ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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見ないでくれ
知らないでくれ
探らないでくれ

私は自覚したくない
私は気付きたくない
私は……

私は……ああ、分かっているとも。




死神、幸運を見る。葬儀、そして真相の記憶

 

 

ロンは多分……いや、間違いなく人生最悪の誕生日を過ごしただろう。

 

惚れ薬入りチョコレートを食べ。

ハリーと刀原に醜態を晒し。

気付け薬は毒薬で……。

最終的には医務室で過ごす羽目になったのだ。

 

最悪を長時間煮詰めた結果と言って良いだろう。

 

だが彼は、幸運でもあった。

 

ホグワーツでも屈指の『有事に対するプロ』が応急措置を施し、『いきなり魔法薬学に詳しくなった生徒』がベソアール石(万能解毒石)を閃いた結果、彼は二、三日の入院で済んだのだ。

 

そして現在は昼になり、ロンは医務室でぐっすり寝ていた。

 

その傍では、ジニーやハーマイオニーが心配そうに座っている。

 

「変わりはないか?」

 

そう言いながら医務室に入ってきたのは、刀原だった。

 

「幸せそうな寝顔ですね」

 

「よかった」

 

近くにはハリーと雀部もおり、二人は来て早々にロンの顔を心配そうに覗き込み……グースカといびきをかいているロンを見て、ホッとした表情でそう言った。

 

雀部は警備、刀原とハリーは事情聴取で席を外していたので、悪化していないか心配していたのだ。

 

「ウィーズリーは大丈夫かの?」

 

ダンブルドアも、マクゴナガルとスラグホーンを連れてやってくる。

 

ロンを一目見た教授達は、相変わらずグースカと寝ているロンを見て安心したような表情を浮かべた。

 

やはり気が気でなかったらしい。

 

「良くベソアール石を思いついたのぉハリー。ショウも流石の応対じゃった」

 

ダンブルドアはそう二人を褒め称える。

 

二人が早急な処置をしなければ……命に関わる事態になっていたかもしれないからだ。

 

「確かに彼らの行動は称賛すべきです。……ですがそれよりも重要なのは『どうしてそうなったか?』では?」

 

「確かにそうですね」

 

マクゴナガルの言葉に雀部が頷く。

 

気づけたから良いものの、刀原もハリーも飲む寸前だったのだ。

 

言葉や表情では表していないが、最愛の人が毒を盛られた雀部の怒りは激しかった。

 

「贈り物にする予定だったそうですね?確か……ダンブルドア宛だと伺いましたが」

 

刀原は飲む前にスラグホーンが言っていた言葉を思いだし、彼に問いただす様に訊ねる。

 

「まあ、ダンブルドア狙いなら僕らに振る舞う筈もないですし?僕らが狙いなら、何かと理由をつけて飲ませれば良いでしょうから……」

 

「ああ。勿論、毒が入っているだなんて思わなかったよ」

 

スラグホーンは疲弊した様子でそう言う。

 

その様子から見ても、彼が毒を盛ったとは思えない。

 

もしこれが演技だとすれば、とんだ名優だろう。

アカデミー賞だって夢じゃない。

 

刀原は短い付き合いとはいえ、スラグホーンの人間性を信じることにした。

 

「それは元々、他の人から贈られてきたもので……。良い物だからダンブルドアに贈ろうとね……」

 

スラグホーンは続けてそう証言する。

 

「他の人?誰だか覚えていますか?」

「いや、匿名のフクロウ便だった」

 

「まだその紙等は残っていますか?」

「ああ、残しているとも」

 

「なるほど……『追跡呪文(アベンジグイム)』じゃな?」

 

刀原とスラグホーンのやり取りを聞いていたダンブルドアが、刀原がやりたいことに気が付く。

 

刀原はその紙などに追跡呪文をかけ、犯人を特定しようと画策しているのだ。

 

「ええ、追跡しきれるかは分かりませんが……。少なくとも、やってみる価値はあるかと」

 

「同感じゃ」

 

刀原の言葉にダンブルドアは頷く。

 

「ではスラグホーン先生、その紙を持ってきてはくれまいか?」

 

「ああ、勿論だ。待っていてくれ」

 

ダンブルドアからそう言われたスラグホーンは、ドテドテと小走りで医務室から出ていく。

 

そしてそのすれ違いとなる形で、ある少女がやって来た。

 

