ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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井の中の蛙、大海を知らず

けれども不遜の夢をみて

懸命に井の中を出ようとする

海では生きられぬことも知らずに。









死神、○○○○○。さらば○○○○○ 前編

 

 

 

苦々しい顔をしているマルフォイと、超絶笑顔のアンブリッジに捕まってしまったハリーは、校長室へと連行される。

 

その校長室は人で一杯だった。

 

主であるダンブルドアは穏やかな表情で机の前に座り、マクゴナガルが緊張した様子でその脇に立っている。

 

ファッジは如何にも嬉しそうに暖炉の傍に立ち、護衛にはキングズリー・シャックルボルトとハリーが知らない厳つい顔をした魔法使い。

 

記者のように立っているパーシー。

 

壁際には、刀原が腕組みしながら彼らを睨みつけるように見ていた。

 

チラリと刀原がハリーを見る。

 

直後、「駄目だったか……」とばかりに項垂れた。

 

ハリーはそれを見て、申し訳なさで一杯だった。

 

「さてさて、ポッター。どうしてここに連れてこられたか分かっているだろうな?」

 

ファッジが楽しみでしょうがないかのように言う。

 

「いいえ」

 

ハリーはきっぱりと言った。

 

「なに?分からんと?」

 

「ええ、分かりません」

 

ファッジが面食らったように聞き返せば、ハリーはまたもきっぱり言い放った。

 

ハリーはチラリと刀原とダンブルドアの方を見れば、刀原はにやりと笑い、ダンブルドアはウィンクしたように見えた。

 

リストは雀部が持って行った。

 

それに……常に突発事態(急なガサ入れ)に対応出来るように、証拠となるものは日頃から持ち込まない様に徹底していた。

 

だから、ハリーは強気に出れたのだ。

 

「では、全くわからんと?校則を破った覚えはないと?」

 

「校則ですか?いいえ」

 

「魔法省令は?」

 

「僕が知る限りでは」

 

魔法大臣相手にすっとぼけているハリーの頭は、マルフォイの事で一杯だった。

 

おそらく彼が密告者で間違いない。

 

本人が信用するなと言っていたし、彼の父親であるルシウス・マルフォイは死喰い人なのだ。

 

だが、それにしては様子が妙だったし……最近の態度を見る限りそんな事をするとは思えなかったのだ。

 

「では、校内で違法な学生組織が発覚したことは知っているかね?」

 

そう考えている間に、ファッジが怒りでどすが効いている声でそう聞く。

 

「はい、初耳です」

 

ハリーは寝耳に水だというかのように、まるで純粋無垢なように言う。

 

「大臣閣下、彼は嘘をついていますわ。私が手に入れた情報では……ダンブルドアが首謀し、組織の名はダンブルドア軍団。組織のリーダー役がポッターだと」

 

アンブリッジがそう滑らかに言う。

 

「ほっほう!ダンブルドア軍団だと?これはこれは」

 

それを聞いたファッジがおどけた様にいう。

 

「おまけに……ミスタートーハラ?貴方もそれに加担したそうですね?」

 

勝ち誇ったように言うアンブリッジ。

 

先日トレローニーを追い出そうとした時のように、優越感と今までの仕返しだとばかりに笑っていた。

 

「なんと!これは由々しきことだな!」

 

まるで芝居がかったようにファッジも言う。

 

そこには自分の思い通りにならない目の上のたん瘤を消せる口実を見つけた様だった。

 

「なるほど……。大胆な仮説と告発ですが……アンブリッジ教授。何度も言っておりますが、そうだと言う具体的な証拠はあるのですか?手に入れた情報とは?例えば……密告者とか?」

 

刀原がいつもの笑みになりながらそう言う。

そこには余裕が感じられた。

 

しかし……ハリーの内心は、穏やかでは無かった。

 

多分、ショウはマルフォイがアンブリッジ側に着いたことを知らない。

 

アンブリッジが勝ち誇ったようにマルフォイの名前を言うと思い、ハリーは内心身構える。

 

