そろそろ、自覚した方が良い
あの方との繋がるという
真の恐ろしさを
もう、遅いようだが。
アンブリッジが責任を取って自殺した。
その為、ダンブルドアが名実共に
生徒達はアンブリッジの死に
それでも……とりあえず不倶戴天の敵が消えたことを喜び、最後の花火を一発だけ打ち上げた。
そしてそれをもって、ホグワーツ内の混乱も、抗議と称した悪戯も、
しかし、英国魔法界の混乱は終息しなかった。
というか悪化した。
魔法省によるアンブリッジ暗殺説が消えなかったからだ。
相次ぐ抗議、相次ぐ批判の声。
発覚する『吸魂鬼にハリー・ポッターを襲撃させたのは魔法省高官』という情報。
日刊預言者新聞からで出たこの記事で、世論はさらに沸騰し、民衆はファッジの退陣と魔法省の全面的な改革を望んだ。
そして、そんな魔法省では水面下で派閥が出来始めた。
ルーファス・スクリムジョールなどが、対ヴォルデモートの為に動き始めたのだ。
彼らの目的は無能なファッジ政権を倒し、ヴォルデモートに対抗出来る魔法省にすることだ。
「協力は確約出来ないが、日本は
手紙で「出来れば協力を」と言ってきたスクリムジョールに、
英国魔法界は
世間が政治闘争をやっている中、ホグワーツはアンブリッジを巡る事後処理が終わり、生徒達には永遠の宿敵である期末試験がやってきた。
そして今年、ハリー達には
「ショウ達は良いよな、試験が無いから」
机に突っ伏しながら、羨ましそうにロンが言う。
それに同意するようにハリーが頷く。
「これを見てもそう言うか?」
そして、そう言われた刀原が示すのは大量の紙。
英国魔法省から来た『
日本魔法省から来た『
スクリムジョールからの『
護廷十三隊から来た『
元柳斎や卯ノ花、四楓院など来た個人的な手紙。
等々……。
膨大な手紙……しかもほぼ自身宛のそれに刀原はうんざりし、嫌になっていた。
だがどれも良く内容を吟味して、返事を必ず返さなくてはならない。
幸いなのが、日本魔法省からも護廷十三隊からも『
「しかし……何で俺に来るんだ」
刀原が行った夏の外交が効いている証拠だった。
「どっちも嫌だな」
苦笑いしながらロンがそう言った。
「あ、そうだハリー。試験が始まる前に、閉心術の練習するからね?」
「え」
刀原が思い出したかのように言えば、ハリーがギクッとした表情でそう言った。
「え、じゃない。明日な」
宣告するように刀原が言うと、ハリーは覚悟を決めたかのように「……分かった」と言ったのだった。
その日の翌日。
「だいぶ良くなってきたが……まだまだだな」
ぐったりしているハリーを尻目に刀原はそう言った。
「練習する回数を重ねられるようになったし、見られたくない記憶に行くまでに追い出せるようになったのは評価できる。だが……厳しいこと言うがな。俺は別に専門家ではないし、悪意を持っているわけでもない。そして……当然ながら、本番はこの程度の比ではない。常に研鑽はしなくてはならないぞ?」
刀原の言葉に頷くハリー。
刃禅や関連本を読むなど、出来ることはしているし、着実に結果になっている。
それを刀原も理解してくれているし、褒めてくれるのも嬉しい。
少なくとも去年の様な地獄の特訓では無いことに、ハリーは内心ホッとする毎日だった。
「んじゃ、もう一回するぞ」
「うん、分かった」
ある程度休んだと判断した刀原は、ハリーにそう言った。
そして、ハリーはここでふと思った。
盾の呪文で防ぐことは出来るのかと。
「『
「『
企みは、成功した。
周囲は如何にも日本の庭園と言った風景であり、周りの建物の日本の建築物だった。
縁側には見知らぬ老人が座っている。
その老人の目線の先では幼い頃のショウが懸命に剣を握り、振るっている。
そして老人は満足げにそれを眺めていた。
ショウはこんな小さい時から剣を振っているのか。
場面が変わる。
ショウが再び剣を振っている。
【ここは、こうだぞ?】
そうショウに教えているのは、ショウに良く似ている黒髪黒目の男性だった。
男性はショウやライカが来ている黒い着物と袴を身に着け、
【はい、父様!】
言われたショウが、元気よくそう言う。
【少し休まれてはいかがですか?お団子とお茶を持ってきましたよ】
青みがかった白い髪に赤い瞳を持つ非常に綺麗な女性がやって来て、二人にそう言った。
【母様!】
ショウが目を輝かせて女性に振り向く。
クリスマスプレゼントで日本から『オダンゴ』が届き、ショウが凄く喜んでいたのを思い出す。
【では、少し休むか。ありがとう慶花】
男性も女性にお礼を言いながらそう言う。
ショウは休憩になった事を喜び、女性に抱き着いた。
この男性と女性はショウの両親だと、ハリーには分かった。
場面が変わる。
ショウの年齢は変わっていない。
そんな彼の目の前にはベッドが二つあり、男性と女性が眠っている。
ハリーは眠っている彼らが、さっきの記憶では元気だったショウの両親であると気づいた。
いや、本当に眠っているのだろうか?
