ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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夢じゃない

僕はそれを

受け入れたくない。






死神、諭す。蛇と閉心術

 

 

 

 

DAの練習がスタートし、クィディッチ・シーズンも始まった。

 

そして……ハグリッドが帰ってきたという報告がハリー達の元にやって来た。

 

「何があった?」

 

ハリーや刀原達が小屋に着くと、そこには傷だらけのハグリッドが謎の肉を手に座っていた。

 

「酷い傷です。直ぐに直しますね」

 

「何でもねぇ。自分で処置できる」

 

雀部が心配そうに駆け寄り回道をかけようとするが、ハグリッドは何故か首を振って嫌がる。

 

だが、そこで大人しく引き下がる二人ではない。

 

「なんでもねぇじゃありません!治します」

 

「普通に治されるのと、捕縛されて治されるの。どっちが良い?」

 

刀原と雀部は有無を言わさず(いつもの笑みを浮かべながら)、半ば強引に回道をかけて治し始める。

 

そしてハグリッドの方も最初こそ拒否していた(「大丈夫だから」)が、二人がニコッと笑う(うるせぇ大人しくしてろ)と、遂に観念したのだった。

 

 

 

「で、何があったの?」

 

傷が癒えたハグリッドにハリーがそう聞く。

 

「ハリーでも教えらんねぇ。極秘だ」

 

ハグリッドはまたも頑なに首を振る。

 

「そういやぁ、ショウ、ライカ。隊長さんになったってな?すげぇなぁ、おめでとう」

 

そして、まるで話題を逸らすように刀原と雀部の方を向いてそう言った。

 

「ああ、ありがとうハグリッド。巨人たちのご機嫌は麗しくなかったと見えるが、どうだった?」

 

刀原が平然とそう言うと、ハグリッドが目を見開く。

 

「一体……誰が、そう言った?」

 

「見れば分かる」

 

それを聞いたハグリッドは項垂れる。

 

半巨人であるハグリッドは頑丈でタフだ。

 

それをここまで疲弊させ、傷つけることが出来るのは……虚か、同業者(死神)か、同業他社(滅却師)か、強力な魔法生物か、巨人ぐらいしか刀原は思いつかなかったのだ。

 

「やっぱ、お前さんは他とは別格だな」

 

「そうか?巨人か魔法生物か……一か八かだった*1

 

刀原はそう言うが、ハグリッドの苦い顔は変わらなかった。

 

そしてハグリッドは観念し、話し始めた。

 

魔法省の追手をフランスで撒き、巨人の群れに接触したこと。

 

最初は友好的だったが、内ゲバ(反乱)が発生して凶暴な者(過激派)が長になり、交渉は決裂したこと。

 

死喰い人も接触していたこと。

 

「巨人が敵になるかもしれないの?」

 

「……その可能性は、ゼロじゃねぇが……」

 

ハーマイオニーが深刻そうな顔でそう言えば、ハグリッドは考え込む。

 

「大丈夫だ。巨人ごとき、臆す必要はない」

 

「いざとなったら切り捨てればいいんです」

 

刀原はそうケロっと答え、雀部もうんうんと頷く。

 

「そういう問題じゃないよ……」

 

ハリーは心配そうにそう言った。

 

 

 

 

 

 

傷だらけだったとはいえハグリッドが戻って来たのは喜ばしいことなのだが、彼は帰還して早々にアンブリッジの洗礼(査察)を受ける事になった。

 

当然ながら良い訳も無く……狼人間やケンタウルス等、混血をを毛嫌いしているらしいアンブリッジは、ハグリッドをトレローニーと並ぶ二大ターゲットにした様だった。

 

しかし、それ以外は平穏な空気が流れた。

 

ハリー達は、DAの会合やクィディッチの練習などで充実した毎日を送っている。

 

刀原達は防衛作戦が軌道に乗ったことやアンブリッジに対しては諦める事にしたためイライラが減った。*2

 

そんな彼らの癒しとなっていたDAの会合、その参加者達の練度は日増しに増していった。

 

特に見違えるほどに上達していたのはネビルだ。

 

『妨害呪文』や『武装解除呪文』を習得し、まだあちこち飛んでいく*3が『失神呪文』の習得も時間の問題だった。

 

 

更に、ハリーには新しく好きな人が出来たらしい。

 

それは昨年にダンスパートナーとなったジニーだ。

 

「みんなには内緒だよ。特にロンや双子達には!」

 

「おう。分かった」

 