「ええ、勇気ある生徒?が告発してくれました」

 

しかし、そんなハリーの内心を他所に、アンブリッジは生徒?と疑問しながら言った。

 

「では、その人物は?」

 

「そうだぞドローレス。早く連れてきたまえ!」

 

刀原とファッジにそう促されたアンブリッジは、困ったように言う。

 

「ああ、いえ。会ったことは無いのです。いつも手紙のやり取りでした」

 

「手紙?」

 

ここでハリーは、全体の空気がおかしく(え、は?手紙……ですか?)なりつつあることに気が付いた。

 

「では、その手紙は?」

 

「持っていますとも!ほらここに!これが動かぬ証拠ですわよ?」

 

再び刀原に促されたアンブリッジは、そう高らかに手紙と思しき便箋を見せる。

 

しかし……。

 

「真っ白ですね?これ?」

 

「なに?」

 

「え?」

 

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

刀原が周囲に見せたのは真っ白く、何も書かれていないただの羊皮紙だった。

 

ファッジが惚けるように言い、ハリーが驚き、アンブリッジは明らかに動揺した。

 

「か、返しなさい!」

 

アンブリッジは顔を真っ青にしながら刀原が持っていた羊皮紙をひったくる。

 

「た、確かにさっきまで……」

 

アンブリッジがそう言って様々な術を掛けるが、ただの白い紙のまま。

 

そんなやり取りを、校長室に居た者達は三者三葉の表情で見ていた。

 

青い顔になるアンブリッジ。

 

青なのか赤なのか分からない顔ファッジ。

 

失笑しているのを懸命に隠しているマクゴナガル。

 

戸惑った様子(俺達どうすれば良いんだ?)のキングズリー達。

 

穏やかな顔から余裕の顔になったダンブルドア。

 

いつもの表情(ふざけてんの?ん?)の刀原。

 

ハリーは安心して良いのか分からない。

 

「ドローレス?君は確かに……その、見たところ何も書かれていない紙から……情報を得ていたのかね?」

 

ファッジがそうやんわりと言うと、「ええ、そうですわ大臣閣下」と青い顔のまま弁明するアンブリッジ。

 

「しかし、果たしてそれが本当に証拠に成りますかな?ただの被害妄想と見られますよ?」

 

「ひ、被害妄想!?」

 

「それに……そんな何も書かれていない紙を証拠として、ダンブルドア殿や護廷十三隊隊長の僕を告発するとは……。英国魔法大臣殿には任命責任があるのでは?」

 

刀原がスラスラとそう言えば、アンブリッジやファッジは青い顔をする。

 

「ドローレス!組織に関する具体的な証拠はないのか!メンバーの名前が書かれたリストとかあるはずだ!」

 

「い、いえ。リスト等はありません……。入手に失敗しました……」

 

二人のやり取りを聞いたハリーは安堵する。

 

リストは今、最も安全な場所にあるはずだからだ。

 

「……では、もう何もないようなので。僕はこれにて失礼させていただきます。破面に対して、色々と事後処理もありますので……よろしいですね?ダンブルドア校長殿」

 

刀原が笑みを崩さず、ダンブルドアに言う。

 

「もちろんじゃよ、刀原隊長殿。ご足労かけて申し訳なかった」

 

ダンブルドアも微笑みながらそう言う。

 

「いえいえ。では」

 

刀原はそう言ってダンブルドアとマクゴナガルにだけスッとお辞儀し、校長室の扉に向かう。

 

「ま、待ちなさいミスタートーハラ。まだ話は終わってません!」

 

アンブリッジがヒステリックにそう言う。

 

「まだ何か?」

 

刀原は心底鬱陶しそうに言う。

 

「貴方も共犯である事は明白、私は知っています」

 

アンブリッジが言い張るも、刀原はどこ吹く風だ。

 

「先程も言いましたが……『証拠があるならそれをご提示ください』と言っております。あるなら……ですが。いや、ある筈が無い。なぜなら、それは事実では無いのですからね」

