ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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唾棄すべき己の名を消した

憎むべき肉親を消した

忌々しい過去を消した

消して、消して、消して

残るものは、何も無かった。




死神、参謀になる。特別授業と幸運

 

 

 

今学期が始まってから最初の週の土曜日。

 

ハリーはダンブルドアからか呼び出され、特別授業と称した『ヴォルデモート対策』を行っていた。

 

それはヴォルデモート自身が切り捨て、謎に包まれている過去と、それにまつわる記憶を探るものだった。

 

彼の出生と母親の血筋……すなわちゴーント家のことだ。

 

ゴーント家自体は非常に古くから続く魔法族の家柄だったのだが……。

 

いとこ同士が結婚する、つまり近親婚が繰り返される慣習から情緒不安定と暴力に染まり*1、やがて衰退していった。

 

そんな一家の一員だった女性『メローピー・ゴーント』こそが、ヴォルデモート(頭のイカれた魔法使い)こと『トム・マールヴォロ・リドル』の母親だったのだ。

 

記憶の中で彼女は、ハンサムなマグル『トム・リドル・シニア』に胸を焦がしていた。

 

だが純血思想に固執するゴーント家が、そんな真似を許す筈が無かった。

 

普通なら叶わない恋の筈だったのだ。

 

だが、何の因果か……歯車が狂った。

 

メローピーの父と兄が、マグルを襲ったとしてアズカバンに収監されたのだ。

 

こうして、彼女を遮る障害は無くなった。

 

リドルには婚約者が居たが、数か月後にリドルとメローピーは駆け落ちをした。

 

暑い日に水を一杯差し出す振りをして『愛の妙薬』を盛るのは簡単だったのだろう。

 

しかし、その一年後にリドルはメローピーから離れ去った。

 

メローピーもゴーント家の一員として、残念な女だったのだ。

 

一つは……リドルを忘れられず、彼には婚約者がいるにも関わらず強引に手に入れようとした。

そしてそれを成功させてしまった。

 

二つは……そのような事をしたが、魔法で夫を隷従させ続ける事に耐えられなくなったこと。

彼女は中途半端な心で実行したのだ。

 

三つは……そんなことをしていたにも関わらず、彼が自分の愛に応えてくれると確信していたこと。

そんなことあり得ないのに。

 

全てはゴーント家の情緒不安定で暴力的で自己中心的な思考が、彼女にも宿っていたが故だった。

 

一応、先の三つはダンブルドアの推察だ。

 

だが事実は一つだ。

 

メローピーはリドルに魔法を掛け、駆け落ちした。

 

しかし一年後、解けたのか解いたのかは一応不明なれど、リドルは正気に戻った。

 

当然ながらリドルは、メローピーと二人の間で出来た赤ん坊を捨てた。

 

メローピーは赤ん坊を孤児院で出産し、直後に亡くなった。

 

そしてその数十年後、赤ん坊はヴォルデモート(頭のイカれた魔法使い)となった。

 

「英国魔法界の闇を濃縮したみたいな感じだな」

 

ハリーから一通り聞いた刀原は、頭のイカれた魔法使いになるべくしてなったヴォルデモートに、小さじ半分ぐらい同情した。

 

 

 

二回目の授業では、トム・リドルの幼少期についての記憶を探った。

 

 

孤児院で成長したトム・リドルは、ゴーント家の呪いと言っても差し支えない凶暴性を発揮した。

 

天井の垂木から他人のウサギを首吊りにし、他の子供を洞窟に誘い込こんで様子をおかしくさせ、戦利品の様に様々な物を子供たちから盗んだ。

 

しかもそれらの犯行には魔法を使用し、一切の証拠を残さなかった。

 

彼は幼く若い魔法使いにありがちな行き当たりばったりのものではなく、意識的に力を行使出来たのだ。

 

それに始めてダンブルドアから彼と接触した時も「真実を言え!」「証明しろ」等、命令口調や乱暴な口調も目立った。

 

何より、彼は猫を被るのが上手かった。

 

立場が上と判断した場合、がらりと人が変わったように丁寧な口調に変える事など朝飯前だった。

 

何も知らない人が見れば、そのような危険性を忍ばせていることなど分からないだろう。

 

トム・リドルという少年は非情に自己充足的で秘密主義であり、友人を作らず誰も信用せず、自分ひとりでやる事を好んだ。

 

