顔は宿敵
そして彼らの
忘れ形見
彼女の為に
僕は蝙蝠となろう
「ああ、ハリー・ポッター。我らが新しい…スターだね」
「有名だけではどうにもならんらしいな?ポッター」
なんだこの教授。
刀原が一瞬ではあるがこう思ったのも、無理もないかもしれない。
組み分けによりグリフィンドール生となった刀原は、汽車で道中を共にしハリーとロンの二人と、行動を共にしていた。
刀原自体は彼らより年上という事になるのだが……。
「気楽な感じでいいよ、同学年なんだし」
という刀原の一言により、年齢差を感じさせない関係となっていった。
そんな関係を彼らと築いた刀原だが……マホウトコロで過ごした3年間は、彼らとの実力差を引き離すのには造作もない時間だった。
記念すべきホグワーツ最初の授業は、マクゴナガルの変身学だったのだが……。
「このマッチ棒を針に変えて下さい」
という課題に対して、刀原は紅葉の杖を持ってマッチ棒を針*1に変えたのだ。
ハーマイオニーも一発で出来た為、マクゴナガルは満足気に頷き……それ以降刀原は、課題が出来次第、他の生徒にも教える事になったのだった。
そんな刀原は、次の授業である魔法薬学に高い期待をしていた。
マホウトコロでも魔法薬学はある。
だが、魔法薬学は西洋薬学と東洋薬学に分かれていた。
刀原には、東洋薬学と回道という自身や他者の傷や霊圧を回復する鬼道を、剣術と共に叩き込んだ師匠が居る。
そして西洋薬学にも明確な師匠が居たのだ。
本人曰く、古い物らしいが。
刀原はそう思い浮かべて苦笑いするが……結局のところ、目的は変わらない。
マホウトコロでは学べない西洋薬学の真髄を。
「こっそり、後で僕に教えて下さいっす」
なんてその人に頼まれても、いるにはいるが。
刀原はウキウキ気分で、ハリー達と共に魔法薬学の教室に向かう。
そして……冒頭に戻るのだった。
刀原が期待を寄せる魔法薬学の授業は、スリザリンとの合同授業となった。
授業を担当するのは、そのスリザリンの寮監。
セブルス・スネイプ教授。
そのスネイプが……生徒の名前を読み上げている最中に、ハリーに対して言った言葉が。
「ああ、ハリー・ポッター。我らが新しい…スターだね」
という言葉だったのだ。
言葉だけ聞けば……漏れ鍋でも見たハリーを英雄視する人の言葉だ。
だが神経を逆撫でする様に言われれば……余程の者じゃない限り、皮肉だと気づくだろう。
敵視か私怨か知らないが、他所でやれ。
刀原は最初からジト目になってしまう。
その後出欠を取り終えたスネイプは出欠簿をコトリと机に置き、話始める。
「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と厳密な芸術を学ぶ」
なるほど、調合をミスすれば爆発。微妙な科学と厳密な芸術とはある意味正しいかもしれない。
刀原は最初の事をひとまず忘れ、関心し納得する。
スネイプは話し続ける。
「吾輩の教えるこのクラスでは、杖を振り回すようなバカげたことはやらん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち上る湯気、人の血管を這い巡る液体の繊細なる魔力……真にこの素晴らしさを諸君らが理解できるとは思っておらん」
楽しかった…そして難しかった…。
思い出す、師匠との薬学調合。
西洋薬学は少ししか教えてくれなかった。
「これぐらい簡単っすよ?」
そう言われて悔しくて、頭を悩ませながら作った魔法薬が教科書の何処にも無く……「発表されたばかりの物っすよ」と聞いた時……師匠は自分を何にならさせたいのか分からず困惑したのはいい思い出だった。
刀原が考えている間も、スネイプの話は続く。
「吾輩が諸君らに教えることができるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である……もっとも、諸君らが吾輩のこれまで教えてきたウスノロたちよりマシであればの話だが」
ウスノロでは無いと思いたい。
「全員が理解できるとは思っておらぬ。素質を持つ一部の者だけに、人の心を操り感覚を惑わす方法を伝授してやろう」
スネイプの演説が終わると教室が静まる。
そして静寂が教室を支配する中、「ポッター!」とスネイプの鋭い声が響き、刀原の隣にいたハリーは飛び上がる。
そしてスネイプは……。
「アスフォデルの球根の粉末に、ニガヨモギを加えると何になる?」
という質問をするのだった。
アスフォデルの球根の粉末に、ニガヨモギを加えると何になる?