 

刀原は微笑みながら言う。

 

「それと……僕はあくまで、英国魔法省の正式な要請を受けてここに居るだけ。だから、貴女や英国魔法省の指示や命令を受けることはありません。どうしてもと言うなら、日本魔法省や護廷十三隊にどうぞ」

 

刀原は一瞥も無くそう言い放ち、扉に手を掛ける。

 

そして思い出すように振り返る。

 

「ああ、そうだ。英国魔法大臣殿。此度の一件は向こう(日本)に報告させていただきます。近いうちに抗議(遺憾の意)が来ると思いますので、そのつもりで」

 

そう言って、刀原は今度こそ校長室から出て行った。

 

その後、校長室では混沌とした議論が行われた。

 

しかし、結局ハリーは証拠不十分でお咎め無しとなり、ダンブルドアも一応だが校長職に留まる事になったのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

ーーー

 

『魔法省令

 

昨今のホグワーツに関する混乱を鑑み、魔法省は更なる全面的な抜本的改革と指導を行う為、高等尋問官を『魔法学校特別指導部 部長』に就任させる。

 

魔法大臣 コーネリウス・ファッジ』

 

 

『ホグワーツ高等尋問官令

 

高等尋問官を守るため、尋問官親衛隊を創設する。

 

高等尋問官 ドローレス・アンブリッジ』

 

ーーー

 

多くの生徒はこの魔法省令に、度肝を抜いた。

 

『魔法学校特別指導部 部長』はアンブリッジに全ての権限を与える事に等しい役職であり、これでアンブリッジはホグワーツの実質的な支配者になったも同然だった。

 

尋問官親衛隊には監督生を超える権限を与えており、ありもしないでっち上げやいちゃもんを付けての減点が早速横行した。

 

親衛隊のリーダーには、昨夜ハリーを捕えたマルフォイが就任する。

 

しかし……彼は不思議とやる気を見せなかった。

 

生徒達から点を引くことも無く、ハリー達には「すまない」と呟くだけに留まった。

 

ハリー達はそれを聞いて、周囲に「マルフォイは多分味方だよ」と伝えた。

 

一方のアンブリッジは、自身が新たな女王になったつもりで自信満々に往来を闊歩し、満面の笑みで朝食を食べていた。

 

当然、それに生徒達は反発する。

 

そしてささやかとは言いがたい……どちらかと言うとド派手な抗議やボイコット、ネガキャンを行い始める事にした。

 

それも早速。

 

アンブリッジが『魔法学校特別指導部 部長』に就任した直後に。

 

()()()アンブリッジが就任を祝うかのように巨大な仕掛け花火を炸裂させ、朝食が終わった大広間を伏魔殿状態にさせたのだ。

 

やたらカラフルなドラゴンが何匹も現れ、火の粉をまき散らし、大きな音を立て始める。

 

直径一メートルは優に超えるショッキングピンクのネズミ花火が破壊的に飛び回り、ロケット花火が壁に当たって跳ね返っている。

 

「ここはいつの間に花火大会の会場になったんだ?」

 

「あはは!凄く綺麗です!たまや~」

 

ハリーの傍で刀原と雀部が大笑いしながらそう言っていた。

 

「な、なんとかしないと。『ステューピファイ(麻痺せよ)』!」

 

蛮行(花火大会)を止めるため、アンブリッジがロケット花火に失神呪文を当てる。

 

が、それは失策だった。

 

ロケット花火は、被害をより悪化させたのだ(体感で言うと五倍になった)

 

「『消失呪文』を使ってくれるといいな。そしたら花火が十倍になるんだ」

 

首謀者(フレッド・ジョージ)がそう言ったのを、二人は確かに聞いた。

 

「聞いたか雷華?十倍だってよ」

 

「それはぜひ見たいですね」

 

ニヤッと笑う二人。

 

やる事は一つだ。

 

「「『エバネスコ(消えよ)』」」

 