「彼は無事?私のウォン‐ウォンは?」

 

やって来たのは、ロンの彼女であるラベンダーだった。

 

「そこにいるよ」

 

刀原は腕を組んだまま顎で指し示す。

 

その先には相変わらず寝ているロンと、心配そうにそれを見ているハーマイオニーやジニー、雀部とハリーがいた。

 

「……何しに来たの?」

 

ラベンダーは殺意マシマシでそう言った。

 

誰に言ったのかは言うまでも無い。

 

「……貴女こそ、いまさら何しに来たのよ?」

 

ハーマイオニーは立ち上がって言う。

 

【これが修羅場ってやつですかね?】

【俺に聞くな。ワクワクすんな】

 

その様子をどことなくワクワクした表情で(面白くなってきました!)見てる雀部が、小声で刀原に聞く。

 

刀原は苦い顔をしながら(うっわ、めんどくせーことになった)嗜めるようにそう言った。

 

そんな二人を一切気にせずに……ラベンダーとハーマイオニーによる仁義皆無の女の戦いは幕を上げる。

 

「私は彼のガールフレンドよ」

「私は彼の……友達よ」

 

「笑わせないで。ずっと口聞いてなかった(絶交状態だった)くせに。彼が()()()()()()()()から、またやって来たんでしょ」

 

「彼は毒を盛られたのよ?それなのにその言い方はなに?ちなみにロンは、前から面白かったわ」

 

「「「「まあ、確かに」」」」

 

ハリー、刀原、雀部、ジニーは、ハーマイオニーの言葉に思わず同意してしまう。

 

まあ確かに……いろんな意味でロンは面白い奴だ。

どう面白いかは……彼の名誉のために黙っておくが。

 

「う、う~ん」

 

ここで渦中の人になっているロンが、ベッドの上で身じろぎをする*1

 

「ああ、ほら。私が来たのを感じたんだわ。ここにいるわよウォン‐ウォン……」

 

感づいたラベンダーが、少し焦った様にそう言う。

 

ハーマイオニーは、それをじっと見守る。

 

少しだけ……沈黙が流れる。

ロンはなんと答えるのか……注目が自然と集まる。

 

「……ハー、マイニー……」

 

ラベンダーは、ロンがなんと言ったのか分からないと言った表情をした。

 

ハーマイオニーは少し嬉しそうな表情をし、ラベンダーには目もくれずにロンの手を握った。

 

勝者は決まったなと、刀原は思った。

 

そしてそれは、この場にいた全員が思ったことだった。

 

ラベンダーは、打ちのめされた様子で医務室から出て行ったのだった。

 

「漸く決着か」

「長かったですね」

 

いずれこうなるだろうと思っていた刀原と雀部は、そう言って頷いた。

 

「回り道したわね」

「ああ、そうだね」

 

ジニーは「やっとか」といった表情でそう言い、一番の被害を被ったハリーは一息ついた様にそう言った。

 

「若い心に、愛の痛みは深く突き刺さるものよの……」

「そうやって、大人になっていくのです」

 

半ば蚊帳の外だったダンブルドアとマクゴナガルが、しみじみとそう言った。

 

「持ってきたよショウ、ダンブルドア……?……どうしたんだね?」

 

何も知らないスラグホーンが、不思議そうにそう言った。

 

「ンンッ。ありがとうございます、スラグホーン教授。では追跡を開始しますよダンブルドア」

 

「あ、ああ。そうしてくれい」

 

何処となく重くも甘い空気を払拭するように、刀原が咳払いしながらそう言う。

 

ダンブルドアも仕切り直す様にそう言った。

 

ーーーーーー

 

「これだよショウ」

 

「ありがとうございます。では『アベンジグイム(追跡せよ)』」

 

ーーーーーー

 

結論から言えば……犯人はあっさり捕まった。

 

とあるスリザリンの7年生だった。

 

曰く「本当はやりたくなんか無かった。でも家族の為にはやるしかなかった」とのこと。

 

「じゃあ、しょうがないね」とは……ならないが。

 

服毒前()()()()そうなっただろうが、残念ながら服毒してしまった被害者がいるのだ。

 

例えその被害者が超重要主要人物(ヴォルデモートの抹殺対象者)ではなく、ただの一般人……かどうかはさておいて……一応、一般人だとしても。

 

例え、命が失われなかったとしても。

 

これが殺人未遂事件であることに、変わりはないのだ。

 