怪物は元から怪物であり、そこに魔法と言う他者とは違う特別な力が組み合わさったことで、怪物はより凶悪になったのだ。

 

「次回はショウも一緒に来てくれ。だってさ」

 

ハリーはこれまでに知った全てを刀原に打ち明けた後、まとめるようにそう言った。

 

「……はぁ~。分かった」

 

刀原は面倒くさそうに了承した。

 

 

 

 

 

 

ハリーとダンブルドアの特別授業が順調に進む中、各授業も軌道に乗り、ホグワーツでは穏やかな日々が続いていた。

 

しかし、残念ながら世情(ホグワーツの外)は悪化しつつあり……ほんの時々だけ死喰い人の斥候が現れては侵入を試みたり、虚が出現したりしていた。

 

一応……死喰い人はホグワーツ全体を覆っている防御魔法によって阻まれ、虚は出現するたびに刀原達『遣英救援部隊』の面々によって殲滅されていたが。

 

だがホグワーツでは、戦時下とは思えない穏やかさがあった。

 

ハリーに至っては、「入学して以来、初めての平和な日々*2」と称するほどだった。

 

そんな穏やかなホグワーツに迫ってきたことがある。

 

クィディッチシーズンだ。

 

「いいですかポッター。当然ながら、学業はとても大切です。しかし、それと同等に大切なのがスポーツです。私は自分の部屋に、優勝カップがあることにすっかり慣れてしまいました。無いことなど考えたくもありません。ですからポッター?新キャプテンとして全力を尽くしなさい」

 

ホグワーツ屈指のクィディッチ狂いとして有名なマクゴナガルは、シーズンの開始を控え、ハリーへ強く厳命した。

 

ハリーも事実上の三連覇を目指し、ありとあらゆる手段でチームの強化をしようと決意した。

 

そのために、まずはメンバーの参集と選抜を行うことにした。

 

参謀役として刀原も招集し、とある土曜日に選抜会は行われることになった。

 

 

 

「今から選抜試験を……静かに、静かに!」

 

ホイッスルがいるなと、ハリーはデジャブを感じながら思った。

 

選抜会には、ハリーの予想を遥かに超える人数が集まったのだが……ごく一部を除いて、どいつもこいつも騒がしかった。

 

理由は単純。

 

こいつらは『選ばれし者』として名高いハリーを見に来た野次馬なのだ。

 

うるせぇ

 

突如、ドスの効いた声が響いた。

 

発した本人にとっては僅かだが……霊圧が込められたそのたった一言は、野次馬達を一瞬で黙らせるには充分な威圧だった。

 

「あ、ありがとうショウ」

「おう」

 

さ、さすがショウだ……。

ちょっと怖かったけど。

 

ハリーは、自分が刀原を怒らせた時を思い出して少し震える。

 

直ぐに頭を振って忘却したが。

 

「多いな、どうしよう」

 

「とりあえず、競技場を一周させてみたらどうだ?どうせ大半が野次馬だ。それだけで篩いにかけられるだろ」

 

ハリーは刀原の策を即座に採用し、そしてそれが正しかったことを実感した。

 

刀原の言う通り、大半の生徒達が全く飛べなかったのだ。

 

そんな中でも、やはり希望はあった。

 

古株にしてハリーからも信頼の厚いケイティ・ベル。

去年、ハリーの代打を務めたこともあったジニー。

新人だが、箒捌きは中々に光るものがあるデメルザ・ロビンズ。

 

少なくともハリーが一学年の時から続く伝統、チェイサー三人娘が今年も結成されたのだった。

 

ビーターは少しだけ問題があった。

 

「使えなくはないけど……いまいちパッとしないな」という感想が先行してしまったのだ。

 

前任の『かの双子(フレッド・ジョージ)』は、誰が何と言おうとも最高のビーターだったからだ。

 

双子ならではのコンビネーション。

邪魔をするという点においては、天才的な頭脳。

 

ハリーも刀原も、それを基準にしてしまっていたのだ。

 

「前任者があまりにも良すぎたな。あの双子とは比べない方がいい」

 

刀原は考えこむようにしながらそう言った。

 

それでも、リッチー・クートとジミー・ピークスという新人が最終的に選ばれることになった。

 

残る最後にして最大の問題は、キーパーだった。

 

ハリーも刀原も「ロン一択だろ」で半ば結論付けていたのだが……。

 