目の前に広がる花火は二十倍になった。

 

 

 

結局、アンブリッジを祝う花火は学校中に広がった。

 

いつもなら何とかしてくれるはずの各教授陣は「花火を消していい権限があるのか分からないから」と言ってアンブリッジに全てを託した(丸投げした)

 

そしてアンブリッジは、時々十倍になる花火に悪戦苦闘した。

 

出向いたその場所で、花火がようやく最後の一個になったと思った瞬間、その最後の一個が十倍になる(振り出しに戻った)のだ。

 

しかも、何回も。

 

二十倍になった時もあった。

 

その度に啞然となる(orzになる)アンブリッジ。

 

しかし、心が折れてる暇もない。

 

そんなことをしてる間にも、被害は拡大する一方だったからだ。

 

当然、援軍を期待できるはずも無く(誰も手伝ってはくれない)

 

アンブリッジは丸一日、鎮火に勤しむことになった。

 

 

 

 

 

それから……ホグワーツは極めて騒がしくなった。

 

『ダンブルドアは居るが実質的には何もできない』

 

『教授陣達は黙認している』

 

『だったら、僕らを止める者はいない』

 

という理由から、派手な悪戯が横行したのだ。

 

更に極めつけが、広まった大義名分だ。

 

彼ら曰く『僕らは抗議をやってるんだ(アンブリッジネガティブキャンペーン中)』とのこと。

 

一体何に対しての抗議なのかは分からないが、いつの間にやら『我らホグワーツ解放戦線』などと言う物騒な言葉が合言葉(スローガン)になった。

 

『あのババァ』だの『ガマカエル』だの言われていたアンブリッジには『ターゲット(みんなの玩具)』なる新たな渾名が付けられた。

 

団結した生徒達は恐ろしかった。

 

学生運動じみてると刀原は思った。

 

当然、アンブリッジが何もしていない筈はなく……。

 

状況発生から約一週間後。

 

悪戯っ子の親玉であり、首謀者と思われた双子、フレッド・ジョージを追い詰めることには成功した。

 

「そこの二人には、()()()()()学校で悪事を働けばどのような目に合うのかを思い知らせてあげましょう」

 

アンブリッジが勝ち誇ったようにそう言う。

 

二人を見せしめにし、力と恐怖でホグワーツを支配しようという顔だった。

 

しかし、そう上手くはいかなかった。

 

「我らが親愛なるターゲットよ、僕らにはフィクサー(黒幕)がいる!」

 

「抗議は終わらない、残念だったな!」

 

そう高らかに宣言した双子は、箒に乗って逃亡したのだ。

 

「ピーブズ。俺たちに変わって、あの女を手こずらせてくれよ?」

 

双子は最後にそう言い、言われたピーブズの敬礼に見送られながら彼らは空へ消えていったのだった。

 

 

 

さて、悩みの種だった双子はこれで消えた。

 

ホッと一息つくアンブリッジ。

 

気になるのは彼らが言っていた黒幕だが……心配はいらないだろう。

 

統率者が居なくなった以上、これで訳の分からない悪戯は終息するはずだ……。

 

 

 

こう思っていたアンブリッジだったが、誤解していたことがある。

 

『双子は統率者ではない』と言う事だ。

 

そして大勢の生徒達が、空席になった『悪ガキ大将』の椅子を目指し始めたのだ。

 

つまり、本当の悪夢はこれからだった(これからが本番だぜ!ヒャッハー!)