最早、死んでいると同じ様な雰囲気だ。
ここは、病院だろうか。
ショウは何も言わず、暗い顔のまま、ただ立っている。
【何か……食べないと】
優しそうで藤色の髪の毛をした女性にそう言われるも、ショウは首を振り、それを拒絶した。
場面が変わる。
先ほどの縁側にいた老人が写った写真が、黒い額縁に入っており、年齢が変わっていないショウが悲し気な表情でそれを持っている。
そんなショウの後ろにはハリーが二年生の時に会った卯ノ花という女性が立っており、彼の両肩を支えている。
そして……ショウの目線の先には、木で作られた櫓の様なものが立っていた。
櫓の前には大勢の人が立っており、ショウと同じように白い羽織を着た人たちもいた。
【火を】
太鼓の音が暫く鳴った後、長い髭を蓄えた老人が徐にそう言い、櫓に火がつけられた。
【さらばじゃ、我が友よ】
老人が悲しむように言う。
これは、お葬式だ。
場面が変わる。
そこは先ほど見た病室の様な場所であり、ショウの両親と思われる二人は、相変わらずの様子だった。
【ごめんなさい】
【すまねぇ】
卯ノ花とお葬式に居たリーゼントの男が、ショウに対して頭を下げている。
ハリーは二人が何を言ってるのは分からなかったが、謝っていることは理解できた。
ショウはただ静かに、たどたどしい日本語で【頭を……お上げください】と言った。
場面が変わる。
【刀原のご子息は立派だ。両親があのようなことになり、曾祖父である平介殿も亡くなった。だが……あの子は涙一つ流さず、毅然と振舞っている】
誰かがそう言った。
ショウはただ座っていた。
だが、目は虚ろだった。
場面が変わる。
先ほどの記憶では和やかで明るい雰囲気に包まれていた屋敷の中は、誰もおらず、暗く寂しい雰囲気に包まれていた。
その中で、ショウは一人で立ち尽くしていた。
広い部屋が不気味に感じる。
痛々しい無音が響く。
そして、ポタっという水音がする。
外は雨など降っていない。
【頑張るんだ。頑張るんだ】
そうショウは言った。
場面が変わる。
ショウが一心不乱に剣を振っている。
嘆きにも聞こえる声を上げている。
そして……ハリーは、それを直視出来なかった。
【もう四時間半じゃ。少し休んではどうかの?団子と茶を持って来たぞ?】
お葬式に居た長い髭を蓄えた老人が、労わるように言う。
【休んでられません】
しかしそれをショウは一向に返さず、剣を振るのを止めない。
何かに駆られているとハリーは思った。
【……】
老人は思い詰めたなショウを見て、悲し気な表情を見せた。
場面が変わる。
ダンッとショウが吹き飛ばされ、壁にぶつかる。
【その程度ですか?】
吹き飛ばした卯ノ花の表情は分からなかったが、鬼のような形相だろうと思った。
【いえ、まだまだ】
ショウはそう言って立ち上がり、剣を振りかぶって挑みかかる。
しかし勝てず、腹を打たれ、頭を叩かれ、突かれ、吹き飛ばされる。
【今日は、この辺にしますか?】
【いえ、まだまだ】
何度打ちのめされようとも、ショウは立ち上がった。
ハリーは、去年の特訓が生易しいものだったと思い知らされた。
場面が変わる。
【ササキべライカです。よろしく!】
少しだけ成長した様子のショウにライカがそう言った。
【……トウハラです。よろしく】
ブスッと不機嫌そうにショウがそう返す。
今では全く考えられない二人のやり取りに、ハリーは驚きを隠せなかった。
【……では、僕はこれで】
ショウは不機嫌そうにそう言い、その部屋から出て行こうとする。
だが。
【ちょっと待って!】
ライカが咄嗟に手を掴み、それをさせなかった。
【何か?】
明らかに機嫌が悪そうなショウ。
【美味しいお団子、一緒に食べよ?おじい様からお小遣いを貰ったの!】
ライカはそう言って強引にショウを引っ張っていく。
【え、あ、ちょ】
ショウの制止も空しく、二人は部屋を後にした。
「懐かしいな……」