彼のパフォーマンスがメンタル面で大きく左右されることは、考慮に値する問題だった。

 

少なくとも、それはハリーも刀原も同じ思いだった。

 

そしてその痛い隙を突いて自身を売り込んだのが、コーマック・マクラーゲンとかいう傲慢にも似た自信家だった。

 

もっとも、実力はロン以下というのが総評だったが。

 

そして刀原は、こいつに見覚えがあった。

 

実はこの男……ダンスパーティーのパートナーにと、最愛の相棒である雀部に迫っていた過去がある*3のだ。

 

挙句、ロンやジニーの悪口をいう始末。

 

「獅子身中の虫、排除した方が良い。なんなら今すぐそうしようか?」

 

友人への悪口を許さない刀原は、ハリーにそう断言した。

 

最終的には……応援に来ていたハーマイオニーが『錯乱呪文』をこっそり使ったこともあって、選抜試験でロンにあっけなく敗北。

 

それでも不服をぴーぴーと言ってきたのだが……。

 

黙れ小僧

 

刀原の本気の威圧を受け、あっけなく失神した。

 

ピンポイントで放ったため……周囲はマクラーゲンがいきなり失神したように見え、ちょっとした騒動になったが。

 

そんなことがありながら、キーパーはロンに決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クィディッチシーズン最初の試合は、例年通りにグリフィンドールとスリザリンの試合となった。

 

ハリーは、スリザリンチームの事実上のキャプテンであり自身ライバルでもあるマルフォイに勝つべく、闘志を燃やしていた。

 

他のメンバーも新生グリフィンドールチームを見せつけるべく、練習に勤しんでいた。

 

一方、ここ最近のロンはおかしかった。

 

ロンがハーマイオニーを()()しすぎており、その感情が複雑に絡み合った結果……おかしくなっちゃった、と刀原と雀部は判断していた。

 

マクラーゲンとくっついた方が良いなどと()()()()()ことを言ったり……。

 

ハーマイオニーを露骨に冷たく無視したりもした。

 

試合前の最後の練習でも、ロンはダメだった。

 

チェイサーからのシュートは全く防げないのに大声で怒鳴りつけ、デメルザを泣かせてしまうほどだった。

 

「見るに堪えんな。叱る気すら起きん」

 

刀原などは早々に匙を投げてしまい、ピッチを去っていってしまうほどだった。

 

去り際に「ロンの思考を変えさせろ」と指示はしたが。

 

ハリーはロンを何とかしようとするも……叱れば絶望し、挑発も意味は無かった。

 

しかし、クィディッチの女神はハリーを見捨ててはいなかった。

 

天啓が降りたのだ。

 

 

 

試合前の朝。

 

「今年こそは勝つ!正々堂々勝負だ!」

 

マルフォイがハリーに対し、恒例になっているいつも通りの宣言を朝食の時にした。

 

一方、ロンは明らかに絶不調だった。

 

【はぁー生気(せいき)がねぇ、気合がねぇ、気概もあんまり感じねぇ。気迫もねぇ、覇気もねぇ。こんなキーパー見たことねぇ。もうこんなじゃあ駄目だ~。今日の試合は終わった(オワタ)~。敗北確定だ~【そこまでにしましょうか、日本語だから(彼らが分かんないから)って駄目です】はーい】

 

ロンの顔を見て「終わったな」と思った刀原が、日本語でこの様な歌を歌うぐらいには駄目そうだった。

 

止めた雀部とて「歌の通りですけどね……」と思うほどには、駄目そうだった。

 

傍目から見たマルフォイなどは、敵だというのに心配し「おいウィーズリー。僕とポッターとの戦いを、決着が着く前に終わらせる気か?」と凄むほどだった。

 

三者統一の見解(駄目だコイツ)を示す間も、ロンの調子は全く改善されなかった。

 

絶望と緊張、今までの態度の申し訳なさでおかしくなっていた。

 

そんな中、ハリーは諦めていなかった。

秘策中の秘策に自信があったのだ。

 

無論、難点はいくつもあった。

 

肝心のロンが、狙い通りになるか。

ハーマイオニーや雀部が見つけてくれるか。

刀原が信じてくれるか。

 

しかし、もう後には引けない。

これしか策は無いのだ。

 

ハリーは秘策を準備し始めた。

 

 

 

 

 