という質問に……刀原はそれだけでは駄目だったはず、と考えた。
アスフォデルの球根にニガヨモギ、催眠豆の汁、ナマケモノの脳味噌、それに水を加え調合する事で生ける屍の水薬という強力な睡眠薬が出来るはず…。
刀原がそう考えている一方、ハリーは完全に?の顔をしており、ハーマイオニーは分かったのか手を挙げる。
ハリーはロンを見るが……ロンは力無く首を横に振り、最終的にハリーは「…分かりません。」と答えた。
スネイプはハリーの言葉に、わざとらしく溜息を吐く。
「有名だけではどうにもならんらしい。ではポッターよもう一つ。ベゾアール石を見つけてこいと言われれば、どこを探すべきか?」
そしてハーマイオニーを無視しながら再度質問をする。
ベゾアール石…山羊の胃から発見される石の様な物。
石と言いつつ山羊が消化しきれなかった物質なのだが、大概の毒を解毒できるという物だ。
しかしやはりハリーには分からず……彼は虚しく首を横に振り、「分かりません」と答える。
そしてスネイプはハーマイオニーをまたも無視し、
「クラスに来る前に教科書を開いて見ようと思わなかったわけだな、ポッター?」
と答えられなかったハリーに嫌味を言った。
なんだこの教授?
刀原はそう思い目を細める。
寮の確執を超えた個人攻撃。
此奴、本当に教授なのか?
それとも何か理由でも?
刀原は思惑を考えるが、次の質問が飛んでくる。
「ではポッター、もう一つ聞こう。モンクスフードとウルフスベーンの違いは何だね?」
「……わかりません」
スネイプは相変わらず挙手をし続けるハーマイオニーを完全に無視して、やれやれといった仕草をする。
モンスクフードとウルフスベーン、正体はどちらもトリカブトの一種だ。
刀原はスネイプの意地の悪さにウンザリする。
だがウンザリしている暇はなかった。
「どうやら……我らが新しいイギリスのスターは、我輩が出した質問に答えられないらしい。では……日本から来た留学生のトーハラ、君は答えられるかな?」
「!?」
自分に矛が向かって来るとは思わず、一瞬戸惑う。
だが、向けられた以上受けざる得ない。
「はい。まず、最初の質問ですが……アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えても、それだけでは意味はありません。これら二つに催眠豆の汁、ナマケモノの脳味噌、それに水をさらに加えて調合する事で『生ける屍の水薬』という無色透明で強力な睡眠薬となります。適量を間違えれば一生眠り続ける薬品ですが……近年、対抗薬として『死せる生者の水薬』が開発されています」
死せる生者の水薬。
師匠に煽られ作らさせれた、師匠が開発した魔法薬。
師匠は護廷十三隊に科学と西洋薬学を持ち込んだ人なのだが、いかんせんマッドサイエンティストっぽく見えるのは気のせいであって欲しい。
刀原は思い出しながら話を続ける。
「二つ目の質問ですが……ベゾアール石とは主に、山羊の胃の中から見つかる、山羊が消化しきれなかった石の様な物質ですね。なので探し出せと言われれば、山羊の胃を探ります。三つ目はどちらもトリカブト、別名アコナイトの呼び名です。トリカブトの葉は猛毒として知られており……魔法薬としては、脱狼薬の原材料になります。以上です」
スネイプは刀原の答えに頷く。
「見たかね?そして聞いたかね?流石は日本の留学生。我らが情け無いスターとは大違いの様だ。そして……何故諸君らは、刀原の答えをノートに書き留めない?」
スネイプがこう言うと、生徒は慌ててガリガリとノートに書き始める。
「刀原の謙虚ながらその歳にしては高い知識に免じて、ポッターの情け無い答えは帳消しにしてやろう」
スネイプはハリーに吐き捨てる。
そして終始ハーマイオニーを無視した。
その後スネイプは二人一組に生徒を分け、所々で小言を言いながら授業を行うのだった。
ちなみに…。
「ネビル、大鍋に火から離してから山嵐の針を入れるんだぞ」
「ああショウ、ありがとう。助かったよ」
ネビルが大鍋を爆破する所を、刀原は寸前で止めたのだった。
魔法薬学の授業もそうだったが、刀原には理解できないことがあった。
軋轢があるグリフィンドール寮とスリザリン寮。
この二つの寮に何故合同授業などさせるのだろう。
ハリー達に毎度毎度ダルがらみするマルフォイと、スリザリンを目の敵にするロンの様に……両陣営が顔を突き合せれば喧嘩や騒動に発展するのは決まっているのに。