そして響いた、聞きなれた言語。
「だが御仕舞だよハリー」
ハリーが周囲を見渡すと、そこは日本では無く、ホグワーツだった。
「『盾の呪文』を使ってくるとは。油断したよ」
刀原がハリーを褒めながらそう言う。
しかし、ハリーの内心はそれどころでは無かった。
「ごめんショウ。その、見るつもりは……」
バツが悪そうにハリーはそう謝った。
「いや、油断して守りを突破された俺が悪い。ハリーが謝ることではないよ」
刀原は首を振ってそれを否定する。
「……ショウ、あの」
「ベットで眠っていたのは俺の両親。葬儀は曾祖父の葬儀。髭が長い老人は日本の護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重國殿。リーゼントの男性は麒麟寺天示郎殿。ハリーが知らない人はこの程度かな」
ハリーの言いたいことを察した刀原が、聞かれる前にそう言った。
「……ショウの両親は、今は治ったんだよね?」
「ああ。だが……もう二度と戦う事は出来ないだろうと言われているし、まだ立ち上がれないけど」
「そこまで酷かったんだ」
「あと少し遅かったら……ってことまで行ったからね」
でも間に合ったから良かったと言ったショウは、いつも通りの顔で、いつも通りの表情だ。
あんな悲痛で、無表情で、暗い顔が嘘のように。
自分は両親の記憶がほどんど無い。
でも、だからこそ何となく分かる。
幸せが突然奪われ、失い、二度と戻らないかもしれないという、恐怖と悲しさを。
だから記憶の中でショウは、あんなに辛い顔で頑張っていたんだ。
そうハリーは思っていた。
「数奇な運命だよ。父と母があのような形にならなければ、ライカとは違う出会いをしていたし。おそらくハリーとは会わなかったかもしれない」
刀原はそう言う。
「ライカは俺の恩人の一人なんだよ。彼女が居なかったら、俺はまともな思考も、人との関わりも、全然出来なかったと思う。彼女が俺を救ってくれた。あ、これは内緒な」
そして少し笑いながらそう言った。
「うん、分かった」
「よし、じゃあ今日はこの辺でお開きにしようか」
刀原はそう言って教室を出て行こうとしている。
それを見ながらハリーは、刀原の強さは過去の努力と壮絶な鍛錬の結果だと思った。
「もっと頑張ろう」
ハリーは少しでも追いつく為、努力をすると誓った。
ハリーが刀原の記憶を見てから数日後。
ついに
ハリー達が勉強しない日は無く、グロッキー状態は更に悪化し、声無き悲鳴を上げていた。
刀原と雀部はそれを見守り、少しだけアドバイスするだけに留まった。
そんな試験の最中、ハリーは連日の疲れもあってうたた寝をしていた。
「『
夢の中のハリーの口から出たその言葉は、甲高く、冷たく、思いやりの欠片もない声だった。
周りは、神秘部。
冷たい床に居る黒い影……男が苦痛の叫び声を上げていた。
ハリーは笑っていた。
床の男は両腕をわなわなと震わせ、顔を上げる。
血まみれで、やつれ、苦痛に顔を歪ませながらも、男は頑として服従を拒んでいた。
「……殺すなら殺せ」
シリウスが掠れた声でそう言った。
「最後は殺してやるとも。だがその前に、俺様の為にそれを取るのだ」
暗く冷たい神秘部にて、ヴォルデモートはシリウスを拷問していたのだ。
跳ね起きたハリーは、試験をどうにかやり過ごし、終了と同時に走り出した。
ダンブルドア、刀原、マクゴナガル。
幸いなことに、助けを求められる人は大勢いる。
そう、ハリーは思っていたのだが。
「え、いない?ダンブルドア先生も、マクゴナガル先生も、ショウとライカも?」
「ええ」
フリットウィックの言葉に、ハリーは思い出す。
スクリムジョールが考えているファッジ政権打倒のためのクーデター、その件についてダンブルドア、マクゴナガル、スネイプが出かけているということを。
刀原と雀部は在イギリス日本大使館に行っていることに。
ど、どうしよう。