刀原が日本語で何やら悲痛を感じる歌を歌い、雀部がそれをやんわり諌めながらも「確かに……」と言った顔をし、マルフォイがハリーに宣戦布告しつつロンを叱責しても、ハーマイオニーはやってこず、ロンは絶望した顔の(ダークサイドに堕ちた)ままだった。

 

それでもマルフォイが自分の寮テーブルに戻ったころ、漸くハーマイオニーがやってきた。

 

「おはようハリー、ロン、ショウ、ライカ。ショウは……何を歌っていたの?」

 

「最近人気だという日本の歌だ」

「それを改造したふざけた歌です」

 

ハーマイオニーが挨拶早々に刀原にそう聞けば、刀原はあっけらかんと答え*4、雀部は呆れながらそう言った。

 

「ああ、そう……」

 

ハーマイオニーは、時折見せる刀原の悪ノリに「ツッコんだら負け」と判断したのか、それだけ言ってハリーとロンの近くに座った。

 

「この試合が終わったら、キーパーはマクラーゲンの奴にやらせろよ」

 

相変わらず暗黒面(ダークサイド)に堕ちた様な顔をしているロンが、絞り出すようにそう言った。

 

「好きにしろ、このジュースでも飲め」

 

ハリーはぶっきらぼうにそう言い、飲み物が入ったカップをロンに差し出した。

 

「まあ、このままだと辞める以前の話ですからね……」

 

雀部がよいしょと言いながらハーマイオニーの近くに座る。

 

「それは栄養ドリンクか何かですか?」

 

続けてそう言った雀部に、ハリーは少しだけニヤリと笑ったあと、左手に隠し持っていた『ある物』をポケットにしまい込んだ。

 

「え、ちょっと待って下さい!それって、」

 

「幸運の液体!?」

 

「なにぃ?」

 

即座に雀部とハーマイオニーが反応する。

 

少し遅れて刀原も反応する。

 

大声ではなかったが、ロンが『カップの中身の正体』を知るには十分な反応だった。

 

「ハリー、流石にこれは……」

「退学になるわよ!?」

 

「さあ、何の話?」

 

雀部とハーマイオニーの叱責にも、ハリーはどこ吹く風だった。

 

「ハリー……お前」

 

刀原の声には流石に反応するしかないが、それでも「何のこと?」と言いながら少しだけウィンクした。

 

「…………ふっ」

 

刀原は一瞬だけ目を見開いたあと、楽しそうに少しだけ笑った。

 

「しょう君?」

 

いつもなら叱責する筈の刀原が沈黙を維持しているのを見た雀部は、何かあると踏んで「しょうがないですね……」と言ってこれ以上の追求はしなくなった。

 

肝心のロンは、そのやり取りで中身を確信したようで……飲むのを少しだけためらっていたが、やがてカップの中身を全て飲み干した。

 

飲み干したロンの表情はみるみるよくなり、明らかに『覚醒した』感じになる。

 

「さあ、行こうハリー。楽勝だぜ!」

 

そして高らかにそう言いながら立ち上がったロンは、同じく立ち上がったハリーと握手をしたあと大広間を後にした。

 

ハリーも同じように出ていこうとするが、刀原に呼び止められる。

 

刀原は一言だけ確認するかのように何かを聞くと、ハリーはニッコリ笑って頷いた。

 

「…………上出来だ」

 

刀原はそう褒めるようにハリーに言い、ピッチへと送り出した。

 

ハーマイオニーはそれを見て唖然としていたが、やがて呆れたような表情をしながら応援席に向かっていった。

 

「ああ……なるほど」

 

ハリーと刀原のやり取りを観察していた雀部は、感心するように頷いた。

 

 

 

 

始まる前から終わったかに見えた試合は、ある意味で終わっていた。

 

絶不調だったはずのロンが、まるで覚醒したかのように冴えわたるプレーを連発し、スーパーセーブをいくつも成功させたのだ。

 

「くそ、やられた!ウィーズリーは絶不調じゃなかったのか!」

 

「騙された!」

 

「おのれ、ショウめ!」

 

「アイツが参謀だなんて反則だろ!」

 

それは絶不調がブラフのように感じられる程で……スリザリンチームの油断を誘うために、参謀役がそう指示したと思ったほどだった。

 

尤も、それはグリフィンドールチームも同じ思いであり……味方から見ても絶不調のロンがいきなり覚醒したことは、少なからず戸惑いを見せた。

 

ハリーはそれを、この状況を利用することで変えた。

 

