ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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来るものは来る

逃れられはしない

ならば

来た時に受けて立てば良い。







死神と不死鳥の騎士団編 決着と終幕

 

 

「五年前。君に話すべきだったこと。それを話すときが来たようじゃ」

 

ダンブルドアは白状するようにそう言った。

 

ハリーはそれを聞いて思わず息をのみ、刀原は推察していた事への答え合わせが出来ると思っていた。

 

「わしの目的は君を『生き残らせる事』だった。そして五年前……わしの計画の通りに、君は無事にホグワーツにやって来た。だが……君は苦しみに耐えてきたし、完全に健やかという訳ではなかった。実の所、わしはダーズリー家の戸口に君を置いてきた時、こうなることは分かっておった。君に暗く、辛い十年の月日を過ごさせてきた事を知っておった」

 

それを聞いた刀原は、徐にハリーを見る。

 

五年前のハリーは確かにヨレヨレのボロボロで、酷い扱いを受けている子供と言う印象だったし、ダーズリー家での扱いは散々なものであるとハリーから聞いていたからだ。

 

「誰か適当な魔法使いの家族が、君を引き取る事が出来なかったのかと疑問に思ったじゃろう。勿論、喜んで手を上げ、それを名誉に思う家族は多かったじゃろうな。しかし……それは出来なかったのじゃ」

 

「ヴォルデモートから守るには役不足……というわけですか」

 

「それもあるの。ヴォルデモートは敗北したが、支持者達の中でも過激な者達はまだ捕まっておらんかったし、自暴自棄で暴力的になっていたこともある。じゃがそれ以前に、ヴォルデモートが永遠に去った……死んだとは思っておらんかった。必ず戻ってくると確信しておった」

 

「では、貴方自らが育てれば良かったのでは?」

 

「それもあまり有効的な手段とは思えん。ヴォルデモートは存命中の『魔法使いと呼ばれる(死神を除く)者達』の誰よりも広範な魔法の知識を有しておると思っておる。わしが強力な術で守っても、あやつがその力を取り戻した時には破られてしまうと分かっておった」

 

「日本は?我らなら守れると思いますが」

 

「それは、一時は頭に過ったの。護廷十三隊の元柳斎殿ならば安泰じゃとは思った。じゃが……ヴォルデモートを倒すには、どうしてもハリーの力が居ると思っておった。だから英国から出すわけにもいかんかったのじゃ。それに、死神にさせる(薩摩ホグワーツ化させる)気はなかったしの*1

 

「だから、ダーズリー家でしか出来ない特別な護りに頼らざるえなかった……と?」

 

「さよう、わしは苦渋の決断の末じゃが……ハリーの母上の護りを頼ったのじゃ。そしてそれを維持するために、ハリーの母上のたった一人の血縁である叔母の所へ届けたのじゃ」

 

話の内容がまだ良く分からないが、どうやら自身の護りの維持にはダーズリー家が居るらしい事は分かった。

 

だから自分はシリウスと暮らせないんだ。

 

ハリーは、自身が忌み嫌っているダーズリー家にそんな事情があることに対し、複雑な感情を抱いた。

 

「なるほど。数年前にハリーを日本へ連れていこうとした時、止められたのはこれが理由ですか」

 

「その通りじゃ。そこに、ダーズリー家に一年に一度だけ帰る必要がある。最初から日本に連れて行かれるわけにはいかんかったのじゃ」

 

そして、刀原とダンブルドアとの会話に驚いていた。

 

どうやら自分は……知らぬ間に、あと一歩の所で……憧れの日本行きを逃していたらしい。

 

「話を戻すとしよう……。五年前、君が()()()()()ホグワーツにやって来た。ちやほやされた王子様ではない、まともな男の子として。そして……最初の年に起きた一件は憶えておるじゃろう?君は向かって来た挑戦を見事に受けて立ち、解決に導いた。ヴォルデモートと真正面に対決した。仲間と共に……わしは誇らしかった」

 

ダンブルドアはそう言ったが、刀原はそれをジト目で返していた。

 