気恥ずかしそうに言ったハリーを見て、刀原はなんだか嬉しい気持ちになったのだった。

 

また……セドリックとチョウは内々に婚約したらしく、照れながらそう言った二人を、刀原と雀部は盛大に祝福した。

 

近づいてきたクリスマス休暇はとても楽しみなものになる予定だった。

 

ハリー達はロンの家である『隠れ穴』に招待されることになり、刀原と雀部もそれに招待された。

 

そして時々ホグワーツに戻らなくてはならないかもしれないが、二人はその招待を有難く受ける事にした。

 

特に刀原にとっては……なんやかんや初めて行く『隠れ穴』である。

 

ここ最近忙しかったこともあって、二人はとても楽しみにしていたのだった。

 

そう……クリスマス休暇はハリーや刀原達にとって、とても楽しみなものになる予定……()()()

 

 

 

 

 

 

 

クリスマス休暇を目前にした日の夜、ハリーは不思議な夢を見ていた。

 

その夢で、ハリーの体はしなやかに動いていた。

 

光る金属の格子の間を通り、暗く冷たい石の上をまるで這うように、腹這いで滑っていた。

 

周囲を見渡すとそこは廊下であり、行く手には男が一人いる。

 

ハリーはその男を猛烈に噛みたい気分になったが、もっと重要な仕事があることを思い出して踏みとどまり、男の脇をすり抜けようとした。

 

だが、男はハリーに気づいて杖を抜いた。

 

……仕方がない。

 

ハリーは床から高々と伸びあがり、男を襲った。

 

一回では済まさず、二回三回と。

 

牙が男の肉に深々と刺さり、ハリーは男のあばら骨が自分の両顎によって噛み砕かれるのを感じ取った。

 

そして生暖かい血が噴き出して床に飛び散り、男は苦痛の叫び声を上げながらドサリと崩れ落ちた。

 

やがて、男は静かになった……。

 

「ハリー、ハリー!大丈夫か!?」

 

ここでハリーは目が覚めた。

 

体中から冷や汗が止まらず、震えも止まらなかった。

 

呼びかけていたのは刀原だった。

 

深刻そうで顔色もあまり良くない(凄く動揺している)彼の顔を、ハリーはここ最近見たことが無かったと思った。

 

「ハリー!」

 

ロンも凄く驚いた表情で近くに居た。

 

「ハリー、自分が誰だか分かるか?俺が誰だか分かるか?ここが何処だか分かるか?」

 

刀原は懸命な表情でそうハリーに問いかけた。

 

ハリーはそれにただ頷いた。

 

そして猛烈な吐き気に襲われる。

 

余りにも生々しかったが故に。

 

だが、伝えなくてはならない。

 

「ロン……。君のパパが、襲われた」

 

「え?」

 

ハリーの言葉に、ロンは「何言ってんだこいつ」と言った顔になる。

 

が、それも一瞬であり「君は、悪い夢でも見たんだよ」と直ぐに説得するように言う。

 

「襲われた?アーサー氏が?夢じゃないのか?」

 

刀原は冷静にそう言った。

 

「夢なんかじゃない!感触まで伝わった!ウィーズリーおじさんが……血だらけで倒れて……!」

 

ハリーは半ば錯乱状態になりながらそう言った。

 

傍から見れば悪夢を見てパニックになった子供だが、刀原はそう切り捨てはしなかった。

 

「……ネビルは?」

 

少しだけ考えた後、刀原はそう周囲に聞いた。

 

「マクゴナガル先生を呼びに行くって言ってた」

 

ディーンがそう刀原に伝える。

 

刀原はネビルの成長を感じられるその即応性に、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。

 

「とりあえず、校長室に向かうぞ。俺の嫌な予感が的中すれば……おそらく、一刻の猶予も無い」

 

そして刀原はそう言って『天挺空羅』を使い、伝言を飛ばしたのだった。

 

 

 

「事は早急に行わなくては」

 

ハリーから事情を聞いたダンブルドアは、そう言って歴代校長の絵画に捜索を命じた。

 

そして、アーサー氏は酷い状態で発見された。

 

嫌な予感ってのは当たるもんだな。

 

それを聞いた瞬間、刀原は苦虫を嚙潰したような顔でそう思った。

 

幸か不幸かはさておき……ハリーの悪夢は現実(ガチ)であり、アーサー氏は騎士団の任務中に襲撃されたのだ。

 

あと少しでも発見が遅れるとヤバい(死んだかもしれない)状態だったと、運ばれる様子を見ていた歴代校長の一人は言う。

 