しかし、法に照らすこと(アズカバン行き)をダンブルドアは望まなかった。

 

彼が悪いのではない、時代が悪いのだ。

 

可哀そうなのはロンであるが、強引に犯行を強要された七年生もそうだと言ったのだ。

 

またその七年生は……十分な反省と謝罪を示した。

 

ロンが起きた時に、ウィーズリー家がロンをお見舞いしに来た時に、即座にそれを行ったのだ。

 

そこそこの名家でもあったため、十分な賠償金も提示した。

 

彼の父親は、何とか死喰い人から抜け出し「息子の代わりに、私がアズカバンに行く」と言った。

 

マルフォイも他人事では無い(僕は彼になっていたかもしれない)として、ロンに見舞をしたし、それとなく減刑を願った。

 

そして当のロンが、マルフォイから説得や各方面からの取り成しの声によって、罪に問う意欲がなくなっていた。

 

最終的な沙汰としては……。

 

七年生は二か月の罰則。

七年生の家族は、死喰い人から永久離脱。

 

死喰い人に加担していた父親は、取り調べの上、アズカバンに収監。

母親はフランスへ亡命。

 

そして、ある程度の賠償金をロンに支払うこと。

 

となった。

 

かくして、仮称『ロン・ウィーズリー毒殺未遂事件(代わりに毒を飲んじゃった事件)』は立件されることなく収束したのだった。

 

 

 

 

しかし、簡単に収束しなかったことがある。

 

言わずもがな、ラベンダーの一件である。

 

本命であり意中の人(ハーマイオニーという存在)がありながら、ラベンダーの乙女心を弄んだ罪は非常に大きく、そして重いのだ。

 

ハーマイオニーとの仲を復活させたばかりか、半ば付き合い出したロンは何とかしようと思った。

 

ラベンダーからの殺気立った冷徹な目に、居たたまれなかったからだ。

 

半ば無意識の状態……つまり事実上の本音の状態で振った為、ラベンダー本人になんて言えばいいのか分からない。

 

それに正気に戻った(夢から覚めた)と言っても良いほど、ラベンダーへの想いは皆無になったため……下手に切り出してよりを戻す訳にもいかない。

 

ロンは大人しく、友人達に泣きついた。

 

だが、彼ら帰って来た言葉は……己を見捨てる言葉や反応だった。

 

waーgannbattekudasaineー(ワーガンバッテクダサイネー)」と言い、無表情かつ日本語でしか相手してくれない雀部。

 

何も言わず、生暖かい目(地獄を見ろ)を向けてくるハーマイオニーと、ハリーにジニー。

 

お前の責任だ(大人しく裁きを受けろ)」と言い、それでも食い下がったら「じゃあ、そんなことなんてどうでも良くなるくらいの特別訓練でもするか?ああ、心配すんな。「今までのやつは座興(お遊戯)だった」って思うくらいの地獄を、()()()三時間だけ見るだけだ。まあ、忘れて無いようだったら延長するが」と言った刀原。

 

ロンは絶望、特に最後のやつに絶望し……大人しくラベンダーから発せられる殺気を受けることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ロンを救い、そして見捨てたハリーだったが、スラグホーンの説得(調略)は完全に手詰まりになっていた。

 

いよいよ本腰を上げてスラグホーンを調略しなくてはならないのだが、これがさっぱり上手くいかない。

 

ダメ元で真正面から交渉してみたが、当然ながら取り付く島もなかった。

 

ならば、なんとかスラグホーンを口説き落とす策を練らなくてはならないのだが……。

 

どう頭を捻っても、良い作戦も文言も出てこなかった。

 

少し前だったら自身が全幅の信頼を寄せている参謀を頼ったし、出来ることなら今もそうしたいのだが……あの様に言われた以上、ハーマイオニーとロンにしか意見を聞けない。

 

時間だけが過ぎていく。

 

そんな中、ハグリッドからしわくちゃになっている手紙が贈られてきた。

内容は『アラゴグが死んだ』というものだった。

 

ハリーとロンは「あいつか⁉」と思い出し、自分たちをディナーにしようとした奴らの死を歓迎した(あんな奴、死んで正解だ!)