クィレルをのさばらせ、ハリーが解決するように導いていた張本人(誘導していた黒幕)が何を言っているのかと。

 

一応、黙っておくが。

 

「ホグワーツ二年目の時、君は大人の魔法使いですら立ち向かえぬような挑戦を受けた。わしの想像を遥かに超えるほどに。たとえ、大人顔向けの実力を誇る友人が居たとしても、君は果敢に立ち向かい……再び勝利した」

 

確かにあれは凄かったと、刀原は思い出していた。

 

ロクな鬼道も魔法も使えず、ただの剣でバジリスクと対峙出来る者が、日本に果たして何人いる事やら……。

 

「そして三年目の時も、昨年も……君は困難に立ち向かい、乗り越えてきた。……わしは知っておった。ショウには既に言っていたが……ハリー、君には過酷な運命が待ち受けていると……知っておったのじゃ。じゃが……わしは知っておったのにも関わらず、君に全てを話さなかった」

 

ハリーは刀原の方を思わず見た。

 

刀原は頷いた。

 

「君は幼い、若すぎる。荷が重すぎる……。そう、思っていた。わしは、君を愛おしく思い過ぎていたのじゃ。幸せでいる方が良いと、真実を知るよりも良いと思っていたのじゃ。ショウに言っていたのは、君を守ってもらう為じゃ。ショウは強い。そんな彼が傍に居るだけで、大抵の障害を排除できる」

 

ダンブルドアはそう言って息を吐いた。

 

「白状せねばなるまいの」

 

 

 

 

 

 

「全ては『ヴォルデモートを倒す者が現れる』という予言から始まった」

 

ダンブルドアはそう言って二人に『憂いの篩』を見せた。

 

『闇の帝王を打ち破る者が近づいている……。七つの月が死ぬとき、帝王に三度抗った者達に生まれる……。そして闇の帝王は、その者を自分に比肩する者として印すであろう。一方が他方の手にかかって死なねばならぬ。一方が生きる限り、他方は生きられぬ……』

 

シビル・トレローニーが、二年前に二人に見せた声でそう言っていた。

 

「ヴォルデモートを倒せる唯一の存在が、七月末に、ヴォルデモートから三度逃れた者から生まれる……それがハリーだと?」

 

「奇妙なことじゃが、ハリーではなかったかもしれんのじゃ。実は……この予言に当てはまる赤ん坊は二人いたのじゃよ」

 

刀原が冷静に分析しながらそう言ったが、ダンブルドアは首を横に振ってこう言った。

 

「勿論、一人はハリーじゃ。あと一人は……ネビル・ロングボトムなのじゃ」

 

「ネビルが!?」

 

ダンブルドアが挙げた意外な人物に、ハリーは驚く。

 

しかし、刀原は腕を組んで考え込んでいた。

 

「では……予言の子はネビルだったかもしれないと?でも……そうか。『その者を自分に比肩する者として印すであろう』……結局、刻まれたのはハリーだった」

 

「流石じゃのショウ。そう……最終的に、ヴォルデモートはハリーを選んだのじゃ。純血のネビルではなく、自分と同じ混血のハリーを選んだのじゃ。おそらく、ハリーの中に自分自身を見ていたからじゃろうな」

 

「ですが、であればなぜ赤ん坊の時に襲ったんですか?どちらが危険か見極めてからでも……」

 

「それはのハリー、あやつが聞いたのは最初の部分だけだったからじゃ。印をつけてしまうという危険性を、あやつは手に入れられなかったのじゃ」

 

「なるほど。間抜けですね」

 

「それをきっぱり言えるのはショウだけじゃ」

 

「え?」

 

 

 

「予言を聞いたのはわしじゃ。そして……君が将来、間違いなくヴォルデモートと対峙するということが分かっておった。だからこそ、わしは先に言った手段で君を生き残らせる方法を考えた。そして、ハリー。君を強く、立派な男の子にするように導かなくてはならないとも考えた」

 

ダンブルドアが苦い顔をしながらそう言った。

 