それを聞いたマクゴナガルはフレッドとジョージ、ジニー、おまけに雀部を起こしにグリフィンドール寮へ戻った。

 

やがてやって来た彼らは、次々とやって来る一報を深刻そうな顔で聞いていた。

 

そして刀原がふとハリーの方へ眼をやると、ハリーは心ここにあらずと言った感じだった。

 

いや、それだけじゃねぇ……。

まるで、狐憑きの様な……。

 

そう思った刀原はおもむろにハリーの目の前に立ち、霊圧を込めてパァンと猫だましをする。

 

それを受けてハッと気づいたハリー。

 

その顔は蒼白だった。

 

「気をしっかり持て、ハリー」

 

そう言った刀原にハリーは一瞬たじろいだが、しっかりと頷く。

 

「こちらも猶予はなさそうじゃな」

 

それらを目線の端で見ていたダンブルドアは、ポツリとそう言った。

 

暫くして、アーサー氏は聖マンゴ魔法疾患傷害病院に運ばれたとの一報が入る。

 

「君たちはシリウスの元に向かうのじゃ」

 

ダンブルドアはそう言って移動(ポート)キーを用意する。

 

「雷華はハリーに同行してくれ。連絡は密に、伝令神機を使ってな」

 

「了解」

 

刀原はそう言い雀部はそう返事をする。

 

そして、ハリー達はグリモールド・プレイスに飛んだ。

 

時刻は朝に向かっていく。

 

刀原が次に受けた一報は、『アーサー氏は一命をとりとめた』と言う喜ばしい吉報だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の午後。

 

取り残される形のとなったハーマイオニーを連れて、刀原はグリモールド・プレイス十二番地を訪れた。

 

「ハリーは?」

 

出迎えた雀部に、刀原は早速そう聞いた。

 

「どうも思い詰めていたみたいだったので……強制的に寝かせました(落としました)

 

雀部があっけらかんと言うと、刀原は「最高の選択だよ」と言う。

 

ハリーはあれから随分と悩んでいた様子で、自分がまた寝たら周囲を襲うんじゃないかと心配していた。

 

それを見かねた雀部が「まずは寝なさい。ハリーが心配しているようなことは起こりません」ときっぱり言ったのだ。

 

しかし、ハリーはそれでもごちゃごちゃブツブツ言っていた。

 

そしてそんなハリーに堪忍袋の緒が切れた雀部は「じゃあ、無理やりにでも寝させますので」と言い、容赦なく腹に一発入れて失神させたのだ。

 

「今頃ぐっすりだと思いますよ?ああ、一応の事態に備えて結界で周囲を覆っていますが」

 

「流石は俺の相棒、任せて良かったよ」

 

報告に刀原がそう言えば、雀部はニッコリと笑った。*4

 

 

 

ハリーがぐっすりと眠っている(気絶している)間に、刀原も聖マンゴに行ってアーサー氏のお見舞いをした。

 

アーサー氏は喜ばしい事に……刀原が思っていた最悪の想定(再起不能の判定)に反して……順調に回復しているらしく、厄介そうな蛇の毒も解毒剤が見つかったと言っていた。

 

そして……刀原がグリモールド・プレイスに戻ってくる頃には、ハリーも復活していた。

 

「ハリー。起きて早々に悪いが、重要な話がある」

 

寝室にやって来た刀原がそう言うと、ハリーは頷く。

 

「まず、君が見た夢だが……『君は蛇になって、アーサー氏を襲った』で間違いないな?」

 

「うん、そうだよ」

 

「で、俺が君に猫だましをした時も様子がおかしかったが……あの時も不思議な感じだったか?例えば……無性にダンブルドアを襲いたくなった……とか」

 

「…………うん、ショウの言う通りだ」

 

ハリーの返答を刀原は頭に叩き込んでいく。

 

「そうか……。今はどうだ?さっき寝た時は?」

 

「いつもと変わらないよ」

 

「ふむふむ」

 

刀原は考え込みながら頷く。

 

「とりあえず……。ハリー、君はまだ正気だ。今すぐ隔離しなくちゃならんという訳でもない。そこは安心して良い」

 

刀原がそう言うと、ハリーは心底安堵した様だった。

 

やはり、気が気でなかったらしい。

 

「だがな……『今はまだ』だ。今後も大丈夫と言う保証は全く出来ない」

 

しかし……続けて刀原がそう言えば、ハリーは絶望に打ちひしがれる。

 

「……どういう事?僕はどうしてこんな風に……?」

 