 

ある者は二フラー*1をアンブリッジの部屋に忍び込ませ、部屋を滅茶苦茶にした。

 

廊下で『クソ爆弾』や『臭い玉』を炸裂させるのは日常茶飯事になった。

 

正に混沌(カオス)

 

双子が居なくなったことで、タガが外れたのだ。

 

とにかく数が多く、惨事が偶発的に起きる。

 

そのため犯人を血眼で探そうとも、無駄であった。

 

尋問官親衛隊も懸命に助けようとするが……ことごとくが返り討ちにあい、被害者を増やすだけになる。

 

アンブリッジが頼りにしたマルフォイは、返り討ちにこそ合わなかったが、何の成果も得られてなかった。

 

そして何より一番厄介なのが、ピーブズだ。

 

狂ったように高笑いしながら(アヒャヒャヒャヒャヒャー!)学校中を飛び回り、テーブルをひっくり返し、黒板から急に現れ、銅像や花瓶を倒しまくった。

 

ランプを打ち壊し、水道蛇口を引き抜いてフロアを水浸しにし、何時間もアンブリッジに付きまとっては「バーカ」とシンプルに馬鹿にしまくった。

 

味方する者は、親衛隊の面々しかいなかった。

 

教授陣はことあるごとに呼び、全て放り投げた。

 

それどころか……。

 

クリスタルのシャンデリアを落とそうとしているピーブスの傍を知らん顔で通り過ぎ、挙句「反対に回せば外れます」と口を動かさずに助言したマクゴナガルを刀原とハリーは見たし、確かに聞いた。

 

ちなみにシャンデリアは、無事に落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ」

 

「悪い顔になってますよ?」

 

「いやあ、つい」

 

「まあ、その気持ちは……分かりますが」

 

ホグワーツの中庭にて空を見張っていた男女は、暇つぶしの将棋をしながらそう言い合っていた。

 

「そろそろ良いのでは?」

 

「ああ、そうだな」

 

男は考えるように言う。

 

「……これで、王手。詰みだ」

 

「え、ああぁそんな!」

 

頭金をくらい、項垂れる女。

 

「さて、あちらも詰ませるか」

 

男はそう嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

折角この学校を支配したというのに、胃痛の日々。

 

そんなのある日、アンブリッジは考えていた。

 

ここまで来て諦める訳にはいかない。

 

幸いにも試験が迫ってきた為、生徒達の行動は下火になっている。

 

何かしらの切っ掛けがあれば……いや、切っ掛けなどでっち上げればいい。

 

誰にしようかなど、考えるまでも無い。

 

彼女を人質にするか。

 

それともポッターか。

 

言う事を聞かせて、抑止力を私が手に入れば……。

 

ぐふふ。

 

思わず笑みが浮かぶ。

 

ああ、楽しみだ。

 

そう思っていた時。

 

こんこんと部屋のドアを叩く音がした。

 

少しだけうんざりする。

 

また何かあったのかと。

 

胃が痛くなるのを感じながら「どうぞ」と返事すると、意外な人物だった。

 

「やあ、ドローレス」

 

顔が青いのか赤いのか分からない感じでファッジが現れたのだ。

 

「まあ、大臣閣下。御用がお有りでしたら、わたくしの方から伺いましたのに」

 

「いや、それには及ばない」

 

アンブリッジの笑みにファッジは不機嫌そうに言う。

 

「君があの珍妙な手紙……いや、紙切れを証拠と言い張ったおかげで、私は苦境に立たされているのだから」

 

ファッジは唸るようにそう言った。

 

「日本から正式な抗議が来た。向こうの魔法大臣と護廷十三隊総隊長の連名でな。場合によっては、いまここに派遣している二人を日本に帰還させ、少なくとも私が政権を持っている間は二度と派遣しないとのことだ」

 

それを聞いたアンブリッジは苦々しく思う。

 

奴らが生意気にも、小癪にも圧力をかけてきたのだ。

 

しかし「ならばそうさせればよいではないですか」とは、流石のアンブリッジも言えない。

 

自身も虚という謎の怪物を間近で見たし、何なら魔法がほぼ効いていないことも確認したからだ。

 

「それに、極めつけがこれだ」

 

ファッジが次に見せたのが『Secret contents(秘密の中身)』という雑誌だった。

 

「これが二日前に日刊預言者新聞に挟まれる形で出回った。何者かがやったと思われるが……そんな事よりも中身が問題だ」

 