こう思った最大の理由が、今まさにハリーとマルフォイとの間で行われようとしているドッグファイトだろう。
初めての箒訓練が行われるということを受け、刀原の朝食は一段と賑やかなものとなった。
スリザリンのテーブルでは、マルフォイがヘリにぶつかりそうになったという……自慢話だか失態話だかよく分からない話をしていた。
ネビルは今朝届いた『思い出し玉』という魔法具が何かを忘れていることを伝えていたが……ネビルにはそれがわからないという、なんとも残念な有様となっていた。
そんな騒がしい朝食を終え、刀原達は飛行訓練場に向かうのだった。
ちなみに刀原は正直な話、箒の飛行訓練に消極的だった。
というのも刀原、いや死神に箒などいらないからだ。
何故なら……死神の持つ技術には、瞬歩という高速移動と大気中にある霊子を固め足場とする歩法がある。
なお、刀原の瞬歩の師匠は瞬神と謳われる人物である。
「箒なんぞ役に立たんぞ!」
と言い放っていたほどだ。
「何をぼさっとしているのですか、早く箒のそばに立って。」
飛行訓練場に着くなりそう言い放ったのは、クィディッチの審判もするというマダム・フーチ教授だった。
「右手を箒の上に突き出す。それから上がれという。」
檄を飛ばすマダム・フーチの言う通り、生徒たちは一斉に上がれと言った。
だが……ハリーやマルフォイなどの、ごくわずかしか一発で成功していない。
そんな彼らを尻目に「上がれ」の一言で、刀原も一発で箒を上げる。
上がらなかった生徒たちは直接持たせる。
そして全員の手に箒が握られたことを確認したマダム・フーチは、生徒達に箒に跨るように指示した。
「私が笛を吹いたら地面を強く蹴る!箒をしっかり握って、数メートル浮上したら前かがみになって下りてくること! 笛を吹いたらですよ? さぁ、1、2の…」
そうしてマダム・フーチが笛に口をつける直前、事件が発生する。
「うわぁああああ!!」
箒を上げる時点からビクビクしていたネビルが、先に地面を蹴り、勢いよく飛びあがったのだ。
「こら、戻ってきなさいロングボトム!」
マダム・フーチが制止するも、ネビルが自身の箒を制御出来るはずがない、
ネビルはフラフラと上昇していき、おまけに箒が暴れだし、そして…。
ネビルがついに箒から手を放す。
数十メートルからの自由落下。
その瞬間。
辺りにシュッという音とカランという音がし、ネビルの落下を刀原が受け止めたのだった…。
落ちたと分かった瞬間、箒から手を離し、師匠直伝の瞬歩を使い一気にネビルの落下点に向かう。
地面を蹴り、空中でキャッチし着地。
そしてそのままストンとネビルを地面に降ろして、様子を確かめる。
うん、五体満足。
まあ、白目剥いて気絶してるが無理も無いね。
数十メートルの自由落下なんて、多くの子達は経験して無いでしょ。
空中歩行が俺達みたいに出来るとは聞いてないし。
そう思っているとネビルが目覚める。
「う、うーん。あ、あれ?僕はどうなったの?」
「お、起きたね。どっか痛い所無い?」
俺がそう聞くとネビルはキョトンとしながら「う、うん大丈夫」と答えたので、ようやくここで一息つく。
周囲を見ると、フーチ教授がハリー達を引き連れてバタバタとやって来ていた。
「ロングボトム!大丈夫ですか!?」
「は、はい大丈夫でした。」
ネビルがそう答えたのを見て、フーチ教授も安心したのか、フーと息を吐く。
まあ、あのまま落ちれば生死に関わる事態だった。
「あなたは数十メートルから落ちたのですよ。」
などとフーチ教授がネビルに伝えれば、ネビルの顔がみるみる青くなる。
「全員、ここで待っていなさい! もし箒に指一本でもふれた場合は、クィディッチの『ク』の字を言う前に、この学校から出て行ってもらいますからね!」
とフーチ教授はネビルを立ち上がらせ、ハリー達に伝える。
是非そうした方がいい。
ネビル吐きそうだぞ。
そう思っているとフーチ教授が俺を見る。
「ミスタートーハラ。先程は見事でした。ロングボトムを助けた事に対し、グリフィンドールに二十点あげます」
そしてそう言った。
当たり前の事をしただけなんだけど…。
級友が目の前で落ちて、助ける手段があるのに、助けないなんてありえないだろ。
まあそんな事を言ってもアレだから、素直に受けるか。
「いえ、当たり前の事をしただけですよ。」
「アイツの顔を見たか?あの大まぬけの」
刀原がネビルをキャッチし、マダムフーチがネビルを保健室に連れて行った後、マルフォイが嘲笑う。
手には光るガラス玉、思い出し玉を掲げ、