ハリーの疑問は最もだった。

 

そして刀原はその至極当然な問いに口を開く。

 

「ヴォルデモートとの繋がり……ダンブルドアはそう結論した。原理は不明だが、君とヴォルデモートとの間には切っても切れない深い繋がりがあるらしい」

 

「ええっ、ヴォルデモートとの繋がり!?」

 

昨夜ダンブルドアから聞いた言葉を刀原が言えば、ハリーは驚愕する。

 

「ああ。そして今回の事は、その繋がりが招いたものと思われる実際に……校長室で君がおかしくなった時、俺は確かにヴォルデモートの霊圧を……まあ、若干ではあるが……君から感じ取った」

 

「彼奴との繋がりなんて要らない!」

 

そして刀原の言葉に、ハリーは特大の嫌悪感を表す。

 

「誰だって嫌さ、あんな頭のイカれた魔法使いとの繋がりだなんて。だが、まあ残念ながら……君にはそれがある。そして、一つ対応を誤ったり遅れたりしたら、取り返しのつかないことになる。君自身が操られたり、周囲が危険に瀕したりね」

 

それを聞いたハリーの顔色が途端に悪くなる。

 

「ど、どうにかしなくちゃ!でも一体どうすれば?」

 

ハリーはそう懇願するように言う。

 

「そう、どうにかしなくちゃならん。そこでだ……ハリーには年明けから習得してもらわなくちゃいけないものがある」

 

刀原がそう言えば、ハリーの顔に希望の光が宿る。

 

「何を習得すればいいの?」

 

「『閉心術』と呼ばれる術だ。簡単に言えば……心に幕を張って、見えない様にするんだ。詳細は後日、ゆっくり解説しよう」

 

「む、難しそう……」

 

「ああ、とても難しいが……やるしかない。出来なければ、ヴォルデモートの操り人形になるだけだ」

 

「それだけは嫌だ。……分かった。頑張るよ!」

 

ハリーはそう言って握りこぶしを作ったのだった。

 

 

 

 

「で、誰が教えてくれるの?」

 

話がまとまった後、ハリーはとても重要な事と言わんばかりにそう言う。

 

スネイプ教授(ハリー永遠の宿敵)

 

「え……。じょ、冗談……だよね?」

 

刀原がニヤニヤしながら言うと、ハリーの顔は絶望の色に染まる。

 

(or)

 

(or)?」

 

「俺」

 

「ショウが!?」

 

ハリーの顔に、またも希望の光が宿る。

 

「どっちが良い?」

 

その問いにハリーは全く悩む素振りすらしない。

 

「ショウが良いです!お願いします!」

 

一秒の間もなく、ハリーは刀原に頭を下げた。

 

「おう、任された」

 

刀原は笑いながらそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「さて、早速始めるか」

 

正月三が日が過ぎ、新学期を目前にした日の夜、空き教室にて刀原はハリーにそう言った。

 

「改めて言うが、これからハリーに習得してもらうのは『閉心術』と言う術だ」

 

刀原は黒板に閉心術と書いてハリーに見せる。

 

ハリーはそれを真面目な表情で見ていた。

 

「閉心……その名の通り、この術は自らの心を外部からの脅威……例えば魔法で侵入をしようとしたり、影響を及ぼそうとするものに対して守るためのものだ」

 

「心を守るための術……」

 

ハリーの言葉を肯定するかのように刀原は頷く。

 

「じゃあ、何故閉心術を習得しなくてはならないのか。それは、ヴォルデモートは『開心術』……他人の心や感情、記憶などを引っ張り出す術に長けているらしいからだ」

 

「開心術?それって人の心が読めるの?」

 

「そうだね……読心術と似てるかな。だけど、そんな行儀の良いものじゃない。相手の心を強制的に開くんだ。簡単に言えば、押し入り強盗みたいなものかな。嘘を見抜いたりも出来る」

 

ハリーはそれを聞いて、納得するような素振りを見せる。

 

「ハリーがそれを受けるとする。すると術者……例えばヴォルデモートが使ったら……ハリーが抱えている秘密や、絶対に隠しておきたいものがヴォルデモートにバレることになる。つまり、ハリーのあーんな事やこーんな事がヴォルデモートにバレるという訳だ」

 

おやおや、昨夜はお楽しみだったようだな?

 

「ぜ、絶対に嫌だ!」

 

ヴォルデモートが半笑いで言ってくるのを想像したハリーは、立ち上がってそう叫んだ。

 

「嫌だよな?そうだとも。プライバシーの欠片も無いし、ヴォルデモートにおちょくられるのは目に見えている」

 

おやおや、お前はジニーとやらが好きなのか?