 

ハーマイオニーと刀原は「ああ、ハリー達から聞いた蜘蛛か」と思い出し、やはりその死を歓迎した(死んで悲しいのはハグリッドだけ)

 

雀部に至っては、かの存在を知らず「え、だれ?」となり……詳しく聞いた後は、やはりその死を歓迎した(死んで良かったですね)

 

しかし、この会話と手紙は無意味ではなかった。

 

会話の途中で、ロンがある魔法薬の存在を思い出したからだ。

 

「ハリー、幸運だ。幸運になればいいんだ!あれを飲んで、スラグホーンの元へ行くんだ!」

 

ロンはハリーが持ち、今なお厳重に蝋封されている『幸運の液体(フェリックス・フェリシス)』の使用を提言したのだ。

 

このまま死蔵(使わないまま終わる)のは忍びないと思ったハリーも、使用を決断した。

 

「じゃあ、飲むよ……」

 

おっかなびっくりの表情で、ハリーが数時間分だけ飲む。

 

「どう、どんな感じ?」

「ラッキーな感じか?」

 

ハーマイオニーとロンも固唾を飲みながら見守る。

 

やがてハリーは、まさに『覚醒した』かのような表情をする。

 

にやりと笑い、その表情には自信が宿っている。

 

「いい、ハリー。スラグホーン先生の所に行って、そして、分霊箱に関する情報を得る。良いわね?」

 

そう暗示を掛けるように、ハーマイオニーは言う。

 

「分かった。よし、じゃあハグリッドの所に行くよ」

 

それをハリーは真っ向から投げ捨てるかのような方針を発表した。

 

「「「!?(何言ってんだこいつ)」」」

 

刀原以外の三人はハリーの言葉の意味を全く理解出来ないようだった。

 

「その方がいい気がした……。そうだな?そうなんだよな?」

 

刀原だけは、それをなんとなく理解したようだった。

 

しかし、それが仇となる。

 

「ああ!よし、ショウも行こう!」

 

「え」

 

ハリーは刀原の肩をガシッと掴む。

 

後に「しょう君の、あんな情けない声聞いたの、本当に久し振りでしたね」と雀部が語る声を、刀原は上げる。

 

「その方がいい気がするんだ!今夜は、あそこで決まりだよ!意味分かる?」

 

「「「「いや、全く」」」」

 

ハリーは正に猪突猛進になっていた。

 

四人が理解不能になっていることにもお構い無しだった。

 

「さあ、行こうショウ!」

 

「え、ちょ、ハリー、ちょと待て!ちょっと助け「「「い、いってらっしゃーい……」」」おい!」

 

刀原は三人に助けを求めるが、三人は手を振ってそれを見送る。

 

今のハリーとは関わりたくない(君子危ウキニ近寄ラズ)』ということだ。

三人にとって刀原は、尊い生贄(必要な犠牲)になったのだ。

 

「覚えてろお前ら!」

 

刀原はそんな捨て台詞を吐きながら、ウッキウキのハリーに半ば引きずられていった。

 

 

 

 

なんでこうなった……。

 

ハリーの気分の赴くままにやって来て、目の前で行われている光景を前に、刀原は複雑な気分でそう思った。

 

ハグリッドはカパカパと酒を飲み、スラグホーンも気分よく酒を飲んでいる。

 

ハリーはそれを、ニコニコしながら見ている。

 

アラゴグと名付けられていたアクロマンチュラの葬儀が終わり、ハグリッドの小屋で行われ始めた宴会は、まさにカオス(混沌)だった。

 

何故こうなったのか。

 

刀原は今までのやり取りを思い出す。

 

ーーーーーー

 

グリフィンドールの寮を気分上々で出たハリーと、ため息を吐きながら出た刀原は、幸運に導かれるようにハグリッドの小屋へ向かっていた。

 

目的はスラグホーンの筈。

何故、ハグリッドの小屋に向かっているんだ?

 

その理由は直ぐに分かった。

 

「こんにちは先生!」

 

ハグリッドの小屋に向かう途中、有毒食虫蔓を失敬しようとしていたスラグホーンに遭遇したのだ。

 

「ああっ!ハリーか!それとショウも……。こりゃたまげた。驚かせないでくれ……」

 

スラグホーンは心底驚いた様な(やべ、見つかった!)表情でそう言った。

 

「教授。あの、スプラウト教授からの許可は?」

 

「ああ……えっと……勿論、いけないことだとは分かっているのだが……採れたて新鮮な有毒食虫蔓は希少でね。それに。新鮮な物と、ある程度の時間が経過した物でどう違うのか……と言う学術的興味もあるのでね」