ハリーの頭はパニック状態になっていた。
シリウスのピンチを前に、冷静な判断が出来なくなっていたのだ。
やがてハリーの元にハーマイオニーやロン、ネビル、ジニー、ルーナが集まってくる。
その中でハーマイオニーだけが慎重な態度だった。
シリウスが捕まる筈が無い。
まずは確認をするべきだと。
彼女はそう言った。
しかし……任務でその場に居たかもしれない、それこそウィーズリーおじさんのように。
と言う意見には抗えなかった。
そしてハリーが煙突飛行ネットワークでグリモールド・プレイスに行き、シリウスが実際に居ないことが分かった。
もしこの場に刀原や雀部が居たら、ハーマイオニー以上のストッパーに成れただろう。
もしダンブルドアやマクゴナガルが居れば、宥められただろう。
彼らなら、シリウスがダンブルドアと同じく、クーデターの為の秘密会議に参加していることが分かった筈だろう。
だがなんの運命か、彼らは不在で、ハリーを止められる者は居なかった。
こうして……暴走機関車になってしまっていたハリーは、神秘部へと向かってしまったのだった。
神秘部の内部はやけに暗く、不気味だった。
脳みそや謎のアーチがある部屋に行きながら、ハリー達はシリウスが居ると思われる部屋へと向かい、そして目的の部屋にたどり着く。
そこは埃っぽく、中に煙が入ったように見えるガラス玉が、びっしりと棚に陳列された部屋だった。
「九十七列目の棚だ」
一行は延々と延びている棚の通路を、振り返りながら忍び足で歩いた。
シリウスはおろか、人の気配も、声も、音も感じないし聞こえない。
それでも一行は歩みを止める事は無かった。
やがて九十七列目に到着する。
だが、そこにシリウスは居なかった。
ハリーは何故だ何故だと思ったが、この場に争った形跡はない。
ふと、刀原が言っていた事を思い出す。
「ヴォルデモートは君との繋がりを利用して、幻を見せ、誘い出すかもしれない」
そう、刀原はハリーに言っていたのだ。
にも拘らず、自分はのこのことここまで来てしまった。
皆を連れて。
「ねえ、これに君の名前が書かれているよ」
ハリーが内心冷や汗をかき、赤面をしている中、何かを見つけたロンがハリーを呼ぶ。
ロンがそう示したのは、小さいガラス玉と黄色いタグの様なラベルだった。
『S・P・TからA・P・W・B・Dへ
闇の帝王そして
(?)ハリー・ポッター』
ラベルにはこう書かれていた。
ハリーはまるで取り憑かれたかのように、無性にそれを取りたくなった。
そしてハーマイオニーやネビルの静止も半ば無視し、ハリーはそれを手に取った。
取ってしまった。
「良くやったポッター。さあ、それを寄越すのだ」
ハリーが手に取った瞬間そう言ったのは、ルシウス・マルフォイだった。
その瞬間、ハリーは自身が嵌められたことを悟った。
その頃。
在イギリス日本大使館がロンドンに有るため、刀原と雀部はハリーからの連絡に愕然としながらも短時間で英国魔法省に到着していた。
「帰ったらお説教だな」
「全くです」
軽率としか言えないハリーの行動に、二人は怒りながらアトリウムを駆け抜け、神秘部を目指す。
刀原は英国魔法省に何度も来ているが、流石に神秘部には行っったことは無い。
しかし、それでも迷うことはなくエレベーターに乗り、やがて神秘部があるフロアにたどり着く。
廊下には何の気配もなく、動くものは松明の揺らめきしかなかった。
「……妙だな」
刀原はそう疑問視する。
ここまで誰にも会ってないどころか、人の気配が皆無なのだ。
『当直の警備の一人や二人いても良い筈なのに』
「ッチ、やっぱ雷華を残せば良かったな」
刀原が舌打ちしながら小声でそう言う。
顔は険しく、警戒していた。
罠だと悟ったからだ。
「過ぎてしまったことです」
雀部も苦い顔でそう言う。
「……嫌な予感がします」
そして取っ手のない黒い扉を前にポツリと言う。
「俺もだ」