そこに書かれていた内容を見たアンブリッジは愕然とし、絶望の顔に染まった。

 

その内容とは。

 

ーーー

 

アンブリッジが防衛術の授業で読書しかさせてくれず、杖を使わせてくれないこと。

 

生徒の発言を無視、あるいは許さず、言論統制をしていること。

 

生徒達が教授達に授業以外の内容を質問しようとしても『教育令』で認められておらず、生徒達の勉学に支障が出ていること。

 

ハリー・ポッターを始めとした数多くの生徒達に、悪逆非道な体罰をおこなったこと。

 

トレローニーやハグリッドを目の敵にし、トレローニーに至っては追い出そうとしたこと。

 

ホグワーツでは、その抗議のために『心ある生徒達(ホグワーツ解放戦線)』がささやかな抵抗(ド派手な悪戯)をおこなっていること。

 

その抵抗に、()()()()()()()参加していること。

 

アンブリッジがその『心ある生徒達』のリーダー格(双子達)を捕え、生徒達の面前で見せしめに(公開体罰を)しようとしたこと。

 

アンブリッジが私設部隊(尋問官親衛隊)を組織していること。

 

その私設部隊に参加している生徒とて……自らの保身のために、嫌々ながら参加していること。

 

ーーー

 

それらが証言付き、写真付きで載っていたのだ。

 

 

「例の紙切れの事も書かれている」

 

ファッジは見せる。

 

ーーー

 

ダンブルドアとハリー、日本から救援に来てくれている刀原を追い出し、ホグワーツを自分の物にするため、アンブリッジが彼らにありもしない言いがかりをつけたこと。

 

その言いがかりの証拠は『何も書かれていない真っ白な紙切れ』という杜撰なものだということ。

 

ーーー

 

「他国からも抗議が来ている」

 

ーーー

 

あのクラムが、今のホグワーツを知人から貰った手紙を見て嘆いていること。

 

フランス社交会ではフラーがクラムと同じ様なことを伝たえ、大きな関心となっていること。

 

日本が正式に『遺憾の意』を表明し、救援部隊の全面撤退を視野に入れていること。

 

ーーー

 

「そして、一番騒がせているのはこれだ」

 

ファッジはそう言って見せる。

 

そこには、数ヶ月前にアンブリッジが却下した『自習会』を行うための申請書について書かれていた。

 

ーーー

 

九月、魔法省はホグワーツの教育に関して改革を行うと発表していた。

 

そしてそれに共感したのが、一人の女の子だった。

 

「私は今年度が始まって以来、アンブリッジ教授やファッジ大臣がおっしゃる『ホグワーツの著しい学力低下問題』を何とかしようという思いに、共感していました。

 

そこで……私達、生徒の方からも変えていこうと思い、心ある生徒達と数日前にその会合をしたばかりでした。

 

しかし……その『自習会』の許可を、アンブリッジ教授は何故かくれませんでした。

 

私達は、ただ学びたいだけなのに……。

 

凄く悲しく、憤りを覚えずには……いられません。

 

とても、とても残念です」

 

少女は瞳に涙を浮かべてそう答えた。

 

世界に冠するイギリスの、学校内での出来事とはとても思えない。

 

ーーー

 

頑張る少女に、悲しんでいる少女に、世間はいつだって弱く、同情的になるのだ。

 

批判が集まらない訳がない。

 

 

「新聞で誤報だと流せば……」

 

アンブリッジにそう言われたファッジは溜め息をはく。

 

「聞いていなかったのかね?これらは新聞に差し込まれる形で、世に出回ったのだ。否定すれば、信用を大きく失うことになる。それに……」

 

そして言葉を中断して雑誌を見せる。

 

そこには……ハリーがこの夏に吸魂鬼に襲われ、撃退したら未成年の魔法使用と言われ、裁判まで行われた事が書かれてあった。

 

ーーー

 

吸魂鬼が罪なき市民……しかもハリー・ポッターを襲ったと言うのに、新聞は全く報じなかった。

 