青春だな、良いことだ。

大切にするんだぞ?

 

「い、嫌だぁあああ!」

 

またしても想像してしまったハリーは、頭を抱えながらそう叫ぶ。

 

「それに……この前も言った通り、ハリーとヴォルデモートは深層心理で繋がっている。確かに……この前のアーサー氏の一件の時の様に、役立つときがあるかもしれない。だが、強力な開心術を持つヴォルデモートがそれを利用する可能性が非常に高い以上、防ぐ手段を持っていた方が良い」

 

「この前ショウが言っていた……僕が操られたり、周囲の皆に危険が及ぶかもしれないことを避けるってことだね」

 

「その通りだ」

 

刀原はハリーがやる気になった事を見て頷いた。

 

 

「さて、じゃあ……杖を取って立て。今から俺がハリーの心に侵入を試みる。ハリーはそれを武装解除させるなり、防ぐなりして防衛してみせろ」

 

刀原は立ち上がりながらそう言った。

 

「分った」

 

ハリーも立ち上がりながら言う。

 

「行くぞ?『レジリメンス(開心せよ)』!」

 

刀原の速さにハリーは何も出来無かった。

 

部屋が暗転し、画面が過る……。

 


 

五歳の時…ダドリーが新品の赤い自転車に乗ってるのを見て、羨ましかった。

 

九歳の時…マージ叔母さんのブルドッグに追いかけられ、木に登った。

 

組み分け帽子を被っている。

 

ハーマイオニーが横たわっている。

 

大量の吸魂鬼が襲い掛かってくる。

 

ジニーが……駄目だ。

 

これは秘密なんだ。

 


 

そう思った瞬間、空き教室に戻ってくる。

 

「友達にやるのは……心情的にキツイな」

 

目の前の刀原は苦々しそうにハリーを見ていた。

 

「……初めてにしては及第点だな。入りこませ過ぎな気もするが、最終的には追い出したんだし」

 

刀原は考えながら、そうハリーに告げる。

 

「さて、初めて食らった訳だが……どうだった?」

 

「……コツとか、無いの?ショウはどうやって防いでるとか……」

 

疲弊した様子でハリーがそう言えば、刀原は「あー」と目を逸らす。

 

「俺のは……参考にならん。霊圧を纏っているし、斬魄刀と繋がっているから……よほどのことが無ければ掛からないからね」

 

そう言う刀原に、ハリーは当てが外れた様に項垂れる。

 

「取り敢えず、心を空にするんだ。感情や思考を一旦捨てて、無にする。心頭滅却。落ち着いて、深呼吸して、集中するんだ。続けて言ってくれ……集中」

 

「集中……」

 

「集中」

 

「集中……」

 

「では行くぞ?『レジリメンス(開心せよ)』」

 


 

巨大なドラゴンがハリーの前に君臨している。

 

バジリスクがとぐろを巻いている。

 

大量の蜘蛛が、追いかけてくる。

 

トロールの近くでショウが戦っている。

 

蛇が、ウィーズリーおじさんを……!

 


 

ここで空き教室に戻ってくる。

 

「ほう……こんな風に見ていたのか」

 

刀原は興味深そうに言う。

 

ハリーは肩で息をしていた。

 

「またしも俺を追い出したのは上出来だ。だが、欲を言えば……見られたくないものに場面が変わる前に、追い出しておきたいところではある」

 

刀原がそう言うと、ハリーは頷く。

 

「もう一回だけ……いや、やめとくか?」

 

疲弊した様子のハリーを見た刀原は、仏心を出す。

 

そしてハリーは深く息を吐き、その有難い提案に同意するため、ゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

 

 

ハリーが頑張り始めた閉心術の訓練について、刀原は『苦戦必至である』と断言していた。

 

そしてそれは的中した。

 

ハリーは、誰が何と言おうともお年頃(思春期真っ盛り)なのだ。

 

そして当然ながら、色々と考えちゃう悩める年頃の男子に、心頭滅却(心を無にしろ)は非常に厳しかった。

 

辛い。

 

ハリーはロンやハーマイオニーにそう打ち明けた。

 

そんな彼に救世主が現れる。

 

「ハリー、そんな時は座禅です」

 

雀部がダメ元で提案した座禅が、どういうわけか効果を示したのだ。

 

また、雀部は刃禅のやり方も教えた。

 

そしてダンブルドアに交渉した。

 