「許してほしいとは言わぬ。罵って構わぬ。じゃが、分かって欲しい。この学校開闢以来、最大の責務と重荷を背負った君を……わしは見守り、そして、それに負けぬ強さを持って欲しかったのじゃ」

 

謝罪するように、懇願するようにダンブルドアはそう言った。

 

「まず……わしは、君をより近くから見て、そして守ってくれるであろう子を探した。無論、そうなれと言った訳ではない。そうなって欲しいと思った。そして……わしは考えた末に、マホウトコロへ手紙を出した。丁度良く、交流の話があったからの。留学に来てくれないかと手紙を出した」

 

それを聞いたハリーは、再び刀原を見た。

 

その刀原は……うっすらと聞いていたとはいえ、苦々しい顔をしていたが。

 

「駄目で元々のつもりじゃった。じゃが……留学の話は通り、そしてやって来たのは……ハリーも知っておろう?当時のマホウトコロで最強と謳われ、護廷十三隊隊長候補のショウだった。指定したわけではない。じゃがわしは、内心でほくそ笑んでいた。予想以上の子が来たとな。ショウはわしの想像を遥かに超える実力と、聡明さを兼ね備えておった」

 

「ショウが来たのは……ショウの事情とダンブルドア先生の思惑が、偶然にも一致したから」

 

「そして起こった一年目の事件。誘導したわけではない。どこかのタイミングで、賢者の石を隠さねばならないと考えていたのは間違いない。あやつが狙っているのは読めていたからの。じゃが……わしはそれを利用し、ハリーの強くしようと考えた」

 

「そ、そんなことが。僕、知らなかった……」

 

「わしの狙いは成功した。そして、君はわしの期待を超える覚悟と勇気を見せてくれた。間違いは……悪辣ともいえるわしの狙いと、ショウの聡明さを読み間違えていたことじゃ」

 

「ショウの聡明さ……?」

 

「最終的に全てバレたのじゃ、ショウにの。わしは悪辣にも、黙っているように頼んだ。勿論、ショウの保護者……護廷十三隊の皆さんからのお叱りは受けた」

 

「バレた……って」

 

「ハグリッドの杜撰さだよ。ハリーに関心を持たれたくないなら……一緒のタイミングじゃなくて、別のタイミングで賢者の石をグリンゴッツから引き出せば良い。それに、ハグリッドの性格上、計画を漏らすかもしれないから……情報も最初から渡さなくていい筈だ。三頭犬を借りるだけなら、賢者の石の件は黙っていればいいからね。現に、俺たちが得た情報のほとんどは……ハグリッドが漏らしたやつだっただろ?」

 

「確かに……」

 

「罠だって、一年生が何とかクリア出来るレベルっていうのがそもそもおかしい」

 

「ショウの言う通りじゃ。わしは、君が……君の仲間たちが解決することを望んだのじゃ。全てが終わった後、ショウはこれらの推理を突きつけ、わしは肯定した。そのうえで、ハリーを守ってくれるよう頼んだ。以後、わしの身勝手な企ては全てショウに話すことにもした」

 

「ショウは全て知っていたの?」

 

「予言の事は知らなかったな。何かしらの因果関係があるのは予想していたが。そしてそれ以外の企てについては……」

 

「それはわしが話そう。それ以降の企ては無い。あったとしても、ショウに潰されておる。順にいこうかの……。秘密の部屋の件は全くの予想外で、君の範疇を超えておることは目に見えておった。死人が出なかったのは不幸中の幸いじゃし、わしも事件解決に全力を傾けた。君とショウがバジリスクを討伐したと聞いた時は、嬉しさより驚きが勝った」

 

「シリウスの件は大体予想通りじゃったが、わしではシリウスの無実を勝ち取る事は出来なかった。君がピーター・ペティグリューを生かしたことが、最大の証拠になったのじゃ。それでも、わしの予想では屍になっている(刀原が斬り捨てる)と思っていたがの」

 

「昨年も全くの予想外じゃった。君とショウが力を合わせて切り抜けたんじゃ」

 