 

刀原の指摘に、スラグホーンはウインクしながらも懇願するように言う。

 

要するに内緒にしてくれと言う事だな。

でもそれをハッキリとは言えないと。

 

そう察した刀原が、「僕は見なかったことにします」と言えば、スラグホーンは安堵の表情を見せる。

 

「そう言えばハリー、何故ここにいるのかね?まあ、ショウが付いているのならば、これ以上に安心な状態なぞなかろうが……」

 

「実は先生、僕たちハグリッドの所に行く予定なんです。ハグリッドの友達だったアラゴグが昨夜死んだので、その埋葬に立ち会うことに」

 

「そうかね。アラゴグ……どんな存在なのかね?」

 

ハリーの説明にスラグホーンは興味を示した。

 

「アクロマンチュラですよ。()()

 

刀原はスラグホーンを巻き込むチャンスだと思い、強調するようにそう言った。

 

「僕自身はアラゴグとなんの接点もありませんが、アクロマンチュラの遺体がどれほど貴重か……教授なら知っているでしょう?」

 

「確かに、アクロマンチュラの毒は非常に貴重だ。生きている内に毒を採取するのはほぼ不可能。故に、半リットルで百ガリオンになる。勿論、他の部位も……。そちらは、サンプルかね?」

 

「ええ、アクロマンチュラは日本に生息していませんから。ある程度のサンプルが欲しいんですよ。僕はハグリッドと親しいので……上手く交渉すれば、得られるかも」

 

「ふむ」

 

二人は、悪い顔をしていた。

 

そして刀原は、上手く乗せられたと思っていた。

 

ハグリッドの心象を害してまで、アラゴグの死骸からサンプルを得る必要などない。

欲しいのなら、禁じられた森にいる何体かをやればいいだけだ。

 

刀原のそんな心象も知らず、スラグホーンはその気になっていた。

 

「ではハリー、ショウ。あっちで落ち合おう。私は飲み物を一、二本持って、改めて向かうとしよう」

 

スラグホーンはそう言って、バタバタと城へ戻っていった。

 

ハリーは大満悦で、刀原は悪い顔をしながらハグリッドの小屋に向かった。

 

 

 

二人を迎えたハグリッドは打ちひしがれていた。

 

「アラゴグが死んだんで、他の連中は俺を巣に一歩も近づけさせねぇ。ただでさえ、二年前に原因不明の壊滅的打撃を受けていたからな。不信がっているんだ」

 

ハグリッドは溜息を吐きながらそう言った。

 

「壊滅的打撃?」

 

「ああ、巣は文字通り壊滅。個体数も大幅に減った。アラゴグは辛うじて無事だったらしいが……あいつは「黒が襲い掛かってきた」って言ってた。信じられん、あいつらの巣を壊滅させられるやつなんて」

 

そう聞いたハリーは、あいつらの個体数が減ったのは良いことと思った。

                                

そして刀原は、二年前に行った行為*2がバレてない事を安堵した。

 

やがてスラグホーンもやって来て、アラゴグの死骸の前で粛々とした葬儀が行われた。

その際、スラグホーンは自身の目的を達成した。

 

そして、時系列は冒頭に戻る。

 

ーーーーーー

 

埋葬が終わったあと、ハグリッドの小屋では飲み会が行われた。

 

ハグリッドはスラグホーンの世辞で気が大きくなり、酒をカパカパと飲んだ。

 

スラグホーンは、自身が無事に目的を達成したことで、こちらも気分よく酒を飲んだ。

 

ハリーは二人の酒瓶に補充呪文を掛け、酒が無くならない様にした。

 

刀原は、とんとん拍子に事が上手くいっていることに戸惑い、複雑な気分になっていた。

 

やがてハグリッドは、いびきをかきながら寝始めた。

 

「酷い話だ、私はいつも……いや、よそう」

 

スラグホーンは、ついさっきまで話題に上がっていたハリーの両親について、何か言いたげだった。

 

「リリーは素晴らしい女性だった。ユーモアがあって、勇敢で……。なのに」

 

「先生。母は僕に命をくれました。助けてくれました。なのに先生は、助けてくれないんですね。記憶をくれないのですね」

 

ハリーははっきりと言った。

 

「そんなことを言わんでくれ。確かに助けたい……しかし、役には……」

 

「役に立ちます。ダンブルドアには、僕には、情報が必要なのですから……」

 

