなかったり部屋』とも称される部屋は、来訪者が最も必要なものを提供してくれるという摩訶不思議な部屋であり、実際に願いごとに合わせて部屋の内容が変わっていた。
「不思議な場所だな」
刀原は目の前に広がる光景を前にそう呟いた。
広々とした空間は揺らめく松明によって照らされ、壁際には木製の本棚が並び、床にはかなりの数のクッションが置かれていた。
本棚には『自己防衛呪文学』や『闇の魔術の裏をかく』といった本が並び、特にハーマイオニーなどは目を輝かせていた。
場所が決まれば後は早かった。
早速とばかりに最初の集会が行なわれ、全員が部屋に驚きながら入り終わる。
「リーダーと名前を決めなくてはならないわね」
「ポッター以外に誰がいるんだ?」
集まった全員の前でハーマイオニーがそう言うと、つかさずマルフォイがそう言った。
「そうだね。僕達はハリーに教わりに来てるんだから、ハリーがリーダーで問題ないだろう」
続けてセドリックもそう言い、儀礼的に行われた多数決によってリーダーはハリーに決定した。
「じゃあ……名前はどうしましょうか……?」
リーダーが決まったときとは違い、名前はすんなりとは決まらなかった。
『
『
『
等々……。
ほんの少しだけ揉めたが、最終的に『
因みに……。
「ショウの案は?」
「
「お堅い名前ね」
「ライカの案は?」
「
「『
「ショウもライカも……物騒ね」
「とりあえず却下」
「何故だ。俺はあのカエルを抹殺したいだけだ」
「だから駄目だってば」
刀原と雀部の案は却下された。
場所も決まり、リーダーも決まり、組織名も決まり、練習も遂に始まった。
初回は基礎中の基礎と言う事で『
「出来た奴は俺か雷華とのツーマンセルにするか」
「「え!?」」
合格者を前に刀原はそう提案し、それを聞いたハーマイオニーとマルフォイはあからさまに動揺し固まる。
「大丈夫、去年みたいに厳しくしないから」
「じゃ、じゃあ……そうしようか」
二人が何やら深刻そうな顔をしているなか、たどたどしくなりながらセドリックがそう言う。
それを聞いた二人は「裏切り者!」とでも言いたげな表情を浮かべていた。
そしてそれ以降、ハリーから合格を貰った者は、刀原・雀部との実践練習へと移ることになった。
ちなみに……幸いにも刀原達との練習内容は、ハーマイオニーとマルフォイが想定していたものではなく、きちんと手加減されていたものだった。
「うん、とっても良かった。でももう時間も遅いし、この辺でやめた方が良い」
最初の練習会はあっという間に終わり、時刻が21時を過ぎたこともあって、ハリーはそう言った。
「来週の同じ時間、同じ場所で良いかな?」
ハリーはそう言ったが、多くの生徒はそれを望まなかった。
「もっと早く!」
ディーン・トーマスがそう言うと、そうだそうだと頷く生徒が多かったのだ。
「じゃあ、今度は水曜日だ。クィディッチ・シーズンも近いから、そっちの事もあるし*3……。練習を増やすならその時考えて決めれば良い」
そうハリーが言えば全員が頷いた。
そしてやがて全員が部屋から出ていき、ハリーや刀原達の五人だけが残った。
「本当に……とっても良かったわよ」
ハーマイオニーがハリーに向かってそう言った。
「ええ、立派でしたよ。しっかりと教えてましたし」
雀部も関心するようにそう言った。
「初めてだとは思えん位、上出来だな」
刀原も同じようにハリーを褒める。
ハリーはそれらを聞いてニッコリと笑った。
それからというもの、練習は順調に続けられ、生徒たちの練度は非常に高くなっていった。
ハリーは胸の中に護りの護符があるかのように穏やかになり、アンブリッジの悪寒が走る目線を受けても優雅に微笑みで返すことが出来るようになっていった。
ネビルはハーマイオニー相手に武装解除呪文を成功させ、次の回が刀原との実践練習になる事になったし、『
そして特に目を見張るのは、やはりセドリックとマルフォイであった。
次回の練習日でセドリックは刀原と、マルフォイは雀部と、それぞれ一対一の模擬決闘をすることになったのだ。
「勝てないまでも、君に一矢報いてみせるよ」
「遠慮は無用。全力でかかってこい」
「……刀は無しだぞ」
「分ってますよ」
次回の大目玉になる事は間違いないだろう*4。
更に、全員に日時をバレないように通達する賢いやり方をハーマイオニーが思いついた。
まず手始めに、彼女は偽の金貨を大量に用意した。
そしてハリーが持ってる金貨の日時が変更されれば、それに連動して変更された日時が分かる金貨*5に作り変えて全員に配ったのだ。
なお、その金貨達には「変幻自在呪文」という高度な魔法が掛けられており、レイブンクローの生徒たちは「その頭脳があるのに、どうしてレイブンクローに来なかったの?」とハーマイオニーに不思議そうに問い詰めた一幕があったのはご愛嬌だ。
練習日とは別に、ハリーは忙しくなり始めた。
本格的なクィディッチシーズンが到来したからだ。
去年試合が無かったこともあって、来るべき最初の試合……グリフィンドール対スリザリンの試合に多くの関心が寄せられていた。
「私はクィディッチ優勝杯が自分の部屋にあることにすっかり慣れてしまいました。スネイプ先生に、これを渡したくはありません。ですから……貴方達にはやるべきことがある……そうですねポッター?」
そう平然と言ったマクゴナガルに対する衝撃を、刀原は暫く忘れられそうに無かった。
「今年こそ君に勝つ。貴族らしく、正々堂々とな。首を洗って待っておくがいい」
「フハハハハハ」
「完全に良きライバルですね。良いことです」
「笑いを足すなトーハラ!感心するなササキべ!」
マルフォイがハリーにそう高らかに宣言したほどに。
そして……オリバー・ウッドの後任としてキーパーに就任したロンも、猛特訓を重ねていた。
そうして始まった注目の試合は大接戦となり、双方が四十点ずつを入れ合う展開となった。
最終的にはハリーがまたもデッドヒートを制し、グリフィンドールの勝利で幕を閉じたのだった。
手のひらという舞台で
踊ってくれ。
映画で見る限り……グリンデルバルドって演説が巧みですよね。
特に黒い魔法使いでのデップバルドは映画館で震えた記憶があります。
個人的に……。
カリスマ性で率いたヒトラーとグリンデバルド。
恐怖と粛清で率いたスターリンとヴォルデモート。
彼らは対になっていると思っています。
え、刀原の扇動力はどこから来たって?
やだなー誰かが教えたに決まってるじゃないですか。
ここから刀原は色々と策を講じていきます。
布石や伏線をいくつも用意していきますので、お楽しみに。
感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
では次回は
蛇と閉心術
次回もお楽しみに。
アンブリッジの末路。どうしましょうか……?必ずしも反映するわけではないのですが……宜しければお答えください。
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