「そして今年、わしの企ては……ショウの策謀と君の人徳と覚悟でひっくり返った。わしの予想では……わしはつい先ほどまでお尋ね者になっていた筈じゃし、それを覚悟しておったのじゃが。実の所……今年は企てのことより、ファッジとヴォルデモートに掛かり切りでの。ショウに任せておったのじゃ」

 

ハリーはこれを聞いた瞬間、一応謎の存在であった『S・R』の正体を確信した。

 

「わしが真の黒幕と言われておかしくはないし、その責は痛感しておる」

 

ダンブルドアは独白をこう締めくくった。

 

「ハリー、例えダンブルドアから言われなくとも……俺は君の友であった筈だし、弟分のつもりだ」

 

ショウもそう言った。

 

それは、ハリーだって思ってる。

 

ダンブルドアの策謀もショウの思いも、全部自分の為だったと、痛感していた。

 

ハリーは、それを噛み締めるようにゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

翌日。

 

「『名前を言ってはいけない例のあの人 復活す』『コーネリウス・ファッジ魔法大臣 遂に辞任か。後任はルーファス・スクリムジョール?』『例のあの人が復活したという噂は事実無根 あれは何だったのか?』……ね。だいぶ騒いでんな」

 

「そりゃあ、パニックになるには十分な真実だからでしょうね……」

 

医務室で新聞を読みながら呑気にそう言い合っていたのは、刀原と雀部だった。

 

 

英国魔法省内部で戦闘があった事が正式に確認され、しかも破面(アランカル)の上位陣である十刃(エスパーダ)が二名もいた。

 

そして戦場になった神秘部の予言の間は大惨事となっており、復旧には相当な金と労力と時間が必要と思われていた。

 

ただでさえ痛いはずのファッジの胃を、さらに痛めさせるには十分だろう。

 

尤も。実際の犯人は別にいるのだが……。

 

教えたら外交問題だし……。

 

総隊長の拳骨(ばっかもーん!)が降ってくるのは目に見えている。

 

現場検証した者は(惨状を見た刀原は)それを(雀部)ジト目で見ていたが(これやったの、お前だろ?)

 

そういう真実はさておき、そんな大惨事をたった二人の十刃が起こしたという事実(公式発表)は、英国魔法省に激震を走らせるのに十分だった。

 

ファッジは直ぐに日本へ連絡した。

 

二人限定?

ダンブルドアとの繋がり?

 

そんなものなど、もうどうでも良い。

 

ファッジは、隊長格四名の緊急増派を要請した。

土下座せんばかりに。

 

というか……日本魔法省外務部にやってきた使者は、日本での滞在が長い者だったため……実際にしたらしい。

 

そこに恥とか外聞とか、プライドとかは皆無だった。

 

だが……悲しいかな。

 

日本の回答は『明確な拒否(あ?今更何言ってるんだてめー?)』だった。

 

 

ーーーーーー

 

『人数を絞れ』言うたんは其方さんやろ?

 

それなのに……。

 

何を今更、ガタガタ言うてはんの?

 

要望通り、わざわざ二人に絞って派遣したんや。

 

それで満足しいや。

 

あ、指揮権は変わらずうちが持ってるんで。

 

越権せんよう、気ぃつけてな?

 

以上、原文のママ。

 

ーーーーーー

 

 

乱菊曰く、使者の人は半泣きだったらしい。

 

日本魔法省のトップが、霊圧を出しながらニッコリ笑ってそう言えば……そうなるのはしょうがないだろう。

 

 

 

なお……一応、一応元柳斎に話を通した。

 

答えは『否じゃ(何を言っておるか)』だった。

 

ファッジは泣いた。

 

今までのツケを精算するときが来たのだ。

 

 

 

 

「で、総隊長達はなんと?」

 

雀部は、新聞を読み終えた刀原にそう聞いた。

 

「二人とも帰国だとさ。早急に諸々のことを話さなくちゃいけねぇからな」

 

刀原は肩をすくめながらそう言った。

 

「今回手に入れた情報もそう、奴らの力量もそう、頭のおかしいイカれた魔法使い達(ヴォルデモートと狂った下僕達)のこともそう。現地の情報こそ重要だってさ」

 