「全てはショウの作戦だ。ロンを絶不調のように感じさせ、スリザリンに油断させる作戦だったんだ」

 

刀原から言わせれば「なんのこっちゃ?」となる言われっぷりだが……それは「アイツならやりかねない」と思われるような行動と実力を持っているせいだ。

 

兎にも角にも。

 

余裕綽々だと思っていたスリザリンチームは、覚醒ロンに戸惑い狼狽え、一度たりともゴールを成功させられなかった。

 

逆に覚醒ロンに引っ張られる形で士気を上げたグリフィンドールチームは、その勢い(行け行けドンドン)のまま、スリザリンチームへ襲い掛かった。

 

試合は圧倒的にグリフィンドール有利で進んだ。

 

ハリーとマルフォイが決着を着ける(シーカー対決)その前に、試合を事実上終わらせてしまったほどだった。

 

そしてスリザリン最後の希望となったマルフォイも、心理戦で敗北した動揺もあって、ハリーとの直接対決に敗北。

 

グリフィンドールは、圧倒的勝利を飾ったのだった。

 

ちなみに……。

 

スリザリンチームは、この圧倒的大敗が尾を引く*5ことになる。

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的な勝利を飾ったグリフィンドールは、その勢いのまま祝勝パーティーに移行した。

 

「幸運様様(のおかげ)ね」

 

宴の最中、ハーマイオニーは呆れるようにハリーにそう言った。

 

『幸運の液体をスポーツの前に服用してはならない』という規則を破ったうえでの勝利だったからだ。

 

しかし、言われたハリーはどこ吹く風だった。

 

「ショウもライカも、どうして止めなかったのよ?」

 

糠に釘のハリーを放置することにしたハーマイオニーは、刀原と雀部にもそう言った。

 

「あの……ハリー?私の推察では、その……。()()()()()のではありませんか?」

 

雀部はそれを半ば無視し、確かめるようにハリーに聞く。

 

「入れてない……。まさか、思い込み?」

 

雀部の指摘にハッとなったハーマイオニーがここで漸く真相に気が付く。

 

試合が終わり隠す必要が無くなったハリーは、頷きながらポケットからコルク栓が蝋封されたままの『幸運の液体』を刀原、雀部、ハーマイオニーに見せる。

 

「プラシーボ効果だな。単純なロンならあっさり騙せるだろうからな。それに……ハーマイオニーや雀部なら入れたかもしれない気付いてくれると踏み、俺はいち早く真相にたどり着いてくれると判断したのか……。うむ、最上の策だった。上出来だ」

 

刀原はハリーを褒めたたえる。

 

「ショウが立てそうな策を考えただけさ。でも、上手くいって良かった」

 

ハリーは照れながらもそう言った。

 

全てが上手くいった。

 

ロンは、自分が幸運の液体を飲んだと()()()()、とんでもないプレーを実力で引き出した。

 

ハーマイオニーと雀部は、その観察眼でハリーの仕込み……幸運の液体を入れたかの様な仕草を見つけ、狙い通りに自分(ハリー)を問い詰める形で、ロンに『さっき飲んだジュースには幸運の液体が入っている』と思わせてくれた。

 

刀原は、その圧倒的な洞察力と推理力で自分の策を早々に看破し、それを黙認する振りをしてハーマイオニーや雀部の追求を止めてくれた。

 

……完璧だった。

自分が気が付かない間に飲んでしまったのかと思うぐらいに上手くいった。

 

 

 

だが、その対価として……ロンとハーマイオニーとの仲が悪化した。

 

ロンが一躍ヒーローになり、ラベンダー・ブラウンとイチャイチャし始めたからだ。

 

おそらく、ハーマイオニーに対する当てつけだろう。

 

ハーマイオニーは訳が分からず、心底ウンザリした様子だった。

 

「ショウって素敵な男性よね……。聡明で誠実で……ライカが羨ましいわ」

 

思わず雀部にそう漏らしてしまうほどには。

 

「……あげませんよ。彼は私の大切な、人生の相棒です」

 

雀部は、自身の相棒であり恋人の刀原を褒める意味でそう言ったハーマイオニーの真意を理解しつつ、釘をさすように言った。

 

「分かってるわ」

 

ハーマイオニーは数少ない同性の親友の警戒度に苦笑しつつも、羨む言葉に偽りは無かった。

 

