木を隠すなら森の中
人を隠すなら人の中
騒ぎを隠すなら騒ぎの中。
刀原はホグワーツの廊下を走る。
女子トイレに向かって。
トロールも女子トイレに入る。
それを見て刀原は抜刀態勢に入った。
女子の悲鳴を聞きながら…。
ホグワーツに来てから早二ヶ月が過ぎた。
本日は10月31日。
つまり、日本ではあまり馴染みのないハロウィンの当日となる。
そのためホグワーツでは朝からカボチャの匂いが充満しており、甘ったるい空気となっていた。
しかしホグワーツは魔法学校、ハロウィンだろうが授業は行われる。
そして、この日の授業は妖精の呪文という授業。
刀原は相変わらず首を傾げていたが……今回もスリザリンとの合同授業となっており、物を宙に浮かす呪文を学ぶという内容だった。
「ビューン、ヒョイですよ。いいですか……ビューン、ヒョイ。呪文も正確に、これも重要ですよ」
レイブンクローの寮監も務めているという小鬼の血筋を持つ教授、フリットウィック教授はそう生徒達に教える。
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ。ですよ皆さん」
杖の動きから呪文の発音までを丁寧に実演した後、生徒達は机の上にある羽を浮かそうと試み始める。
だがしかし、うまくいっている生徒はいない。
見よう見まねで杖を振っているが、おそらく発音などが違うのだろう……。
だが、マホウトコロにて既に習得している刀原にとっては、おさらいも同然だった。
「
刀原は羽を容易く浮かび上がらせ、フリットウィックから称賛される。
「凄い!どうやったの?」
「ああ、この呪文はな……」
隣のハリー達にコツを聞かれた刀原は、羽を降ろしておしえようとする。
だが、近くのロンとハーマイオニーが騒ぎ出す。
「ウィンガーディアム・レヴィオサー」
ロンはそう言って杖をブンブンと振るが、羽はピクリともしない。
「ロン、発音がちょっと違うわ。レヴィオーサよ。あなたのはレヴィオサーになってるわ」
ハーマイオニーは闇雲に杖を振るロンを止めながらそう言うが、お年頃のロンは反発する。
「そんなに言うならまず君がやってみろよ」
ロンにそう言われたハーマイオニーは、んんっと咳払いし呪文を唱える。
「
するとハーマイオニーの羽は、ふわふわと浮き始めたではないか。
「オオッ!よくできました!皆さん、グレンジャーさんが一発でやりました!」
ハーマイオニーは褒められ恥ずかしがり、ロンは気に食わなかったのか不貞腐れる。
その後も授業は続いたのだが……浮かび上がることができたのは刀原とハーマイオニーのみだった。
ほかの生徒はうんともすんとも言わず、特にシェーマスという生徒の羽は、何故か爆発して本人もろとも黒焦げになるという結果を迎えたのだった。
だが、この授業で出来たロンとハーマイオニーとの喧嘩は、予想外の騒動に発展することになったのだった。
今日はハロウィンということで朝っぱらからカボチャの匂いがしていたが……やはり今夜の晩餐会のための匂いだったか。
夜空を模した天井には、従来の蝋燭ではなく、大小さまざまなカボチャが浮かんでいる。
何やら顔っぽいが…。
ハリーに聞いたところ、どうやら『ジャック・オー・ランタン』というものらしい。
日本ではあまり目にしないハロウィンというイベント*1に、カボチャパイやカボチャスープを代表とするパンプキンディナー。
それらをハリー達と共に、今まさに堪能しているところなのだが……俺には気掛かりなことが一つある。
今まさに三階の女子トイレに立て篭っているという、ハーマイオニーのことだ。
ロンが腹いせなのかハーマイオニーの悪口を言い、彼女はそれに傷ついたというのが一連の流れなのだが………。
まあ、ぶっちゃけ……ロンに弁護の余地なしというのが、俺の結論だ。
「悪夢のような奴」だの「そんなだから友達ができない」だの。
たとえムカついたとしても、本人が聞きそうな場所で言うかね?