刀原は苦い顔でそう言った。
「行くぞ」
「ええ」
横に並んだ二人は向き合うことなく拳をぶつけ合い、神秘部に突入した。
何処からともなく黒い人影が次々と現れ、ハリー達の進路を断った。
「私にそれを寄越すのだ、ポッター」
ルシウス・マルフォイがそう言う。
「……これは一体、何の予言なんだ?」
ハリーはそれをあえて無視し、そう問いかける。
ここに来る前にショウ達を呼んだんだ。
時間を出来るだけ稼げば加勢に来てくれる。
ハリーはそう思っていたのだ。
「何の予言なんだ、だって?何かの冗談かい?ちっちゃなベイビー・ポッター」
癪に障る赤ちゃん声でそう言ったのは、おそらくベラトリックス・レストレンジだと思われる女だった。
「いいや冗談じゃない。なんでヴォルデモートが欲しがるんだ?」
ハリーは挑戦的にそう言う。
奴らはこれを気にして迂闊には来れないはずだと判断したからだ。
「……不敵にもあのお方のお名前を口にするか?純血でもない、混血のお前が!」
ベラトリックスは甲高く叫んだ。
「あいつも混血だ。母親は魔女だが、父親はマグルだ。それとも、お前たちには自分が純血だと言い張っていたのか?」
「黙れ!」
ハリーの挑発にベラトリックスは激昂する。
ショウが言っていた通り、こいつらは沸点が低いらしい*2。
「貴様、よくも!」
「まて、攻撃するな!予言が手に入るまではな!」
ベラトリックスとマルフォイがそう言い争う。
ハリーが想像した以上の結果だった。
だが、残念ながら余裕は生まれなかった。
「くだらない言い争いをするのなら、俺は帰らせてもらうぞ」
そう冷たく、感情の起伏も感じられない声が響いたからだ。
「お前がハリー・ポッターか。……平凡だな。霊圧も特に普通だ」
男はそう言った。
ハリーはそれを聞いて目を見開く。
霊圧なんて言葉はショウ達しか使ってない、そう思ったからだ。
やがてはっきりと男の姿が分かる。
角が生えた骸骨のようなものを左頭部に被った、黒髪に白い肌を持つ瘦身の男だった。
そしてもう一人。
「まあ、しょうがないんじゃないか?」
気だるそうにそう言った、下顎骨のようなものを首飾りのように着けた黒髪の中年の男。
「まさか、
「如何にも、その通りだ」
「ああ、そうだ」
ハリーの問いに、男たちはそう答えた。
「……確かに、こんなことをしている暇はない。さあ、ポッター。早くそれを此方に寄越すのだ」
そして破面達に言われたマルフォイが迫って来る。
だがハリー達の
「………答えはNoだ。いまだ!」
「「『
「「『
ハリー達は一斉に攻撃し、全員で駆け出した。
そしてハリー達からの攻撃に対応出来なかった死喰い人達は、彼らをその場では取り逃すことになる。
ただならぬ霊圧を感じる。
予言と思しきガラス玉が沢山ある部屋に着いた刀原と雀部は、それを感じ取った瞬間、破面が居る事を察知した。
ハリーがピンチであることも。
足を速める二人。
そして響く爆音。
ドタバタとこっちに向かってくる足音。
「みんな、無事だったか!」
「ショウ!ライカ!良かった」
やって来たのはハリー達だった。
「よし、逃げるか」
刀原はここから脱兎のごとく逃げる事にした。
ハリー達六人を確保した以上、長居は無用だからだ。
かくして八人は駆け出した。
だが。
「考えたなハリー・ポッター。だがあのような小技、俺には効かん」
先ほどの破面の一人に追いつかれてしまう。
「っ」
ハリーが悔しそうな声を上げる。
ヴォルデモートの時よりも恐怖を感じるからだ。
しかし、ここには頼れる死神がいた。
「ここは私に任せて下さい」
雀部がそう言い、ハリー達の前に出る。
「護廷十三隊の隊長か」
「ええ、そうです」
男の問いに、雀部は不敵に笑って返す。
「すまん雷華、ここは任せた」
刀原は確実にハリー達を脱出させるために雀部がかって出たことを理解し、任せる事にした。
「ええ、任されました」