「ハリーとジニーもそうだけど……。ショウとライカの関係は、誰もが羨むわ」

 

幼馴染で、相棒で、戦友で、お互いがお互いを完璧に信頼し合っている。

 

ハーマイオニーは、大きな溜息を吐きながら「いったいなんなのよあれは……」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1

近親婚のリスクとしては……。

 

遺伝上の多様性の欠如、それに伴う免疫力の低下。

遺伝病の原因となる劣性遺伝子の発現率の向上、それによる遺伝性疾患のリスク。

 

などが主に上げられる。

 

ーーーーーー

 

現代日本(こちら)では、法律上は『いとこ』までなら可能だが……。

あまりお勧めは出来そうにない。

 

詳しくは『近親婚 ハプスブルク』で調べてみると良いだろう。

 

*2

一年生……トロールからの賢者の石

二年生……秘密の部屋

三年生……吸魂鬼と殺人鬼(冤罪)

四年生……対抗試合に強制参加

五年生……頭のおかしい男の子扱い

 

「何もねぇ年がねぇ……。大変だったなぁハリー」

 

当事者でもあった刀原は、しみじみとそう振り返った。

 

「仮初めとはいえ、ようやく平穏な学校生活を送れてる!」

 

ハリーは、何もない穏やかな学校生活に感謝していた。

 

*3

 

ちなみに……雀部にそれを言ってみたところ。

 

「そんなこと、ありましたっけ?」

 

彼女はそれを完全忘却していた。

 

*4

ちなみに『最近の歌』は大嘘であり、かの歌は1984年の歌である。

*5
チェイサーとビーターを何とかして、キーパーの前に出てしまえば……後は点を取ったも同然だ。

 

気になるのは参謀役のアイツの策だが……ウィーズリーがあの調子じゃ、何も出来ないだろう。

 

勝ったぞみんな、この試合……我々の勝利だ!

アーハッハッハッハ!

 

などと、マルフォイは試合前に言っていた。

 

スリザリンの生徒達も、全員が勝利を確信していた。

全員がゲラゲラ笑っていた。

 

何点取れるか賭けをしていた者もいた。

 

話題は、試合が決着した後の事……マルフォイ対ハリーのシーカー対決の行方だった。

 

試合が始まり、ロンがスーパーセーブをするまで……スリザリン生の全員が幸せそうだった。

 

だが現実は非情で、無慈悲だった。

 

試合後、スリザリン生の全員がお通夜状態になった。

 






やはり思い

思いが多くを解決する

当然、限界はあれど

病も士気も思いのままだ。





大人になって、改めて読んだとき……ヴォルデモートはなるべくしてなったと思いました。

凶暴性と暴力性を持つゴーントの血筋。
凝り固まった純血思想と選民思想。
半ば腐っていた行政府。

時代も悪かったですね。

何せ卒業した年が1945年。
民族戦争、思想と主義の戦争でもある第二次世界大戦の中で青春を過ごしてます。

自分の思想に近いものを持ったやべー奴ら(ナチス・ドイツ)が身近にいるんですから、感化されてもおかしくないでしょう。

だとしても、同情などは一切出来ませんが。


なお、ダンブルドアが上手く導ければ良かったのにと思うでしょうが……。

おそらく彼は、グリンデルバルドとの決戦で手一杯だったのではないでしょうか。




感想、ご意見、ご質問、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


では次回は

恋とクリスマス、そして記憶

次回もお楽しみに。



おまけ

「真相を言った方が良いかなぁ?」

「本人にだけ明かせ。調子と自信を取り戻して、イケイケの気持ちで次も張り切るかもしれん。だが、誰にも言うなとも言っとけ」

「分かった」

「それにしても、ロンってば単純ね」

「次の試合もそうしたらどうです?」

「いや、それはやめておこう。あくまでもこれっきりの策にすべきだ」

「スリザリンチームは今頃お通夜状態でしょうね」

「ああ、可哀そうなスリザリンチーム。ひとえに君たちの油断とロンのハイテンションのせいだが」



ハリー達が分霊箱捜索旅をしている間に、刀原達は賊軍と戦ってる予定です。ハリポタの登場人物が一切出ませんが……要りますか?

  • 1『要る!』vs賊軍→ホグワーツの戦い
  • 2『要らない!』vs賊軍は全部カット
  • 3『後にしろ!』終了後、おまけとして
  • 4『お前も同行!』刀原も旅に参加する
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