そして……未成年の魔法使用の例外『自身の生命に関わる事態には適用されない』だったのに、ハリー・ポッターは裁判で有罪判決を受けそうになったことも、新聞は報じなかった。

 

挙げ句……新聞は事あるごとに、ハリー・ポッターをネガキャンしている。

 

つまり新聞は、魔法省の圧力に屈したことになる。

 

ーーー

 

「既に新聞に対する信用は無いに等しい。仮にいま否定する報道をさせても、全く効果はない。それどころか、余計に悪化するだけだ」

 

それ見たことか、やはり新聞には魔法省の圧力がかかっているのだ。

 

そう思われるのは必定。

 

要するに……魔法省は詰んだのだ。

 

そして……。

 

君の社会的信頼は皆無になった(君は社会的に抹殺された)

 

アンブリッジはその瞬間。

 

自らの足元、積み上げてきたもの、折角手に入れた地位が……無惨に崩れ落ち、無くなったのを察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場は何とか切り抜けたアンブリッジだったが、最早残された手段は無いに等しかった。

 

「数日後、君は全ての職を失うことになる」

 

ファッジにそう通達されたアンブリッジ。

 

胃痛どころではない。

 

そう言えば……あんなものをばら蒔いたのは誰だ。

 

アンブリッジはそう思い、雑誌を見る。

 

そして……。

 

「え……。う、嘘。そんな……」

 

ポトリと雑誌を落とす。

 

急いで今まで来ていた手紙で、唯一内容が消えてないものを取り出す。

 

手紙の差出人は……『S・R』

 

雑誌を書いたのも……『S・R』

 

「あ、あぁああああ」

 

アンブリッジは『全て誰かの手の平の上だった』と、ようやく分かったのだった。

 

 

 

 

 

 

そして……。

 

 

 

 

「まさか、『S』って……」

 

「まさか、『R』って……」

 

ハリーとハーマイオニーが二人にそう聞く。

 

「「なんの話?」」

 

「だから『S・R』って」

 

「「知らない子ですね」」

 

二人は、惚けた顔でそう言った。

 

「ワルイヤツダナー『S・R』ッテ」

 

「ソーデスネー、ダレナンデショウカネ」

 

そしてにっこりと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃…………。

 

アンブリッジは自棄になっていた。

 

酒を飲み、暴れ、疲れ果てるも、絶望は変わらない。

 

戦いだ!こうなったら!

 

標的はただ一人。

 

 

 

 

 

雀部雷華だ。

 

 

 

 

*1
光る物が大好きな魔法生物





証拠は

あるのが仕事

世に知らしめるのが仕事。



本投稿をもって、アンブリッジに関するアンケートを終了と致します。

が、アンブリッジに関してはまだ続きます。

ご安心を、これだけでは済ましません。
覚悟しろよアンブリッジ。



今年も本小説をご愛顧、また読んでいただき、誠にありがとうございました。

来年も宜しくお願いいたします。

本当はアンブリッジを今年中にしま、んんっ、処理したかったのですが、残念です。

良かったね、年は跨げるよ☆



では次回は

さらば○○○○○ 後編

次回もお楽しみに




おまけ



生徒、教授、ピーブス。

この学校の全てを敵に回した女、アンブリッジ。

慢心感溢れる彼女の言葉が、生徒達を悪戯に駆り立てた!

「この学校?もう私のものよ。ひれ伏せ!支配者はこの私だ!」

子供達は自由を求め、悪戯をする。

世は正に、大抗議時代!

ありったけの~「これ以上は駄目です」





アンブリッジの末路。どうしましょうか……?必ずしも反映するわけではないのですが……宜しければお答えください。

  • 1『問答無用!』物理的に抹殺ルート
  • 2『人生終了宣言 』社会的に抹殺ルート
  • 3『我らは慈悲深い』救済ルート
  • 4『原作通りに……』原作追随ルート
  • 5『容赦無し!』社会的+物理的抹殺ルート
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