まあハーマイオニーも言い方がきついというとこは、あるのだし…。
あと俺が励ましに言ったら「私より優秀で、謙虚なあなたにはわからないわ!」って言われ案外傷付いた…。
優秀な理由なんていくらでもある。
年上であること。
マホウトコロでやっていること。
師匠との修行*2をやっていたこと。
だがそれを言っても始まらないので、ご飯は取っておくと言い放置したのだ。
「大丈夫かねぇ?」
「ハーマイオニーのこと?」
俺がボソッと言えばハリーが小声で聞いてくる。
「まあね……せっかくのパンプキンディナーだ。できればみんなで食べたいじゃないか」
俺がカボチャジュース片手に言えば、ハリーも「そうだね」と同意する。
「別にいいだろ。いないやつのことなんて」
俺たちの会話を聞いていたロンが、そうボソッと反論してくるが無駄だ。
「声、震えているぞロン。強がりはやめて大人しく謝れ。それでも英国紳士か」
そう言えば、やはり反省しているのか静かになる。
どうやら俺がハーマイオニーに拒否られた後、ロンに「言い過ぎだバカモンが」と一喝したのが効いているようだな。
とりあえずそこの空き皿にカボチャパイとカボチャスープとかを載せて、ハーマイオニーへの手土産にしようか…。
なんて考えていたら、大広間の扉が勢いよく開く。
入ってきたのはターバンとニンニクの匂いが特徴的で、亡霊?に取り憑かれているクィレル教授だった。
いったいどうした…。
「トロールが!ホグワーツ地下牢に!」
トロール?
「お知らせ…しなくてはと…」バタリ…。
気絶した…。
ん?
トロール!?
ええ~せっかくの晩御飯が…。
大盛り上がりの晩餐会。
そんな中……。
場違いのゲストとしてトロールがやってきた。
生徒がパニックになるのも仕方なかった。
しかしダンブルドア校長の
「鎮まれぇええええ!」
という一喝で、生徒たちはおとなしくなる。
おお!師匠みたい。
俺はハーマイオニーの分を空き皿に確保しながら、呑気にそう思う。
「監督生の諸君、生徒を連れて寮に戻りなさい。先生方はトロールの対処を」
ダンブルドア校長がそう言えば、生徒たちは自分たちの寮へ向かい始め、先生方はトロール対処へ赴く。
さて、料理も確保したし……俺もハリー達と寮へ向かいますか…。
あ!
俺はここで気付く。
ハーマイオニーはトロールのことを知らない。
やばい!
ネビルにハーマイオニーの料理を託し、俺は急いでマクゴナガル教授に状況の説明をしに行く。
「マクゴナガル教授!」
「一体どうしました、ミスタートーハラ……?今、忙しいのですが…」
「詳しいことは省くのですが、ハーマイオニー・グレンジャーさんが三階の女子トイレにいるんです」
「なんですって!それは本当なのですか!?」
「はい!ハーマイオニーを救出する為に、僕が別行動をする許可を下さい」
「しかし、あなた一人では無謀です。先生たちも同行致します」
「いえ、それには及びません。クィレル教授曰く、トロールは地下牢にいるとか。僕が遭遇する可能性は低いですし、先生方はトロール討伐に人を取られるはず。他の生徒の護衛戦力も考えると、一人で大丈夫かと」
「ですが」
「それに!」
「…それに?」
「トロールに後れは取りません」
「…」
「教授、時間がありません。ご決断を」
「…ミスタートーハラ、あなたを信じます。お願い出来ますか?」
「ありがとうございます。お任せを」
よし、マクゴナガル教授の許可は得た。
俺はここ二ヶ月の間、手に持っているだけだった愛刀たる斬魄刀*3を腰に差す。
そして走り出た。
三階の女子トイレを目指して。
刀原がはハーマイオニーがいる女子トイレに向かっていた。
そして目を見開く。
少し先にあるT字路を左に曲がれば女子トイレなのだが、その女子トイレに向かってトロールが歩いていたのだ。
何故、地下牢にいるはずのトロールが?