十刃との戦闘記録。

いると分かった穏健派。

ヴォルデモート、賊軍への感情。

 

それらは重要な情報だ。

 

出来るなら……今すぐにでも二人を日本へと帰還させ、今後の対策会議を行いたい。

 

それが上層部の思いだった。

 

「私たちが帰るのは分かりましたが……良いんですか?私たちが居なくなれば、誰が虚を倒すんです?」

 

雀部は、顔をしかめながらそう言った。

 

心なしか縮小しているとはいえ、今も虚が出現していることは変わらない。

 

それ故に……二人が居なくなれば、ホグワーツは虚や破面達によって滅茶苦茶になるかもしれない。

 

雀部がそれを心配するのは当然だった。

 

「それについては……心配無いらしい」

 

そんな雀部の心配を理解しつつ、刀原はそう言った。

 

「交代要員でも来るんですか?」

 

「ああ、確か……矢胴丸リサさんと六車拳西さんをリーダーとした、臨時部隊が来るらしい」

 

「それなら、問題無いですね」

 

刀原が言った情報に、雀部は安堵する。

 

矢胴丸リサは前八番隊副隊長。

 

六車拳西は前九番隊隊長。

 

戦力的にも、心配いらない布陣だろう。

 

……だが、二人には別の心配もある。

 

「……あの方々。英語、出来るんでしょうか?」

 

「最悪……それ系の引き継ぎをしなくちゃな」

 

二人は祈るしかなかった。

 

そして、夏休みに入る前にやって来た二人は……。

 

「英語?出来るわけ無いやろ。アイ、キャン、ノット、スピーキング、イングリッシュや」

 

「無理だな。すまん、さっぱりだ」

 

と言った。

 

現実は非情だった。

 

「矢胴丸さん……実は出来るんじゃね?」と思ったのは、二人の秘密だが*2

 

 

 

 

 

 

ハリーは……まあ、毎年恒例なのだが……憂鬱になっていた。

 

ダーズリー家に帰らなくてはならない理由がはっきりしたとはいえ、心情は複雑だったし、理由が分かったところで楽しみになったわけでもないからだった。

 

刀原達は凄く忙しそうにしていた。

 

ロンドンに何回も行っては呆れた表情で帰って来るし、日本語で言い合っては項垂れていたり、頭を抱えていたりしていたし、紙にずらずらと日本語で何かを書いていた。

 

そして……そんなこんなで学期が終わる直前の日。

 

刀原はハリーに「ちょっといいか?」と言って、空き教室に連れ出した。

 

来年のことかなと油断していたハリーは精神的奇襲に遭う。

 

空き教室にはマルフォイが居たからだ。

 

彼の父、ルシウス・マルフォイが神秘部の戦いに参加し、そして捕まったというのは周知の事実になっていた。

 

それ故に、ハリーはマルフォイと接触するのは極力避けていたのだった。

 

「何故ポッターがいる?」

 

会った瞬間に『 揉め事(父上の敵ぃいい!) 』になると踏んでいたハリーだったが、彼の予想とは裏腹に、マルフォイの表情や態度は変わっていなかった。

 

「当事者の一人だし、事情を知っていたほうが利点になると思ってね」

 

刀原はマルフォイにそう言った。

 

マルフォイは半ば呆れた様に「まあ、いいか」と言って、懐から手紙を取り出す。

 

「父上からだ。「どうかよろしく」と言っていた」

 

マルフォイが差し出した手紙は、蝋封がされた高級感漂う物で、ハリーはそれがとても重要なものだと瞬時に察した。

 

「なるほど……まあ、出来なくはないけど……」

 

刀原はその手紙を読み、そう言った。

 

「……ハリーにも読ませていいか?」

 

やがて読み終わった刀原は、マルフォイにそう聞いた。

 

「……まあ、良いだろう。その方がこちらの事情を理解出来るだろうからな」

 

マルフォイは少し悩んだ素振りを見せた後、頷いた。

 

そしてハリーは、刀原に渡される形で手紙を読み、目を疑った。

 