そこまで言って、ハリーは身を乗り出した。

 

「僕は『選ばれし者』です。奴を倒すのは、僕の責務です。そのために、先生の記憶が必要です」

 

ハリーの目には、確かに覚悟が宿っていた。

 

「……君は、私に決断を迫っている。『あの人』の破滅を援助しろと……」

 

「恐ろしいと言う気持ちは理解出来ます。でも、先生……勇気を出してください。母の様に……」

 

「…………」

 

スラグホーンは、それでも悩んでいる様子だった。

 

「教授。確かに、その情報を出したことは……恥ずべき行為かもしれない。しかし、このまま何もしなければ……それこそ本当の恥ずべき行為です。そしてそれを帳消しにするには……記憶が必要です」

「それはとても勇敢で、気高いことです」

 

刀原とハリーの言葉に、スラグホーンの瞳は揺れ動いた。

 

沈黙が流れる。

 

「私を責めないでおくれ。悪く思わないでおくれ……。あの時、ああなるとは思わなかったんだ」

 

スラグホーンは懇願するようにそう言った後、杖をこめかみに押しあて……長い銀色の糸を出した後、それを瓶に入れた。

 

「未来は誰にも分からず、確定していません。ですが、これだけは言えます。この瞬間、ヴォルデモートの滅びは……より確定に近づきました」

 

「ありがとう先生」

 

刀原とハリーがそう言ったのを確認すると、スラグホーンは酔いもあってか、眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

ハリーと刀原は、既に夜が深いことも気にせずに、校長室に向かった。

 

幸運の液体の効果は切れていたが、幸いな事にダンブルドアは校長室に居た。

 

ダンブルドアはハリーが真の記憶を入手したことを大いに喜び、三人はすぐさま憂いの篩で記憶を見た。

 

そしてその記憶の中は、ある意味予想通りの……そして最悪の答えがあった。

 

ヴォルデモートは、分霊箱を六つ作成した……という答えだ。

これでヴォルデモートの魂は、本体含めて七つだと言う事だ。

 

もっとも、既に二個は破壊済みだ。

 

『トムリドルの日記』

『マールヴォロの指輪』

 

しかし、ということは……。

 

「あと四個もあるのか」

 

刀原はヴォルデモートの生き汚さに呆れていた。

 

「先生は、何を分霊箱にしたと思いますか?」

 

「推察するしかないが……あやつは品物自体が何か特別な物、偉大な物であることを好んだであろうと思う」

 

「なら簡単だな。俺の記憶が確かなら、あいつはそれらしいものを奪っている」

 

ハリーとダンブルドアの言葉に、刀原は思い出すように言う。

 

「それらしい物?」

 

「ホグワーツの創始者所縁の品。ハッフルパフのカップに、スリザリンのロケット。「偉大なる俺様にふさわしい品だ」とか言いそうだし」

 

刀原は声真似をしながらそう言う。

 

「おそらく正解じゃ」

 

ダンブルドアはクスリと笑いながらそう頷く。

 

「あと二個は、レイブンクローとグリフィンドール所縁の品?」

 

ハリーは指を二本にしながら言う。

 

「俺の勘だが、多分レイブンクローだと思うね。グリフィンドール所縁の品で思い出すのは剣だが、それはまだ健在だし」

 

刀原はダンブルドアの机の裏にある『グリフィンドールの剣』を、親指で指さしながらそう言う。

 

「確かにのう」

 

「レイブンクローだったら……レイブンクローの髪飾りだな。あれは失われたらしいが、あいつは発見してるかも」

 

「じゃあ、最後の一個は……?」

 

ハリーは人差し指を見ながら考える。

 

「いるだろう?奴と四六時中一緒にいる……でっかい奴が」

 

「え、蛇!?でも、それって可能なの……?」

 

「いや、駄目だろう。自立走行出来るってことは、どっか行くかもしれないってことだし」

 

「ショウの言う通り、あまり推奨される話では無いのう。じゃが、そうであろうという実証がある」

 

刀原とハリーの言葉に同意しながら、ダンブルドアは頷く。

 

「なら問題は、何処にあるか……だよね?」

 

「ああ。……だけど」

 

「なにか予測があるのかね?言ってみてくれんか?」

 

ハリーの指摘に刀原が悩んだように言うと、ダンブルドアはそれを言うように促す。

 