「見なよ!ロングボトムの婆さんが送ってきたバカ玉だ!」
とバカにする。
思い出し玉とは忘れ物などがあると赤く輝き教えてくれる道具なのだが、肝心の忘れ物の内容までは教えくれないという道具。
今朝それをハーマイオニーから教えてもらった刀原は、そんな思い出し玉を『とんだ欠陥品』と断じたので、バカ玉という表現は理にかなっていると思った。
そんなことを刀原が思っている間に、事態は動く。
「返せよマルフォイ」
とハリーが思い出し玉を返すように、マルフォイに言っていたのだ。
「いやだねポッター。取り返したかったら自分で取り返してみるんだな。」
当然大人しくマルフォイが返す筈もなく……ハリーに向かってそう言い放ち、箒に乗って空に浮かび上がる。
「ダメよハリー!退学になるわ!」
ハーマイオニーはハリーを制止しようとするが、ハリーはそれを無視しマルフォイを追いかける。
あーあ、やっぱりこうなるか。
刀原はため息をつく。
だが、それと同時に感心もする。
マルフォイのヘリ衝突未遂話は確からしいし、ハリーは魔法界にいなかったことを感じさせない飛びっぷりだ。
刀原が感心していると。
「取ってみなよ、ポッター!」
マルフォイがそう言って思い出し玉を投げる。
ハリーはそれを見て一瞬戸惑ったように見えたが、直ぐに箒を再度強く握りしめ、思い出し玉に向かって突進する。
思い出し玉はホグワーツの尖塔にぶつかる直前だったが、ハリーは間に合い、くるりと一回転しながら思い出し玉をキャッチする。
良かった、また瞬歩しなくて……あ。
刀原はそう吞気にハリーを見ていたが、その先の光景を見て目を見張る。
尖塔には当然窓があるのだが……そこからマクゴナガルの姿がちらりと見えたからだ。
あ、やばそう。
刀原の顔が引きつる。
その間も、ハリーはマルフォイを空に放置して歓声を上げる生徒達に向かって降りてくる。
刀原はハリーにマクゴナガルが来ることを一応伝えようとするが……時すでに遅し。
「ハリー・ポッターぁあああああ!」
マクゴナガルがやってくる。
先程まで歓声を上げていた生徒達と、誇らしげだったハリーの顔がさーっと青ざめていく。
「まさか…こんなことが。」
怒りのせいなのか、体がわなわなと震えているマクゴナガル。
それを見たハーマイオニーやロンが、必死に釈明をしようと試みるも。
「事情はこちらで判断します」
と一蹴されてしまう。
「ポッター。ついてきなさい」
そしてハリーは連行されてしまった。
「これでポッターは退学だな」
とマルフォイは余裕そうに高笑いするが、そう人生は甘くない。
「大丈夫でしょ。少なくとも退学にはならんはずだ」
と俺は反論する。
するとマルフォイは納得できなかったらしい。
「なに!何故だ!」
と聞いてくる。
分かんないのか。
「一、ハリーが退学ならマルフォイ、君も一緒に連行され退学となるからだ。だってハリーと一緒に飛んでいたのだからな」
そう、マクゴナガル教授を見ていれば……あの人が如何に厳格な人か分かる。
グリフィンドールとスリザリンの確執や贔屓など関係なく、同罪なら一緒に処罰するはず。
「二、飛んだら退学という事情を、マクゴナガル教授はご存じないと思うから」
飛んだらクィディッチの『ク』の字を言う前に、この学校から出て行ってもらいますからね!
この言葉を言ったのはフーチ教授。
マクゴナガル教授が聞いていた可能性も……まあ、無くはないけどね。
「とまあざっと簡単に思いつくのはこんな感じかな?」
と俺が言えばマルフォイは反論ができないのか押し黙る。
だが、ハリーが退学にならないと思う決定的な状況を俺は見てる。
だって…。
確かにハリーを見ていたマクゴナガル教授は、一見すると激怒しているように見えた。
「ついに見つけた!」
だが、そう言うかのようにらんらんと目が輝いていた。
それに口をニヤリとし、軽く、本当に軽くガッツポーズしていれば。
退学じゃないことなんて分かることじゃないか。
刀原は師匠直伝の洞察力を十分に発揮し、ハリーがマクゴナガルに何を任されたのか聞くのを楽しみにするのだった。
その夜、ハリーからクィディッチの選手になったことを聞き。
次の朝、ハリーのもとにニンバス2000という競技用箒が届き、マルフォイ等を驚愕させ。
マルフォイは、グリフィンドールに最高のシーカーを発見させる栄誉に輝いたのだった。
みなさんは一人称だけが良いでしょうか
それとも三人称と一人称を混ぜる方が良いでしょうか
感想も含めご意見お願いします。