「良いぞ」

 

交渉に対して、ダンブルドアはそう軽い感じで頷く。

 

こうして、借りたグリフィンドールの剣を使ってやってみることになった刃禅に、ハリーは興味を示した。

 

そして実際にやってみた所……効果覿面だったのだ。*5

 

「浅打かこれ?」

 

「まさか、そんなはず……?」

 

刀原と雀部がそう疑う*6位、効果覿面だった。

 

 

 

ハリーは救われたが、救われなかった者がいる。

 

刀原だ。

 

親しき仲にも礼儀あり。

友人だからこそプライベートは詮索しない。

 

そんな心情を持つ彼に、弟分の赤裸々な心を覗けというのは……いささか酷なことだと言えた。

 

更に彼の心を苦くさせたのは、ハリーとジニーの甘酸っぱい関係を見てしまったことだった。

 

ハリーとジニーが付き合い始めたのは知っていたが、クリスマスの日にキスをしていたのは知らなかった。

 

護廷十三隊の隊長という重責を担う彼。

忘れがちだが、まだ彼は二十歳に達して無い。

 

一応、一応だが……彼にも思春期というのがある。

 

そして……彼は誰がどう言おうとも日本人(恋愛関係を大っぴらにしない人種)

 

昨年、愛でたく付き合うことになった雀部とは、気恥ずかしくて()()()()()()()()()()()のだ。

 

一応……一緒に出掛けたりご飯食べたり、彼女の祖父である雀部長次郎にそういう挨拶(雷華を僕に下さい!)をしたりしているが。

 

他人事だというのに残る記憶。

 

他人事だというのに何故か恥ずかしくなる。

 

そして複雑になる、封じ込めたはずのある思い。

 

それに対する、理性と葛藤と気恥ずかしさ(ダメだ、それは平和になってからだ!)

 

それらに数日間悩まされ……彼は閃く。

 

杖をこみかみに押し当て、頭から銀色の糸のようなものを取り出すことにしたのだ。

 

そして……それをポイっと空中に放り捨てた。

 

気持ちがスッキリした(綺麗さっぱり忘却した)

 

ハリーのため、俺のため……覗く度にやろう。

 

刀原はそう決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
とはいえ、魔法生物の扱いになれているハグリッドが下手を打つとは思えなかったため……実質的には一択だったが

*2
アンブリッジや英国魔法省に対する鬱憤を、虚を殲滅することで発散することは辞めなかったが

*3

「ネビル。落ち着いて……狙いを定めて……相手を指し示すように杖をビシッと向けて、『ステューピファイ(失神せよ)』」

 

「『ステューピファイ(失神せよ)』!」

 

横にいた刀原の教えを受けたネビルがディーンに向けて放つも、横に居たパドマ・パチルに命中してしまった。

 

「あ、ごめん……」

 

だが、自分が失神するよりかはマシと言えるだろう。

 

*4

 

「容赦ないな……君も」

シリウスはそう雀部を見て、苦笑いしていたが。

 

*5
実は……効果覿面だった理由として『憧れ』がある。

 

ハリーは刀原に対して密かな憧れの念を持っており、そんな彼が一年生の時から毎日欠かさなかったのが刃禅である。

 

きっと良いことがある。

これこそ彼の強さの鍵。

 

あながち間違ってもいないその密かな思いが、効果覿面足らしめたのだった。

 

*6

なお、念のため確認を取った。

 

『西洋剣の浅打を制作したことは?』

 

答えは『そんなの作って無いYO。見に覚え無いYO』だった。





ああ

美味しそうだなんて

思いたくもない。




今回はちょっと生々しかったですかね……。
しかし、だからこそカットはしませんでした。

ですが、親身になってくれるウィーズリーおじさんを襲う体験をしたハリーの心情を思うと……。


原作でスネイプが言う閉心術の説明ですが、どう考えても読心術に近いと思います。

読心術……家を見て、物があるだろうと推察する。

閉心術……家に押し入り、物を実際に手にすること。

こう言う説明で問題無いかと……。


感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。



では次回は

始まった暴走と密告

次回もお楽しみに。

アンブリッジの末路。どうしましょうか……?必ずしも反映するわけではないのですが……宜しければお答えください。

  • 1『問答無用!』物理的に抹殺ルート
  • 2『人生終了宣言 』社会的に抹殺ルート
  • 3『我らは慈悲深い』救済ルート
  • 4『原作通りに……』原作追随ルート
  • 5『容赦無し!』社会的+物理的抹殺ルート
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