要約すると……。

 

自分の身はどうなっても良いので、妻のナルシッサと息子のドラコの命を助けること。

ヴォルデモート陣営の情報を提供すること。

作戦に参加した際は、極力何もしないこと。

特にドラコの保護をしてほしいとのこと。

 

その余りにもな内容に、ハリーは罠だと思ってしまうのも無理はないだろう。

 

「ショウ、これって……」

 

ハリーは刀原を見る。

 

その刀原は、腕を組んで考え込んでいた。

 

「……とりあえず、ダンブルドアに共有しよう。日本にマルフォイを連れてく訳にもいかないからな……。やはり、不死鳥の騎士団を頼るほかないな」

 

刀原はそう言って、マルフォイを見る。

 

そのマルフォイは既に覚悟を決めていたらしく「よろしく頼む」と、刀原とハリーに頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日、ハリー達はホグワーツ特急に乗っていた。

 

久しぶりに列車に乗れた刀原達も交え、ハリー達の話題は尽きない。

 

セドリックとチョウが婚約したことが、DAのメンバー全員に共有されたからだ。

 

その他にも頭のイカれた魔法使いの情報や、注意事項、今後の動きなども話し合われた。

 

そしてキングズ・クロスが近づいてくると、ハリーの憂鬱な気持ちは酷いものになっていた。

 

しかし、そんなハリーを歓迎する一行が来ていた。

 

マッド・アイやシリウス、ルーピンを筆頭とした不死鳥の騎士団のメンバーだ。

 

「護衛か?」

 

「それもあるけど……ね」

 

刀原がルーピンにそう聞けば、彼は端目でハリーを迎えに来ていたダーズリー家を見る。

 

「なるほど。警告……いや、脅迫か」

 

刀原はルーピンの態度で全てを察した。

 

そして……。

 

「だったらいい方法がある。俺に任せてくれ」

 

と言った。

 

ルーピンはそんな黒い笑みを浮かべる刀原を嬉しそうに見て「じゃあ、ショウに任せるとしよう」と言った。

 

かくして警告と言う名の脅しを引き受けた刀原は、マッド・アイやシリウス等を引き連れてダーズリー家の方へ向かった。

 

ハリー達はそんな一行をハラハラと見ていた。

 

刀原と雀部が、あの黒く目が笑ってない笑みを浮かべているときは、必ずと言っていいほど誰かが不幸な目に遭うと学習していたからだ。

 

「こんにちは。ダーズリー家の皆さんですね?」

 

ニコニコといつもの笑みをしながらそう言った刀原に、バーノン・ダーズリーはビクッとなりながら「そ、そうだが?」と言った。

 

「始めまして。(わたくし)、ハリー君の友人で……『日本国 護廷十三隊 三番隊隊長』兼『日本魔法省 遣英特使』兼『在英国日本国大使館 特別特魔大使』の刀原将平と申します」

 

ずらずらっと出た刀原の役職に。ダーズリーは「ヒエッ」という情けない声を上げた。

 

そして名刺を受け取り、また「ヒエッ」と言った。

 

しかし、そんな態度を取っているのはダーズリーだけだった。

 

マッド・アイ達は刀原の役職を関心しているかのように頷き、ハリー達は懐かしさを覚えていた。

 

それら周囲を置いていき、刀原は警告(脅し)をする。

 

「貴方方が過去にハリーに対して行った行為は、明らかに虐待のそれです。栄光ある英国のご家庭が、いまだそのような時代錯誤な教育をしているとは……我々日本側は、いささか驚いている次第です。日本国としては、大事な同盟国である英国の英雄、ハリー・ポッター君がそのような目に遭っていることに大変憂いを感じております。ここに、正式的に『遺憾の意』を表明します。そして今後、ハリー君がまたあのような目に遭っていると判明しましたら……日本国大使館を通じて、正式に抗議と報告をイギリス政府に伝えさせていただきますので……そこのところ良しなにお願いしますね?」

 

つらつらとそう言った刀原に、ダーズリーはしきりに頷くしか出来なかった。

 