雀部はニッコリと笑って刀原に答える。
「行くぞ」
刀原はハリー達を連れてその場から離脱していく。
雀部はそれを振り返らず、破面を見つめる。
「護廷十三隊、五番隊隊長。雀部雷華と申します」
そして丁寧にペコリとお辞儀しながら破面にそう名乗った。
「
破面、ウルキオラも雀部にそう名乗った。
「では…
「
「扉よ!」
後ろで雷鳴と剣戟の音が響いているなか、ハーマイオニーが黒い扉を見て、そう言う。
「おっと、逃がさないぜ?」
しかし、あと一歩の所でもう一人の破面に出会ってしまう。
気だるそうだが、ただならぬ気配を感じて、ハリー達は思わず息を飲む。
「いいや、彼らは逃がさせてもらうよ?」
そんな中、そう破面に言ったのは刀原だった。
「そうかい。んじゃ、あんたを逃がさないようにしよう。それで仕事をしたことにしよう」
男は気だる気に、そう言った。
「行けハリー。そして帰ったらお説教だ」
刀原は男と向かい合いながらそう言う。
ハリーは青い顔をしながら、頷いて扉をくぐった。
「お説教か、何を彼はやらかしたんだ?」
「ここに来たこと」
「ああ、それは……そうだな」
刀原と男との会話に緊張感は感じられない。
だが、双方ともに油断無く相手を見ていた。
「三番隊隊長、刀原将平。よろしく」
「これはどうもご丁寧に……コヨーテ・スタークだ」
名乗り合った二人は、刀をぶつけた。
しかし二人は、互いに全力に成れない制約があった。
強い。
少なくとも去年のあれとは比較にならない。
雀部は苦い顔をしながらそう思っていた。
始解し、スピードと電撃で攻撃しているが、向こうも早くて捉え切れない。
単純な速度では互角といったところか。
しかし、このままでは千日手になるだけだった。
「しょうがないですね」
雀部はボソッと呟く。
「何がだ?」
ウルキオラは不思議そうにそう尋ねる。
「後で絶対に怒られそうですが……まあ、貴方達のせいにすれば良いでしょう」
開き直ったようにそう言う雀部。
これから起きる惨状を自分達のせいにすると宣言されたウルキオラは、訳が分からない様子だ。
だが、それも一瞬のこと。
雀部が霊圧を高め始めたことを察知し、警戒する。
「行きますよ?ウルキオラ・シファー。出来れば被害を最小限にしたいので、そこのところよろしくお願いします」
半ば懇願するように言ったそれは、紛れもない、本心から来る言葉だった*3。
「卍解」
「『
どれほど険しくとも
どれほど遠くとも
私は貴方に並びたい
だから
高らかに響く
裁きの雷よ
私の敵を穿て。
主人公より先に卍解するヒロイン。
これには訳があります。
そもそも、卍解は昨年末に行わせる予定でした。
しかし、なんやかんやでそれが没になりました。
でも、そろそろ卍解させたい。
でも、現在考えている刀原の卍解をすれば……英国魔法省は崩壊しかねません。
正確にいえば……下の階が崩解するため、自重で上から潰れかねません。
それはちょっとやりすぎだな……。
どうしようかな。
ウルキオラ相手に卍解しないってのもな……。
よし、雷華に卍解して貰おう。
と言う訳です。
なので……刀原の卍解は来年、広い所で。
どうか、それでご勘弁を。
なお、少しだけネタバレしますと……。
スタークの出番はほんの少しです。
詳しくは次回。
あ、ちなみに……英国魔法省の許可は取ってません。
ごめんねファッジ☆
感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
では次回は
雷撃、虚無、狂人、伝説。
次回もお楽しみに
ハリー達が分霊箱捜索旅をしている間に、刀原達は賊軍と戦ってる予定です。ハリポタの登場人物が一切出ませんが……要りますか?
-
1『要る!』vs賊軍→ホグワーツの戦い
-
2『要らない!』vs賊軍は全部カット
-
3『後にしろ!』終了後、おまけとして
-
4『お前も同行!』刀原も旅に参加する