「そうですね……まず、ホグワーツにはあるかと。奴にとって、この学校は思い出の詰まった母校。それに、沢山のギミックがあります。何処かに隠した可能性は非常に高い」

 

「確かに。あ奴にとって、この学校は特別な存在じゃろう」

 

「もう一つは……断固たる確証は皆無ですが、部下に預けた。ルシウス・マルフォイが預かっていたように」

 

「アントニン・ドロホフや、ベラトリックス・レストレンジとかに?」

 

「ベラトリックス?……それだ!ベラトリックスは奴の副官の様な存在だった。預けていてもおかしくない!」

 

「じゃあ、レストレンジ家にある?」

 

「いや……まあ確かに、あのベラトリックスだったら……敬愛するご主人様(笑)から預かった品を家に飾ったりするかもしれないけど。焼き討ちとか、家ごと爆破されたら終わりだから……」

 

「や、焼き討ち、爆破……」

 

「相変わらず物騒じゃのう」

 

「え、普通の策では?」

 

「「…………」」

 

 

 

「……でも、じゃあベラトリックスはどこに保管したの?」

 

「金庫、いや軽微過ぎる……。金庫、銀行!」

 

「なるほど、グリンゴッツ。確かにあり得そうじゃのう」

 

「アルバス、直ぐに魔法省へ連絡して強制捜査の手続きを。レストレンジ家は全員死んでるかアズカバンです。立ち合いには親戚筋としてシリウスやドラコが行ける筈」

 

「良し、直ぐに手配しよう」

 

「あと一個は……」

 

「それについてはわしに心当たりがある」

 

「学校を留守にしていた時は、そういう場所を訪ねていたのですね?」

 

「ああ、学校はショウ達の尽力で鉄壁じゃからの。そしてそこに行く時には……ハリー、同行して貰えるかの?」

 

「望むところです」

 

「さて、明日から忙しくなりそうじゃの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
こんな状況下でグースカと寝ているわけにはいかないと感じたのか、それともただ単に五月蠅いと思ったのかは……この際、放置する。

*2

 

実は二年前、刀原は日番谷と藍染と一緒にアクロマンチュラの巣を奇襲し、三体ほどをサンプルとして日本に送っていたのだ。

 

日本にはアクロマンチュラが生息していないのだが、禁じられた森には無数のそれが居て、しかも戦力も問題ない……。

これ幸いにと、三人はアクロマンチュラの巣を駆除の名目で奇襲したのだ。

ちなみに、ダンブルドアからの許可は得ている。

 

あの攻防戦でアクロマンチュラの巣はほぼ壊滅したのだが……。

どうやらアラゴグとやらは無事だったらしい。

 






手繰り寄せる、奇跡の道筋

引き寄せるには幸運と頭脳。



まず……更新が遅れてしまい、すみませんでした。
資格だったり、引っ越しとかで時間が無かったのです。

頑張って更新するので、今後ともよろしくお願いいたします。




映画版での、ハリーのコメントに笑いました。

「死んでるようですね」なんて、ニコニコ顔で言うんじゃないよ。

そして流れるような幸運の連発。
はっきり言って、チートです。



グリンゴッツに強制捜査。
全てはベラトリックスが死んでいるから。

気付いたんです。

ベラトリックスが死んでいるため、ポリジュース薬で彼女に変身してグリンゴッツに入れないこと。
例え変身しても、死んでいるため失敗すること。

ベラトリックスの夫は、影が薄くて介入出来ませんし。

よって、ハリー達はグリンゴッツに潜入が出来ません。

一応……ドラコを利用すると言う手も、無い訳では無いのですが……。
多分その策はヴォルデモートによって封じられます。

なので、まだ魔法省……国家権力がこちらの陣営である内に、強制捜査の上で発見するしかありません。

と言う事で、刀原君には奇跡の閃きをして貰いました。

刀原君、君なら出来る……筈だよね?
ってかしてくれ、お願い。




感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


では次回は

捜索、そして襲撃

次回もお楽しみに。



ハリー達が分霊箱捜索旅をしている間に、刀原達は賊軍と戦ってる予定です。ハリポタの登場人物が一切出ませんが……要りますか?

  • 1『要る!』vs賊軍→ホグワーツの戦い
  • 2『要らない!』vs賊軍は全部カット
  • 3『後にしろ!』終了後、おまけとして
  • 4『お前も同行!』刀原も旅に参加する
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