「ご理解いただけたようで何よりです」

 

ダーズリーの反応に満足した刀原は、最後にそう締めくくった。

 

「ではなハリー。出来たら一か月後にな」

 

「出来なかったらホグワーツで会いましょうね」

 

刀原と雀部は、そう言ってキングズ・クロスを去っていた。

 

ハリーはそれを見送りながら、追撃の脅迫をしているシリウス達の元に駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1

もしハリーが日本で育てられた場合、下手すれば英才教育(お主も死神になるのじゃ!)を受けることになる。

 

流石にそれは避けたい…というかやめて欲しい、勘弁してくださいというのが、ダンブルドアの嘘偽りない思いだった

*2

「喋れないなら……アイム、ノー、スピーク、イングリッシュとかじゃないか?」

 

「あのカタコト、わざとのような気が……」

 

と思ったのが理由である。

 

実際の真相は藪の中だが






奴には無いものを、僕らは持ってる

愛する者
信頼出来る友

そして

守るべき価値があるものだ。



ダンブルドアは稀代の策士ですが、自身の過去が邪魔をして後手後手になってますよね。
まあ、しょうがないと言えばしょうがないですが……。

ある意味政治の章になった本篇。

次の編はそんなことにはならない……筈。

あ、昨今話題の『あれ』について、おまけ…あります。


感想、ご意見、ご質問、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


では次回は

死神と謎のプリンス編 開始となります。

次回もお楽しみに。





おまけ


巷で話題の『薩摩ホグワーツ』なる言葉と存在について、某一般死神の緊急記者会見。


『薩摩ホグワーツという言葉が流行ってますが、お二人との関係性は?』


「ありません。僕らは死神であり、薩摩ホグワーツ生ではありません」

「出身も、生まれも育ちも由緒正しき瀞霊廷です。薩摩ではありません」


『薩摩ホグワーツ生は、呪文を打たれる前に敵を切るらしいですよ?』


「薩摩ホグワーツ生じゃなくても出来ます。死神にとって、必須スキルなだけです」

「私達はチェストしません」


『刀を持ってますよね?そこから雷とか、切れる刃とか出してますよね?やっぱり杖(刀)なんじゃないんですか?』


「これは斬魄刀です。薩摩ホグワーツ生が使う杖(刀)ではありません」

「私達は魔法(物理)はしません。鬼道と剣術と、西洋魔法を使うんです」


『しかし、pixivとかで書かれている内容。……お二人でも出来ますよね?』


「出来ることは否定しません」

「ですが、あれほどではありません。私達は規律を守る護廷十三隊です」


『証言があります。お二人が禁じられた森で『修行』と称して出入りをしたり、そこから時折爆音がしたり、絶叫に似た声や剣戟の音が聞こえると』

『やっぱり、お二人は薩摩ホグワーツ生ですよね?』


「修行と称しではありません。修行です。出入りに関しては、ダンブルドア校長から正式な許可を貰ってます。無断ではありません」

「爆音は鬼道や斬魄刀です。絶叫に似た声は、霊圧を高めているだけです。間違っても猿叫ではありません。剣戟の音は文字通り、剣戟の音です」


『やっぱり薩摩ホグワーツ生じゃないか!』


「違います」

「私達は死神です」


『でも敵を切ったり、敵を盾の呪文(プロテゴ)ごと切ったりしてますよね?』


「死神としては当然です」

「出来て当然です」


『我々、普通のホグワーツ生は……それは出来ないのですが?それでも薩摩ホグワーツ生ではないと?』


「「死神です。薩摩ホグワーツ生ではありません」」


だ、そうです。
皆さんはどう思います?

ハリー達が分霊箱捜索旅をしている間に、刀原達は賊軍と戦ってる予定です。ハリポタの登場人物が一切出ませんが……要りますか?

  • 1『要る!』vs賊軍→ホグワーツの戦い
  • 2『要らない!』vs賊軍は全部カット
  • 3『後にしろ!』終了後、おまけとして
  • 4『お前も同行!』刀原も旅に参加する
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