など考える暇もなく。
「キャーーーーーーー!!」
というハーマイオニーの悲鳴が聞こえてくる。
トロールが女子トイレに侵入したのだ。
刀原は霊圧を更に高める為にスーっと息を吸い、腰を低くし、抜刀態勢に移行する。
そして廊下の壁を蹴って曲がり突入する。
目の前にはトロール。
刀原はスライディングしながら抜刀し、トロールの膝裏を叩きながらハーマイオニーとトロールの間に割り込み、斬魄刀を構えた。
こいつがトロールか。
そう思いながらトロールを観察する。
中々に大きい図体。
打撃性しかない只の棍棒。
こいつに後れを取るようなら……日本に強制的に戻され、修行のやり直し確定だな。
「ショウ!?どうしてここに!?」
ハーマイオニーが聞いてくる。
「いや、ハーマイオニーを助けに」
「ええ?」
「細かいことは後、まずはこいつを何とかしよう」
「う、うん」
さて……やるのはいいが、どうするかね。
そう思っていると、トロールが棍棒を振りかぶり、叩きつけに来る。
ガキンッ
師匠やマホウトコロの友人からすれば遥かに遅い。
容易く斬魄刀で防御する。
そして、防御しながら後ろのハーマイオニーに声を掛ける。
「とりあえずハーマイオニー。俺が抑えているから……トイレ入り口に行けるか?」
「ごめんなさい、ちょっと
「ああ、了解」
さあどうする。
「とりあえず止めるか。縛道の四『這縄』!」
トロールの棍棒をかちあげながら、這縄を放つ。
這縄はトロールを捕らえるが、奴ご自慢?の筋肉であっさりと破られる。
「ええー、まじか」
ちょっと予想外。
その時、トイレの入り口の方からバタバタと人が来る音が聞こえて来る。
教授陣が来たかと思ったが、予想はまたも外れ。
「ハーマイオニー!」
「大丈夫か!?」
なんとハリーとロンだった。
ハリーとロンが参戦した間も、トロールの攻撃は遅いかかってくるが、難なく防御し続ける。
「ハリー!ロン!あなたたちも来てくれたのね?」
「ハーマイオニーがトロールの事、知らないと思ってきたんだ」
「なんでショウもいるんだ?」
「その理由は、二人と同じだ!」
ガキンッ!
トロールの攻撃をもう一度抑え込む。
「おい、こののろま!」
「こっちだ!」
俺の方が形勢不利と思ったのか*4、ハリー達はトロールが壊したトイレの残骸を投げて、トロールの気を引こうとする。
あっぶね。
気を引こうとするのはうれしいんだけど……俺にも当たりそうなんだけど。
あ、でも…。
コツン……。
二人が投げた残骸が、見事にトロールの頭へ着弾する。
トロールが二人の方へ向く。
ビクッとなる二人。
よくやった!その隙は逃さん。
「そこだぁ!」
俺はトロールの膝脇を叩けば、トロールの体勢が僅かに崩れる。
その間に、ハーマイオニーはトロールの脇をすり抜け、ハリー達に合流する。
だがトロールは体勢を立て直し、今度は三人目掛けて棍棒を振り下ろそうとする。
だが。
「ビューン、ヒョイよ!」
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ」
ロンが浮遊呪文を成功させたのだ。
トロールが持つ、唯一の武器らしい武器は宙に浮く。
つまり、最大のチャンス。
「よし今だ!縛道の九『撃』!」
撃を使うが、やはり破られかける。
トロール相手には撃でも足りないか。
だが、もう遅い!
お前に恨みは、まあ無くは無いが!*5
「おりゃぁああ!」
跳躍し、トロールの脳天目掛けて刀を振り下ろす。
ガツンッ!
鈍い音がして、俺が着地すると同時に。
トロールは地に伏したのだった。
フーっと息を吐く。
トロールを仕留めようとせず、無理に攻め込もうとしなかったことが長引いた原因だと思う。
まあ……まだ一年生の三人がいるこの場で、トロールを始末するのはどうかとも思い、仕留めなかったのもあるが。
もし次があるのならば*6……次はスマートに倒そう。
俺ははそう決意しながら、血はついていないが一応斬魄刀を払い鞘に納める。
「死んじゃったの?」
とハーマイオニーが聞いてくる。
襲われたというのに優しいな。
「いや、気絶しただけだよ」
俺がそうこたえると、ハリーが頭に?を浮かべながら聞いてくる。
「でもさっき刀で切ってたんじゃないの?」
「ああそのことか」
確かに言ってなかった。
「俺の斬魄刀はね、切れないんだよ。ほら」
俺はそう言いながら斬魄刀を再び抜き、三人に見せつつ説明する。
「斬魄刀は始解をすることで、能力が解放されるんだけど……。解放していない状態を浅打っていうんだ。それで、ほとんどの浅打は日本刀の形をしているんだけど……俺の斬魄刀は刃が全くないんだ」
「ホントだ全くない」
「なんで?」
「まあ、それが俺の斬魄刀の特徴だからかな」
そう、俺の斬魄刀は刃が全くない。
言うなれば両峰刀とでもいう感じで、ただの刀の形をした鉄の棒でしかない。
理由は斬魄刀から聞いたから大丈夫だけどね。
バタバタ…。
そして響く複数の足音。
ようやく教授陣が駆け付けたみたいだね。
「まあ、なんてことでしょう」
マクゴナガル教授が唖然としながらそう言った。
そりゃあ、トロールが伸びていたらそうなるよね…。
女子トイレに駆け付けた教授陣は、マクゴナガル・スネイプ・クィレルの三人だった。
教授陣は、まず女子の惨状を見た。
そして教授が来たことを察知して斬魄刀を鞘に納めた刀原と、比較的無事そうなハリーとロン、最後に埃を被っているが無事そうなハーマイオニーを見て、愕然とする。
クィレルは気絶したトロールを見て悲鳴を上げるが、マクゴナガルは流石というべき判断力を発揮する。
「まあ、なんてことでしょう。グレンジャーとトーハラがいるのは分かっていましたが……。何故、ポッターとウィーズリーが居るのです?」
「えっと、あの、その」
マクゴナガルに詰められ口どもる二人。
「私のせい…」
ハーマイオニーが二人が庇おうと、マクゴナガルに話しかけようとする。
「…ここは俺に任せて」
それを刀原が制止し、マクゴナガルに説明をする。
「僕がご説明します。マクゴナガル教授」
「トーハラ、これはどういうことですか?私はグレンジャーの救出はお願いしましたが……トロールの討伐はお願いしませんでしたよ」
「はい。僕もトロールと交戦するつもりは、全くありませんでした」
「では何故?」
「第一に……僕がここに現着したときには、既にトロールがこの場に居たためです」
「ではグレンジャーを守りながら、ここを出ればよいのではないのかね?」
スネイプはねっとりと刀原に聞く。
だが刀原は反論する。
「まあ確かにそうなのですが……グレンジャーさんを守りながら撤退すれば、合流先の生徒達をさらに危険な目に合わせることにも成りかねないと思いました」
トロールが数体いた可能性も考慮しましたしね。
と刀原はつぶやく。
実際、地下牢にいるはずのトロールが別の所に居れば、そう考えてもおかしくはない。
「以上の事から……ここで仕留める、あるいは先生方が来るまでハーマイオニーを守るべきと判断しました」
マクゴナガルとスネイプは納得するかのように頷く。
だが…。
「それでは、ポッターとウィーズリーが居た理由が無いように思いますが」
マクゴナガルはハリーとロンが居た訳を刀原に聞く。
だが、刀原はちゃんと
「ハリーとロンは、おそらく僕と同じくハーマイオニーを助けに来たのだと思います。二人もハーマイオニーが女子トイレに居る事を、知っていたので」
「なるほど、そういうことだったのですね…」
マクゴナガルは納得するそぶりを見せる。
そして評価を下す。
「ポッター、ウィーズリー。あなたたちが助かったのはトーハラがこの場に居たからです。助けに行くのであればせめて先生方に言うべきでした。まあ、友人を助けるためにトロールに立ち向かった勇気と運に免じて、二人に五点ずつ与えます」
マクゴナガルの言葉に、ハリーとロンはお互いに見合って喜んだ。
そして刀原とハーマイオニーを見る。
「グレンジャーはトーハラ達三人に、よくお礼を言うことです。三人が来なければ、間違いなく命はなかったでしょう」
ハーマイオニーは頷く。
「トーハラ。その歳でトロールから友人を守り、かつトロールを倒す者はいません。さすがは日本の魔法使い…死神というべきですね」
「ありがとうございます、マクゴナガル教授。ですが僕も含め死傷者が出なかったのは、途中で参戦した二人のおかげでした」
刀原はハリーとロンの方を見ながら言うと、二人は照れ臭そうに笑った。
「そうですか、ですがこれは貴方ありきの話です。そこでトーハラ、あなたに二十点差し上げます。本当によくやりました」
マクゴナガルはそう微笑みながら刀原にそう言い、女子トイレから去る。
それに合わせる形でスネイプも去り、残ったのは刀原達四人とクィレルのみとなる。
「さ、さあ四人とも、も、もう寮へお戻りなさい。ぐずぐずしているとトロールが、お、起きてしまうかも」
クィレルから言われた四人は、寮へ戻るのだった。
その後ハーマイオニーから謝罪をされ、ロンもハーマイオニーに謝罪することで一件落着となり、真の意味でハリーとロンとハーマイオニーは親友になるのだった。
ちなみに…。
トロールをノックダウンさせた話は尾ひれがつきまくり、刀原はうんざりすることになった。
感想、質問、修正指示等ありがとうございます。
すごく励みになります。
主人公の斬魄刀は個人的に強力なもの選んでいます。
故に浅打はあんな感じに…
なお、BLEACHに出た斬魄刀ではありません。
似たようなやつはありますが、所詮オリジナル斬魄刀ですね。
次回は三頭犬とハリーの初陣まで行くかもですね。
それでは次回もお楽しみに